デフォルトはミョウジナマエです
プロローグ
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プロローグ
どこまでも深く、冷たい水底へ沈んでいくようだった。
凍てつくような暗闇の中で、俺は遠のいていく自らの心音を聞いていた。
トク、トク、と。
弱々しく、今にも消え入りそうな、頼りない脈拍。
指先から熱が零れ落ち、意識が白く濁っていく。
自分には息をする資格すらないのだ、と。
このまま鼓動が止まってしまえば、彼らの元へ行けるのだろうか、と。
無意識に虚空へ伸ばした手は、いつも通り空を切るだけのはずだった。
——けれど。
不意に、ひとつの柔らかな温もりが、俺の手を強く握りしめた。
それは驚くほど小さくて、折れてしまいそうな手のひらだった。
触れた肌から伝わるのは、激しく、ひたむきな鼓動。
微睡みに囚われていた俺の命を、強引なまでに現世へと繋ぎ止めようとする、確かな熱。
その熱は、水面に差し込む一筋の光のように鮮烈で。
鼓膜を震わせる穏やかな声は、凍りついていた俺の時間を優しく溶かすように響いた。
あの日、あの脈拍に触れてしまったから。
俺はもう、お前がいない世界では、息をすることさえできない。
思い返す度、酷く胸が締め付けられて。
どうしようもなくお前が愛おしいと、この命のすべてで乞うてしまうのだ。
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