カノジョ。
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「春ー!……って、あれ、春?」
休み時間になるなり、藤堂は借りていたノートを手に彼女の教室を訪れた。
廊下側の一番後ろの席はぽっかりと空いている。
きょろきょろと室内を見渡してみるけれど、探している人の姿はなかった。
「あっ、なあなあ春知らねえ?」
トイレか何処かから帰ってきたのだろう、ちょうど春の友達と鉢合わせて藤堂は訊いた。
すると、彼女たちは気まずそうに見合う。
「………なんか、あったのかよ」
その空気を察して、藤堂はやや厳しい声で問うた。
「……藤堂君ってさ、春と仲いいよね」
おずおずとその内の一人が口を開いた。
「え?ああ、まあな…」
「春の好きな人って、知ってる?」
藤堂は閉口する。
こうやって突き付けられると、事実からは目を背けられない。
自分だ、と自信をもって言えたらどんなに良かったか。
「………総司だろ」
ぼそり、呟いた。
同じ剣道部のひとつ上の先輩。
それには答えず、春の友達は俯いた。
「…その人がね、彼女つくったんだって。ずっと春にちょっかい出してたのに。それで……春、それ知って泣いちゃって……」
「……マジかよ……」
意外すぎた。
藤堂とて、沖田は春のことが好きなんだと思っていたから。
「……俺」
春のことは好きだった。
叶わないことだけど、付き合えたらとも思っていた。
でも。
なにより、笑っていてほしかった。
「総司んとこ行ってくる」
春のノートを手渡して、
藤堂は踵を返した。
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