第一章 ドールショップ プティ・ロマラン
「皆〜!今日は皆に、プレゼントがあるのよ〜!!」
ローズマリーは、プレゼントの包みを抱えて屋根裏部屋のドアを勢いよく開いた。
ぬいぐるみ達はそれぞれ「ヌイ…。」「ちゅー!」「ふえぇ…」「ワウ」と、鳴きながら興味津々に近付いてくる。
大きなプレゼントの包みを皆に配る。
リボンを引いて開けてみると、そこには4体のぬいぐるみが入っていた。勿論、動かない普通のぬいぐるみだが。
「わあ、凄くかわいい!」
ルイベルは、星型のぬいぐるみを嬉しそうに手に取り、キラキラ瞳を輝かせている。
「ちゅうー!可愛過ぎて食べちゃいたいでちゅ!」
ちゅー子には、甘いキャンディーのぬいぐるみ。
すっかり気に入ったようにスリスリと頬擦りをしている。
「オレ…ゲーム…スキ…」
ゲーマーなウルフには、ゲームボーイの形をしたぬいぐるみ。
しかし、画面には「GAMEOVER」の文字があり、少しだけ顔をしかめてみせた。
「何なのよ……コイツ。」
ヌイ子には、お魚の形をしたぬいぐるみ。
じっと眺めた後、べしっ。と床に叩きつけた。
「うふふふ……♡皆に気に入って貰えて……私、最高に幸せよ……♪」
ローズマリーは、そんな皆を眺めて恍惚としながら幸せそうに両手で頬を抑えていた。
何はともあれ、皆、ぬいぐるみが気に入ったようで声を合わせて「ありがとう、ローズマリー!」と言った。
ヌイ子だけは、お魚ぬいを抱き締めてそっぽを向いていたが。
「もう、ヌイ子さんってばツンデレなんだから♡」
むぎゅう。
「わ、ちょっと、やめなさい。」
ローズマリーはぎゅ〜っとヌイ子を抱きしめたが、頬にぬこパンチを食らってしまった。
今朝見た悪夢への不安が、嘘のように消えていく。
こんな暖かく幸せな時間が、永遠に続けばいい……そう思った矢先の事だった。
ドールショップのインターホンが鳴ったのだ。
誰だろうか。今日は定休日だと言うのに。
「……はぁ〜い、今出ます。……あ、ヌイ子さん達はぬいぐるみで遊んでてね♪」
ぱたんとドアを閉め、玄関へと向かうローズマリー。
屋根裏部屋に取り残されたドール達は、引き続きぬいぐるみで遊びながらも、日頃から感じていたあるひとつの疑問が浮かんでいた。
「……ねぇ。私たちって……どうして生きてるのかしら?」
ヌイ子がお魚ぬいぐるみをすいすい手で泳がせながら、ぽつりと一言。
「本来なら……私たちだって、このぬいぐるみ達みたいに動かないはずじゃない?」
ルイベルがその言葉に賛同する。
「……うん、そうだよね。僕も、何となく疑問に思ってた。よく考えてみれば、ぬいぐるみの僕達がこうして生きているのって本当に不思議な事なんだよね。」
ちゅー子がキャンディぬいぐるみを天井へ放り投げて、
「ちゅー子も、お姉ちゃん達と同じ気持ちでちゅー!」
ウルフがゲームボーイぬいぐるみに馬乗りになってポコポコ叩きながら首を捻る。
「オレタチ、ヌイグルミ。デモイキテル。ナゼ?」
その謎は、ドール職人のローズマリーに聞いてみれば分かるのだろうか?
一方、店の前では。
「あのっ…、初めまして、僕、ロイド・ベネットって言います。……このぬいぐるみを探しているのですか、心当たり……ありませんか?」
定休日に現れた、突然の来訪者。
そこには、大人しそうな半ズボンの小さな少年が立っていた。何やら、探し物を書いた紙を差し出してくる。
ローズマリーはその紙を受け取った瞬間、凍りついた。
「ジャックっていう、テディベア、なんです……。ワインレッドのリボンを付けた、茶色の子で……。」
「……あらあら、ごめんなさいね。そんな子は知らないわ。」
そう言って、紙を少年に返す。
ロイドは、残念そうにしゅん……と俯くとお辞儀をして去っていった。
例え、元の持ち主だろうとジャックを手渡す訳にはいかない。
そうしなければならない理由が、ローズマリーにはあった。
その夜。
ドール達が寝静まった事を確認し、ローズマリーは地下室へ向かった。
すると、テディベアのジャックが待ちかねた様子で棚の奥からひょこりと出てくる。
「クマ〜〜〜〜〜!!!!待ってたクマよ!!!まったく、プティ・ロマランの裏店長、ジャックを待たせるとはいい度胸クマね!!!!」
「………。やめたら?そのあざとい演技。」
愉快におどけてみせるジャックに、ローズマリーの鋭いツッコミが刺さる。
すると、ジャックはスンッと冷めた態度に戻って言った。
「フン……いいだろう、たまには。可愛らしいテディベアらしく振る舞うのも。……さぁ、儀式を始めるぞ」
「えぇ、お願いね。ジャック。」
今夜も、1人と1匹の「儀式」が始まる。
禍々しい黒い霧のようなオーラが現れ、部屋全体を包み込む。
ジャックが呪文を唱えると、ローズマリーの胸元から寿命エネルギーが吸い出されていく。
「うぅっ……くっ……」
ローズマリーは苦痛の表情を浮かべるが、必死で耐えた。これも、あの子達の為なのだから。
やがて、ジャックはエネルギーを吸い終えると、満足そうに舌舐りをして怪しげな笑みを浮かべた。
「こ、れで……あの子達を生かし続けてくれる、のよね……?」
ローズマリーは膝から崩れ落ち、床に手を付きながら苦しそうに息をする。
「あぁ、当然だ。その代わりに、この儀式はこれからも続けさせてもらうからな」
ヌイ子達、動くドール達が生きていられる理由。
それは、悪魔のテディベア・ジャックがローズマリーの寿命エネルギーを奪い、ドール達に与えていたからだった。
ドールショップの平和で幸せな日々は、悪魔の契約の元に成り立っていたのだ。
それでもローズマリーは、幸せだった。
あの子達との日々が続くなら、何を犠牲にしたっていい。
そう本気で願うほど、ドール達の事を愛しているのだ。
この日々を続けるためには、この秘密はドール達にも、……今日現れたロイドという少年にも、絶対に知られてはならない。
屋根裏部屋で眠るドール達は、そんな事を知らずにすやすやと寝息を立てていた。
ローズマリーは、プレゼントの包みを抱えて屋根裏部屋のドアを勢いよく開いた。
ぬいぐるみ達はそれぞれ「ヌイ…。」「ちゅー!」「ふえぇ…」「ワウ」と、鳴きながら興味津々に近付いてくる。
大きなプレゼントの包みを皆に配る。
リボンを引いて開けてみると、そこには4体のぬいぐるみが入っていた。勿論、動かない普通のぬいぐるみだが。
「わあ、凄くかわいい!」
ルイベルは、星型のぬいぐるみを嬉しそうに手に取り、キラキラ瞳を輝かせている。
「ちゅうー!可愛過ぎて食べちゃいたいでちゅ!」
ちゅー子には、甘いキャンディーのぬいぐるみ。
すっかり気に入ったようにスリスリと頬擦りをしている。
「オレ…ゲーム…スキ…」
ゲーマーなウルフには、ゲームボーイの形をしたぬいぐるみ。
しかし、画面には「GAMEOVER」の文字があり、少しだけ顔をしかめてみせた。
「何なのよ……コイツ。」
ヌイ子には、お魚の形をしたぬいぐるみ。
じっと眺めた後、べしっ。と床に叩きつけた。
「うふふふ……♡皆に気に入って貰えて……私、最高に幸せよ……♪」
ローズマリーは、そんな皆を眺めて恍惚としながら幸せそうに両手で頬を抑えていた。
何はともあれ、皆、ぬいぐるみが気に入ったようで声を合わせて「ありがとう、ローズマリー!」と言った。
ヌイ子だけは、お魚ぬいを抱き締めてそっぽを向いていたが。
「もう、ヌイ子さんってばツンデレなんだから♡」
むぎゅう。
「わ、ちょっと、やめなさい。」
ローズマリーはぎゅ〜っとヌイ子を抱きしめたが、頬にぬこパンチを食らってしまった。
今朝見た悪夢への不安が、嘘のように消えていく。
こんな暖かく幸せな時間が、永遠に続けばいい……そう思った矢先の事だった。
ドールショップのインターホンが鳴ったのだ。
誰だろうか。今日は定休日だと言うのに。
「……はぁ〜い、今出ます。……あ、ヌイ子さん達はぬいぐるみで遊んでてね♪」
ぱたんとドアを閉め、玄関へと向かうローズマリー。
屋根裏部屋に取り残されたドール達は、引き続きぬいぐるみで遊びながらも、日頃から感じていたあるひとつの疑問が浮かんでいた。
「……ねぇ。私たちって……どうして生きてるのかしら?」
ヌイ子がお魚ぬいぐるみをすいすい手で泳がせながら、ぽつりと一言。
「本来なら……私たちだって、このぬいぐるみ達みたいに動かないはずじゃない?」
ルイベルがその言葉に賛同する。
「……うん、そうだよね。僕も、何となく疑問に思ってた。よく考えてみれば、ぬいぐるみの僕達がこうして生きているのって本当に不思議な事なんだよね。」
ちゅー子がキャンディぬいぐるみを天井へ放り投げて、
「ちゅー子も、お姉ちゃん達と同じ気持ちでちゅー!」
ウルフがゲームボーイぬいぐるみに馬乗りになってポコポコ叩きながら首を捻る。
「オレタチ、ヌイグルミ。デモイキテル。ナゼ?」
その謎は、ドール職人のローズマリーに聞いてみれば分かるのだろうか?
一方、店の前では。
「あのっ…、初めまして、僕、ロイド・ベネットって言います。……このぬいぐるみを探しているのですか、心当たり……ありませんか?」
定休日に現れた、突然の来訪者。
そこには、大人しそうな半ズボンの小さな少年が立っていた。何やら、探し物を書いた紙を差し出してくる。
ローズマリーはその紙を受け取った瞬間、凍りついた。
「ジャックっていう、テディベア、なんです……。ワインレッドのリボンを付けた、茶色の子で……。」
「……あらあら、ごめんなさいね。そんな子は知らないわ。」
そう言って、紙を少年に返す。
ロイドは、残念そうにしゅん……と俯くとお辞儀をして去っていった。
例え、元の持ち主だろうとジャックを手渡す訳にはいかない。
そうしなければならない理由が、ローズマリーにはあった。
その夜。
ドール達が寝静まった事を確認し、ローズマリーは地下室へ向かった。
すると、テディベアのジャックが待ちかねた様子で棚の奥からひょこりと出てくる。
「クマ〜〜〜〜〜!!!!待ってたクマよ!!!まったく、プティ・ロマランの裏店長、ジャックを待たせるとはいい度胸クマね!!!!」
「………。やめたら?そのあざとい演技。」
愉快におどけてみせるジャックに、ローズマリーの鋭いツッコミが刺さる。
すると、ジャックはスンッと冷めた態度に戻って言った。
「フン……いいだろう、たまには。可愛らしいテディベアらしく振る舞うのも。……さぁ、儀式を始めるぞ」
「えぇ、お願いね。ジャック。」
今夜も、1人と1匹の「儀式」が始まる。
禍々しい黒い霧のようなオーラが現れ、部屋全体を包み込む。
ジャックが呪文を唱えると、ローズマリーの胸元から寿命エネルギーが吸い出されていく。
「うぅっ……くっ……」
ローズマリーは苦痛の表情を浮かべるが、必死で耐えた。これも、あの子達の為なのだから。
やがて、ジャックはエネルギーを吸い終えると、満足そうに舌舐りをして怪しげな笑みを浮かべた。
「こ、れで……あの子達を生かし続けてくれる、のよね……?」
ローズマリーは膝から崩れ落ち、床に手を付きながら苦しそうに息をする。
「あぁ、当然だ。その代わりに、この儀式はこれからも続けさせてもらうからな」
ヌイ子達、動くドール達が生きていられる理由。
それは、悪魔のテディベア・ジャックがローズマリーの寿命エネルギーを奪い、ドール達に与えていたからだった。
ドールショップの平和で幸せな日々は、悪魔の契約の元に成り立っていたのだ。
それでもローズマリーは、幸せだった。
あの子達との日々が続くなら、何を犠牲にしたっていい。
そう本気で願うほど、ドール達の事を愛しているのだ。
この日々を続けるためには、この秘密はドール達にも、……今日現れたロイドという少年にも、絶対に知られてはならない。
屋根裏部屋で眠るドール達は、そんな事を知らずにすやすやと寝息を立てていた。
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