第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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スノウが目覚め、仲間達は情報交換を行っていた。
この改変現代の世界の話や、ジューダス達が考えたこの世界の現状を聞いて、スノウは大きく頷いた。
「(やはり、私が居なくとも皆はちゃんと答えを導き出せた。良かった…。私の影響がまだ少なくて…。)」
「スノウはどうだと思う?やっぱりここって現代なのかな?」
「私も皆の意見に賛成だ。ここは明らかに現代だろうね。地図の街の位置が現代と同じだったという所だけを見てもやはりそうだと思う。」
「……。」
「じゃあ今後の課題のどうやって過去に戻るかなんだが…。肝心のレンズが無くてな…」
「(まだエルレインの声が聞こえてないのか…。それにベルクラントから射出される光を見ていないからか…?)」
「私の力で過去に戻るにはレンズが圧倒的に足りないの。ねぇ、スノウ。レンズが多く残ってる場所とか知らない?改変されたこの現代でも残ってるものがあると思うの。」
「……思い当たる所は今のところ思い付かないね?ごめん、役に立てそうになくて。」
「ううん!大丈夫だって!スノウが起きただけでも百人力なんだからさ!」
カイルが相変わらず嬉しそうにそう話してくれるので、笑顔でそれに応えた。
しかし、個人的には早い所エルレインの所…光のほこらに行って過去に行きたい所ではあるが…、話を無理矢理に進めるのもおかしい。
さて、どうしたものか。
「ねぇ、スノウ。ひとつ聞きたい事があるの。」
「うん?なにかな、リアラ?」
「スノウは以前、“神”を信じる質だって言ってたわよね…?」
「そうだね。」
「そんなスノウでも……“神”は要らないと思う…?」
「(そうだよね…。リアラの今の悩みは“神”が要らないと言ったカイルの言葉をまだ頭や心の中で呑み込めていないからだ。“神”を否定されることは聖女である自分を否定される事だから。)」
その悩みは少しすれば解消される。
でもそれまでは原作でも独りずっと悩み続けていたリアラ。
私の答えで解決出来るとは思えないが、私は私らしく、自分の答えを伝えよう。
しかしそんな中、カイルが話の間に入り込んでくる。
「オレは“神”なんて要らない。」
「おい、話をややこしくするなって。今はスノウに聞いてるだろ?」
「……“神”ね…?人はそれぞれ信仰する“神”が違ったりするからね。だから私は一概に“神”を否定するわけではないよ?」
「!! じゃあ、スノウは“神”が必要だと思ってるのね?」
「それがリアラには申し訳ないんだけど…そうでもないんだ。私は私の“神”を信じる。それ以外の“神”には頼らない。そう決めているからね。」
「……」
ハッキリと言葉にした私にリアラが落ち込んだように俯いた。
ジューダスも何か物申したい様な顔をしていたが、空気を読んで静かにしていたのを見て僅かに肩を竦めた。
大丈夫だよ、リアラ。
君はエルレインの前でちゃんと自分の答えを見つけられる。
その時の君は誰よりもかっこよくて輝いているから。
だから、今は精一杯悩んで、悩んで、悩み続けて?
私は笑顔でリアラの頭を撫でた。
それだけでも少し安心したのか、柔らかい表情になったので私はそのまま頷いておいた。
「リアラは偉いね。ちゃんと皆の意見を聞いてそれを自分で考える力があるんだから。」
「そんな事ないわ…。だって、“神”を否定するって事は、私も……。」
「でも、それでもリアラは皆の意見を否定しなかった。自分で抱え込んでしまってはいるけど、何とか自分で呑み込める様に考えているだろう?その考えが立派なんだよ。君は“素敵”なものを持っているね。リアラ。」
「……!」
私の言葉に顔を赤くして、リアラは首を傾げながらはにかんだ。
照れている彼女に私も笑顔で応えて、次の目的地の話をする。
「因みに次の目的地は何処か決まっているのかな?」
「それが、まだ…」
「とにかくリアラの力で飛ぶためにもレンズのある場所を特定したいんだけどさ。何にも手掛かりがないから困ってるんだよ。」
「……。」
一瞬空を見上げた私を目敏く見つけたジューダスが何かを思案するように視線を逸らせた。
「(そうか…!ベルクラントがあるならばそこには大量のレンズがある…。ベルクラントの発射される力はレンズの力だからな。)」
「私もまだ起きてすぐだから場所まで思いつかない。今日の所はお開きにして、少し考えさせてくれないかな?それでいいかい?カイル」
「うん!そうしよう!オレもうお腹ペコペコだよ!」
「ったく、お前ってやつは……まーた腹が減ったのかよ……。こりゃあ、暫くまた金でも稼がねえとシャレになんないぜ?」
「ふふ、そうだね。それもいいかもしれないね?」
話はジューダスが思っているのと違う方向へと向かっていく。
口を開きかけたジューダスだったが、何処かを見つめるスノウを見て口を閉ざした。
「(あいつにも何か考えがあるのかもしれん。ここは様子見か。)」
解散した私達はそのまま皆、思い思いの目的の場所まで移動していった。
それを見送り、私は例の映写機のある隠し場所まで歩き出す。
道中にはやはり額に例のレンズを付けている人達を見掛けて少し複雑な気持ちだ。
そして映写機まで辿り着いた私は機械に触り、壁へと映写機の映像を投影する。
映写機から流れるその光景はゲームの中で何度も見てきたものなのに、先程額にレンズを入れていた人達を見た時と同じ感情が胸に溢れてくる。
以前は手にコントローラーを持ち、テレビの前でワクワクする気持ちを抑えながら、ゲームの1プレイヤーとしてこの世界を見てきた。何回も周回してきた時には次の展開が分かっているから憂鬱になる時もあった。
__だが今回は違う。
現実でこうやって旅の仲間に入れてもらって、そして皆と同じものを見聞きして……そして皆と同じ事を体験して、同じ気持ちを感じてきた。
だから映写機の映像を見たり、街の人の額のレンズを見る度に、以前1プレイヤーとして抱いていたのとは違う感情が溢れてくるのだ。
人々の営んできた歴史を否定しているエルレインに悲しい気持ちで一杯なんだ。
カイルの様な怒りよりも先に悲哀の感情が来てしまうのだ。
エルレインも可哀想な一人の人間だと分かっているから。
聖女だと頑張りすぎて、周りが見えなくなって、でも誰も助けてはくれないし、他とは違う孤独を感じている彼女。
「……複雑だなぁ…」
でもだからといって、エルレインが行う歴史改変だけは許してはいけないんだ。
そうすれば、今まで歩んできた人達の功績も努力も営みも全て消し去ってしまうのだから。
だからエルレインを止めなくちゃいけないんだ。
「……。」
物語は終盤へと入った。
それは、皆との旅の終焉を意味しそして……皆との別れでもある。
近付いてくる終焉と、彼…ジューダスとの別れ。
そして新たな使命……。
「……。(まだまだジューダスと………友と一緒に居たい…。まだまだ私の知らない彼を見てみたい。隣に……居て欲しいな…。)…………寂しい。」
この小さな空間に、その小さな声はとても響く。
座り込んで膝の上に顔を伏せたら、何だかセンチメンタルな気持ちになってきた。
次皆と会う時にはちゃんとしなくちゃ。
でも今は、少しだけ弱音を吐かせて欲しい。
膝の間から映写機の光が入り込んで来て、眩しいそれに一度目を閉ざす。
反対に、陽の当たらないここは少しだけ肌寒い気がした。
でもそれよりも心の方が肌寒くて、そして寂しくなってくる。
……皆の幸せを台無しにする〈赤眼の蜘蛛〉が嫌いだ。
私がどうにかしないといけない、そう思っているのに……いざまた独りになると分かった途端これだから困ったものだ。
「誰でもいい……。隣に……居て欲しい……。」
願ってはいけないのに。
独りでやり遂げると決めたのに。
彼らには彼らの幸せを掴んで欲しいだけなのに、何故こんなにも寂しいのだろう。
これも今、仲間達と居て楽しいからこそ、淋しさが際立つのだ。
「……。」
あぁ、考えるだけ虚しい。
もう止めよう、こんなことを考えるのは。
今は次の話に進む為の情報収集をすればいいのだ。
「……よし!」
思いっきり立ち上がり、気合を入れると目の前には思いがけない人が立っていて驚きはしたが、すぐさま苦笑いをした。
ここに私が居ることが分かって、探しに来てくれたのだろうか。
「こんな所にまでどうしたんだい?レディ?」
「……。」
気まずそうに視線を逸らせた彼だったが、すぐにその視線は私を射抜いた。
その視線に気付かないフリをして、更に話し掛ける。
「ここは日が当たらなくて寒いから止めた方がいいと思うけど?だから私はそろそろ出ようと思うけど、レディはどうする?」
「待て。」
私の身体はもう外の方へ向いていたからか、彼は私を引き止める。
歩き出してはなかったが、いつでも歩ける体勢だったので姿勢を正し、彼の方へと体を向けた。
「……僕は……」
「……。」
言葉が途切れてしまった彼に笑顔で僅かに頷き、続きを促す。
何か私には言い難いことだろうか?
あんなに言い淀むのも珍しい気がして、彼から話すまでじっと待つ事にした。
「……僕は、確かに死ぬかもしれない。」
「!!」
その話か。
やはりずっと考えていたんだ。
私がはっきりと言ってしまったから考えざるを得なかったのだろうけど。
「だが……、お前のようにどうにかまた生きられないか?」
「…!! それって……もしかして、私のやらなければならない事に、付き合ってくれるって事…?」
まさか、そんなことを言ってくれるなんて。
……嬉しい事を言ってくれる。
その言葉にどれだけ私が喜んでいるか、彼は分かっていないだろう。
というより、もしかしたら先程の独り言を聞かれていたのかもしれないな。
だから、彼は一生懸命考えてその答えに辿り着いたのかもしれない。
「……嬉しいよ。」
「??」
「まさか……、君がそんな事を言ってくれるなんて……思ってもみなかった。でも、そうだね。生きたいというのは人間の本能だ。当たり前なのかもしれないね?」
「僕は、そんな事の為に生きたいんじゃない。お前の為に生きたいんだ。」
「……!」
「隣に居ると誓ってくれたお前に、僕もお前の隣でお前自身を守ると誓った……。それが叶わないのが、僕は嫌なんだ。」
本当……、いつでも君はかっこいいよ。
私の欲しい言葉を何事もないかのように言うんだから。
「……。」
「この旅の終焉……確かに僕は消滅する。だが、その生をどうにか延ばせないか。それかまた生き返るかしてお前の隣に居たい。……お前がまた寂しがらないように、な?」
「……やっぱり聞いていたのか。」
「聞こえてきたんだ。馬鹿者。」
馬鹿と言う割に顔は穏やかで、彼は私の手をギュッと握りしめてくれた。
あぁ、暖かい……。
冷たい手が徐々に温かみを増していく。
この感覚が、どうしようもなく……“愛おしい”。
「……暖かいね、君の手は……いつでも。」
「お前の手が冷た過ぎるんだ。何なんだ……。雪国出身は漏れなく冷え性なのか?」
「ふふっ!そうかもね?」
冗談でもそう言ってくれて、何だか気持ちが軽くなるようだ。
「ねぇ…ジューダス。」
「ん?」
「ありがとう。」
「だから……お前が礼を言うと縁起でもないから止めろと言っただろう。」
「ふふっ…!ごめんごめん。でもさっきのお礼は、紛れもない今の私の本当の気持ちだ。本当にありがとう…。」
「……ふん。」
「私の“神”は今回の旅が終われば私を生き返らせてくれる。それは確定なんだ。だから、願わくば君も一緒に出来ないか交渉してみるよ。これくらいの我儘は許して欲しいしね!」
毎朝ちゃんと磨いて崇め奉っている鞄の中の“神”の像を一撫でする。
すると、天からクスリと笑われた気がした。
「頼むよ……?私の“神”様……。」
願う様に呟かれたその言葉に、鞄の中の像が僅かに反応した気がした。
それに私もクスリと笑うと、彼の顔は怪訝な顔になっていた。
「その“神”とやらと交信でもしているのか?えらく上機嫌だな。」
「まぁ…ね?でもきっと彼は許してくれると思うよ?……そう、感じたんだ。」
「……そんな事で本当に生き返れるなら、お前は凄い。」
「ははっ!ありがとう!」
私は彼の手からするりと抜け出し、彼の身体へと抱き着いた。
それに驚いて息を呑んだ彼にクスリと笑うと、何となくだけど拗ねている気がした。
でも、すぐに背中に回された手が私には嬉しい。
「この旅も、来世でも宜しくだ。親友?」
「あぁ。任せておけ。お前は放っておくとすぐに危険な事に首を突っ込むからな。お目付け役が必要だろう?」
「酷いなぁ?私がいつ危険な事に首を突っ込んだんだい?」
「今も突っ込んでるだろうが。自覚ないのか馬鹿。」
「馬鹿は酷いなぁ?そんな馬鹿に君は付き合ってくれるけど、メリットなんて無いに等しいんじゃない?」
「メリットがあるならこんなに苦労はしていない。」
そんな冗談を暫くやって、私達はどちらともなく笑って離れた。
「《 If it can be imagined, it can be created.》」
「…ファンダリアの願いの叶う店で言っていた奴か?」
「あぁ。意味は《想像出来るなら、それは創造出来る。》……幸せになりたいのなら幸せになりなさい、って言われたんだ。エニグマにも、“神”にも。……私は、君の隣にいるととてつもない幸せに浸れるんだ。だから、そんな君の隣に居れるという事が、今とっても嬉しいんだ。こんな気持ち、私の三度の人生の中でも初めてなんだ。」
「…!!」
「前世では叶わなかった君との時間……大切にしたい。この旅でも……来世でも。何度だって言おう。私は君の隣に居たいから。」
それはまるで告白の様で。
ジューダスはスノウの言葉に顔を真っ赤にさせ、顔を手で隠した。
恥ずかしげもなく言いきったスノウへ恨めしそうな顔を向けたが、その顔はまだ赤い。
「この気持ちがなんなのか…まだ分からないけど……。それでも、大切にしたい気持ちなんだ。」
「……。」
胸に手を当て、ゆっくりと目を閉じたスノウを見て、ジューダスは一度深呼吸をした。
そしてスノウの肩に手を置き、ジューダスはスノウへ視線を固定させる。
その顔は何かの覚悟を決めた顔で、スノウはそんなジューダスに僅かに首を傾げた。
「スノウ。……僕は、お前が──」
「ちょっと!!2人とも!!こんな所にいたの?!!」
途中でカイルが侵入してきて、スノウとジューダスの間に入り込む。
その顔は大真面目な顔をしていて、スノウはすぐにジューダスからカイルへと視線を向けた。
『(バカーーー!!!折角坊ちゃんが告白をしようとしていたのにぃー!!!?)』
外から気まずそうに入ってきた3人組がジューダスを見てそれぞれ苦い顔をしていた。
__「マジでごめん」
そんな顔をした3人組にジューダスが大溜息をして、スノウから離れた。
「2人共こんな暗いところで何してるのさ!晩御飯だよ?!」
「もうそんな時間になっていたのか。気付かなかったよ。全く…時間が経つのは早いね?」
「ねえ!スノウは何食べたい?」
「そうだね……私は……」
遠ざかっていく2人の声を聞きながら、その場に留まっていた4人はお互いに顔を見合せた。
「あー…。マジでわりぃ…。カイルのやつを止められなくて……。」
「私たち、聞き耳を立てようと思ってた訳じゃないのよ?えっと……その……」
「まぁ、聞こえちゃったっていうか……ね?」
ロニは頭をかき気まずそうにして、リアラはモジモジと、ナナリーも視線を逸らせて頬をかいていた。
そんな3人に横に首を振ったジューダスは、その場から離れようとした。
しかし3人がそれを止めさせた。
「なぁ!ジューダス。ちょっと聞こえてきたんだが……、お前らって…近々死ぬ予定があるのか?」
「……。何処まで聞いていた?」
「全部じゃねーけどよ…。何か物騒な話してんな、とは思ってた。」
「ねぇ、スノウが信じている“神”って誰の事?フォルトゥナじゃないの?」
「その質問に僕は答えられない。僕も何が何だか分からないからな。」
ジューダスの言葉にリアラが「そっか…」と落ち込んだ。
ロニも分からない事だらけで、何を話そうか迷っているように見える。
ナナリーはそんなロニを見て一度頷き、ジューダスを見た。
「“神”がなんとかは別にいいとして……。本当にあんた達大丈夫なのかい?死ぬ気、なんじゃないのかい…?」
「別に死ぬつもりはない。ただ……僕達は前世で死に、エルレインによって生き返らせられている存在だ。……いつ何が起きてもおかしくはない。もしかしたら数時間後には消されているかもしれないし、それは流石に僕達にも予測がつかない。……だが、これだけは言える。僕もスノウもお前達を信頼している。何があっても後悔はしない。」
「「「!!!」」」
3人の顔が驚きに満ち、そして嬉しそうに笑った。
まさかそんな言葉を投げかけられるとは思わなかったからこそ、そして仲間の言葉だからこそ嬉しいのだ。
「私も、2人を信頼してるわ。エルレインによって生き返らせられているとしても、私は2人が幸せになれるようにしたい。」
「へっ!俺だってやってやるぜ!……んで?次の告白の予定はあんのか?俺様が場を作ってやってもいいぜ?」
「あんた、それは野暮ってもんだろ…。ここは2人に任せなよ…。アタシたちはただ見守ればいいんだからさ。」
「……絶対にお前達の居ないところでするに決まっているだろう。」
嫌そうな顔で3人の顔を見たジューダスだが、出入口付近で再びカイル達が顔を覗かせる。
「晩御飯だってカイルが言ってるけど、皆は食べたのかな?」
「ちょっと!皆までそんな暗いところで何してんのさ!早く行こうよ!」
「お前……。マジで後でジューダスに謝れよ?」
「え?なんで?」
「??」
「いいから。謝っとけよ?」
「う、うん…。よく分からないけど、ごめん!ジューダス!」
「……」
呆れた顔で首を振ったジューダスにカイルとスノウだけは首をずっと傾げていたのだった。