第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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「本当、スノウが治って良かったよー…。」
カイルが心底安心した声でそう話すのをスノウが嬉しそうに聞き入れる。
お礼を言うのを忘れずにスノウからそう伝えれば「本当の事だから」とお返しの言葉が来て、スノウが更に嬉しそうに微笑む。
「眼帯付けないといけないなんて、お前……本当最初から災難続きだよなぁ?声だって、髪だってよ?」
ロニが呆れた声でそう言えば、心配してくれているのが分かってるスノウが笑顔でそれを受け止める。
皆の優しい言葉がスノウには嬉しくて堪らないのだ。
「左眼に眼帯つけて、戦闘は大丈夫なのか?」
「そこなんだよねぇ…?初めて眼帯とかつけるからどうかなって。」
「元々あの考古学者の格好をしていた時に視力の合ってない眼鏡を掛けていただろうが。」
「……確かに。それもそうか。という事は、今の私なら玄に負かされてしまう訳だ。」
「おいおい、物騒だな。」
修羅がスノウの隣で顔を顰めさせる。
それを海琉が見上げて顔を傾げていた。
「……その時は左目の眼帯を外せばいいだろう?」
「でも彼も結局〈赤眼の蜘蛛〉の組織員な訳だし、戦ってるうちにマナが入り込んでこないかな?多少は大丈夫だって言われたけど…。」
「ふん。忘れたのか?僕が何故こいつにこんな物を着けているのか。」
シャルティエに着いた鈴を軽く叩けば、スノウが納得したように頷く。
簡単に詳細を聞いていた修羅も納得の表情を浮かべた。
「……と、いうより。随分前からシャルティエが静かだね?いつも、喋りかけてくれるのに。」
「寝てるんじゃないのか?」
「たまには静かになっていいじゃないか。」
『……。』
「「……?」」
いつもならジューダスの皮肉にツッコミを入れるシャルティエも、今は何故か黙り込んでいた。
それに怪訝な顔をしたスノウとジューダス。
ジューダスがシャルティエを取り出せば、コアクリスタルは光り輝いておらず沈黙したままだ。
「本当に寝ているのか。」
「……。(そんな事、有り得るだろうか…?あのシャルティエが喋れるようになった途端口を閉ざすなんて…。)」
もう仲間達にはジューダスがリオンだとバレている為に腰に下げているシャルティエ。
そして前世から一緒だったスノウには、それが“おかしい”状態だと勘づいてしまう。
「……ごめん、ジューダス。ちょっと見せてもらっていいかな?」
「あぁ。」
素直に渡してくれるジューダスにお礼を言いつつシャルティエを預かる。
コアクリスタル部分を注意深く見るが、シャルティエが話しかけてくることも無ければ、コアクリスタルが光り輝くことも無かった。
「……おかしい。」
「……確かにな。」
「…?」
この時代で……というより物語の途中でシャルティエの不具合なんて無かったはずなのだ。
そう考えていた二人はお互いに顔を見合わせる。
「お前、遂にコアクリスタルを下にして落としたのか?」
「そんな事あるはずないだろう。」
「シャルティエ。返事をしてくれ。」
『…………。』
コアクリスタルがビクともしない。
流石にジューダスも怪訝な顔でシャルティエを見遣る。
「……。」
物語が変わりつつある。
この後、シャルティエには重要な役目があるというのに。
「……修羅。」
「あぁ。……本格的にまずい事になってきたな。」
「……。」
お互いを見遣る二人を横目に、ジューダスがシャルティエを改めて見る。
コアクリスタルには傷がひとつも無いのに、何故だ?
そのコアクリスタルに何かあれば支障が出るはずのソーディアンが今再起不能とは…?
「道すがら起きるかもしれん。放っておけ。」
「……それならいいけどね。」
シャルティエを心配そうに撫でたスノウはジューダスへとシャルティエを渡す。
それを受け取ったジューダスはそのまま腰に下げてしまった。
「修羅、少しいいかな?」
「あぁ。丁度俺も話しておきたいと思ってたところだ。」
スノウと修羅はジューダスから離れて何かを話し始める。
どうせ今後の事だろう、と検討つけたジューダスは面白くなさそうな顔を浮かべ二人を見ていた。
「……お前が喋らないからあいつが心配してるぞ。」
『……っちゃん……』
「…!」
ノイズ混じりの音で奏でられるシャルティエの声でジューダスは目を見張る。
やはり何処か傷がついたのかもしれない。
ジューダスはシャルティエを一撫でして、二人の話し合いが終わるのをじっと待った。
*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。・.:
「……このままだとまずい気がする。」
「だろうな。シャルティエは最後、神の眼だったかを砕く役目を負ってたはずだが……。」
「あのままじゃあ、コアクリスタルの源であるレンズがうまく作動しない。神の眼を砕くなんて夢のまた夢だ。そうなれば、物語が崩れてしまう。」
「レンズに詳しい専門家、か……。」
「昔、レンズ工場とかで色々と見てはいたんだけどね…。流石にあれは私の専門外だ。」
「寧ろ、それが出来るならあんたは相当すごい。……だがこの問題、案外早く片がつくかもな。」
「?」
「確かこれから俺達は1000年前に跳ぶ。その時にハロルド博士に見てもらえばいい。違うか?」
「……確かに。」
「だがそうだな……。もし、作動しないことを考えて何か予め策を練っていても良いかもな。あのハロルド博士なら大丈夫だろうが念には念を、だ。」
修羅の言葉に大きく頷き、スノウがノートを取り出す。
そして日本語で書かれたその文章に修羅も大きく頷いた。
「あの神の眼は実際にこの目で見たことがあるけど、レンズならではの構成で出来ていて専門家でないと詳細は難しい。ただ、ひとつ……分かることは、外部からの刺激や衝撃に強いってこと。」
「そうだったな。そのままの状態で近付いても何も起こらないんだよな?」
「うん。それは実証済みだから。私は……過去に運んだ事があるからね。」
「……そう、だったな…。」
修羅が辛い顔をしたのを見て、スノウが申し訳なさそうな顔で笑った。
「あれに危害を加えない限り、何もしてこないよ。」
「問題は壊す時だよなぁ…?」
スノウの悩みに真摯に悩んでくれる修羅。
本人の気持ちは分からないが、それでもスノウの悩みに考えて答えを出そうとしてくれる姿勢にスノウも遠慮なく修羅を頼っていたその時、遂に我慢の限界が来たのかジューダスが近くに寄ってくる。
「……まだ話が終わらないのか。」
「ごめんよ、レディ。取り敢えず、そのシャルティエは様子を見ようか?」
ハロルド博士に会えると知っている彼でも、あまり未来の事を口に出来ない。
そうなると、彼もまた物語が変わってしまうかもしれないから。
「取り敢えず修羅、この話はまた今度にしよう。今は進まなくちゃ。」
もうレスターシティへ戻る義理もないので、早くストーリーを進めないといけないのだが…。
「……カイル達が気付いてくれるかなぁ…?」
「……あれを見てみろ?行けると思うか?」
修羅が指差す方向を向ければ、はしゃいでいるカイルたちの姿。
それに二人が同時にため息を吐く。
まだ砂漠地帯だというのにどこからそんな元気が出てくるのか…。
「……なら、僕から提案しよう。それならお前達でも納得のいく結果となるだろう?」
「次の場所のこと、分かってたのかい?」
「概ね検討はついていた。あそこだろう?」
ジューダスが上を指差し、それに二人が頷いた。
歴史を弄っているということは、そこから直していかないといけない。
つまり1000年前に跳んで歴史を正さないと今のジューダスやカイル達は居ないのかもしれない。
だからこそリアラの力で過去に飛ぶのだが、大量のレンズが必要だった。
そこで、ベルクラントの浮かんでいる今ならば、あそこへ行けば大量のレンズが手に入り過去へ戻る事が出来るのだ。
「行ってくる。」
そう言って颯爽とカイル達の元へ向かうジューダスを見ていると修羅が感慨深そうに呟いた。
「……これで俺もストーリーに参加、か。何か感慨深いな。あんなにあんたらの邪魔をしていたのに。」
「時が変わればそういう事もあるって事だよ。」
「難しいこと言うんだな。平行世界とかパラレルワールドの話だろ?」
「うん。でも、これはきっと必然だったんだと思う。」
「へぇ?その根拠は?」
面白そうに笑った修羅がスノウの顔を見る。
しかし、修羅の思いとは反対にその顔はニヤリと笑っていた。
「女の勘、って奴かな?」
「どっかのマッドサイエンティストと同じ事言うんだな。」
「ははっ。覚えてたんだ?」
「そりゃあ、記憶に残るだろ、あんなの。」
ハロルド博士が言ってた言葉だ。
ゲームの中でも割と有名な言葉になってるらしい事が修羅によって発覚して、スノウが「おお。」と拍手をした。
「さっきの話の続きだけど…」
「…?」
「もしシャルティエが上手く神の眼を砕く事が出来なかったらどうするかって話。……もしかしたら壊せるかもしれない。あくまで可能性の話だけどね?」
「どうやって?」
「これで撃つのさ。」
手元に銃杖を呼び寄せたスノウがコンコンと銃杖を叩いた。
しかしまだ分かっていない修羅が僅かに首を傾げ、スノウが説明する。
「私達の持つマナを撃ちぬけば、或いは壊せるかもしれないと思ってね?」
「なるほどな…?だとしたら俺も手伝うとするか。」
「ううん。君は別の事をお願いしたい。あの神の眼を直接近くで攻撃するのは得策ではないからね…。」
「そうなのか?ゲーム上、あいつがシャルティエを突き刺した時何も無かったはずだが?」
「なんて言うかな?……神の眼のエネルギーって実は結構莫大でね?近くに行って壊そうものならそのレンズから放出されるエネルギーが人間の体に害を及ぼす可能性があるんだ。」
「へえ?そりゃあ楽しみだ。俺の体が先に殺られるか、向こうさんが先にくたばるか。」
「……だから君には別の事をお願いするって言っただろう?」
顔を顰めさせたスノウを見て、クスクスと笑った修羅だが、割とさっき本気そうな顔をしていたのをスノウは知っていた。
それを見て、はぁと溜息をつくとスノウは一度仲間達の方へ顔を向けた。
「……私が神の眼を砕く間に彼らを避難させて欲しいんだよ。それを君にお願いしたい。」
「あんたは?」
「恐らくだけど、あれを砕くのに時間が掛かる。マナを装填させるのと砕く時間が必要だ。後は瞬間移動で退避するから安心してくれ。」
「却下。」
すぐにスノウの提案は棄却され、修羅はスノウの持っていた銃杖に触れる。
そしてニヤリと笑うと修羅は試すようにスノウの瞳を見つめた。
「一人より二人の方が早いと思わないか?」
「……まさか。」
「そのまさかだよ。あんたのこれにマナを装填すればいいんだろ?それなら俺も近くに寄って攻撃する事もないし、あんたもそれなら安心だろ?」
「でも神の眼のエネルギーの余波がどれほど広大に影響するか……」
「それなら尚更だろ。そんな状態であんたを一人残したら俺が後悔するだろうし、後なにより、あんたが倒れても俺なら瞬間移動して一緒に避難してやれる。」
「……あー…。確かに、マナの使いすぎとか考えてなかったね…?」
マナの使いすぎで倒れる事を考慮していなかったスノウが、天を仰ぐ。
そして想像するのはマナ切れを起こして倒れてしまう自分…。
「〈星詠み人〉にとって、マナは大事だろ。生命線でもあり、命の源泉みたいなもんだ。あれを失えば俺たちは立つことすらままならないからな?」
「そうだった。」
スノウには少し不安が残っていた。
幾ら修行したとはいえ、修羅の持つマナは〈赤のマナ〉だ。
それが銃杖を介してスノウに流れ込まないとも限らない。そうなればまた……。
「試してみる価値は充分あるけど……かなりリスクも高い、か。」
「あんたはこれにマナを装填させて撃つことだけ考えてればいい。俺のマナの行き先をあんたに向けることは無いし、砕いた後の脱出経路だったり他の事は俺に任せとけ。これでも修羅場を何度も潜ってきた身なんでな?」
修羅の言葉と真剣な眼差しにスノウは少し考えた後頷く。
一か八かで砕けないより、確実に神の眼を砕く方を考えた方がいい。
でなければ歴史が変わってしまうのだから。
「その時は頼むよ、修羅。」
「クスクス…!任せておけって。前に言っただろ?エスコートは得意だって。」
「じゃあ、そのエスコートとやらに期待しますかね。」
丁度話し終わったのかジューダスがこちらに駆け寄ってくるのを二人が確認し、幸運を祈るようにお互いに拳を合わせた。
「……少なくともシャルティエが治ることを祈るよ。」
「ま、それが一番だな。」
すぐに手を下ろし、スノウが銃杖をフワリと消してしまうとジューダスが何か言いたげな顔で二人を見た。
「終わったぞ。目的地はあの光のほこらだ。」
「よし、なら早いところ行くか。」
「そうだね。エルレインの動向も気になるしね。」
三人で頷き合い、向こうで待っているカイル達へと走り出す。
一刻も早く、シャルティエが治ることを誰もが心の中で祈りながら___