お砂糖とS
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春は大きく噎せた。
視界の端でにっこり笑う沖田、きっとわざとお茶を飲んでいる最中に口走ったに違いない。
「それは…っ」
「いつなの?その日って」
やっぱり忘れたままのが良かったかも、と春は先刻の言葉を後悔した。
だが彼は言うまで離すつもりはないようで、にこにこ顔のまま春を見つめる。
「二月、十四日…バレンタインデーです……」
「ばれんたいんでー?」
「えっと…チョコレートっていう、甘いお菓子を渡すんです……」
「なんで渡すの?」
うっ、と春は言葉に詰まった。
未来じゃバレンタインにチョコを渡す理由なんて皆知っているからこそ義理チョコやら本命チョコなんてものがあるのであって、改めて聞かれると答えは一つしかない。
『好きだから』だ。
「…………」
―――言うわけにはいかない。
春は必死で言い訳を考えた。
だって言ってしまったら、バレンタインはどうしようもなくなる。
贈ったらそれは「好きだ」と伝えることになるし、
贈らなかったら「好きじゃない」と嘘つくことになる。
「それはっ………」
真っ赤になる、彼女。
もうそれだけで理由を言っているも同然だが、沖田は微笑んで言った。
「……十四日に教えてくれるの?それじゃ、楽しみにしてるね」
勝ち誇ったように、彼はまた茶を啜る。
だけどチョコレートないですし―――と焦って継げようとした言葉は、彼への想いに掻き消された。
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