第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
____場所:男風呂
カイル達に連れられ、あっという間に脱衣場へと来たジューダス達。
裸の付き合いも大事だ、という玄の言葉にジューダスは呆れつつ、しかし入るしかないようだったので仕方なく温泉へと向かっていった。
街の中を漂っている湯煙とはまた違う、真っ白い湯気が立ち上る中、硫黄独特の臭いが鼻に付きジューダスは入るや否や、顔を僅かに顰めさせた。
どうやら簡素な作りかと思いきや、豪華に作られた温泉施設なようで、野郎が何人いようが広々と使えそうなのが窺える。
その中でも自身の甥はかなりはしゃぎ回って、豪華な作りに感動さえしている。
隣に居るロニでさえ、豪華な作りに感嘆して暫く周りの様子を窺っていた。
「ちゃんと体洗ってから入れよ?」
後から入ってきた修羅の奴が海琉にそう教えているのを見て、嘆息する。
…本当に親代わりのようなことをしているのだな。
『うう…。坊ちゃん、羨ましいです…。』
一人、脱衣場に取り残されたシャルティエはお留守番を言い渡され、渋々待っていたのだった。
「お主、酒飲んでなかったのか。」
「あの時、お酒を飲んでいたのはウィリアム博士、貴方だけでしたよ。」
アーサーとウィリアム博士と呼ばれたじいさんが横を通り過ぎていく。
ジューダスから見て、見た目は細かったように思えたアーサーも、意外と筋肉質だったことに対し、ウィリアム博士と呼ばれたじいさんはひょろひょろとしており、いかにも老人らしい体つきだ。
それで戦闘になど出れはしないだろうと検討つけるくらいに、その老人の体つきはよぼよぼだった。
言わずもがな、他の奴らは普段剣を取り合って戦っているだけあって、筋肉質である。
「アーサーよ。確か、この衝立の向こうが女風呂じゃったな?」
「「「「…!!」」」」
いきなり爆弾発言する老人に誰もが目を剥き、そっちへ視線を向ける。
かく言う僕だって、その言葉に信じられないと老人の方を向いたくらいだ。
ロニの奴に至っては鼻の下が伸びており、完全にだらしない恰好になっている。
「ええ、そうですね。」
「バッカ…!何であのじいさんに教えんだよ…!!」
「隠したってしょうがないでしょう?あの人なら毎回やってますよ。自分の研究のためにと言い聞かせて、ねえ?それに…、ボクが言おうが言うまいが、毎度女性のお風呂場を探し出していますから、ここでボクが場所を言っても言わなくても女性の方々には申し訳ないですが覗きに行かれますよ。彼は、ね。」
修羅がアーサーに問い詰めるが、涼しい顔でアーサーがそれに受け答えする。
そんな修羅とアーサーに、先ほどの食事会で酔ってしまったのかしつこく絡んでいる老人に背中を向け、身体を洗った僕は早々に温泉に浸かってしまった。
ああいう手合いは我関せず、だ。
「よし、修羅よ。行くぞい…!女風呂を覗きに…!!」
「はあ?!一人で行けよ!!」
「お主だって、見たいであろう…?好いた女の裸くらい。」
「はあ…。行くならアーサーを連れて行ってくれ。」
「酷いですねえ?ボクがそんなことをする性格だと?」
「しないと思うが、矛先がそっちに行くなら何だっていい…。」
後ろで繰り広げられているやり取りを聞いて、ふとスノウの体を思い出してしまう。
彼女は確かに細身だが――――って、何を考えている…!!
僕は慌てて首を振り、考えを消し去ろうとしたその時。
「うわ、広いお風呂だね!!」
「はは、ナナリーもこれには大歓喜だね?」
彼女の声が聞こえてしまい、余計に顔を真っ赤にしてしまう。
煩悩を消し去るために口元まで湯に浸かれば、その隣を疲労感満載でやってきた修羅と海琉がやってくる。
…わざわざここを選ばなくともよかろうに。
カイルやロニも女風呂からの声に黙ってしまい、ポカンとしている。
どうやら本当に隣に女風呂があるらしい。
「スノウってば、普段さらし巻いてたから分からなかったけど……胸、大きいのねー?」
花恋の言葉にハッとする奴らが何人もいる。
あのアーサーでさえ、その言葉に黙ったくらいだ。
そして、全員思い浮かべただろう。
……彼女の胸の小ささを。
元々、彼女は男性の服を好んで着る傾向にある。それ故に、胸の強調がないから違和感がない。
確かに女性ならば胸があってもおかしくはないのに、その胸がないから元々無いのだと思っていた。
が、しかし。
どうやらその予想は大外れだったようだ。
「花恋には負けるよ。」
そんな彼女の言葉で、再び焦点となるのは花恋と呼ばれた敵の体だが…。
僕は会ってそんなに経っていないので、思い出すこともなかった。
そんなこんなでこちらの事を知らない女性陣の話は自分たちの胸の話で盛り上がっており、男性陣はこれまた静かにそれを湯の中で聞くだけ、と化していた。
「まあ、胸って言ったら女性らしさっていうか…。むしろ、胸が大きいと男にモテるからじゃなーい?」
そんな花恋の言葉に、男性陣の心は一つになった。
そんなことだけで男は女を好きにはならん。
胸が大きいのは……確かに良いが、それだけで人を好きになることは無い。…断じて。少なくとも僕はそうだ。
「というか、セルリアンはあっちかよ…。」
修羅の小声が僕に届き、そういえば彼女の腕の中で寝ていたな、と思い出す。
そのまま彼女たちとお風呂に入る事になったのだろう。
少女の姿だから問題はない。……恐らく。
「ちょっとセルリアン!その格好でうろつかないでよー?!皆がスノウの魅力に気付いちゃうじゃない!!」
「え、そっち…?」
困惑した様な彼女の言葉に我に返る。
恐らく、セルリアンがスノウの格好にでもなったのだろう。
…彼女の偽物は精巧すぎて恐ろしいくらいだ。
「ん?そういえば博士の姿が見えんが?」
今まで黙っていた玄がそう呟くと、男全員、老人の姿を探す。
そして居ない事に気付いて、誰かが「やったな…」と声を漏らしたその時。
「……博士だ。」
「「「え?/はあ?」」」
「…いわゆる、覗きってやつだね。」
「いや、スノウ!アンタ、冷静すぎじゃないかい?!」
セルリアンらしき声の持ち主が『博士』という単語を口にしたことで全員が悟った。
もう覗きに行ったのか、と。
「(というより、あいつの危機管理能力はどうなっているんだ。)」
あまりにもスノウが関心なさそうな声音でいうものだから、不安になってくる。
彼女は探知に長けているし、大丈夫だと思いたいが…。
「乙女の裸を覗きに来るなんて、罰当たりよ!!」
「何というか…。やっぱりこういうイベントってありきたりだけど、実際にやられるとあるんだなぁって実感するよ。」
「言ってる場合じゃないと思うけどね!!」
激昂している女性陣の声と、しみじみとしているスノウの声に溜息を吐きそうになり、修羅の奴と同時に溜息を吐いているのに気が付いた。
お互いに嫌な顔をしたが、思った事は一緒かと同情もした。
そんな中、どんな話になったのかスノウの声が聞こえてくる。
「…折角罰を与えるなら、少しのダメージはつまらないよね?」
「「???」」
にやりと付きそうな声音の彼女に嫌な予感がして、必然と眉間に皺が寄る。
修羅の奴も同じことを思ったのか、僅かに顔を顰めさせている。
「___輝く御名の下、地を這う穢れし魂に、裁きの光を雨と降らせん。ジャッジメント。」
わざわざあんなにも長い詠唱を唱えたということは、彼女も覗かれて流石に怒っているのだろうか。
術名を唱えた瞬間、僕達の耳につんざくような雷撃の音が響く。
それと同時に向こう側に紫や白、黒などの雷が迸っているのが見える。
僕たちは一斉に耳を塞ぎ、術が終わるのを待つことにした。
「ぐえええええええ!!!!」
……凄惨な悲鳴が聞こえてくる。
それにアーサーだけが、フッと笑っているが耳は完全に塞いでいる。
見たことも聞いたこともない技に僕たちはいつまで耳を塞げばいいのか分からず、音が過ぎ去った後で恐る恐る手を離す。
「あーら、博士ー?何でこんなところに居るのー?」
「の……のぞ、き…を……!!」
「まだ喋れたのね?それに素直でいい子ねー?」
そんな花恋の声が聞こえ、嫌な予感が体中を駆け巡る。
他の男どもも一緒だったのか、皆の顔は段々と曇っていく。
そして、その予感は的中したのだ。
「……お主、やはり体つきだけはええの…。」
「…。」
「「「「「(………あいつは馬鹿か…。)」」」」」
そう思った瞬間、男風呂のお湯が勢いよく立ち上る。
温泉に浸かっていた者が皆驚き、慌てて立ち上がるとそこには黒く焼け焦げた博士の姿がそこにあった。
それに引き攣った笑いをすると向こうから容赦ない言葉が降り注いでくる。
「いーい?男ども?覗きなんて、次してみなさーい?……殺すわよ。」
最後の言葉だけ、怒気をはらんだ低い声で言うものだから、全員が黙ってしまい、そして黒くなってしまった老人を見る。
アーサーだけは、そんな老人の様子に笑っていた。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+
お風呂から上がれば、女性陣からの痛い視線を受けることになる。
全員が全員、やっていないので無実なのだが…。
一人、可笑しそうに腹を抱えているスノウを除き、女性陣は侮蔑の眼差しをこちらに向けるのでどうしようかとたじろいでしまう。
「ふふっ…。乙女たちを怒らせるからだよ。」
「実行犯はあのじいさんだけで、他の奴らは何もしてないんだけどな。」
「それが意外というか。絶対、ロニとかやってきそうだと思ったのに。」
「おいおいスノウ…、やめてくれ…。女性陣からの視線が痛いぜ……。」
スノウのその言葉に女性陣の侮蔑の眼差しはロニの方に飛んでいく。
それにたじろぎながら、ロニの奴はスノウへ何かを耳打ちする。
僅かに声を拾おうと耳を澄ませばくだらない話だ。
「それに、やるならもっと大人数を狙ってだな…。」
「ははははっ!!! やっぱり君は面白いね!!」
遂にその場でしゃがみこんで笑い出すスノウ。
そんなスノウの腕を女性陣が掴み、強制的に男性陣から離れさせると花恋を先導に、女子部屋へと向かっていった。
未だに笑っているスノウを見つつ、僕達は今日の所は休もうと各々部屋へと向かっていたのだった。
結局宛がわれた部屋は大部屋で、男は全員そこで寝る様になっているらしい。
前世は軍に仕える身だったのでこういった事に何も思わないが、ロニやカイルは物珍しそうにその部屋を覗いていた。
「へえ、珍しい作りだな。」
「ロニ!枕投げしようよ!!」
「お前…どんだけ元気有り余ってんだよ…。俺は寝るぞ…。」
「ええ?!じゃあ、ジューダスやろうよ!!」
「僕も寝るぞ。」
「えええええ?!!」
「元気だな…。子供ってやつは…。」
修羅が感慨深そうにそう言って、適当な布団にもぐりこんだのを見て自分も適当に布団を選びそこへ横になった。
アーサーは手元にある機械に触れ、仕事中のようである。
玄は既に部屋の隅でいびきをかいて寝ており、海琉だけがカイルに賛同している状態である。
「枕投げって、楽しい…?」
「うん!!楽しいよ!!見てて、それっ!!」
カイルの枕がロニの寝ていた頭に直撃し、ロニの額に皺が寄る。
「おいおい…寝かせてくれよ…。」
「そう言いながら付き合ってやるんだな。」
修羅がロニにそう声を掛け、肩を竦めさせる。
そんな修羅の顔に真っ白い枕が投げ込まれ、奴の顔にも皺が寄る。
投げたのはどうやら海琉のようである。
「僕はやらないぞ。そんなガキ臭い遊びはもう卒業した―――」
その瞬間、僕の体と顔に向けて枕が四つ投げ込まれる。
それに青筋を立てながら僕は寝ようとする。
しかし立て続けに枕が来るものだから、その喧嘩に結局買ってしまった。
『(あーあ…。坊ちゃん、結局喧嘩買ってる…。)』
「貴様ら、そこになおれ!!!!」
修羅も日頃のうっ憤を晴らすかの如く、にやりとジューダスに枕を投げていたのだ。
そんな中、いびきをかいて寝れる玄。
そしてそれらを全く意に介していないアーサーがそこにいたのだった。
___結局、深夜前に疲れて全員が寝てしまったのは言うまでもない話だ。