第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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「では、マナとオーラの関係性についてお話を。」
そう言ってアーサーは話し始める。
「〈星詠み人〉にはマナがある───それは、先程お話した通りです。そして、それと密接に関係するのがオーラです。」
「シャルティエは探知が得意だけど、私のような〈星詠み人〉の気配は探知できないだろう?あれはオーラが関係してるんだ。」
『はい。修羅から何となく聞いていました。』
「なんだ、そうなのか。じゃあ粗方の事は知ってるのかな?」
「いや、最初から聞いておいた方がいいだろう。僕達が間違った解釈をしていても意味が無いからな。」
未だスリスリと擦り寄っているセルリアンを抱き寄せながらスノウはアーサーを見た。
ジューダスもまた、聞き逃さないようにとアーサーの方へ視線を向ける。
「元々、生まれた世界が違えば人は、纏うオーラが変わるものです。それは“神”から聞いていた話ですから間違いはありません。ですが元々、我々の世界では魔法の類はない世界だったのにも関わらず、何故ここに来て使えるようになったのか。それはオーラが関係しているのではないか、と我々は考えています。」
「……私たちのオーラとこの世界の何かが上手く合致した、という事か?」
「そんな所です。マナ自体が既に我々の以前いた世界で存在していたのかは分かりません。使えませんから、試しようがなかったので仕方がないのは言うまでもないことですが、マナとオーラが一緒にあって初めて術技が使えるのでは、と我々は考えています。」
『うわぁ、ハロルドが聞いたら目を輝かせそうな話ですねー…。うわ、身震いが…!!』
「僕達にはマナが無いというのも確定している話なのか?」
「そうですね。この世界の原住民達はレンズに頼る生活をしていますから、マナというものが必要ありません。元々あった所で、そういった理由から退化していてもおかしくはありません。」
「なるほど。」
『じゃあ、オーラを変える方法とか無いか聞いて貰えませんか?坊ちゃん。』
「……。 一応聞くが、僕達がオーラを変える……。又は、こいつがオーラを変える事は出来ないのか?」
「ふむ? 何か変えたい理由でもあるのですか?」
「あぁ、大いにな。これこそ、〈ロストウイルス〉関連だと思ってくれればいい。」
「……。」
少し考える様な素振りをしたアーサーだが、理由に到達したのか、僅かに頷いていた。
「……そうですねぇ?先ず、先に言っておきますが…オーラを変えること、それ自体不可能だと思って下さい。」
「やはりダメか…。」
「ただし、我々の場合、違う世界から来たものですから、時間を掛けてこの世界のオーラに馴染む様になるのは不思議ではありません。」
『修羅が言ってた通りですね。』
「ですから、意図的に変える──という事は出来ませんが、偶発的になら可能性は無くはないかと。」
「なら、もう一つ質問がある。」
「なんなりと。」
「僕達でも〈ロストウイルス〉に対抗出来る何か…。それはお前らのところで見つかってないのか?」
「おかしな話だ。貴方に〈ロストウイルス〉は関係ないでしょうに。危害を加えられるのはあくまで〈星詠み人〉だけ。あなた方には無関係のはずですが?」
首を傾げ、あたかも不思議そうにしているアーサーへジューダスは顔を顰める。
関係あるから言ってる、とそう言った顔をすれば何となく理解したのか、アーサーは笑顔を深めた。
「……先程、マナとオーラは密接に関係する、とお話しましたね?」
「あぁ。」
「では、この2つ──あなた方が使いこなせたとしたら?」
「だから、その方法を聞いている。」
「残念ですが、これ以上は分かりません。それが分かれば、我々だって苦労しませんから。……えぇ、あなた方に影響のある〈ロストウイルス〉の作製にねぇ?」
「ふん。結局分からないのか。」
「おやおや。これでも頑張っているのに酷い言われようだ。クックック。」
全く意に介さない様な物言いで笑い始めるアーサー。
そんな中、セルリアンがスノウを見上げて一言零した。
「___混在してる。」
「ん?混在?」
しかし、セルリアンはそれきり何も言わなくなってしまい、遂にはウトウトし始めてしまう。
彼女の体温が眠気特有の高めな体温になっているのが何よりの証拠だ。
このままでは風邪を引いてしまう、と着ていたローブをセルリアンに掛けると、暖かそうで幸せそうな顔になったのでスノウも必然と笑顔になった。
そんな中でも、2人は話に夢中な様でこちらを気にすることなく会話が続いているではないか。
「貴方も気付かれていないというのに、甲斐甲斐しいですねぇ?わざわざ一人のために自身を犠牲にする、と?」
「お前には関係ないだろう?」
「失礼しました。いえ、気になったものですから。気に触ったのなら、謝罪しましょう。申し訳ありません。」
「…ふん。」
心の底から謝る気なんてない癖に、と思いつつジューダスはアーサーを睨みつける。
結局、分からずじまいか。
「マナかオーラを纏わせる事が出来れば彼らも〈ロストウイルス〉に通用する、という事で合ってはいるんだね?」
「そうですね。結局のところ、オーラの関係で攻撃が出来ているのか、はたまたマナのお陰で攻撃が可能となっているのか、不明ですからね。そこら辺は我々の今後の課題だと思います。」
「結局、ロスト級の〈ロストウイルス〉というのはどういう奴のことを言うんだ?」
「それですが、未だ直接遭遇、対峙出来ていませんからねぇ?不明ですよ。」
「…役に立たんな。」
「クックック…。隠しもせずにそうやって言えるのが、貴方の強みですからねぇ。羨ましい限りですよ。えぇ、全くもって。」
『坊ちゃん、貶されてますよ。』
「…。」
スノウを見遣れば苦笑いを零していて、その胸元にいた少女はスノウの腕の中でスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
でも、唇を動かした彼女が言うには、「君はそれでいいんだよ。」と言っているように見えた。
読唇術が使えるわけでないのであくまで想像でしかないが、そう言われたかもしれないと思えば心が安らかになった。
「じゃあ、次の質問。例えば、彼らが〈ロストウイルス〉に対抗出来る何かを得たとしよう。その場合、彼らもやはり〈ロストウイルス〉に感染する可能性が出てくるのか、君の見解を聞きたい。」
「その対抗出来た理由、にもよります。それこそ、オーラを変えたのであれば、大いに感染するリスクは高まるでしょう。マナも然り。現在、我々に把握出来ていない何か、であればもしかすると感染は無いのかもしれませんが、なにぶん予測にすぎません。ボクの見解はこんなものでしょうか。」
「そうか。ありがとう、聞かせてくれて。」
「いえいえ。他に何かありますか?」
「〈ロストウイルス〉関連では無いかな?」
「では、こちらの質問に答えて頂きますよ?」
ニコリと深い笑みを零すアーサーに、スノウが引き攣った笑いを零す。
「お手柔らかに」と言った言葉も彼にはあまり意味は無さそうだ。
「貴女がこの世界のことをどれくらい理解しているのか、知りたいですねぇ?」
「……なるほど。そっち方面か…。ま、答えられる範囲内でならいいか。さっきの質問の答えは……、そうだな…?全部、と言いたい所だけど、システム上の物であれば分からない、と言っておくよ。」
「なるほど。流石ですねぇ?以前の貴女は、このゲームのヘビーユーザーだったんですか?」
「ヘビーユーザーというより、好きで何度もプレイしていたんだよ。そりゃあ、何度もプレイしていたら覚えるよね?」
「そうですね。〈赤眼の蜘蛛〉の組織員でも何度かプレイしたことのある人物がいましたが……、流石に貴女のような全て覚えている人は居ませんでしたね。記憶を補完しようとセルリアンに貴女の記憶を探るように言ったのですが……。」
アーサーの視線はスノウの腕の中で眠っているセルリアンに向けられる。
それに笑みを崩さず、呆れた様な顔で見つめると視線をスノウへ戻した。
「……貴女の記憶には届かない、だそうなんですよ。何度もやっているみたいなんですが、何かに阻まれて出来ないと言っていました。非常に残念です。」
「ふふ。そうか、残念だったね?」
__もしかしたら、“神”が何かしてくれているのかもしれない。
スノウはふと、天を見上げて笑みを零した。
「もし……。もしも、このストーリーが進み、最後まで行ったのなら───貴女は全てが終わった後、何がしたいんですか?」
「……。」
アーサーの質問に、スノウの視線は自然と隣にいる彼に向けられる。
優しい眼差し、柔らかな笑顔。
それは全て彼に向けられたものだった。
「……まだ決めてない。一つ言えるならば、君達〈赤眼の蜘蛛〉がまだ存在してるなら壊滅させる為に旅に出る、かな?まだ悪事を働くような組織なら、ね?」
「人聞きの悪いことを言いますね。我々は〈星詠み人〉の楽園を作る、と言っているでしょう?」
「気付かない悪なら、これ以上私が言った所で君達は引かないだろう?説得してダメなら力押しだね。」
「怖いお方だ。」
そう言いながらも、アーサーはニコニコと人の良さそうな笑顔を浮かべている。
それにヤレヤレと首を振ると、ジューダスもシャルティエも大きく頷いていた。
「……貴女が味方であったなら、どれほど楽で、良かったでしょうね。相も変わらず、人生は苦楽続きです。」
「君の前世は、余程大変だったんだね。」
「えぇ、まぁ。」
珍しく濁した言い方をしたアーサー。
その顔は僅かに笑顔が崩れていた。
それだけで、彼の前世の苦労が垣間見えるようだった。
スノウはそれに言及するわけでもなく、次の質問を促していた。
「では、お次ですが…。まぁ、あまり我々には関係ない事なので、この質問にお答えされなくても結構ですが。彼……修羅はどうなさるおつもりで?」
「それは私が決める事じゃないよ。彼が決める事だ。」
「そうですね。愚問でした。では、次……と言いたいところでしたが、向こうは食事も終わりそうなので今度にさせてもらいますよ。」
肩を竦めさせた彼が見る先には、カイル達が食事も終えて満足そうにしている姿だった。
「今度があるかどうかは分からないけど、良い時間になったしお開きかな。」
「どうやらそのようです。」
アーサーは玄に目配せすると、玄は静かに立ち上がり、カイル達の方へ向かっていった。
スノウとジューダスが何をするのかと成り行きを見守っていると、玄はカイル達に何か一言二言話始め、そして意気揚々と移動を開始し始めた。
「よし!!行こう!二人とも!!」
「おいおい、カイル。スノウは仮にも女の子なんだから誘うなよ…。」
ロニが呆れたようにそう話すので、スノウは不思議そうに二人を見る。
何か、男女で別れることがあっただろうか?
「スノウ!私達と一緒に行きましょう?」
「これから温泉に行ってもいいってさ!」
リアラとナナリーの言葉になるほどと納得し、腕の中にいるセルリアンへと声を掛けることに。
「起きて?私は温泉に行くけど、君はどうする?」
「ん…。一緒に居る…。」
目を擦り、立ち上がったセルリアンを見てからスノウも立ち上がり、リアラ達と行くことに。
ジューダスは、早くもカイル達に連れていかれたようでスノウの隣には女性陣ばかりしかいなかった。
「スノウ!行きましょ!」
花恋がスノウの腕に抱きつき、先導するように動き出す。
それにリアラとナナリー、セルリアンもついて行き、ナナリーが少女をセルリアンとは露知るわけもなく、見知らぬ少女に優しくしていた。
「セルリアンまでまさか来るなんて、思わなかったわ!」
「まぁ、私も思ったね。てっきり何処かで待機させられてるのかと思ってたけど、割と自由にさせてもらえてるんだね?」
「セルリアンは博士の担当している実験の初代なのよー。色々実験とか多いから、普段は実験室で留まることの方が多いんだけど…。」
「まぁ、でも自由はいい事だ。」
「そうよね!自由は良いわよねー!」
うんうん、と花恋が頷きながら目的の場所まで案内をしてくれる。
そこで着替えとか持ってきていないことに気付いたが、中に一通り揃ってるというので、そのままスノウ達は中に入ることにしたのだった。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+
___場所:女風呂。
温泉から立ち上る湯けむりが空中に漂う中、体にタオルを巻き、それぞれ温泉の方へと向かっていく。
そんな中、セルリアンも裸となり温泉へと歩き出すのを後ろからナナリーが追いかけ、慌ててタオルを巻いてあげる優しさを見せていた。
リアラは恥ずかしそうに中へ入っていき、スノウは花恋に手を引かれながら中へと入る。
それぞれキャッキャと騒ぎながら入ると、やはり話題はあの手の話題に……。
「スノウってば、普段さらし巻いてたから分からなかったけど……胸、大きいのねー?」
花恋がスノウの胸を見て、感動したように声を上げる。
それにセルリアンが一番に反応し、タオルを巻かれた上からでも分かるスノウの胸をじっと見つめていた。
リアラが羨ましそうに見つめ、ナナリーが苦笑いでその様子を見ている。
「花恋には負けるよ。」
スノウの眼先には、豊満な胸をタオルで隠している花恋へと向けられる。
肩を竦めたスノウに対し、セルリアンが自分の胸も見つめ周りの胸も見つめる。
「私が一番、小さい。」
「わ、私も…。」
「二人はまだまだ成長期なんだし、これからなんじゃないのかい?」
「胸が大きいと、なにがいいの?」
「「え、」」
ナナリーとリアラが困ったように笑う。
「胸が小さいと、悪いの?」
「はは。そういうのは個人差もあるし、別に良いも悪いもないよ。」
「じゃあ、なんで気にしてるの?」
「そうだね…。これは女性の性なのかもね?」
「まあ、胸って言ったら女性らしさっていうか…。むしろ、胸が大きいと男にモテるからじゃなーい?」
花恋がそう話すと、セルリアンは自分の胸と花恋の胸を見比べ始める。
「花恋はモテる…。」
「あっはは!!あなたって、おもしろいのね!!まさか、実験体の癖にそんなこと言うなんてね!?」
「花恋。」
咎める様に言うスノウに花恋は何故咎められたのか分からなさそうに首を傾げる。
「だって、本当の事よねー?」
「うん。本当のこと。」
「うーん、これは…難しいな…。」
「ねえ、スノウ。彼女が実験体って?」
「あぁ、そうだった。ナナリー、この子はセルリアンなんだ。私の偽物をしていたあの子だね。」
「「え?!」」
二人が初めて知った事実に驚愕の顔を見せる。
すると、少女は一度大きく息を吸って、大きく息を吐く。
その後身体が光り輝いたかと思えば、次の瞬間、スノウへと変わっていた。
それも、ちゃんと胸の膨らみも完全に再現出来ている。
「わぁ、本当なのね!」
「びっくりだね…。」
二人が驚いている中、セルリアンは自分の胸を確かめてからスノウの胸と見比べる。
そしてスノウの様に笑うと
「最初、胸がないからそう再現していたんだけどね?」
「はは。いつ聞いても、言葉遣いも体も私そっくりだね。」
「ちょっとセルリアン!その格好でうろつかないでよー?!皆がスノウの魅力に気付いちゃうじゃない!!」
「え、そっち…?」
「(裸の方を気にするんじゃなくて…?)」と言った顔のスノウだったが、スノウの顔で自信に満ち溢れている表情でいるセルリアンや怒っている花恋を見て、「ま、いっか。」と零し、リアラ達と温泉に入っていった。
「お湯が熱いくらいね…?」
「温泉ってのはそんなものだって聞いたことがあるよ。」
「あー…。極楽ー…。」
「スノウったら、そこら辺のおじさんみたいなこと言わないでくれよ!」
「いやあー、流石にずっとここにいて緊張していたから、何だか気を抜いちゃってねー…?」
「でも気持ちは分かるわ。ここって敵陣の中だから、私も緊張しちゃって…。」
「まぁ…アタシもだけどさ?でも、その言葉は使わないよ!」
のほほんとした空気が漂う中、後ろでは花恋とセルリアンがまだやりあっている。
スノウになって、少女の時と言葉選びが違う分、衝突しているようだ。
その内容はほぼスノウの事なのだが…。
「……ん?」
セルリアンが少女の姿に戻り、何かに気付いたように首を傾げる。
それに花恋が訝し気な顔でセルリアンを見遣り、その視線の先を見つめようとする。
「……博士だ。」
「「「え?/はあ?」」」
「…いわゆる、覗きってやつだね。」
「いや、スノウ!アンタ、冷静すぎじゃないかい?!」
この女性陣の中では、一番彼の事を知っている花恋が憤慨したようにセルリアンの視線先を睨みつける。
「乙女の裸を覗きに来るなんて、罰当たりよ!!」
「何というか…。やっぱりこういうイベントってありきたりだけど、実際にやられるとあるんだなぁって実感するよ。」
「言ってる場合じゃないと思うけどね!!」
どこから持ってきたのか、花恋とナナリーが武器を持って奥の方にあった茂みへと向かっていく。
リアラは不安そうに胸の前で手を合わせており、その不安を取り除くようにスノウが手を繋いだ。
「大丈夫だよ、リアラ。……〈サーチ〉。」
手を繋ぎながらサーチで敵の位置を把握すると、スノウは苦笑いを零した。
本当にいるんだ、と実感しつつ、憤慨しながら勇んでいく乙女たちにその場から声を掛ける。
「…折角罰を与えるなら、少しのダメージはつまらないよね?」
「「???」」
スノウを振り返り、頭にハテナを浮かべた二人だったが、そのスノウの意見には賛成なようで同時に頷く。
それに、ニヤリと笑いを零し、スノウはリアラと繋いでいる手ではない、反対の方の手を湯から上げる。
そして―――
「___輝く御名の下、地を這う穢れし魂に、裁きの光を雨と降らせん…、ジャッジメント。」
スノウが指をパチリと鳴らすと同時に天空から無慈悲な裁きの光が現れ、花恋達の前方の方へ何度も光が激しく降り注ぐ。
慌てて退避した花恋達はごくりと喉を鳴らし、光が終わるのを待っていたが…。
「ぐえええええええ!!!!」
あの博士のすさまじい悲鳴が聞こえ、途端に顔を怒りに染める。
スノウに向けて「殺っちゃって!!」なんて物騒な事を言う位に、彼女らは激昂していた。
激しい音が鳴りやんだ後、光が落ちていたその場にプスプスと煙を上げた黒い何かが倒れている。
それに花恋がボキボキと指を鳴らし、それはそれは良い笑顔で近付いていく。
「あーら、博士ー?何でこんなところに居るのー?」
「の……のぞ、き…を……!!」
「まだ喋れたのね?それに素直でいい子ねー?」
花恋の黒い笑顔が博士に向けられる。
黒い物体となる前だった博士は酷いダメージを負っていて、死にそうになりながらも必死に…しかしゆっくりと顔を上げる。
そして、
「……お主、やはり体つきだけはええの…。」
「…。」
花恋はその言葉に、容赦なく博士の首を掴み男風呂であろう場所へ向けて投げ捨てた。
すると男性陣からの悲鳴が聞こえてくる。
「いーい?男ども?覗きなんて、次してみなさーい?……殺すわよ。」
途端に衝立の向こうはシーンと静まり返る。
それにスノウだけ声に出して笑い、ナナリーは花恋と意気投合したようにお互いの手を握り合い、セルリアンは不思議そうな顔で皆を見ていた。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+
温泉から上がった女性陣の顔はそれはそれは恐ろしい顔をしており、男性陣がたじろいでいた。
セルリアンは分からない顔をしているし、スノウに至ってはそれを見て、可笑しそうに腹を抱えて笑っている。
「ふふっ…。乙女たちを怒らせるからだよ。」
「実行犯はあのじいさんだけで、他の奴らは何もしてないんだけどな。」
「それが意外というか。絶対、ロニとかやってきそうだと思ったのに。」
「おいおいスノウ…、やめてくれ…。女性陣からの視線が痛いぜ……。」
スノウのその言葉に女性陣の侮蔑の眼差しはロニの方に飛んでいく。
それにたじろぎながら、スノウへ耳打ちする。
「それに、やるならもっと大人数を狙ってだな…。」
「ははははっ!!! やっぱり君は面白いね!!」
遂にその場でしゃがみこんで笑い出すスノウ。
そんなスノウの腕を女性陣が掴み、強制的に男性陣から離れさせると花恋を先導に、女子部屋へと向かっていった。
未だに笑っているスノウを見つつ、男性陣も今日の所は休もうと各々部屋へと向かっていたのだった。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+
___女子部屋
「やっぱり、こういうのって恋バナよねー!!」
女性陣は部屋の中に入るなり、それぞれのベッドの割り振りを決めてしまった。
その中でも花恋が先程の鬱憤を晴らすかのようにウキウキしつつ枕を抱きしめながら、ベッドに寝転がる。
いきなりの話題提供だったが、リアラも花恋の言葉に同意した所で話題はカイルの話に。
「確か、あなたってあの金髪が好きなんでしょー?」
「え?わ、私…?///」
急に矛先が変わり、リアラの頬が赤く染まる。
それに皆の顔がにやにやと変わっていく。
「恋バナってなに?」
少女姿のセルリアンが隣に居るスノウへ疑問を口にする。
「恋愛話、ってやつかな。」
「れんあい?」
「そうだなぁ…?特定の相手に強く惹かれて…、『もっと知りたい』『もっとその人に近づきたい』と思う感情のこと、だね。」
「感情…。私には、難しい…。」
「その内分かってくるよ。君は聞くところによると生まれたばかりらしいし、感情を知らないのも無理はないと思うんだ。だから、そういうのはいっぱい経験して、ようやく分かる様になるものだから。今は何となく聞いていればいいよ。」
「うん、わかった。」
「よし、いい子だ。」
セルリアンの頭を撫でて、優しい笑顔を浮かべたスノウだったが、話はかなり盛り上がっているようだ。
(特にナナリーと花恋が勝手に盛り上がっているようだが…。)
「ええー!告白しないのー!?」
「カイルなら受け止めてくれると思うけどねぇ?」
「で、でも…。やっぱり…その…。」
もじもじと恥ずかしそうにリアラが話しているのを、スノウも柔らかな笑顔で聞き入る。
そんなスノウの横顔を見て、セルリアンは訳が分からないとじっと見つめるのだった。
そのまま話題はナナリーに移ったり、花恋の過去の男談義に花が咲いたり、セルリアンは寝てしまったり……。
なんだかんだ女子の恋バナが深夜を優に越えてしまっていた。
___そんな時だった。
「……ぅ、」
「「「???」」」
急にスノウの方からうめき声が聞こえる。
唐突なそれに、三人は訝し気にスノウを見る。
すると、元々白い顔色を真っ青に染め、苦しそうに顔を歪めて自身の胸を掻きむしるような行為をしているスノウがそこにはいた。
「う、あ…」
「え?!ちょ、ちょっと!!スノウ、どうしたのよー?!」
花恋も驚いて寝転がっていた体を起こし、スノウへ近づく。
どうしていいか分からず、スノウの背中を摩るが一向に良くなる兆しが見当たらない。
リアラが急いで回復をかけるものの、全く効果をなしていない事が三人には分かった。
「ぐ、うぅ…!!!」
「「「スノウ?!」」」
息も絶え絶えになって苦しんでいるスノウを見るや否や、花恋が慌てて外に飛び出す。
「アーサーを呼んでくるわ!!!」
「わ、分かった!!」
花恋がそのまま走り去り、ナナリーはスノウの背中を摩り続けた。
リアラは変わらず回復をかけ、セルリアンは未だすやすやと夢の中だった。
********************************
次は幕間です。
温泉に入っているときの男子風呂を書いていきます。
この話は幕間の後に続きますので、お楽しみください。
管理人・エア