第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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ようやく果たせたこの悲願。
前世から大好きだったゲーム『テイルズオブデスティニー』に出てくるキャラクター、リオンを救う事が叶って本望だった。
あそこで彼を救ったことによりシャルティエは神の眼で使われるだろうことも想定済みだった。
だから、デスティニー2の物語は起こらないかもしれないと思っていたが……どうやら一応私を起用してくれるらしい。
「貴女の願いは何ですか?」
「あー……、やっぱりそうなる?」
目の前にいる聖女エルレインを見て頭を搔くモネ。
まぁ、やるならやるで18年後のリオンの幸せな顔が見られるかもしれないし、やってやるか!
「えっと、18年後の世界に飛ばして欲しい。あと、武器も同じ奴で……そうだなぁ、髪を長くしてくれないかな?バレると色々とまずいんでね?後は服も変えてくれないかな?“考古学者”として……やった方が都合がいいか。なら学者風な服をお願いしまーす。」
「分かりました。人の子の願いを叶えるのが私の務め……。」
「…あんたも大変だな。人の願いを叶えなくちゃならなくて。本当、大したもんだよ。」
「それが私の務めですから。」
「それでもだよ。人に言われてやるんじゃない、あんた自身がやりたいと思ってやってるんだから、それがどういう結果でも凄いさ。」
途端に悲しそうな顔をする聖女に苦笑いを送る。
手を翳しこちらに伸ばされる手を見ながら、未来に思い馳せる。
リオンは……マリアンやスタン達と幸せに過ごせているだろうか?
彼が幸せそうならなんでもいい。
少しでもその片鱗が見れたなら私も浮かばれる。
例えこの旅の結末が自身の消滅だとしても……それでも私は……
「……君が幸せなら、それでいいさ。」
そして、あの悪夢を見続けるのさ。
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僕が目を覚ます前、何かの轟音と共にシャルの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
煩いくらいのそのシャルの悲鳴じみた泣き声に顔を顰め呻き声をあげる。
それに反応したのか辺りが急にシンと静かになる。
そして、僕が目を開けるとそこには困った顔のスタン達の姿があった。
……モネの姿はない。
下から唸るように聞こえてくる轟音……。
まさか……。
「…殺したのか?」
「違うっ…!違うんだ!!」
「何が違う…?お前らがあいつを殺したんじゃないのか…?」
口から出るのは仲間たちに対する詰りの言葉。
あいつがこの場に居ないことが何よりの証拠であるのに、何が違うって言うんだ?
『坊ちゃん…!よく、聞いてください……。モネは…、モネは僕達を上に上げるために自ら犠牲になったんです…!!!』
「は…?」
嘘だ……。
どういう事だ……?
だって、あいつは僕達の敵として現れて…戦って……。
《さようならだ。私の大切な友達……、そして何に変えても助けたかった…命を賭してでも護りたかった、大事な人よ……》
《……言っただろう?あの時……今は手の届かない大事な人だと……。》
《ごめんね。この先、君と私。一緒になれる未来なんて無いんだ。》
気絶直前のあいつの言葉が何故か今脳内で反復される。
それを思い出した瞬間、僕の頬には沢山の濡れるものがあった。
「「「「…!!!」」」」
ふと頬に触れるとその手も濡れて……、なんだこれは。
『坊ちゃん……』
苦しげな声音のシャルを見る。
僕は今、何が起こっているんだ……?
この頬に触れるものはなんだ?
どうして、こんなにも胸が苦しい……?
あいつが居なくて寂しいのか?
それとも、僕が……僕だけが生きていたという事実が心底嬉しいのか?
……一つだけ、分かる。
胸にすっぽりと穴が空いて涼しくなったことに。
誰にも埋められない……、空虚がそこにあることに。
「っどう、して……」
「リオン…。ほんとに、ごめんっ…!」
涙を流す馬鹿が僕を強く抱き締める。
何に対する謝罪なのか。
頭が真っ白で何も考えられないのに、僕は奴を突き飛ばしていた。
「なぜ……どうして、あいつを……気絶させてでも連れてこなかった……?」
「リオン、聞いてくれ…!!あの時、リフトの機械が……」
僕は何かを弁明し始める馬鹿を睨みつけてシャルを構えていた。
それに全員が息を呑み、シャルが悲痛な声を出す。
『坊ちゃん!!!!』
「あいつは……!モネは…!!!」
『坊ちゃん!!今は仲間割れしてる場合じゃないですよ!!!』
「黙れ…!!」
『っ』
自分が気絶していなければ何とかなったかもしれない。
あいつを誰かが説得していればこんな事にはならなかったかもしれない。
全て『かもしれない』という未来を思い描いてしまう。
今の事実を受け止めきれていない僕は震える手で変わらずシャルを掴み、仲間たちを睨みつけていた。
「待ちなさいよ!!あの子は自ら犠牲になったのよ!!?あの時、リフトのレバーはリフトに乗った私達より遠くにあった!!それをあの子が作動させてくれたから私達が助かったのよ!!!」
「だからなんだというんだっ!!!あいつが死んだという事実は変わらないんだぞ?!!!お前達が見捨てた!!それは事実だ!!!!」
「それは…、そうだけど…!!でもどうしようもなかったのよ!!!」
「リオン君、一旦落ち着きたまえ!ここで私達がいがみ合っても彼は喜ばないぞ!」
「知ったような口を…!!!貴様にあいつの何が分かる?!!」
ギリギリとシャルを持つ手が強くなり必然とその手は白くなっていく。
お前らにだけは…!
お前らには、あいつの気持ちなんて分かるはずないのに!!!
『誰か…!坊ちゃんを止めてください!!このままだと、坊ちゃんが壊れてしまう…!!』
「そんなこと言ったって!!このバカ、全く聞かないじゃない!!!」
『っだから、言ったのに…!!モネ…!!僕は、どうしたらいいの…!!?教えてよ!!!モネーーっ!!!!!』
悲痛な叫びが全員を苦々しい顔へと変えていく。
僕はいつの間にか手のひらを返し、自身にシャルを向けていた。
それに全員が慌て始める。
もう……疲れたんだ。
あいつらの信じられない言葉を聞くのも、あいつが…モネがいないというこの現実も。
僕は…モネ……お前が……。
はたと僕は思考を停止させた。
僕は今、何を言おうとした?
あいつは男で、そんなはず、ないのに……。
そうだ、これは悪い夢なんだ。
何もかも可笑しな夢なんだ。
「おやすみ、シャル、モネ。」
『坊ちゃんっ!!!!!!!』
「貴方は何を望むのですか?」
「今更、何を望めと言うんだ……?僕は…あいつを救えなかったのに……。」
自らを聖女と名乗る女が僕に話しかけてくる。
もう疲れたんだ、寝かせてくれ。
そして、悪い夢から醒めさせてくれ。
あれは夢なんだ、現実じゃない。
「哀れな……。現実を受け止めきれない哀れな人の子……。あなたの願いは何ですか?」
「……」
すると、突如その空間に聞き覚えのある声がする。
『真実を知りたい。モネが……モネが成し遂げようとした何か。その全てを。……坊ちゃん、……僕は坊ちゃんの味方です。だから、どうか現実を見て下さい。そして、その目で確かめてください。』
「……あくまでもこの男のマスターでいるつもりですか?」
『誰がなんと言おうと、僕は坊ちゃんをマスターに選ぶ。……それはモネに頼まれたからじゃない。僕自身が選んだ道だ…!』
「モネに、頼まれた……?」
『坊ちゃんには知る権利がある!あの時、坊ちゃんが気絶している間に何が起こったのか!』
「ならば、見せてあげましょう。あの凄惨な現実を。」
見せられたのは紛れもない事実で、僕が気絶した後の映像だった。
「ごめんね。この先、君と私。一緒になれる未来なんて無いんだ。」
モネが気絶しかけた僕を抱きしめながらそう零す。
それは悲痛な顔で僕を抱きしめていてなんならあいつにしては珍しく泣きそうな顔だ。
そして、スタンが怒りを顕にした。
ディムロスを構えるスタンを見てモネが僕を優しく寝かせ、得物を構える。 冷たい目で射抜き、多少たじろいたがそれでも怒りは収まらないようなスタンはどこか悲しげでもある。
ちらりと何かの機械を見たモネは決意の漲った瞳をしていた。
「さあ、来い」
「うわぁぁぁぁぁああああ!!!!」
スタンの必死の剣戟は読みやすく、簡単に避けられている。
それはそうだ。だってあいつは僕と同等に強かった。あの馬鹿が敵う相手じゃない。
後ろにいる僕を気にしながら戦うモネのその姿にふと疑問が沸きあがる。
何故僕を庇う?
確かにスタンの馬鹿の攻撃は単調故に辺りに被害が及びそうな攻撃であった。
だが、気絶した僕を庇いながら何故戦ったのだろう?敵として現れた筈のモネが何故……?
突如、遠くの方で轟音が聞こえ始め、それは濁流が近づいているのだと瞬時に分かった。
「……」
「こ、この音…なに?!!」
「まさか、海水が流れ込んできているのか?!」 「え、まだここには味方がいるのに!!?私達ごと一緒に巻き込む気?!」
モネを見る皆の目は同情の眼差しだった。
しかしモネはその視線を受けても、その瞳に全くと言っていいほど揺らぎはなかった。
急いで僕を担ぎあげ、スタンへと魔法を使い精一杯投げ渡したモネはリフトに向かって指を指し、スタン達に指示を出していた。
「急いでリフトに乗って!!」
「皆!いくぞ!!!」
スタンが皆を振り返り、リフトへと急いだ。 彼等が1人残らず入ったのを確認したモネは柵を動作させる機械を弄っている。
……何をしている?
何故リフトに乗らないんだ。あの馬鹿は。
「お、おい…!?何やってるんだ!!早くお前もこっちに来いよ!!?」
「…敵に同情しているのかい?」
作業する手は止めずにスタンの言葉にモネがそう答える。
レバーらしきものに手にかけ、その瞳をレバーに固定したモネは話し出す。
「一つだけ、言っておこうか?私は自分の信じる道を突き進んだ。そして、それは私の昔からの悲願を成就させた。だから捨て駒だろうとなんだろうと、何も文句は無いのさ。……ただ、君たちにお願いがあるんだ。私の大切な友達をどうかよろしく頼むよ。彼を支えてやって欲しい。私の分以上に……彼に寄り添ってあげて欲しいんだ。」
……やめろ、
何故お前がそんなことをいう?
まるで今から死ぬのが分かってるみたいに。
「待って下さい、モネ!?なんでその未来に君がいないの?!!おかしいよ!!?」
「シャルティエ。君にもお願いがある。例えリオンと別れる時が来てもどうか見捨てないでやって欲しい。…まぁ、大丈夫だとは思うけどね?」
目を閉じ笑みを浮かべるモネはやりきったという顔つきをしていた。
だが、僕たちにはその光景がいやに妙に見えて仕方がない。
「モネ、おかしいよ!!?君はまるで未来を知っているかのように…!!以前坊ちゃんに言っていた助けたい人って…、未来の__今の坊ちゃんだったって事?!!どういう事なんですか!?説明してくださいよ!!?」
そうだ。あいつは昔、僕に手の届かない人を助けたいと言っていた。
それが……未来の僕……?
何故僕なんだ?
「シャルティエ。説明は必要ないのさ。私は君たちを裏切った。それだけ覚えててくれればいい。」
「そ、そんな…!?」
「さようなら。シャルティエ。」
「モネ!!待ってください!!モネも…!!」
「では、誰がレバーを下ろす役目をすると?」
「「「「?!!!!」」」」
リフトから態々離れた場所にある不自然なレバー。
誰かを巻き込む為にわざわざヒューゴが用意した趣味の悪い工作。
あいつならやりかねない、と思えてしまうのは親子だからかなんなのか。
「そ、そんな…!!?それじゃ、モネは……、モネはどうなるんですか?!!」
「濁流に巻き込まれるだけさ。そして私は漸く死ねる。長かった……ここまで。」
ふと天を仰ぎ見るモネ。
でもその笑みは消えない。
「簡単に死ぬなんて言わないで下さいっ!!!坊ちゃんはどうなるんですか?!!」
「私以外に大切な仲間がいるだろう?そこの仲間たちが。」
モネは分かってない。
アイツらとお前を比べるなど……。
「違うっ!!そう言ってるんじゃないんです!!僕が言いたいのは__」
「シャルティエ、時間切れだ」
モネが容赦なくレバーを下ろすと、無情で無機質な音が鳴り響く。
そのレバーを背に、その場に座り込むモネは俯き表情が分からない。
段々と上がっていく僕たちを乗せたリフト。
泣き叫ぶシャルの声。
「ありがとう、リオン。今まで楽しかったよ」
僕とシャルは同時に息を呑んだ。
微笑んでそう言ったモネは本当に綺麗で女と見間違うほどだ。
直後、激しい濁流がモネを襲い、呑みこんでいく。
そこで映像が途切れた。
「……これが紛うことなき真実。」 『まさか、モネが最期あんな言葉を残していたなんて……』 「モネ……」
現実なんだ。
全て悪い夢じゃない、現実。
『坊ちゃん……』
「ようやく、現実を受止め始めましたね。」
「……何故、モネは未来を先読み出来たんだ……?シャルも言っていた……昔、助けたい人がいるって言ってたあれは……?」
『だから、真実を知りたい…!!モネが成し遂げようとしたその何か……!僕達は知る権利があるはずです!あの言い方……まるで僕達に襲い掛かる災難を防ぐような言い方でした!!』
「……それは直接彼女に聞けばいいでしょう。今から18年後の世界……彼女はそこにいます。」
『え、“彼女”?一体、誰の__』
「行きなさい、人の子よ。貴方に神の祝福を……。」
突然光に包まれ、気付けば牢屋の中だった。
歪んだ物語が修正され、再び運命が廻り始める。
彼らに待ち受ける運命は幸か不幸か…。