カノジョ。
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「うそっ…!ちょっとアレどういうこと!?」
それは、別棟での英語のリスニング授業が終わったときの出来事だった。
ヘッドフォンを外した耳に入ってくる声に、自然と意識が向く。
「えー?沖田先輩、あの子と付き合ったってマジだったんだー!」
どきり、と心臓が跳ねた。
「え…?」
野次馬のように窓に群がる女の子たち。
それぞれに悔しがったり羨んだりしている。
春のことを知る友達は、何も言わず気遣わしげな目を春に向けた。
少しの間固唾を呑んでいた春は、皆が教室棟へ移動を始めた頃にようやく席を立って窓際を覗いた。
三階にあるこのリスニングルームからは、二階の屋上型になった渡り廊下が見える。
そこに、彼はいた。
―――隣に可愛い女の子を連れて。
それだけだったら嫌というほど見てきた景色で、別段驚きはしなかった。
けれど。
彼女は嬉しそうな笑顔でなにか言う。
沖田の顔は背を向けているから見えない。
そうして可愛らしく小首を傾げたとき―――
キス、する。
沖田が屈んだ途端春はばっと窓際から離れた。
「……春」
「ごめん…」
笑おうとした唇が、意に反して歪む。
ぽたりと涙が落ちた。
「…次の授業…っ、サボ、る、ね…」
教室へ戻るには、あの廊下を通らないといけない。
友達はそっと背中をさすってから、静かに教室を出ていった。
「っう…く……」
誰もいなくなった教室に、泣き声が響く。
ずっとずっと好きだった。
本当はからかわれても嬉しくて、毎日待ってた。
だけどこんなからかい方をするくらいなら、好きになんかさせないでほしかった。
「ひっく…ぅう…っ」
嫌いになろう、
思えば思うほどに、涙が止まらなかった。
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