第一章・第2幕【改変現代~天地戦争時代まで】
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僕達が目を覚ましたのは洞窟の中だった。
イクシフォスラーも近くに無い。
そして__
『…スノウがいません…』
「……。」
「「「「……。」」」」
ナナリーはどうやら無事な様で、洞窟内で目を覚まし事態の把握に努めようと必死のようだった。
暗い顔をしている仲間達、そしてスノウが居ないという現実。
ナナリーもそれには言葉を失ってしまっていた。
「…とにかく、外に出てみよう。」
カイルの落ち込んだ声に皆が静かに頷き合う。
僕もその一人だった。
まさか、あいつが居ないことがこんなにも皆に弊害を生むとは思ってもみなかった。
……いや、本当は、頭の何処かでは分かっていたのかもしれない。
だからこそ、考えないようにしていたから今、言葉が出ないのかもしれないな。
その後、沈んだ気持ちで外に出た僕達は信じられないものを目にする。
ダイクロフトが空に浮かんでいたのだ。
「なんであれがあるんだよ…! 18年前、スタンさん達がぶっ壊したはずだろ?!」
「じゃ、じゃあ、ここは…過去なの?!」
「そんなはずない!だって、時間を飛んだりはしなかったもの。過去へも未来へも…!」
「だとすると…、ここは現代ということか…。」
『…ここにスノウが居たら知恵のひとつや二つ、言ってくれたかもしれませんね…。……スノウ、何処にいるんだろう…。』
寂しげに言うシャルに僕は目を伏せた。
隣に居ないあいつに、無意識に恐怖心を抱いていた。
また僕の前から居なくなるんじゃないか、いつの間にか死んでるんじゃないか、と怖くなったのだ。
結局話は、僕の知恵とリアラの推測でエルレインの仕業という事が仮定づけられた。
過去を変え、世界を変えているかもしれないという事実の裏付けをすべく、僕達はドーム状の建物へと移動することになった。
……時折、寂しそうに仲間を心配するカイル達がそこにはいた。
だから、早く姿を見せろ、スノウ…!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「っ、」
目を覚ましたら、私は何やらファンシーな部屋で寝かせられていた。
部屋中がピンクやら赤やらで、とにかく明るい部屋であることが目に見えて分かる。
恐らくだが、ここは花恋の部屋なのだろう。
その証拠に花恋の持ち物と思わしきアクセサリー類がそこら辺に置かれていたし、何より可愛いもの好きな彼女の性格を思い出す限り、この部屋は彼女の性格をより表しているように思える。
「…そうだ、ナナリーは?!」
近くに居ない所を見ると、私だけが移動したようで仲間達の姿は何処にもない。
あの時…かなり深手を負ったように見えたから、ナナリーの状態がとても心配だ。
一応回復はかけてあるにしても、だ。
「……今はどの時間軸だ…?ジューダス達は…何してるんだろうか。」
私が居なくともやっていける面子ではあるが、今どこのイベントを進んでいるか位流石に気になる。
もしかしたら改変された現代にいる可能性も否定出来ないし、まだ改変されていない現代で燻っているのかもしれない。
問題はエルレインがどの位置にいるか、だが。
「とにかく、ここを脱出しよう…。」
契約の指輪は全て抜き取られていて、完全にフリーな状態で両手が空いている。
その上、大事な相棒もどこかに置かれているようだ。
それらを探した上で時間軸や場所の特定を急がなければ…。
「ここら辺に仕舞ってあるとか…ないかな?」
他人の部屋を家探しするのは失礼だが、連れ去ってくれた彼等も彼等だ。
ここは遠慮しないで探させてもらおう。
「……。」
引き出しという引き出しを開けてみるが、めぼしい物は無さそうだ。
ということは、指輪や相棒は部屋の外にあると思った方がよさそうである。
早速部屋の外へ出ようとしたが…、
ガチャガチャッ!!
「……そう、上手くは行かないか…。」
厳重にも鍵が掛けられていて、ドアノブがビクともしない。
何なら向こう側に衝立でもしてあるのか、それとも接着剤の類いで貼り付けてあるのか(そんな事するような場所では無い気がするが…)本当にビクともしないのだ。
「……弱ったな。」
破壊は大の得意であるが、精霊達が居ない今、その破壊音で警備隊やら魔物が寄ってきても困る。
かといってここでじっとしてても何の得にもならないのも明白である。
ならば、何とかしてここから脱出すべし。
「一か八か…、やってみますかね。」
銃杖だけはどこからともなく取り出す物なので、奪われはしなかったのが幸いした。
銃杖を構え、扉へ向けて発砲した。
ドガシャン、というかなり派手な音はしたものの、扉が破壊出来たので良しとする。
急いで外に出てみれば、長い廊下のお出ましときた。
右か左かの選択で、日本にいた時に流行っていたとある法則…クラピカ理論に基づき、左を選択した。
「〈サーチ〉」
頭の中に地図を描きながら探知をする。
すると周りには魔物やら人の気配が無いことに気付く。
何だ、初めの方でこれをやっておけば良かったじゃないか。
それならば破壊の限りを尽くして、ここを出たのに。
「……さて、指輪と相棒を探しますかね。」
探知によると武器庫のような場所に相棒が、妙な所にあるのが指輪と……流石に一緒に居てはくれないようだ。
効率的に回りたいところだが、果たして先にどちらを迎えに行くべきか。
「ここから近いのは相棒の方か。」
先に自分の相棒から取りに行く事にした私は、そのまま廊下を進み続け相棒の奪取に成功する。
あまりの呆気なさに拍子抜けしていたが、サーチの探知に反応が掛かって、慌てて近くの物陰に隠れた。
「おい、こっちから音がしなかったか?」
「んな、アホな…。ここには誰もいないはずだぞ?花恋様もアーサー様も今はお出かけ中だ。」
「……んー?だけどよ、確か花恋様のお気に入りの〈星詠み人〉が捕らえられてるんだろ?確認しに行った方が良いんじゃないか?」
「……。(マズイな…。恐らくそれは私の事だろうな…。)」
「それもそうだな。確認しに行ってみるか。もし逃げ出しでもしてたら俺たちの命の方が危ねぇ…!!」
「アーサー様や花恋様は目的の為なら容赦ない方々だからなぁ…。全く……末恐ろしいよ。」
「んで?捕まえてる〈星詠み人〉はどんな奴なんだ?」
「確か…、澄み渡る空のような髪色に……」
「綺麗な海色の瞳をしていて……」
「お姫様のような可憐な人、らしい。」
「(待て待て待て…!!それは一体誰の事だ?!)」
思わず心の中でツッコミをしてしまったが、私はそんな姫のようなしおらしい性格をした覚えはないし、姫のようなお淑やかな事をした覚えもない。
……というより、本当に今更なんだが…〈赤眼の蜘蛛〉は制服があったのか。
なら、それに紛れる形がいいかもしれないな…。
今居るのが武器庫ということもあり、近くに〈赤眼の蜘蛛〉の下っ端の制服が無いか見渡してみる。
丁度フードもあって、顔も隠せるという好都合な服である。
先程の男達が話しながら移動したあと、急いで制服を探し素早く着替えた。
全身黒づくめで、最初に会った修羅や玄がこれを身に纏っていたことをふと思い出す。
……今や彼らは正体がバレてもいいと思っているのか知らないが、この黒いローブを着ることはなくなってたが。
「おい!早く探せ!!」
「アーサー様と花恋様が帰ってこられる前に探し出さないと…!!」
慌ただしく男達が廊下を行き来しているので、サーチを使い、男たちの場所を把握する。
「(…ふむ。散り散りになってるな…。なんと面倒な…。)」
居なくなったのを見計らい、廊下へと身を滑らせる。
次に契約の指輪のある場所へと向かおうとすると、男と鉢合わせてしまった。
「おい?!見つかったか?!」
「……(フルフル)」
「くっそっ!どこに行きやがった!!もう外に逃げたんじゃねえよな?!お前も早いところ見つけ出せよ?!俺らの命がかかってんだから!」
そう言うと走り去っていく男にホッと一息つき、私はそのまま目的地へと滑り込んだ。
『『『『!!!』』』』
精霊達が息を呑むのが分かる。
そっと近付き、優しく指輪へと触れると私だと分かったようで安堵したような雰囲気を感じ取った。
「……すまない、遅くなって。」
『……良かった…!…心配した!』
『ほら、無事だったでしょ?スノウなら大丈夫だってボクは思ってたよ?』
『ほ、本当に良かったです…!ご主人様!』
『主人よ、体調はどうだ?』
「うん、特に変化はないよ。大丈夫だ。」
指輪を早々に着けていき、急いで出ようとすると扉が急に開かれる。
「……何でこんな所に下っ端がいるんだよ。」
「!!(…修羅!)」
「おい。答えねえと彼奴らにチクるぞ。」
私の近くに寄って、苛立たしさをそのまんま表現した態度で話しかけてきたのは修羅だった。
海琉は今日は一緒じゃないようで、1人不機嫌な様子でここに来たようだ。
……しかし、こんな所とは?
普通の場所に見えたが、もしかして機密情報があった場所なのか?
「チッ…。だんまりか。最近の下っ端は碌な奴がいねえな。」
「……」
どうするか、すごく迷っている。
一応彼は〈赤眼の蜘蛛〉の組織員で、私達の敵なのだ。
ここで助けて、なんて言おうものならどうなるか…。
それに彼自身にも迷惑が掛かるだろうしなぁ…?
「…ん?」
「(バレたか…?)」
フードの中身を見ようとしているのか、顔を近付ける彼に私はフードをさらに深く被った。
それに怪訝な顔をして、嫌そうな顔をした彼は大溜息を吐いた。
しかしこれでは何時まで経っても平行線のままだ。
ここは修羅には悪いが、気絶してもらおうか。
ガチャリとすぐさま相棒を銃へと変形させ、それを彼の額へと当てる。
「っ!? その武器…!まさか…!!」
「……ごめん。修羅…」
「なっ、」
脳へと直接気絶弾を撃ち込んだ私は、そのまま彼が地面で頭を打たないように支える。
ゆっくりと頭を下ろし、気絶した事を確認した後、必死に謝りながらその場を走り去った。
出口まであと少し…!
その時、誰かが私の前を遮ったと思ったらそのまま抱き締められた。
一瞬の出来事に目が点になってしまうが、ここで捕まれば彼らに会えなくなってしまうという気持ちが強くなり、その誰かからの抱擁から逃げ出そうとした。
「馬鹿っ、俺だ!」
「…え?!」
待て、この声…!修羅じゃないか?!
さっき気絶させたのにもう起き上がるとは、どんな身体してるんだ?!
そんな私の疑問を汲み取ったのか、修羅が目の前に何かを見せつけるように出してきた。
そして、その見覚えのあるヒヨコのアクセサリー…。
「……ピヨハンか…!!」
「そういうことだ。……はぁ、まさかあんたがここに居るなんて、誰が想像つくんだよ…。かっこ悪いところ見せちまったじゃねえか。」
大溜息を吐いた修羅はその場でしゃがみこみ、頭を掻いていた。
というより、こっちはそんな事を気にしている場合じゃないんだ。
「修羅、悪いけど急いでるんだ。また今度──」
「まぁ、待てって。」
肩を押えられ、慌てて逃げようとするが流石は男の人だ。
全然ビクともしない。あの扉のようにビクともしなかった…。
「俺が案内してやる。ここから出るんだろ?ここの出口は危険だから裏から行くぞ。」
「?? 危険って?」
「ここはセキュリティがしっかりしてるからな。カメラ解析ですぐにあんたがここを通ったってバレる。だから裏から通っていくぞ。……こっちだ。」
修羅の案内で裏口へと移動する私達。
道中、ここに居る理由を修羅に聞かれ素直に答えたら、から笑いが返ってきた。
それに不服そうに言葉を返せばようやく彼の笑顔が見られた。
「修羅様っ!!」
「……どうした。」
「例のお姫様が逃げたようなんです!!一緒に探しては貰えませんか?!このままだと俺たちは…!!」
「……」
「?? あの、その後ろの方は…?」
「今新人研修中なんだ。そのお姫様とやらを見つけたらお前らに報告してやるよ。」
「ありがとうございますっ!!修羅様!!」
「……行くぞ」
修羅の合図で歩き出した私達。
しかし先程の会話でひとつ疑問が残る。
「……あんな事言っちゃって大丈夫なのかい? 君の立場というものがあるだろうに…」
もし、この新人研修が嘘だとバレたなら修羅はアーサーや花恋から何か問い詰められてもおかしくはない。
それに問い詰められるだけならいいが、もっと大変な目に遭うかもしれない。
「クスクス。心配してくれるのか?まぁ、安心しろ。そんじょそこらの奴に負ける気はしないからな。」
「……ごめん。」
「……?」
深刻そうな謝罪に修羅が振り返る。
俯いて、その上フードを被っているから表情が見えやしないが、きっとその中身は落ち込んでいるのだろう。
「…馬鹿だな。あんたは…優しすぎるよ。」
優しく頭を撫でられ、俯いていた顔を上げる。
すると、修羅が笑っていた。
「ここから逃げなかったらあんたは一生、あいつらの奴隷だ。……そんなの、俺は見たくはない。だから俺はあんたに協力するんだ。いいな?」
「……うん。……でも、やっぱりここからは独りで行くよ。もう手遅れかもしれないけど、君に苦しい思いはして欲しくないんだ。」
「……本当、馬鹿だな…。」
彼がこんなにも困ったように笑うのは初めて見た気がする。
フードを取り顔を晒した私は、修羅に精一杯笑った。
「っ!」
「ありがとう、修羅。」
目を見張り、苦しげに息を吐き出した修羅は何かに耐えるように拳を握り、唇を噛んだ。
そして、修羅はスノウを抱き締めていた。
「“モネ・エルピスの軌跡を追え”…。あんたの課題……、本当…難しかったんだからな。…“モネ”?」
「……ふふ、聡明な君なら当ててくれると思ったよ?」
「何でっ…! 何で他人なんかのためにあんたが命張ってるんだよ…!! 何で…!よりによってあいつなんだよ…!!!」
ぎゅうと抱き締める力が強くなり、彼の声も震えていた。
彼の顔は見えないが、もしかしたら泣きそうなのかもしれない。
「あいつの為に死んで、何になった?! 結果、あんたが得たものは一体何だ…!!…………何で…!!あんたが死ななくちゃいけなかったんだよっ!!!」
「……修羅。」
「あいつはっ!!ただマリアンと仲良くなりたかっただけだ!!母親がわりだった女性を愛したかっただけだっ!!何でそこであんたがあいつの代わりを務めようと思った?!!」
彼の詰りの言葉が、今の私の耳には痛い。
結果、友を……リオンを間接的に殺してしまっているのだから。
私は、彼からただただ吐露される言葉を黙って聞き届けた。
背中を摩って、または優しく叩いて。
辛そうな声音で吐かれる言葉達を聴き逃してはいけない。
──これは私の罪で、“決して終わる事の無い悪夢”なのだから。
「消えるって…、そういうことかよっ…!! この旅の最後…あんたは消滅する!! そんな事、あっていいのかよ…!!」
「……。」
「もっと生きたいって言えよ!もっと長生きして人生を謳歌したいって…そう願えよっ?!!何で…あんたが何度もこの世界から消えなくちゃいけないんだ…。」
徐々に勢いが弱まる言葉達。
後に残されたのは、彼の微かな嗚咽だけ。
それは、悔しそうに。
それは、悲しそうに。
それは、怒号を響かせて辺りに反響していって。
そして、彼はその目から涙を溢れさせる。
どうしようもない、行き場のない感情が辺りに漂う。
それは空気として満たされ、ココロは満たされず、ただただ渇いていく。
遂には涙も渇いて、枯れ果ててしまうのだろう。
「……私は…、本当にどうしようもないね。…こんなにも身近な人達ばかり、泣かせてしまう…。」
泣かせたくないのに、泣かせてしまう。
ただの私のエゴが起こした涙の連鎖。
それは忘れてはならない私の罪の痕だ。
「でもね…?修羅。私は自分のやったことを後悔してないんだ。今を精一杯生きると決めているからね?」
「……っ」
「一日しか生きられないカゲロウという虫だって…。月が出ている半日しか咲かない月光花だって…。皆、今を精一杯生きてる…。今の私はきっと、それなんだよ。」
「……っ、泣かせて、くれるな…!」
私の肩に埋もれてフルフルと震える修羅。
私は目を伏せながら彼の背中を摩ってやったが、彼の震えが止まることは無さそうだ。
「例え明日死のうとも。例え数時間後に死のうとも。後悔はしない。彼と……リオンと約束したからね。彼の隣で最期の時まで一緒にいるんだって。」
「っ!!」
最後の言葉を聞いて修羅は目を開き、息を呑んだ。
やはりスノウの中には奴がいて、そして奴と共に過ごす時間を大切にしたいと願っている。
それが自分にとってどれほど苦しく、愕然とさせられ、絶望させられたか。
……憎い。
奴が、憎い。
憎悪、殺意、絶望、愛憎、空虚、嫉妬、
嫌悪、軽蔑、恐怖、焦燥、
………〝孤独〟…。
そのどれもが自分の身を焦がし、穿いて痛みとなって降り掛かってくる。
だから願うのだ。
奴なんて消えてしまえばいい、と。
だから決意を抱くのだ。
歴史改変をして、彼女を……スノウを助けると。
「……俺は、お前のおかげでひとつ新たな目標が出来たんだ。」
「ん?」
「だから、待っててくれ。俺があんたを救う、その日まで。」
「?? 分かった。」
分かってはいないけど、修羅が待てと言うなら待とう。
そう誓った私は修羅との距離を少しだけ離した。
もう、彼は泣き止んでくれただろうか?
「私のエゴで、沢山の人を泣かせてしまった。どうしようもない、私の罪の証…。謝っても謝りきれるものではないけれど、でも伝えるしか今は出来ないから。だから、ごめん。修羅。」
「あんたが自分のエゴを貫き通したなら、俺も自分のエゴを貫くさ。例え、止めろと言われてもな。」
「そうか。君の目標は何かは分からないけど、その目標が達成出来る事を私は祈っているよ。」
彼の頬に手を当て、笑う。
そうすれば、またいつもの余裕そうな顔の彼へと変わった。
「…またカッコ悪いところを見られたな。」
「ふふ、気にする事はないよ。それは私のせいなのだから。それに……君が泣くなんて初めて見せて貰ったからね?また君の知らない素顔を見れた。これほど幸せな事はないよ。」
「……。」
それを聞いた修羅から、何だか複雑そうな顔をされた。
頬に当てた手を彼に握られたと思ったら、そのまま歩き出してしまう彼に慌てて止めようとする。
しかし流石は男の人の力。
本当にビクともしないんだ。
「修羅っ!ここからは1人で行くよ!」
「だから言っただろ?あんたが自分のエゴを貫いたなら俺も自分のエゴを貫くって。だからこれは、俺の今の気持ちだ。」
「??」
「クスクス!(俺はもう遠慮しない。あんたと居たいと願う自分のエゴを貫く。止めろって言われたって止めないさ。……18年前の神の眼を巡る騒乱…。海底洞窟であいつの肩代わりをして死んでしまったあんたを俺は救う。あいつを殺して、物語を修正させてやる。……覚悟しろ、リオン・マグナス…!!)」
私から見てそれは何かは計り知れないが、その瞳にはとてつもない決意が漲っていて、私はその顔を見てクスリと笑った。
彼の目標が決まって、そしてやる気に満ち溢れるのはとてもいい事なのだから。
……でも、目標とは何だったのだろうか?
言わない所を見ると言いたくないのだろうし、無理に聞き出すのも宜しくないだろう。
私は私で、彼の目標が達成出来るように願うだけだ。頑張れ、修羅。
結局そのまま出口まで案内してくれた彼にお礼を言う。
でも暫くは付いてきてくれるようで、お礼を言っておいた。
「今しばらくは宜しく、修羅。」
「あぁ。よろしくな、スノウ。……いや、モネなのか?」
「ふふ、どっちでも構わないよ。」
「あんた、本名ないのか?」
「あるにはあるが、ここではもうそれは無意味なものさ。だからモネでも、スノウでも構わない。呼びやすい方で呼んでくれ。」
「ふーん?……じゃあ、今まで通りスノウと呼ばせて貰うとするか。」
「どうぞ。」
改めて名前を知ったところで私達は歩き出す。
……早くジューダス達に追いつかなくちゃ。