第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〈ホロウ〉との戦闘も終わり、少し休憩をしていた所、ジューダスは修羅と何か話していた。
遠くで聞こえはしないが何か真面目な話をしている事は2人のその表情で予想ついたので、遠目で見るだけで近付くのはやめておいた。
「〈ホロウ〉ってのは厄介だよなー」
「アタシ達の攻撃がああも擦り抜けるのをこの目で実際に見てしまった訳だからねぇ…。不気味にしか思わないね。」
「私の晶術も効かなかったわ…」
「オレもオレも!全然攻撃出来なかった!」
「皆も攻撃してくれていたのか。」
「仲間がピンチなのにただ見てるなんて出来ないよ!!」
「……そうか。」
我ながら非常に単純過ぎるのだが、カイルの“仲間”という言葉に嬉しくなり、口元が緩まる。
彼はそんな私を見てないのか、周りに同調を促していた。
「(ふふ、仲間、か…。実際に聞くとやはり嬉しいものだな。)」
「〈ホロウ〉…だっけ?アイツの対策でもしておかないと、いざって時に動けないんだったらシャレにならないよ!」
「そうよね…。でも、私たちの攻撃が全く効いていない相手にどうしたらいいのかしら…?」
「「「うーん…」」」
「(皆が真剣に考えてくれているけど、きっと答えは出ない…。未知のウイルスだからこそ突破口が見当たらないから。もっとハーメンツヴァレーにあったような機械でもあれば……)」
一様に考え込んでいると、ジューダスと修羅が話し終わったのかこちらへと来て眉間に皺を寄せる。
「……お前ら、何をしている?」
『なんかの話し合いですか?』
「あ!ジューダス!ジューダスも一緒に考えてよ!どうやったら〈ホロウ〉ってやつに触れるかなって!」
「その事か。」
向こうで話していたのはその話だったのか、特別驚いた様子のないジューダスと修羅。
しかしその2人でさえ答えが出なかったのだろう。
2人の顔は徐々に歪んでいった。
「皆の気持ちは本当に嬉しいよ。でもそんなに思い詰めないでくれないか?私なら大丈夫だ。」
「大丈夫じゃないよ!!!」
一際大きな声でそう叫ぶカイルに通行人たちが立ち止まり、何事かと視線を向けた。
しかし何も無いと分かったからか、すぐに通行人たちは再び歩き出した。
叫んだカイルに困った顔をしながらその力強い瞳を見つめる。
前世、海底洞窟で見たあのスタンの決意の籠った眼差しによく似ている。
ふと、そう思ったんだ。
「……父親にそっくりだ……」
「え?」
「……。」
「いや、何でもない。こちらの話だ。」
「??」
首を振り、何でもないと言うとカイルは「それより!」と熱く語り始める。
「だってさ!向こうはスノウに触れるだけでやばいんでしょ?!そんなの危ないよ!」
「やばい、の使い方が果たして合ってるかはさておき……、まぁ、そうだね。でも、攻撃の仕様がないのなら今考えなくても…」
「それじゃダメなんだよ!!そんなの……!スノウを喪ってからじゃ遅いんだよ!!」
「!!」
彼の純粋な言葉、そしてその純粋な気持ちに驚いてばかりだ。
成長しているとは思っていたが、彼の成長ぶりには目を見張るものがある。
仲間として彼は大切にしてくれているのだ、とその言葉や声色だけで分かる。
そして自身を蔑ろにしている私に対して怒っていることも分かっていた。
こう、言葉にされると何だか安心する。
最近酷くそう思う時があるんだ。
「仲間が苦しんでるのに…!仲間が危ない時に何も出来ないなんて……オレは嫌だ!だから考えるんだ!少しでもスノウの役に立ちたいから!」
「カイル……」
「自分の事を投げ出すのはお前の悪い癖だぞ。少しはカイルを見習え。お前の事をお前以上に余程考えているぞ。」
「そうよね!カイルはいつだって仲間のことを大事に思ってるし、だからこそ真剣なのよね!」
「まぁ、こいつの場合……バカだからそれしか考えられねぇんだろうけどな。」
ロニは呆れてそう言ったが、その口元は緩んでいたが、それを聞いたカイルは不貞腐れた顔をしていた。
「ありがとう、カイル。じゃあ、早速だけど…何か案はあるのかな?」
「え?!えっと……まだ…ないけど……」
「ふふ、そうだね…。」
口元に手を当て、少し考える。
何か、今だけでも彼らが納得出来る何かがないだろうか?
こう……、もっと博識で、こういう時にきっと何か提案してくれるような人を頼りたいのだが……。
「……あ!」
「え?!スノウ!もしかして何か思いついたの?!」
「……本当か?」
「まさか…。」
ジューダスと修羅が驚きに顔を染める。
しかしその二つの顔は期待にも染まっている気がして、私は思わずクスクスと笑ってしまった。
そうだ。
ハロルド博士ならきっと何かしらの方法を教えてくれるに違いない。
……私は彼の…ジューダスの隣で最期の時まで一緒に居ると誓った。
だからきっと、その時が来れば、1000年前のハロルド博士にも会える…!
だからその時までは……、何としても生き残るんだ。
「そうだね。今は無理だけど、もう少ししたら何だかいける気がするんだ。だから…もう少しだけ待っててくれないかな?」
「もちろんだよ!!絶対に教えてよ?!」
カイルが嬉しそうに顔を綻ばせた瞬間__
ぐうぅぅぅぅぅう
誰かの腹の虫が鳴り、お互いが顔を見合わせる。
一体誰の腹なのか、と。
「あはは…。安心したらお腹減ったよ…」
「お前ってやつは…。」
カイルがお腹を押さえ、頭を掻いていた。
それをロニが呆れてはいるけど、2人して何処かに食べに行こうという魂胆らしくその足はどこかに向かっていた。
リアラがそれを見て笑いながら追いかけていき、ナナリーも追いかけていく。
私もすかさず歩き出そうとしたが、そう簡単にはいかないようだ。
私の足は、彼らが前に来た事で足止めを食らってしまった。
「スノウ。俺には教えてくれるよな?」
「……。」
ジューダスから無言の圧力を感じる。
修羅も逃がさないと、その目は非常に真剣だ。
肩を竦めた私だったが、ニヤリと笑い、口元に人差し指を当てた。
「秘密…だね!」
そう言って修羅とジューダスの間を擦り抜けて先を歩いていた彼らの横に並ぶ。
そして後ろを振り返り、それはそれは満面の笑みで大きく手を振った。
今は、腹ごしらえでもしよう。
それからでも水の精霊を探すのでも遅くはない。
来る未来へ思いを馳せ、私はまたクスリと笑うのだった。
。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。
腹ごしらえも終わった私たち一行は、改めて水の精霊を頼るべく街中を歩いていた。
しかしここまで探して見つからないとなると、街中ではなく別の場所の気がしてくる。
「スノウ、何か聞こえない?」
「……駄目だ。何にも聞こえないね。」
「今日のところは諦めた方が良いんじゃないのかい?また明日、別の所を探した方がアタシは賢明だと思うけどね?」
「スノウには悪いけど、オレも賛成〜。オレ、腹減ったよ……」
「さっき食ったばっかりだろーが!」
「……まぁ、そんなに早く見つかるとは思わなかったが、案の定だな。」
修羅も僅かに疲労が見え隠れする顔でそう呟く。
反対に海琉はまだまだ元気がありそうで、首を傾げてはそんな修羅を見ていた。
……しかし、今更こんなことを言うのも可笑しいが、カイル達のメンバーの中に修羅が混じっていることが不思議で、何なら違和感さえある。
「(君が〈赤眼の蜘蛛〉でさえなければ、今頃こうして……一緒に旅をしていたのかな…)」
感傷に浸っている場合ではないと首を振り、声が聞こえないかと耳を澄ましているが効果は無さそうだ。
これは皆のことも考えて、明日に持ち込んだ方がいい。
「今日は帰ろう。明日別の場所探してみても無理なら諦めるさ。」
「諦めることには賛成しないけどさ、今日は帰ることには賛成〜」
「少し、疲れたわね?」
リアラもカイルを見ながら少し疲労の色を見せた。
ジューダスも顔には出していないが、この観光客という人の多さの中で彼は常に気を張っていた。
だからか他の人よりも疲労が貯まっているように見えた。
こっそり彼の隣へ行くと不思議な顔をされたが嫌な顔一つせず、見たところ拒否は無い。
それが凄く嬉しい。
彼の肩に手を置き、密やかに詠唱する。
「……キュア」
「!!」
ジューダスが目を見張りこちらを見たが、いつぞやと同じく私はニヤリと笑い、そっと口元に人差し指を当てておいた。
「……皆には内緒だからね?」
「……」
静かに頷いたが、その顔は嬉しそうに口角が上がる。
そんなに喜んでくれるなら幾らでもかけたくなる。
そんな私の思いを知ってか知らずか、ジューダスは私の手を優しく掴み、握った。
温かいその心地よい温度に微睡みそうになるくらい、それは私にとってとても心地良いものだった。
「明日は湖の方へ探しに行こう。あっちの方が広いし、人も居ない。ここよりも何倍も可能性があるぞ。」
「……君、それを知ってて先にこっちに来させたのかい?」
「ふん、お前らが勝手にここを探索場所として選んだんだろう?」
「違いない。」
確かにカイル達が先走ってしまい、ここに来たのは否めない。
だが、それならそうと早く行ってくれればいいものを。
「……何となくお前の言いたい事は分かるが…、迷子になったのはお前だからな?」
「……それも違いないね…。」
思わぬ反撃に私は自然と肩を竦めていた。
帰り道を歩くカイル達を目にし、彼に握られていた手を外そうとしたが思いの外強く握られていたようでその手が離れることは無い。
寧ろ、その手を引かれ自然と歩が進んでいく。
当たり前のように握られている手に、温かい気持ちになったのは言うまでもない。
何より大好きな彼が握ってくれているのだから。
「……ありがとう」
「…これくらいでお礼なんて言うな。」
彼らを追うこの道を、私たちはさっきよりも確かな歩調で歩き出す。
さぁ、行こうか。
この手の温もりさえあれば、何処にでも行ける気がするから。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
少し短いですがここで切ります。