カノジョ。
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「総司……っ!」
彼がよく居る渡り廊下で、藤堂は彼を見つけた。
始業まで間もなく、他に人の姿はない。
「………なに」
長椅子に寝転んでいた沖田は、不快さを隠しもしない声で答えて身体を起こした。
「人がせっかく気持ちよく寝てるのに、何の用?」
「何の用、じゃねえよ!」
「ああもう、五月蝿いなあ」
心底面倒そうに立ち上がった彼の顔は、思わず背筋が竦むほどに冷酷だった。
「消えてくれる?」
ぞんざいな態度に、藤堂も怒りがこみ上げる。
「てめー…ふざけんじゃねえ!」
ぐっ、と沖田の襟を掴んだ。
「なに、喧嘩するつもり?よくわかんないけど受けて立つよ、正直君には…むかついてたしねっ!」
沖田も藤堂のワイシャツの襟を握り締めた。
――――――――――――――――――――
まだ酷い顔のままだけれど、いつまでも泣いているわけにはいかない。
春は一人、リスニングルームを出て二階に降りた。
―――沖田先輩に彼女ができたからって、わたしが妬もうと仕方ない。
もうどんな場面を見たって大丈夫、そう言い聞かせて日の照った渡り廊下へ足を踏み込んだ―――
その目に、信じられない光景が映った。
「平助くっ……沖田先輩!?」
鈍い音がして背を向けた藤堂の頬が殴られる。
沖田の口にも切れたような痕があった。
「二人とも、何して―――!」
叫ぶけれど、二人は聞こえていないようで殴りあい続ける。
春は教科書や筆箱を取り落として、気づけば走っていた。
「やめ…っやめてっ!」
そんなことを、傷つけるようなことをしてほしくなかった。
咄嗟に割り入ったのは藤堂の前。
「春…っ!?」
「……え…?」
ドスッ、という鈍い音が耳の奥で鳴り響いた。
「せんぱっ………」
どさり。
彼女は倒れた。
「春……っ?おい、春!!」
「春…ちゃん…?」
遠退く意識の中で見たのは、心配そうな彼の顔と近寄ってくるたくさんの足音。
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