このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】

夢小説設定

この小説の夢小説設定
「私の今世での名前です。」
「男装をしていた、前世での私の名前だ。」
「地球時代の時の名前だよ?……もう、捨てた名前ではあるけれども、ね…?」*未変換時は綴(つづり)です







一度手を止めたエニグマのおかげで起き上がる事が出来たスノウだったが、両目とも海色になっているにも関わらずボーッとしていた。
まるでまだ夢見心地でいるみたいに。
床に座り込みボーっとしているスノウにジューダスとシャルティエが疑問を持つ。


「……?」
『あれ?まだ治ってないんですかね?』
「……。」
「あれだけの量のマナを一気に注ぎ込まれ、その上治すのに時間も掛かったのだ。まだ微量のマナが残っているか、あまりのマナの量に後遺症が残っているか、だな。」
「貴様が手加減をしないから…!!」
「戯け。あんなに治すのに時間が掛かるとは思っていなかったわ。」


依然ボーッとしているスノウへ、世界の神が杖をひと振りすると、スノウの表情が元に戻っていく。


「あ、れ?ここは?」
「戻ったのか。」
「さっきまで、ハイデルベルグに居た気が……?」
『絶対夢じゃないですか…。それ。』


はて、と首を傾げたスノウ
そんなスノウの様子に、人知れずジューダスは安堵の息を吐いていた。


「気分はどうだ?」
「え?うーん…。特に悪いところは無さそうだよ。」
「そうか。修行は続けられそうか?」
「うん。ありがとう、エニグマ。ジューダスもありがとう。手伝ってくれて。」
「……ともかく、回数を重ねていかないと僕としては役に立てそうにないがな。お礼ならその後にしてくれ。」
「ふふ、それでもだよ。今のは手伝ってくれてることにお礼を言ってるし、役に立つ立たないとかじゃないよ。君は、君のままでいいんだよ、レディ。」


ジューダスの手を取り、口付けを落としたスノウだったが、その手を直ぐに抜き取られてしまい、更にはジューダスが反対を向いてしまったのでくすりと笑った。
後ろからでも見えるその耳は、可愛らしく真っ赤になっていたから。


「……続けてやるぞ。」


エニグマが呆れたような声を出し、ジューダスを見遣る。
そして修行は再開されたのだが…。


「…………。」


毎回来る眠気に耐えれるはずもないスノウが倒れることで一時中断しジューダスが精神統一を終え、鈴をようやく鳴らすといった事を何度も繰り返していた。
そんな時、


「……う、く…!」


ようやく耐性がついてきたのか、スノウが薄紫のマナに抗える様になっていた。
足をしっかりと踏ん張らせ、その場に倒れないように、眠らないようにするスノウ
流石に膝をついてしまったが、それでも眠気に抗っている姿にそれぞれの神が感心したような声を上げた。


「はぁっ、はあっ、はあっ…!」


スノウは苦しそうに息を吐き出し、額には汗が滲んでいる。
そしてそれに続く様にジューダスが鈴を鳴らすことに成功させる。


「……もう少し上げても良さそうだな。」


エニグマが鈴の音で回復しつつあるスノウを見てそう呟く。
スノウへと向けるマナの量を、明らかに少量ではない量を与える。
薄紫のマナが明らかに色を濃くしてスノウへ向かったのを見てジューダスが目を見張った。


「うぅ…?!」


いきなり来るマナの量にスノウが余計苦しみだし、胸を押さえた。
その場に這い蹲るスノウを見て、ジューダスがエニグマに怒鳴り声を上げた。


「何をしている?!」
「修行に決まっている。あの量で耐えられるのであれば、マナの量を上げるのは当然だろう。そうでなければ修行にならん。」
「うぅ…!!!」


苦悶の声をあげたスノウにジューダスが心配そうに顔を向ける。


「(少しでもいい…!回復出来る量がもっと増えればあいつが苦しむこともないのに…!!もうあんな姿、見たくないというのに…!!!)」


ギリギリと歯を食いしばるジューダスは、悔しそうに目を閉じた。
スノウが意識を失いかけたその瞬間、シャルティエにつけられた鈴が僅かに光を帯びる。
そして、


「……ほう?やっと覚醒したか。」


エニグマが感心したように声を上げ、ジューダスの方を見る。
そこには鈴に手を当て何かを祈るように目を閉じているジューダスの姿があった。
薄紫のマナがジューダスの中から鈴へと流れていくのを見て、エニグマがほくそ笑む。


「(ようやくマナの使い方が分かってきたようだな。坊や。)」


そのマナが鈴へと流れ込んだ瞬間、鈴の光がさらに眩く光りだし、そしてジューダス自身をも包み込む大きさへと変化した。
光が収束すれば、その鈴は今までの鈍い銀色などではなく、神々しい金色へと変化へんげしていた。
シャンと鳴るその音は、今までと比べ物にならないほど清廉な響き。
まるで水面が輪を作り広がっていく波紋のように音が響き、そして神々しい光もまた波紋のように広がっていく。そこに淀み、濁った空気などない。
それがスノウに到達すれば、先程まであんなに苦しそうにしていたスノウが「あれ?」と思わず零し、額に出ていた汗が引くまでに回復までしていた。


「すごく、体が軽い……?」
「坊やを見てみろ。」
「??」


スノウに近づき顎でジューダスを指したエニグマを見て、スノウはジューダスを見る。
そこには眩く輝く彼の姿があり、それを眩しそうに目を細めさせたが、その表情には嬉しさや悔しさが滲んでいるようだった。


「後はお前がマナを共有できるようにならねばな?」
「ははっ…!先を越されちゃったな…?」


頭を掻きながら笑うスノウはそのまま立ち上がり、暫く彼の勇姿をその目に収めていたのだった。

そこからは怒涛の修行と化した。
先を越された事が悔しかったらしいスノウが休まずに修行をするものだからジューダスからの叱責が飛び交い、遂にはばたんきゅーと目を回し、倒れてしまう始末になってしまった。
起きた時点でまた彼からの叱責を受けるも、それを笑って受け流し、そしてまた怒られるといった日常を過ごしていた。
そして、体感的には2週間近くが経とうとしていた時、遂にその時は訪れたのだ。


「……ふぅ。」


エニグマの〈薄紫のマナ〉に対して、苦しむ様子もなく冷静に息を吐き出しているスノウに、鈴を構えていたジューダスもフッと優しい笑顔でスノウを見て構えを解いた。
ようやく〈薄紫のマナ〉に慣れたといった感じでスノウが胸に手を置き、流れ込んでくるマナを感じているとエニグマが感心したように大きく頷いた。


「この量でも耐えられるのなら、〈赤のマナ〉も多少は耐えれよう。ただ、他のマナについては流石にまだまだだろうがな。」
「あー…。やっと〈薄紫のマナ〉が体に馴染んできた…。最初は眠たくて眠たくて仕方なかったけど…、なんか不思議な感じだね。夢見心地、って言うのかな。なんかこのマナはふわふわする感じがするんだね。」
「〈薄紫のマナ〉は夢の力。恐らく、そこも影響しているのだろう。」
「これをレディが身につけたって聞いた時は耳を疑ったものだけど……。そうだね、レディの中にちゃんとマナが流れているのが見えるからそういう事なんだね。」
「見えるのか?」
「見えるように特訓したんだよ。これをしないと自分に襲いかかる脅威に対処出来ないからね。」
「未然に防げるならそれに越したことは無い。」


しかし、だ。
こうして話してはいるが、もうこの空間では何日も何日も経っている。
そろそろ外の心配をするべきだが……。


「……。」「……。」


ふと広がる不安感。
果たして仲間達は今頃どうしているのだろうか?


「……仲間の心配よりも自分たちの心配をするんだな。」
「え?」
「どういう事だ?」
「ここでの時間は向こうとはかけ離れている。今頃、ようやく向こうでは一日が経とうとしている時か、それとも2日が経とうとしているくらいか。」
「二人のお仲間である彼らは、宿で泊まりながら貴方達の帰りを今か今かと待っているようですね。夢の神の……あの店の前で。」
「……そっか。それくらいなら良かった。何日も経っている感覚だったから心配になったんだ。」
「それよりも、僕達の方を心配しろというのはどういうことだ。」
「そのままの意味だ。」


言葉を区切ったエニグマが、腕を組み二人を見据える。


「これから、お前たちはまた旅に出るだろう。その時に、今までと全く同じと思わない事だ。」
「二人は今までにない力を手に入れました。それが旅に影響するかもしれない、と彼女は心配しているのですよ。」
「……。」


静かに世界の神を睨んだエニグマだったがそれを素知らぬ顔で世界の神は笑った。
そして心配してくれているエニグマをスノウがそっと抱き締めると、エニグマは目を見張り思わず抱きしめ返す。


「ありがとう。心配してくれて。今までもこれからも、ね?」
「……ふっ。“ If it can be imagined, it can be created. 想像出来るなら、創造出来る” …………ゆめゆめ、忘れぬようにな?」
「うん。ありがとうだ、エニグマ。」


ポンポンと背中を叩いたエニグマがそっとスノウを離す。
その二人の間には柔らかな笑顔が満ちていた。


「これからまた、大変な事があるかもしれない。それでも…」


スノウがジューダスを振り返り微笑む。


「レディと一緒なら、きっと…。また死にたくなっても、レディが止めてくれるし、きっと助けてもくれる。大きな困難にぶつかっても、きっとあの温かな手を差し伸べてくれる。だから、精一杯頑張ってみるよ。」
「あぁ、頑張りなさい。もし襲い掛かってくる夢があるのなら坊やに聞いてみるといい。何かしら解決策を講じてくれる事だろう。仮にも、私の〈御使い〉なのだからな。」
「あぁ、任せておけ。」
「うん、分かった。」


そしてスノウは世界の神に笑顔を向ける。


「私の神様。世界救済、絶対にやり遂げて見せるから。また何かあったら宜しく。」
「はい。行ってらっしゃい、私の〈御使い〉。何かあれば銅像に話し掛けてくださいね。」
「……お前、あれを持つには荷物になると思うが?」
「駄目ですか?結構良い線いってたと思ったのですが…。あれもアニメやゲームで学んだんですよ?」
「阿呆、旅の邪魔になるわ。」
「……だから言っただろう?あれをアテにするのはやめた方がいいって。」
「うーむ。難しいものですね。」


そう言いながらも神は笑っていて、それにスノウも笑顔で応えた。
そして世界の神はスノウを見て、手に持っていた杖を一振りした。


「あぁ、それから。私の〈御使い〉である貴女にこちらを。」
「……眼帯?」
「貴女の目は、マナに影響されやすいのです。特に、その左目は。」
「……。」


そう言われ、スノウがそっと自身の左眼に触れる。


「他のマナにあてられない為にも、影響防止の意味で効果があるはずです。」
「そうだね。しておくに越したことはない…か。他の人達に心配されそうだけど、他のマナに侵されて皆に何かするよりマシだしね。」


スノウは神から眼帯を受け取り、左眼につける。
初めて着けた眼帯は違和感だらけで、僅かに眉間にシワが寄っていた。
それを見てジューダスが少しだけ可笑しそうに笑っていたので余計にスノウが眉間に皺を寄せていた。


「じゃあ、二人をお送りします。よろしいですね、夢の神。」
「あぁ。それでよい。」
「2人とも、ありがとう。」
「お礼ばっかり言ってないで、早いところ蹴りをつけてこい。それから娘。お前は特に狂気の神や他の神にくれぐれも気をつけるのだぞ。」
「はーい。」


そう言って二人はこの空間から消えた。
そして二人が目を開けると、そこには心配そうにエニグマの店の扉前でスノウ達を待っている仲間達の姿があり、スノウとジューダスは顔を見合わせると二人で笑いながら駆け出す。
そして再会の喜びを全員で分かちあった。
勿論そこにはスノウの眼帯を見て心配する者もいたが説明すれば納得して引き下がってくれた為、スノウも笑顔でお礼を言っていた。
その中には修羅や海琉も仲間として喜びを分かち合う。
そして全員で笑って、再び旅へと戻っていくのだ。


「……ねぇ、レディ?」
「何だ。」
「ふふ。もうレディじゃないって言わないんだね?」
「言ったところでお前、直らないだろうが。」
「そうだけど、少し寂しいな?」
「どうせ、他の場所になったら反射的に言うだろうし今言わずともいいだろうが。」
「ふふ。それは楽しみだ。」
「で?そんな事で話しかけたんじゃないだろう?」
「うん。さっき言いそびれた事があって。」
「?」


何だ、とばかりにジューダスが怪訝な顔でスノウの顔を見る。
そしてその表情の意味を推し量るように、今は一つしか見えなくなってしまったスノウの片目を見つめた。


「これから先、私たちはそれぞれ〈御使い〉として役目を果たさないといけない訳だけど…。それでも、こうして隣に居られて……、本当に嬉しく思うんだ。」
「……ふん。そうか。」
「だから改めて言わせて欲しい。これからもよろしく。」
「言われなくてもよろしくしてやるつもりだった。」
「ふふ。そっか。」
「ほら、さっさと前を歩け。あいつらがまた心配するぞ。」


もう向こうに行ってしまった仲間達を見て、スノウがジューダスの手を取り走り出す。
それを拒否することなく受け入れたジューダスもまた、少しだけ笑っていた。


___ただ一人を除いて。






『(…………あ、れ……?お、ぉかしいな……?ここ、こんな…こと……いままままで、無かったんですすすが……?)』




ジューダスの腰にあるシャルティエの大事なコアクリスタルが、危機を知らせるようにチカチカと光らせていたのに、まだ誰も気付かなかった。



32/44ページ
スキ