カノジョ。
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ふらふらと、その日も廊下を歩いていた。
宛があったわけではないけれど、理由はないけれど、
君のこと一目でも見たくて。
「あっ、沖田先輩!」
「……おはよ」
「おはようの時間じゃないですよー」
いつも通りあっという間に囲まれてしまっても、正直聞こえていないし見えてもいない。
相槌をうつ合間に視線を外して、彼女の姿を探した。
「……あ」
ぴょこん、といつものドアから飛び出した、もう絶対見間違うことのない彼女を見つけて、沖田は口を開く。
名前を呼ぼうと口の形を変えた。
けれど。
「春!」
同じ発音を、自分のものではない声がなぞる。
「あ、平助くん!」
君の唇が、違う名前を呼ぶ。
「はい、これ」
「おおっ、さんきゅー!いつ返せばいい?」
「んー、明日まで待つよ」
「早えよ!せめて明後日…!」
「だーめ。遅れたらご飯奢りねっ」
「はーっ!?」
見たくない、
聞きたくない、
楽しそうな声。
「………いいけど」
苦笑も漏れた。
誰も知りはしない、小さな恋。
ただ羨ましかった、そんな風に笑いあってふざけあって、くだらない約束をして。
「……先輩?」
「僕さ」
そこに居るのが僕だったらって、思ったんだ。
「まどろっこしいの苦手なんだよね」
嘘。
一番まどろっこしいのは自分だった。
「何が言いたいの?」
彼女たちは示し合わせたように目配せする。
その中で、口を開いたのは、
可愛いその子だった。
「あの」
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