第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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朝帰りになった僕たちを心配してか、カイル達が色々と聞いてくるのでスノウが新たな精霊と契約したことを素直に答えることにした。
祝福の声が上がる中、ナナリーだけは何のことだ、と分かっていない様子で首を傾げていたがロニが気を利かせてくれたおかげで直ぐに納得がいったようだった。
「オレも見たかったなぁ…」
「スノウに頼み込んで今度こそ見せてもらいましょう?私も興味があるもの!」
「お前たちは呑気だなぁ。襲い掛かってくるかもしれないんだぞ?」
「でも、スノウが居たら大丈夫なんじゃない?だってスノウを毎回呼んでるわけだしさ。」
「私たちは招かれざる客ってことよね?でも、ジューダスだって行けたんだもの!きっと大丈夫よ。」
「楽観的っつーか、なんつーか…」
「別にアンタだけ待っててもいいんだよ?アタシ達だけで行くからさ。」
「行かねえって言ってないだろ!」
喧嘩が始まりそうな雰囲気の中、ジューダスはちらりと未だ気絶している友の姿を確認する。
力を使い果たして気絶しているスノウ。
体内のマナが無くなればこうして気絶することもあると精霊たちは話していた。
その肩代わりが出来ない事を悔しく思いながらもジューダスはそれを表情には出さず、冷静にカイル達を見ていた。
「スノウ起きたらカルボナーラに行くんだよね?ナナリー」
「…どこだい、それは。」
「聖地カルビオラ…。そこに行けば大量のレンズが…」
不安そうな顔のリアラだったが、首を振り気を取り直すように笑顔で振る舞う。
誰もその表情を見ている者はおらず、リアラの様子に気付く事は無い。
唯一、スノウが起きていれば気が付いたのだろうがその彼女も今はまだ目は覚めていない。
そんな中、カイル達は次の目的地である聖地カルビオラについて話していた。
「どんな所なんだろ?」
「神団の奴らがウロウロしているところさ。神を崇めている、奇妙な奴らだよ。」
呆れた口調で言うナナリーに口を噛みしめるリアラ。
そんな時だった。
「う…」
「「「「!!!」」」」
スノウのうめき声に全員が反応しスノウへと注目していると、徐々にその瞼が開けられていく。
反対に仲間たちの顔は徐々に明るくなっていった。
「…ここは?」
「大丈夫?スノウ?」
優しい声音でリアラがスノウへと近づき手を取る。
それを受け、ゆっくりと体を起こそうとするスノウだったが敢え無く撃沈し再び床へと体を倒す羽目になる。
辛そうに声を上げるスノウを見て、全員が渋い顔になる。
彼女のこの感じでは今日中には出発出来そうにないからだ。
「体が痛いの?スノウ」
「すみません…、そのようです。体が言うことを聞かなくて…」
「無理すんなよ?これからとてつもない場所に行くらしいからよ。」
「ゴミ山を通るからね。体力は万全じゃないと毒にやられてしまうよ」
「え?!毒なんてあるの?!聞いてないよナナリー!」
「こいつはちゃんと話していたぞ。お前も話に参加していただろうが」
「え?そうだったっけ?」
頭を掻きながら記憶を掘り起こそうとするカイルだがすぐに諦めてしまい、笑って誤魔化した。
それにやれやれと溜息をつきながらも、優しく見守る仲間たち。
ただ一人を除いては。
「……。」
「(リアラ…。そうか、あそこにはフォルトゥナがいるからか…)リアラ、もう少し手を繋いでて貰えませんか?」
「?? こう?」
「はい。ありがとうございます。」
「急にどうしたの?」
「人肌恋しくて…ですかね?」
「ふふっ、そんなことならお安い御用よ。」
ぎゅっと握ってくれるリアラに笑顔でお礼を伝える。
もう少しでカイルとリアラは喧嘩をする。でも、それは未来を紡ぐためには重要なイベントだ。
目を瞑りつつ未来へと思い馳せる姿をジューダスがこっそり見ていたのをスノウは知らなかった。
「じゃあ、スノウが元気になったらそのカルビーに行こう!」
「「どこだよ」」
大人組二人が呆れて溜息をつくとカイルが口をへの字にした。
それを見て可笑しそうに笑うリアラにジューダスも呆れてはいるものの口元は微笑んでいた。
甥の微笑ましさに思わず、といったところだろうか。
ジューダス時のその様子をスノウもまた微笑んでみていたのだった。
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結局出発は翌日となり、体力を回復させるためにも再びスノウは眠りについていた。
その隣にはジューダスも待機しており、彼女のその様子をひたすら飽きもせずに見ている。
『坊ちゃんも少し休んだらどうですか?ぶっ続けで起きているのも体に悪いですよ?』
「目が冴えている…が、休まないと明日は大変らしいからな…。」
来たるゴミ山の未来に眉間の皺がグッと寄っていく。
ゴミ山を通るなんて個人的に以ての外だが、道がない以上駄々を捏ねても意味はない。ならば我慢して行くのみ。
溜息は心の中だけで吐き、再び視線はスノウへ。
早く元気になってその顔を見せて欲しい、そう願うのはきっと…。
「…僕も甘くなったものだ。」
『?? 坊ちゃん、何か言いましたか?』
「ふっ、何でもない。」
『??』
コアクリスタルが不思議そうな色合いを出したが、ジューダスの口元が微笑んでいるのを見て静かに嬉しさを滲ませたのだった。
「………ん」
「起きたか?」
僅かに瞼を震わせたスノウだったが、その後起きる様子はない。
ただの寝言か、と視線を戻そうとすると嫌でも目に付く彼女の指輪。
火の精霊ブラドフランムが契約して着けた右手の親指の指輪の方ではなく、セルシウスと契約をして着けられた左手の薬指の指輪…。
そこは元来、婚約指輪や結婚指輪を着ける場所であり女性であるスノウにとっては特に大事なところであろうその場所。
そこが空きではないことに思わず溜息が出そうになる。
《……クスクス》
「笑うな」
どうも自分が見ていた場所が分かっていたようでセルシウスの笑う声が何処からか聞こえ、僕は口を尖らせたが、…何処となく声は指輪からするような気がした。
意地の悪い精霊だ。
《……貴方でもここは譲らない…》
「……ふん、勝手にしろ」
少しだけセルシウスに対抗心が沸き、口から出たのは素直ではない言葉。
本当は自分がそこに贈り物をしたいのに。
そんな気持ちに蓋をしてつい売り言葉に買い言葉になってしまった。
セルシウスもそれを分かってか笑い声が先ほどから止むことがない為、ジューダスはついには目を閉じ休むことに決めた。
変わらぬ笑い声に気付かぬ振りをして。
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スノウの目が覚め完全回復した翌日。
カイル達とともにゴミ山もとい、トラッシュマウンテンへと足を運んだ一同はその酷い悪臭に自然と足を止めていた。
中でもカイルとロニは特に嫌そうに思いっきり顔を歪ませ、鼻を手で押さえる様子が見られた。
「くっさ!!!」
「天上からの廃棄物が溜まりに溜まった挙句、この暑さで大分おかしくなっちゃったみたいだね…。」
「ナナリーさん…?にしてもよぉ?ゴミから何か噴き出してませんかね~?!」
「ごちゃごちゃ煩いぞ。」
「じゃあお前先に歩けよ!」
「私が先行します。皆さんは毒に注意しながら私の後に進んでください。」
真剣な眼差しで前を見据えるスノウを見て流石のロニも黙り込み、意を決して歩を進める。
そんな中、ナナリーがスノウの腕を掴み引き留める。
「アタシが先行するよ。じゃないとここまで来た意味がないからね。」
「じゃあお願いします。」
「はいよ、任せといて」
スノウの肩を叩きウインクするナナリーにスノウも笑顔で答える。
ナナリーの後をすぐさまロニがついていき、カイルやリアラと続いて最後尾にジューダスとともにスノウが歩くことになった。
「…何故案内役を買って出た?」
「一応道は覚えてるからね…、先に進まない皆を見て案内役を買って出たんだ。こんな場所でも、先に誰かが行くと言えば流石に彼らもついてくるだろう?」
「ふん…、違いないな。」
『スノウ、体調は大丈夫なんですか?』
「勿論だよ。心配してくれてありがとう、シャルティエ。」
『いえ、大丈夫ならいいんですけど…。スノウって、倒れることが多いから心配にもなりますよ。』
「はは、善処するよ」
『スノウの”善処する”は、全然善処されてない気がするんですが…?』
「耳が痛いね。」
肩を竦めたスノウだったが、前を歩いていた仲間達が立ち尽くしているのを見て目を瞬かせ、首を傾げた。
スノウのその様子にジューダスもようやく気付き何事だとばかりに仲間達へと視線を向けると、そこには唯一の通り道を塞ぐ大きな廃棄物が無造作に置かれていた。
「(……おかしい。このトラッシュマウンテンの道中にこんな大きな廃棄物なんてなかったのに…。)」
「どうしよう…。これじゃカルビオラに行けないよ!」
「ナナリー、回り道とかないのかよ?」
「おかしいねぇ…?ここにこんなものなかったはずなんだけどさ。道を間違えたかもしれないし、ちょっと一度戻ってみるよ。」
「俺も行く」
前回のこともあってかロニもナナリーについていき、スノウ達の横を通り過ぎ来た道を戻っていく。
心配そうにカイルとリアラがそれを見送り、他に通れる隙間がないかと探っているのを見てジューダスも加勢しようとしたがスノウの様子に足を止めた。
何か考える素振りを見せるスノウ。その視線はあちらこちらに行き交い、徐々に難しい顔になっていく。
「(やはりおかしい。この先には確かに仕掛けがあるがその前にこんな障害物などなかったはずだ。魔法で一気に壊してもいいが…、向こう側に何があるのかわからない以上皆を巻き込むわけには…)」
「スノウ。」
「(だが他に道はなさそうだ…。ならここは皆を下がらせて一気に仕掛けるか…?)」
「スノウ!!」
考え込むスノウの頭をぺシと叩き現実に戻す。
ハッとした様な顔をしジューダスを見つめるその相貌は動揺したように少しだけ揺れ動いていた。
「何でも話せと言っただろう。一人で考えるな、馬鹿者。」
「あ…」
そうだった、と思い出したように呆然と声を出したスノウは進歩しないな、と苦笑いをし頬を掻いた。
悪い癖だと以前言われていたことを思い出しながら自分の考察を話す。
「……ナナリーの言う通り、ここには通常こんなもの置いてないはずなんだ。行く手を遮るような障害物…。…もう、彼らだと思うしかないようだね」
「〈赤眼の蜘蛛〉か…」
『奴ら、とことん僕たちの邪魔をしてきますね!困ったもんですよ!』
「でも、たかがこれくらいの邪魔ならしてもしなくても同じような物だと思うんだ。なのに彼らは敢えてそうした。何故だと思う?」
「まさか…、僕達を邪魔するのが目的ではない?」
「結局推論でしかないが、恐らく…ね?」
『だとしたら何の目的で置いたんでしょうか?』
「……嫌な予感がする。ナナリー達は大丈夫だろうか。」
後ろを振り返るスノウの目に突如良からぬものが映り込み、咄嗟にジューダスの腕を引き大きくその場から離れる。
そこへ衝撃音のような物がしジューダスもシャルティエも息を呑んだ。
「やはり、狙いは私か…」
「久しいな!スノウよ!」
「玄!!」
先程の衝撃音は玄が自前の大斧をスノウへ向けて振り下ろしたからだった。
玄を視認した直後ジューダスがスノウの前へと躍り出て双剣を構え玄を睨みつけた。
カイル達も流石に激しい衝撃音を耳にし、慌てて駆け寄るとスノウを庇う様に武器を構えた。
「武器を下ろせ!我はスノウ、お主との一騎打ちを所望する!!」
「そうはさせないぞ!今度はオレたちがスノウを守るんだ!!」
「それにこいつは今は考える事に忙しい。他を当たれ。」
「スノウ!私達がいるから大丈夫よ!」
「皆…」
皆の優しさを受け止めると心が暖かくなる。
あぁ、だから私は君たちのために頑張りたくなるんだ。
” If it can be imagined, it can be created. ”
例の言葉を胸に刻み、スノウは顔を上げた。
「__玄。私には仲間がいるんです。頼りになる、大切な…仲間たちが。」
「!」
『スノウ…!』
「一人で戦うのが困難でも、仲間となら何だってやれる気がします!だから……玄、勝負です!」
「…ならば先に他の奴らを潰してしまうのみ!!どちらにせよ我の抹殺対象がいるからな!!」
玄が向けた視線の先にはリアラが居て、スノウはリアラの前に立ち玄に向けて銃杖を構えた。
玄の抹殺対象はリアラ…。だから以前意識を失っていた彼女を誘拐したのか…!
「リアラ、私から離れないでください!」
「ええ!分かったわ!」
カイルとジューダスが玄に果敢に挑んでいくのを見てリアラと頷きあう。
私たちは後衛で援護をするしかない。
「行きます!バーンストライク!」
「__火弾、バーンストライク!!」
同じ技をぶつければ、反射神経の良い玄がそれに勘付きすぐにその場から大きく後退したのを受け、更にスノウ達の方へと行かせない為に追撃をかけるカイルとジューダス。
仲間達とうまく連携しながら玄を追いやっていくとそこへロニたちが到着し目を剥いた。
「あいつ…!!性懲りもなくまたスノウを殺しに来たのか!!」
「ガタイがいいだけのおっさんじゃないか。早く仕留めてしまうよ!」
ロニの言葉に何となく察しがついたナナリーが弓で加勢し、ロニも斧を持って前衛へと突き進んでいく。
中・遠距離武器であるナナリーは素早くスノウ達の横へと身を滑らせた。
「大丈夫かい!」
「ナナリー!」
「ご無事で何よりです!」
「アンタ達もよく耐えたね!さあ、やっちまうよ!!」
気合いの入った掛け声にリアラと頷く。
これで多勢に無勢だ。どんなに玄が強くとも、この人数相手では敵わないだろう。
「灼熱の炎よ、彼の者の胸へ鮮やかな炎を刻み付けろ__ブラドフランム!!」
スノウの右手親指の赤いルビーの指輪が光り輝き姿を現したブラドフランムは玄を見て不敵に笑っていた。
カイル達は初めて見る仲間の姿に一瞬目を瞬かせたがすぐに笑顔になる。
そうか、彼が昨日スノウが仲間にしたという精霊か。
《我が主人に挑むその度胸は買うが、挑んだ事を後悔するな!!》
瞬時に玄の真後ろに移動しその強靭な腕を振るえば、その腕には熱き炎が纏い玄を襲う。
それに反応した玄だが、左右前後にカイル達前衛組が襲い掛かっておりそれを無理矢理押しやって逃げ場を確保する。
紙一重ほどの距離で躱した玄に次々と炎の腕が襲い掛かっていく。
冷や汗を掻きながらそれを余裕なく躱していく玄だったが、標的を精霊を操っているスノウへと変更し走り去る。
「くっ、まさかあんな奴を従えているとはな!!」
大斧を振り回しスノウを攻撃する玄に再びブラドフランムが襲い掛かる。
そのブラドフランムはスノウを見てニッと笑った。
《主人!行くぞ!!》
「はい!!」
セルシウスとも上手くいったんだ。きっと彼とだって出来る!
ブラドフランムの殴打による連撃中、スノウは自身の銃杖にブラドフランムと同じ熱き炎を纏わせる。
「__ブラドフランム・アサルト!!」
フィニッシュに同時に攻撃を仕掛ける。火精霊ブラドフランムはその炎の腕で強烈なパンチを、スノウは銃杖を玄へと振るい攻撃をする、この世界で言う秘奥義的な扱いの攻撃。
両方から灼熱の炎で攻撃されて堪らず悲鳴を上げる玄。
秘奥義をお見舞いしてブラドフランムは満足して姿を消してしまったが…。
「やったか?!」
ロニが心配そうに見守る中、声を上げる。
誰も警戒を続けていたがどうやら杞憂に終わりそうな事にスノウは酷く安堵していた。
玄がそのまま倒れていき、意識がない事を確認するジューダス。
固唾を呑んで見守る仲間達だったが、ジューダスが静かに頷いた事で喜びを表した。
「(あぁ…、こうして仲間たちが喜んでくれる。手を取り合って感情を表してくれる…。それがどれほど私に力をくれるか、彼らは知らないんだろう…。)」
微笑んでその光景を見ていると、カイル達がこちらを見ている事に気付く。
何だと首を傾げれば妙に不貞腐れているカイルに、苦笑している他のメンバー。
未だその状況についていけず、疑問を顔に表せばカイルがズカズカと音を立てながらこちらに歩み寄ってきた。
私の手を取ると彼は仲間達が居るその場所へと手を引っ張って私を連れて行く。しかし私には彼のその行動の意図が読めなかった。
「スノウってばいっつも違う場所でボーっとしてるじゃん!こっちに来て一緒に喜ぼうよ!」
「!!」
ようやく彼の意図を理解した私は周りにいる仲間達を見渡した。
それぞれに苦笑や顔で肯定を表していたり、誰も文句を言う人はいない。きっとそれは誰しもが思っていた事だったのだ。
勝利した後、私はみんなの輪の中に入る事はなく喜ぶ仲間たちの顔を遠くでじっと見つめていた。
それは少し前まで彼らと別れる日が来ると分かっていて距離を置こうとしたからだ。
だが、彼らの仲間になってずっと旅を共にすると誓ったついこの間から、彼らと距離を置かなくても良くなったんだ。
何だかそれが嬉しくなって少しだけ涙ぐみそうになるのをグッと堪えた。
……最近、妙に涙脆くていけない。
「ということで…、はい、スノウ!」
カイルが両手を上げたので何となく次の行動が読めて自分も両手を上げた。
そのままハイタッチをすれば仲間たちが一斉に集まってきて抱き締めてくれる。
__あぁ、私はこんなに仲間思いの大切な人たちと出会えたんだ。
『…良かったですね、スノウ。とっても嬉しそうです。以前の苦しそうな笑顔とは違う…ちゃんとした心からの笑顔です…。』
「あぁ、本当にな。大分かかってしまったがようやくあいつも前世のように表情を出すようになってきたな。」
感慨深そうにそれらを見遣るジューダスだったが、そんなジューダスに今度は視線が集中する。
次の行動が読めてしまい、思わずため息と共に肩を竦めたジューダスは彼らが動くよりも早くその輪の中に入っていった。
途端にお祭りのように騒ぎ出す彼ら。そしてそれを見て笑うスノウ。
こんな日があってもいい、とジューダスも微笑むのだった。
「……ぐ、」
「っ!」
玄の声にいち早く気付いたジューダスは武器に手をやる。
カイル達もジューダスの視線の先に気付き、武器を構えようとしたがそれよりも早く真後ろで大きな音がしたためそちらへ注目せざるを得なくなった。
その大きな音の正体はスノウが銃杖で大きな障害物を壊した音だった。
「皆さん!早くこちらへ!」
「折角あの子が障害物をどかしてくれたんだ!アンタら、早いところずらかるよ!!」
ナナリーの言葉に頷くよりも早くナナリーが先陣を切って障害物の先を走っていくのを見て、慌ててロニがそれについていく。
次いでリアラとカイルが走っていくのを確認したスノウはジューダスを振り返る。
体を起こそうとしている玄を見てスノウは息を呑んだ。
「ジューダス!」
「先に行っていろ!しばらくこいつの足止めをする!」
「っ!だったら私も__」
「あいつらを放って置くと何するか分からん!そっちは頼んだぞ!」
『スノウ、早く行ってください!奴が起きます!!』
「っ、どうか無事で!!」
折角の好意を無下にしない為にスノウは、ジューダスの言う通り彼らの後を追った。
正直玄と二回戦目をすれば魔力がどうなるか分からない。
何度も何度も精霊を召喚すると私の体力も魔力も持たないし、そうなれば彼らについていくのは困難になるだろう。彼らに迷惑をかけるのは御免だ。
それを分かってくれたジューダスに感謝だ。
「あれ?!ジューダスは!?」
「しばらく足止めしてくれるそうです!彼なら大丈夫です。私たちは先へ進みましょう!」
「でも、スノウのあの強い精霊で何とか抑え込めたのによ、あいつ一人でどうにかなるもんでもないだろ?!」
「一理あるね…」
「戻ったほうがいいかしら…」
「恐らく玄も弱っている筈ですし、ジューダスの強さならきっと大丈夫です。それよりも私達は玄に追いつかれる前にここを抜けてしまいましょう!」
スノウの言葉に誰しもが頷き一度振り返ったがナナリーの案内で先へと進んだ。
どうか、無事で…。