第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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光のほこらを目指す一行だったが、とあるものに邪魔をされ進行が停滞していた。
「お前ら!あれは〈ホロウ〉だ!」
「「「…!!」」」
修羅の一言で全員の体が強張る。
そして覚悟の眼をしたスノウと修羅がそれぞれに武器を構えたとき、ジューダスがスノウに向かって叫んだ。
「スノウ!! 来いっ!」
「っ、」
しかしスノウの目には迷いが見えていた。
その間にも修羅は武器を持ち、果敢にも一人〈ホロウ〉へと挑んでいく。
ジューダスが手を差し伸べスノウの瞳に力強く頷けば、銃杖を構えていたスノウは僅かに銃杖の持つ手を強める。
そして、スノウは神の間でのことを思い出していた。
「……どうなっても、知らないよっ!?」
「僕はこんな所で死なない。死ぬ訳にはいかないからな!!」
「___彼の者に強き光を与えよ、シャープネス!!」
ジューダスの覚悟を聞き届けたスノウ。
そして、その苦渋の選択をしたスノウは苦しそうに詠唱を放った。
味方一人の攻撃力を上げる支援術〈シャープネス〉。
それを受けたジューダスがシャルティエではなく、前から使っていたレイピアを構え果敢に〈ホロウ〉へと挑んで行った。
それに仲間達が息を呑んで行方を見守る。
「千裂虚光閃!」
「っ!?」
横目でジューダスを見ていた修羅が目を見張る。
それもそうだ。
今まで〈星詠み人〉ではない人間が、〈ロストウイルス〉に攻撃出来たことなど一度もなかったからだ。
攻撃出来たことに満足したのか、ジューダスがハッと笑い次々と敵をいなしていく。
「スノウ、やめろ!!あいつらを殺す気か!?」
「…っ。」
ジューダスが敵を倒していく間に修羅が事の顛末を瞬時に理解しスノウへと叫ぶ。
もしかしたら自分達と同じ様に、彼らにも危害が加わるかもしれない。彼もそう思ったのだ。
「ふん。これくらいの敵なら誰も遅れをとるまい。」
「スノウ、思い出せ。〈星詠み人〉が〈ロストウイルス〉に感染したら最期どうなったのか。」
二人の視線がスノウに向かう。その間にも敵は修羅を狙い攻撃していた。
修羅はそれを躱しながら更に真剣な表情でスノウを見つめ、言い連ねた。
「あいつらも俺達と同じ運命を辿らせるつもりか?」
「それは、」
「〈ロストウイルス〉はまだ未知数なことが多い。リスクを増やすよりは俺達だけでやった方がマシだ。」
修羅の意見も最もだ。
だが、それに喰いついたのはやはり彼と仲の悪いジューダスだった。
「お前こそスノウを巻き込むな。これはお前らだけの問題じゃないんだぞ。」
「攻撃出来たからって、分かった口を…。」
「あいつらが自然の物に感染したら、それこそ僕らだって危ないかもしれない。そうなるなら早い所、解決策を増やしていく方が効率が良い。何故それが分からん。」
「これは〈星詠み人〉の問題だ。あんたが口出ししていい件じゃないんだよ!!」
遂に喧嘩が始まりそうな二人に、ロニ達があちゃーと頭に手を置いた。
カイルが慌てて二人を止めに入り、それでも止まらなさそうな雰囲気に一度考えることを放棄したスノウが周りを見た。
少なくとも、まだ〈ホロウ〉の数は沢山いるようだ。
「___ブースト。」
懐から小さな銃を出し、こめかみに当てると遠慮なく頭を撃ち抜いた。
乾いた弾丸の音が響き、仲間達が今度は慌ててスノウを見る。
そこには体に光を纏ったスノウがいて、その右目は僅かに光源を灯していた。
「___時計よ、逆さに刻め…アンチクロックワイズ。」
時計の針の音が聞こえたと思った瞬間、周りにいたはずの〈ホロウ〉達がいなくなっていたことに仲間達が気付く。
そしていつの間にかスノウが眼帯を外しており、丁度着けようとしているのを見て、全員が何が起こったか分からないまま首を傾げた。
「あ、あれ?敵は?」
カイルが慌てたように周りを見るが、やはりそこには〈ホロウ〉の姿が一匹も見えない。
あんなにもさっきまで其処ら辺でうじゃうじゃいたのに、だ。
肝心のスノウの体も光を点していたはずなのに、今はそれがない。
「……スノウの新しい技か?」
修羅が感心したようにそう言えば、聞こえていたスノウが笑ってそれに頷く。
「マナに余裕が無いと出来ないんだ。所謂、私の秘奥義…ってやつかな?」
意地悪そうな顔をして笑ったスノウに、リアラやナナリーが駆け寄っていく。
そして3人でじゃれつくのを見て仲間達の間にようやく安息の空気が戻ってくる。
「ねぇ!どういう技なの?教えて、スノウ。」
「皆には一瞬で片がついた様に見えたと思うけど、実はあの短時間で〈ホロウ〉を一体一体攻撃して倒してるんだ。」
「そんな事が可能なのかい?」
「時を戻すアンチクロックワイズ…。私は時を遡行していたけれど、術が切れた瞬間時は戻る。つまり〈ホロウ〉を倒した時の時間だけを戻した、と言う訳だね。だから皆には一瞬だったんだよ。」
「すごいわ!スノウ!」
「ははっ。ありがとう、二人とも。」
眼帯をつけながらスノウが笑ってお礼を言う。
女性陣がキャッキャ言っている間にも、男性陣は感心したような声でスノウを見ていた。
「秘奥義か…。そんなのあったな。」
「すごいじゃん!スノウ!いつの間にあんなの覚えてたの?!」
「すげぇけど、あれってスノウ自体に影響とかねぇのかよ?」
ロニのその言葉に男性陣はしんと静まり返った。
言われてみれば時を遡行してるならば、通常の人間からすると普通何かしら反動があっても良さそうだが…?
「……あいつ…。」
わなわなと肩を震わせて怒りを示したジューダスに男性陣がため息をついた。
また喧嘩が別で始まりそうな予感がしていたからだ。
今回ばかりはジューダスの味方なのか、修羅もやれやれと首を振ったきり何も言わない。
ズンズンと進んでいくジューダスの背中を誰もが黙って見送る。
そしてそれぞれが心の中で謝った。
「「「(スノウ…ごめん。)」」」
次の瞬間、ジューダスの雷が落ち、そして拳骨もスノウの頭に落ちたのを見て仲間達は遠い目をしたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いててて……」
「ふん。反省しろ、馬鹿が。」
頭を押えながらスノウが涙目で殴られた頭を見る。
「レディの愛が痛いよ…。」
「分かったなら今後やるな。」
「あの技、私には影響ないんだって。」
「はっ!どうだか。」
「信用がないなぁ?」
「自分の今までの行動をよーく振り返るんだな。」
まだ怒っている様子のジューダスに、横ではスノウがそれを見て苦笑いしながら自分の頭を撫でる。
……これは大きなタンコブが出来たかもしれない。
「…。」
チラッと見たシャルティエはやはり未だ反応は無い様子で、気付かれないように溜息をついたはずだったが、ジューダスにはバレバレだったようだ。
「こいつの事か?」
「なに?君はもしかしてエスパーなのかな?」
「何を訳の分からないことを。」
そう言ってジューダスがシャルティエを取り出したが何も反応は無かった。
「(いや…。もう少しでハロルド博士の所に行くんだ。その時に見てもらえば…)……って。あ…」
歩いていた足を止め、呆然と何かに気付いたようにスノウが声を上げる。
それにジューダスも立ち止まり、眉間に皺を寄せながらスノウを振り返る。
「(やばい……。もう少しで本物の時間遡行のお時間だった……。)」
忘れかけていた事実にスノウは頭を悩ませる。
さっき神に聞いておけばよかった。と後悔してももう遅い。
スノウは頭を抱え、首を振ると余計にジューダスの眉間が大変なことになっていく。
「今度は何だ。」
「…すぅ……。まぁ、……ね?」
未来を言えない今の状況がスノウを困らせる。
視線を逸らせたスノウにジューダスがスノウの頬を遠慮なく摘み、そして横に引っ張った。
「いひゃいよ、れひぃ。」
「またいつもの様に黙って悩んで…。そんなに僕が頼りないか。」
パチンと音がなりそうなくらい、急に手を離すものだからスノウが反射的に手を頬に当てる。
そして若干恨めしそうにジューダスを見て、渋々とスノウが口を開き始めた。
「……次行く所に、もしレンズがあったとしよう。」
痛みに頬を撫でながらジューダスを見るスノウは謎かけのような言葉を使う。
「では君達は次に何をする?」
「歴史を元に戻すんだろう?大昔の歴史を変えられたようだからな。………………あ。」
ジューダスも思い出したかのように呆然と声を上げる。
そしてその眉間は大層シワが寄ったのを見て、スノウが「ほらね。」と声を上げる。
「時間遡行か。」
「うん。そうなんだよね。…………あーあ、レディとはもう会えないかもしれない。見納めだね。」
「叩かれたいか?」
「暴力反対。」
サッと身構えたスノウにジューダスが鼻を鳴らす。
しかし、そんなことにかまけている場合では無いのかもしれない。
時空を超える時、大体スノウだけはいつも違う場所や時間に飛ばされては大問題になるのだ。
1回目は砂漠のど真ん中に飛ばされ体力の限界を迎えていたし、2回目はあまりにもお早い着きでジューダス達を颯爽と助けに来て精霊と契約をした。(そしてマナ切れで倒れた)
3回目の今回は果たしてどうなることやら。
「…どうにかならんのか。」
「どうにかなってたらこんなに悩まないよ。」
はあとダイクロフトを仰ぎ見たスノウは、未来に想い馳せ、そして目を閉じた。
ジューダスも何かないか、と口元に手を当て悩んでいた。
「……時間遡行か。こればかりはどうしようもない、か…。」
「そうだと思う。……。」
ちらりとスノウがジューダスの手を見る。
手を繋いでいても意味はないが、それでも気休めに何か欲しい。
「念のため、その時が来たらまた手を繋いでもらえないかい?レディ。」
「ふん、そんなことで直るとも思えんが…。まぁ、手ぐらい幾らでも貸してやる。」
それに嬉しそうに顔を綻ばせたスノウに、僅かにジューダスの頬が赤くなる。
明らかに照れていると分かっているから、ジューダスの性格も知ってるスノウはそのまま笑うだけに留めておいた。
遅れを取っているジューダス達はカイル達に追いつくように同じタイミングで走り出した。
二人のその胸内には、それぞれ来たるべき未来のことを思い描いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇
___光のほこら
「ここだね。ダイクロフトに向かう魔方陣って。」
カイルがいつになく神妙にそう言うものだから、仲間達も自然と緊張感が出る。
目の前にはダイクロフトへ上がるための設備が整えられており、その前に男性が一人見張り番をしていた。
その男性はこちらを見るなり警戒して武器の持つ手を強めた。
「止まれ。何だお前たちは。ここに来ていいのはエルレイン様に登城を認められたものだけだぞ。すぐに引き返して───っておい!!」
男性の言葉を無視してカイルが先に進み、仲間達も無言でそれについていった。
修羅とスノウも苦笑いで男性の横を通り、魔方陣の中心に向かった。
途中で気付いた男性だったが、時は既に遅い。
カイルが大きな声で上へ向かって叫んだ。
「聞こえているんだろう、エルレイン!!オレ達は逃げも隠れもしない!ダイクロフトまで連れていけ!」
「…やはり来ましたね。いいでしょう、あなた方の望み通りに…。」
エルレインの声が頭上から聞こえたと思ったら、魔方陣が光り出し、そして見張りの男性も驚いたような声を上げた。
そしてスノウ達は光に包まれ、天空にそびえるダイクロフトへと侵入したのだった。
「ここが…天空都市ダイクロフト…?」
「敵を招き入れるとは大した自信だな。それとも俺たちをナメてるのか?」
カイルが辺りを見渡し、そう呟くとロニも先ほどのエルレインの言葉に気に喰わなさそうに口を尖らせていた。
修羅は物珍しそうに辺りを見て一言。
「というより、下を見たらヤバい奴だな。」
「……。」
その言葉で最年長がガタガタと体を震わせる。
先程の「ナメてるのか」という発言が嘘のように一気に顔を青ざめさせていく。
それに修羅と海琉以外の全員が溜息を吐いた。
「…アンタ、やっぱり高いところ苦手なんじゃないのかい?」
「そ、そそそそそんなわけ、ないだろ…!!」
「は?あんた、高所恐怖症だったのか?」
修羅が驚いたように声をあげれば、ロニがそれに反抗するように全否定する。
しかし彼の体は一向に震えが止まる気配もない。
呆れたように肩を竦めた修羅だったが、すぐにその表情を引き締めさせ武器を手に取った。
修羅の行動に全員が視線の先を見ると白髪の老人がこちらに近付いてきていた。
「(ダンタリオンか…。確か弱点は無しで防御力が高い…。衰弱効果のある攻撃をしてくる厄介な敵だったはずだ。)」
「誰だ!?」
カイルが叫び、老人はそれに表情を変えることなく答える。
「我が名はダンタリオン。エルレイン様の理想に賛同する者です。無理を承知でお願いします。……カイルさま、ここはお引き取り下さい。」
「…それは出来ない。オレ達はどうしてもエルレインに会わなくちゃいけないんだ。それを邪魔するっていうなら、…おまえを倒す!」
「二つの道は交わらず、という事ですか…。ならば私も自らの理想に従いましょう。エルレイン様の理想に…!!」
そしてダンタリオンが武器を構えると何処からともなくセージがやってくる。
「彼を…誰もエルレイン様に近づけさせるなっ!!!」
ダンタリオンが叫ぶとセージも近くに居たナナリーやロニへと攻撃を開始する。
それを見たスノウが全員に向かって叫んだ。
「周りのセージは弱い!先にそっちを片そう!!」
「「「了解!!」」」
「状態異常は私に任せてくれ!だから皆、攻撃の手を緩めず攻撃してくれ!」
「「分かったわ!/分かったよ!!」」
ダンタリオンが詠唱を唱え始め、地面に橙色の魔方陣が現れる。
それを避ける様に前衛組が後退して、敵のエアプレッシャーが炸裂したので無傷で全員がダンタリオンへと向かっていく。
ナナリーとリアラは弓使いのセージを先に攻撃するようだったのでスノウも銃杖を手に後衛に回る。
「___行くよ。弱点は闇……ブラッディハウリング!」
黒き呪いの咆哮を呼び出す中級術技〈ブラッディハウリング〉が炸裂し、セージが勢いを弱める。
そこへ詠唱を唱えていた二人がセージを倒しにかかり、決着をつける。
後衛組もダンタリオンへと標的を変え攻撃をするが、向こうの方が先にスピリッツブラスターを使ってしまう。
「エルレイン様には近付けさせないぞ!!シャイニングスピア!!!」
「うわぁ!!」
「ぐっ…!!」
無敵状態のダンタリオンに前衛組の勢いが弱まる。
それに追撃するようにダンタリオンが後衛組へと晶術を使う。
「フィアフルストーム!!」
「きゃあああ!!」
「うあああ!!」
FOE「ウィズダムロッド」で知性が上がり、術の詠唱速度も劇的に早くなり発動阻止がほぼ出来なくなる為、スピリッツブラスター無しでもかなり厄介である。
その上、ダンタリオンは防御が高く並の攻撃では歯が立たなかった。
「っ、____ディスペルキュア!!」
衰弱効果のある攻撃をされ、前衛組が弱ってしまっているところにスノウの支援が飛ぶ。
状態異常を回復しつつも体力も回復し、前衛組だけでなく後衛組からもお礼が飛び交う。
「なるほど、彼女が司令塔ですか…。」
ダンタリオンはそう言うと目標をすぐにスノウへと変え、持ち前の槍をスノウに向けて唸らせる。
すぐに反応し、避けたスノウだったが片目での戦闘が慣れず反応が若干遅くなる。
武器を相棒に持ち替え、すぐに攻撃を開始するスノウ。
そして持ち前の魔法弾をダンタリオンへと撃つ。
「痺れなよ!」
発砲の音がしたが、ダンタリオンがそれを避け攻撃を仕掛ける。
スノウも負けじとそれを避けると、相棒ではなく蹴りでダンタリオンの腹部へと攻撃し強制的に距離を開けた。
「(アーチシェイド!)」
無言詠唱で下級の魔法を使い、敵を牽制させる。
縦長の弧を描くように闇の歪みを発生させ、敵を引き裂く魔法を距離を開けたことで回避した敵。とそこへ、修羅とジューダスが助けに入る。
「神風閃!」
「双連撃!」
高速剣技を得意とする修羅が高速技で敵を圧倒し、その間にジューダスが後方から強めの攻撃を仕掛ける。
その間にスノウが詠唱を開始する。
「___死の叫びよ、絶望の歌を。ディザスターロア!」
闇属性の上級魔法で、絶望の咆哮が敵に向かって走り去る。その威力は防御の固い敵でもガードが崩れるほどである。
流石に三人からの攻撃には耐えられなかったダンタリオンがガードを崩すとそこにカイルの秘奥義〈裂衝蒼破塵〉が発動する。
「──────エルレイン様…。」
ダンタリオンが最後の言葉を吐き、倒れる。
乱れた息を全員が整えながら、武器を仕舞いお互いに怪我がないか無事を確認しあった。
「大丈夫、皆?!」
「流石に…衰弱の状態異常を受け続けるのは初めてだぜ…。」
ロニが息を切らしながらしゃがみこむ。
それを見たスノウが詠唱を唱えた。
「___揺れよ、癒しの水面。ディスペルキュア。」
状態異常と体力が回復し、ロニが立ちあがり礼を言う。
他に怪我人が居ないのを確認したカイルが表情を引き締め、先を見据えた。
「行こう、皆。」
「「おう/うん」」
そして、カイルのその言葉に皆が歩き始めようとしたそのとき…。
「あ~~っ?!!」
カイルが突如として叫ぶ。
それに全員が思わず立ち止まり、カイルを見た。
こんな時にどうした、とスノウと修羅も怪訝な顔で見るとカイルは怒ったような顔で道具袋を覗いていた。
「どうした、カイル!何か大事件でも起きたのか?!」
「オレが後で食べようと思ってとっておいたオヤツがな~い!!」
「「「「……。」」」」
「…ぷっ。」
聞いたことのある台詞に思わず顔を背け、スノウが笑う。
他の皆は呆れた顔でカイルを見ていた。
「お前…いちいちそんなことで大騒ぎするなよな。」
「そんな事って…。…あーっ!ロニが食べたんだな!?」
「何で俺が!」
「私も知らないわ…。」
「ふふ…、ふふっふ…。」
「ちょっとスノウ!!笑い事じゃないって!!」
「お前、なんでスノウは疑わないんだよ!」
「だってスノウがやるはずないじゃん。一番怪しいのはロニだからね?」
最早カイルの顔を見られないスノウが反対を向いて笑いを堪えようと必死になっているのを見て、修羅が納得した。
__あぁ、これはゲームであった話なのか、と。
「(これ、確か犯人はジューダスだったはずなんだけど…。そんなことするかなぁ?)」
笑いを堪えつつカイル達の話に聞き耳を立てた。
「ちっ。疑われちゃ仕方ねえ。ここはこの名探偵ロニに任せとけ!」
「ロニが一番うさんくさいんだけど…。」
「ズバリ!犯人はこの中に居る…!」
「当たり前じゃないか。他に誰が居るってんだい?」
「ふっ、くっく…!」
「スノウ…ちょっと落ち着けって…。」
修羅が背中を撫でてくれるが笑いが止まりそうにない。
憐憫の視線を向けて、修羅も推理に参加する。
「……何時から無かったんだ?」
「さっき気付いたんだよ。これからエルレインの所に向かうから取り敢えず軽く胃に入れとこうと思ったのに!」
「…すげえな。食い意地が…。どっかの誰かさんみたいにな…。」
修羅の視線は横にいる海琉に向けられた。
海琉が何のこと、と言わんばかりに首を傾げたのを見て修羅も何でもないと返した。
「こほん。推理は最後まで聞きたまえ。犯人はずばり、カイルの事を愛して愛してやまなかったんだ。それでイケナイと思いつつもカイルの温もりを感じるためオヤツに…。」
「「「「「…。」」」」」
「あれ?」
思わず声に出したスノウに視線が向けられる。
しかしスノウの視線はジューダスに向かっており、その視線を辿る様に全員がジューダスを見た。
「…何を期待してるか知らんが、僕じゃないぞ。」
「え、そうなのかい?」
「僕がそんな幼稚ことするはずないだろう?」
「(あれー…?ということは誰だ?)」
誰もが首を傾げたその時、海琉が徐に手を上げる。
「……それって、もしかしてこれ?」
「あ~~~っ?!!それ!!」
海琉が手に持っていたビスケットを持ち上げる。
そしてそのまま口に入れたのを見てカイルが慌ててそれを取り返そうと走り寄っていった。
「「「……。」」」
「…で?カイルの事を愛して愛してやまない…なんだって?」
「ま、見つかったからいいじゃねぇか。」
「流石、迷探偵だね?」
「お前、人のこと言えないからな?…後で覚えてろよ。」
「げ、」
ジューダスだと完全に思ってたから視線を向けたのバレてる。
そんなことを思いながら苦笑いでスノウがその場を乗り切った。