第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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___坊ちゃんサイド…
『坊ちゃん…。』
「どうした。」
『その…何で…さっき告白しなかったんですか?』
「はっ?!」
何を言っているとでも言わんばかりに顔を真っ赤にし、シャルティエを見るジューダス。
シャルティエが何故、そう言ったかというと先程まであった出来事がきっかけである。
あんなに良い雰囲気で、且つ周りを忘れるくらい甘ーい雰囲気だったのに坊ちゃんが告白をしなかったのが、シャルティエには気に食わなかったからだ。
『それに!スノウが服変わってたのに褒めるのは男性のマナーですよ?!』
「あ、あぁ…。」
あまりの剣幕に押されているジューダスだったが、その顔はまだ赤いままである。
更にシャルティエはここぞとばかりに反撃する。
『あんなに2人で無事を祈る場面なら普通、坊ちゃんから告白のひとつでもあってもおかしくないと思うんです!!』
「な、何を…!あの時、ナナリーがまだ居ただろう?!」
『“まだ”ですかぁ?』
「っ!」
今日のシャルティエはしつこい。
例の出来事の際にずっと無視されていたからか、その言葉は止まることを知らない。
『ナナリーも居づらかったと思いますよー?』
「くっ、何が言いたい?!」
『別にぃー?今から行って告白してきても良いんですよー?』
遂にはいじけてきたシャルティエにジューダスが立ち止まる。
シャルティエを取り出し、その中央にあるコアクリスタルをじっと見つめると、シャルティエのコアクリスタルがぼんやりと光を点した。
『…なんか、怖いんですよ…。2人が離れてしまうのが…。』
「……。」
『あれほど、モネだった時の名残が強かった初めの頃より、今のスノウは正直になってきています。自分の“願い”や“望み”に忠実になっている…。そんな中で2人が別れてしまうのが…何だか嫌なんです…。』
シャルティエだって分かってる。
今スノウに告白した所で、きっと冗談だと受け取られるだろう事は。
でも、何もせずには居られない。
だからこそ、自分の主人にそう言ったのだ。
主人の“望み”を叶えたいから。
「僕は、誰にもやられるつもりもないし、あいつも絶対に帰ってくると言った。僕はそれを信じる。」
『…!』
ジューダスが再びレアルタへと歩き出す。
その足取りはしっかりしていて、ちゃんと瞳に決意を宿していた。
『(坊ちゃんを試すような事をしてしまったかな…?でも、ここで覚悟を決めた坊ちゃんを僕はちゃんと支えたい。僕の…僕が選んだマスターだから…!)……で、坊ちゃん。次はいつ告白するんですか?』
「……お前らの居ない所でやるに決まってるだろう。」
『えぇ?!何でですか?!こんなに僕だって待ち遠しく待ってるのにですかぁああ?!!』
「ほう?そんなに爪を立てて欲しいか。」
『へ? いぎゃああああああああああ!!!?』
遠慮なくコアクリスタルに爪を立て傷をつけようとする自身の主人にさっきの決意表明が砕けそうになる。
でも、根底ではちゃんと主人を信じているシャルティエだった。
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___ナナリーサイド…
「…ねぇ?スノウ?」
「ん?」
立ち止まり振り返ると、気まずそうな顔でナナリーがあちこちに視線を彷徨わせていた。
何だか話しにくそうであり、何の話なのかも見当ついていない私はナナリーへと向き直り、優しく笑顔で促してみる。
それを見たナナリーは暫く口ごもっていたが、意を決したように大きく頷いた。
「このピアスってジューダスから貰った物なんだろ?」
「?? そうだね?それがどうかしたのかな?」
「その…アタシが持ってても良いのかい?」
「うん。それについてはこの間も言っただろう?皆と旅が出来るようになるまで、それはナナリーの御守りとして持ってて欲しいって。」
「そ、そうかい?」
ナナリーは嬉しそうに口元を歪ませたが、それは照れ隠しをしているようにも見える。
スノウはそんなナナリーを見て目を細め、優しい笑顔で見つめた。
「私が皆と旅ができる日…。そんな日が来るかは分からないけど、それでも…」
「来るよ。」
「え?」
「絶対に来る。アタシが保証してあげるよ!絶対にまた、皆で旅をする時が来るって!……そりゃあ、最初は皆気まずいかもしれないけどさ?」
きっとナナリーはあの人が偽物だとバレた時の話をしているのだろう。
最初、皆はあの人を私だと信じていた訳だし…間違いだったことに気付いてきっと皆落ち込んでしまうだろう。
「でもさ?今以上にきっと、仲間の絆が出来るってアタシは思うんだ。間違いを繰り返して、喧嘩して、仲間割れしても……最後には絶対に仲直りして皆が一つになれる気がする…。そう、思うんだよ。」
「……ナナリー。」
「って、あはは…!何だかクサいこと言っちまったね!」
「そんな事ないよ。そうやって仲間の事を思って言えるのが、ナナリーのいい所なんだから。もっと誇りを持って欲しいね?」
「…!!」
「確かに彼らは最初はきっと気まずい思いをするかもしれない。でも…、私は端から皆を怒っても居ないんだから、皆には堂々としてもらいたい。それでまた皆で…、旅がしたい。……楽しいんだ、皆との旅が。旅をしていけば行くほど、そう……感じるんだ。」
「スノウ…。」
「だから、ナナリーが“旅が出来る”って言ってくれて、本当心の底から救われた気持ちになったんだ。ありがとう、ナナリー。」
「うん…!」
更に嬉しそうに顔を綻ばせるナナリー。
今にも抱き着いてきそうだったので、両手を広げればそのまま思いっきり抱き着いてきた。
__ああやって、大人っぽいナナリーだけど……こうして見るとまだまだ子供なんだな…。
そう、スノウは感じていた。
「もし、この旅が終わっても…アタシの事忘れないでくれよ?」
「勿論。忘れるつもりもないし、何ならナナリーに会いにいくよ。…今ある旅が終わって、色々と問題が解決したら……皆に会いに行きたいな?」
「……〈赤眼の蜘蛛〉だね?」
「そうだね。……同郷として見逃せないのもあるけど、……まぁ、色々複雑なんだ。彼らとは。」
「アンタも大変だね。エルレインの事が一段落したらアンタの所を手伝うよ。人手は多い方がいいだろ?」
「ふふ、頼もしいね。……ほんと、頼もしいよ…。」
ふと、抱きしめる力が強くなった事にナナリーが気付いた。
今、スノウがどういう顔をしているか分からない。
でも、きっと苦しんでいるのかもしれない。
今こうして、彼らによって苦しめられているのだから。
まだ彼ら…〈赤眼の蜘蛛〉の仕業だと決まった訳じゃないが、でもこんな事をするのは彼らくらいだと思う。
それにエルレインと〈赤眼の蜘蛛〉は繋がっている。
確か、カイル達からそう聞いた気がしたから、今回もきっと〈赤眼の蜘蛛〉の仕業なんだろうとスノウと同じ意見だった。
スノウの後ろ髪を纏めた赤い、私の髪色のリボンが目につく。
そっと抱き締める力を強めて背中を摩ってあげればスノウは少しだけ俯くように顔を私に埋めた。
「(何だかんだこの子もまだ小さいね…。守ってあげたくなるよ…。こんなにも小さな体で…色んなことを受け止めてるんだから…大したもんだよ、ほんと。)」
スノウの身長は私より小さい。
ほぼ変わんないと言ってあげたいが、それでも頭は私よりも下にあるので小さいと言えるだろう。
そんな小さな体で、色々なものを背負って生きていくのは……辛いだろうし、苦しいだろう。
でもスノウは心の強さでそれを表に出さずに今までカバーしてきた。
どうしたって、ままならない事があるかもしれない。
スノウだって人だから、絶望する時が来るかもしれない。
その時は優しくそっと寄り添ってあげたいな…。
「…ねぇ、スノウ。」
「?」
「ジューダスのこと、どう思ってるんだい?」
「?? レディのこと?」
「アンタ、まだそう言ってたのかい…。止めてあげなよ?あの子も一応男の子なんだからさ。男としてのプライドってもんがあるだろ?」
「ふふ…。そう、だね…。でも言ってしまうんだ。彼を見るとどうしても、ね。」
「まぁ、今すぐに直せって言ってる訳じゃないんだよ。でも、いつかは直してあげなよ?」
「どうかな?直らない気がするけど?」
「はは…。直してあげなよ?」
呆れながらそう言えば、暫く唸った後「覚えてたらね」と言ってまた顔を埋めた。
「で、どうなんだい?ジューダスのこと。」
「……。」
暫く考えるように沈黙したスノウに、ナナリーは驚いていた。
少しの間だったけど、スノウも悩めるくらいの何かがあったのかも。
もしかしたら、好きだって気付いて──
「……彼は、…私の命を賭けても守りたい人だ…。」
「…………。(やっぱり変わらない、か…。)」
「でも同時に…、彼の隣に居たい、と思うんだ。彼との時間を大切にしたいって。」
「…!」
「だからこそ、大事にしたい。彼の事は…。」
「……そうかい。」
まだ、流石に恋とは気付いていないようだけど…。
海洋都市アマルフィでハッキリと言ったあの時よりも断然違う。
スノウが今回、言葉を濁して言ったのが何よりの証拠だ。
「……大事にしなよ。その気持ち。」
「ふふ。まるでナナリーは私のお母さんみたいだ。」
「なんか、それ複雑なんだよねぇ…?」
お互いに身体を離せば、2人して笑い出すのだからおかしい。
でも今のスノウはスッキリとした顔をしていて、どれの話でそうなったかは分からないけど、話してよかったとナナリーはホッとした。
「さて、まだまだ先は長いよ。行こうか、ナナリー。」
「あぁ!」
スノウの手を取れば、すぐに目の前が歪み何処か知らない所に着いたのでナナリーは驚いた。
これが〈赤眼の蜘蛛〉の研究所…?
それにしては──
「でかっ!!」
「ふふ、そうだね。……さて。」
スノウはナナリーの手を引きどこかに連れていく。
そこは宿屋と書かれた建物で、それに目を丸くするとスノウは苦笑いをした。
「眠らずに行くって言うのはナシだよ?ナナリー。」
「ははっ!そうだね!アタシの頭がどうかしてたよ!」
確かに夜通し起きているのだから、少しくらい休んだ方がいい。
私たちはこの大きな街の宿屋で泊まることにしたのだった。