第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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聖女エルレインに飛ばされ仲間達はバラバラだった。
その中でもカイルとリアラはすぐに見つかり(ナナリーが連れてきたが…。)、仲間達はナナリーに仲間がもう一人居ると話していた。
しかし何処を探しても見つからず、カイル達は絶望の縁に立たされていた。
「どこ行っちゃったんだろ…スノウ…。」
「あいつも俺達を探してると思うし、もう少し探した方が良いと思うぜ?俺は。」
「そうね。エルレインに飛ばされて困ってるはずだもの。早く探さないとこの暑さじゃ…」
「リアラ、嫌な想像はするな。そう言うのは大体現実になる。」
「あ、そうよね…。ごめんなさい。ジューダスが一番心配してるのに、私ったら…」
まるでキノコが生えるかのようなジメジメな雰囲気に、それを遠目で見ていたナナリーが壁に寄り掛かりながら嘆息した。
この子達を見つけて既に5日は経っている。
まだ見つかっていないという仲間のことを思うと不憫に思うが、あの砂漠に5日もいれば干上がってしまうのはこの村に居る人物なら誰でも既知の事実だった。
それ故にナナリーの中では半々の気持ちでカイル達を見ていた。
もうダメだと思う気持ち、そして助けてあげたいという気持ちと半々だ。
だがこの広大な砂漠は村の人間でも把握しきれていない場所がある。
そこに居るならば命の保証は無かった。
「…俺、もう1回探してくるよ!!」
「俺も行くぜ…!スノウを一人にさせてはおけねぇしな!」
「私も行くわ!」
「……」
『坊ちゃん…』
「ジューダスはどうする?」
「この暑い中、特定の人物を何の作戦も立てず無作為に探すのは得策ではない。」
「でも…!!」
「僕だって早い所あいつを見つけてやりたいさ。だが共倒れなんてしたらあいつを見つけられるものも見つけられなくなる。だから動くならば、夜に動いた方がいい。…それに、あいつは暑さにとても弱い。動くなら夜に動いているだろう。そこを狙う。」
「ジューダス…!!」
「ふん。それまでは精々体力を温存しておくんだな。」
目を伏せたジューダスにカイルが大きく頷く。
漸く晴れた雰囲気にナナリーも安堵の息を吐き、手を叩いた。
「ほら、あんた達!お昼ご飯が出来たからおいで!」
「やった!!ナナリー!!今日は何?!」
「お、おい!カイル!!まずは手を洗えって!!」
賑やか組が騒ぎながらナナリーの方へ向かったのを見てジューダスが鼻を鳴らす。
それを口元に手を添え、笑顔でリアラが見ていた。
“ジューダスが一番心配してるのに。”
そのリアラの言葉に肯定も否定もしなかったジューダスの事を思い出し、嬉しくなったのだ。
あまり人を寄せつけないジューダスがスノウに対しては心を開いているのを知っていたからだ。
スノウもジューダスに対しては素の自分を出せている気がしていた。
「(私もいつか、スノウやジューダスと分かり合える日が来るかしら…?)」
「リアラー!ジューダスー!早く早く!!」
「……お前は子供か…。少しは大人しくしろ…。」
「ふふっ、そう言うジューダスだってまだまだ若いわよね?」
「……まぁ、な…。」
伏し目がちに遠い目をしたジューダスに首を傾げたリアラだったが、「早く!」と催促してくるカイルに連れられその疑問を口にする事が出来なかった。
『坊ちゃんも早い所行かないと、カイルに全部食べられてしまいますよ?』
「ふっ…。そうだな。」
ジューダスは漸く口元に微笑みを浮かべ、カイル達の方へと向かう。
スノウの無事を祈りながら、夜を待つ事はとても長く感じた。
本当は一人だろうが何だろうが、探しに行けるならば日中にでも探しに行きたい。
しかしナナリーからこの砂漠の厳しさを聞いて下手に動けないとも思えたし、カイル達にもああ言うしか無かった。
何より前世で砂漠の厳しさは体験済みだ。
モネだった時代のあいつと任務をこなした事もあったな、と懐かしんでいると時間が何より早く感じた。
そしていよいよその時が来た。
「よし!早くスノウを探しに行こう!!」
「つーかよ…。ずっと思ってたんだが…、ここって日中との寒暖差あり過ぎだろ…!!」
「我慢よ、ロニ。」
「何ならお前一人、ここで待っててもいいんだぞ?」
「ぐぬぬ…!お前らだけで行かせられるか!!それに俺もスノウを心配してんだよ!!」
腕を擦りながらガタガタとしていたロニが先陣を切り、暗い砂漠を走り出す。
それにカイルが続きリアラとジューダスも続いた。
「…。」
一人、ナナリーだけは心配そうにそれを見つめ村の中に静かに残っていた。
月明かりで見える彼らの後ろ姿をじっと見ていたナナリーは一度息を吐き中へと戻る。
それでも胸の中のモヤモヤは晴れなかった。
日中に思っていたのと同じで、彼らを半々な気持ちで見送ったからだ。
「…行ったのか?」
「…あぁ。」
「ふむ…。あやつらの仲間が見つかるといいのぉ?」
村の老人がナナリーに話しかけ、それにナナリーは浮かない声音で返答した。
それを見透かすかの様に老人は目を細め笑った。
「お主は信じてやらんのか?」
「だって…!あいつらを見つけてからもう5日だよ!?5日、砂漠に放り出されて生きてたやつなんて…!!」
「じゃが、あやつらはそれを信じておるのじゃろ?本当はお主も信じておるんじゃないのか?」
「……。」
苦々しげな顔で俯いたナナリーに老人が再び笑った。
それをナナリーは口を尖らせて見遣った。
「案外見つけて帰ってくるんじゃないかのぉ?」
「ならいいけどさ…。」
今はもう見えなくなってしまったカイル達の方へと視線を向ける。
老人が笑いながら去っていくのをナナリーはじっとその場で聞いていた。
もし、カイル達が仲間を連れて帰ってきたらお祝いしてあげよう。その気持ちで彼らの帰りをひたすら待ち続けた。
しかし朝方帰ってきた彼らの顔は曇り顔で、その中に居るはずだった真新しい仲間の姿は無かった。
「(あぁ…、これで6日目…。そろそろ限界か…。)」
沈痛な面持ちで拳を握ったナナリーだったが、すぐに顔を叩き笑顔で彼らを出迎える。
「あんた達!大丈夫かい?!」
「ナナリー…。やっぱり見つからなかったよ…」
「……。」
言葉を失ったナナリーだったが極めて明るい声でカイル達を激励する。
今夜探せばいい、きっと見つかる。
カイル達を見て、心の何処かで縋るような気持ちのそれを言葉にすれば、カイル達の顔つきも僅かだが晴れる。
彼らを家の中へと入れ、休むよう伝えれば優しい彼らは朝食の準備を手伝うと申し出てくれた。
それに首を振り断る。
心も体も疲れているだろう彼らにそんなことさせられない。
ナナリーよりも彼らの方がその仲間達を案じているだろうから。
「さーて、と!頑張って作りますか!」
肩を鳴らし、料理に専念することにしたナナリーに、リアラがやはり手伝うと申し出てくれたので苦笑いでそれを受け入れる。
「ナナリーは帰ってくると信じて待つのと、探しに行くのと…、どっちのタイプ?」
話の内容はやはりその類いの話で、ナナリーは嫌な顔ひとつせず純粋な気持ちでそれに答える。
「あたしは絶対に探しに行く。待つなんてまどろっこしい事苦手なんだ。」
「そうなんだ。やっぱりそうよね。」
「その…、スノウってやつの事かい?」
「…うん。…スノウはね?とっても優しいし、可愛いし、戦闘も得意でかっこいいの。私も見習いたいくらい。」
「へぇ!そんなにいい子なら早く見つけてあげないとね?」
「うん。だから今夜も探しに行こうと思うの。ナナリーには迷惑掛けると思うけど…」
「そんな事気にしなくてもいいの!あんた達は仲間の事だけ考えてりゃいいのさ!」
「ナナリー…。ありがとう。」
「どういたしまして!」
リアラの顔にも笑顔が戻った所で、ナナリーはリアラに仲間達にご飯だと声をかけてきてくれと伝えた。
可愛く頷き、場を離れるリアラを横目にナナリーは天を仰いだ。
「アタシも、探しに行くとしますかね…」
リアラに感化されたナナリーは一度嘆息し、取り敢えず手元のご飯達を食卓に持っていく事にした。
これは日中忙しくなるぞ、と思わず苦笑いをしてしまう位には…感化されている気がした。
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日中、例の仲間とやらを探し回ったナナリーだったが砂漠の奥の方へと足を運んでもその姿はおろか、形跡すら見当たらない。
それに思わず口がへの字になるナナリー。
これだけ探していないならもっと奥の方なのかもしれない。
それか自分が苦手としている聖地カルビオラに居るとしたら、ここで探すのも可笑しい気がしていた。
「…無事なら良いんだけどねぇ…」
そう独り言を呟くとそれに帰ってくるはずのない返事が聞こえてきた。
「お前も殊勝な事だなー…。」
「ナナリー!探すなら一緒に探そうよー!!?」
「ふふっ、追いかけてきちゃった!」
カイルにロニ、リアラやジューダスまでもが自分の後を付いてきていたのだ。
それに気付かなかったのかと笑ってしまい、カイル達の近くへ寄る。
「あんた達…、夜に探すんじゃなかったのかい?」
「だって、ナナリーが外に出るのが見えたから、もしかして一人でスノウを探しに行ったんじゃないかって思ってさ!!ズルいよ!!探すならオレたちも誘ってよ!!」
「一人は確かにずるいわ?私達だって心配してるのよ?スノウの事も、もちろんナナリーの事も。」
「!!」
リアラの言葉に頭を掻き、照れ隠すナナリーに皆が一様に笑った。
こんな仲間達だからこそ…、仲間想いなこの子達だからこそ、寝る間も惜しんで姿の見えない仲間を探し回れるのだと改めて感心した。
「分かったよ。でも、今夜も探すって事なら今のうちに休んでおかなくちゃダメじゃないか!」
「だって心配で寝れないんだもん!」
「それにこーんな男女に手柄を立てられちゃー、ずっと歯に衣着せそうだからなー?」
「なんだって?」
ロニの関節を持ち音が鳴るまで力を入れれば、すぐに悲鳴をあげる女々しい男に笑い声をあげる。
それにカイル達も笑って見ていた。
ただ一人を除いて。
「……」
心配そうに辺りを見渡しているジューダスを見て、ナナリーも苦笑いを浮かべる。
何だかんだ一番仲間を心配しているのが、よく分からない仮面をつけた男だということをナナリーは分かっていた。
行方不明の仲間を探す話になった時も彼はずっと感情を抑え込んだ声色をしていたし、面持ちも他の者とは違うと思っていたからきっとそうなのだと思っていたが、どうやら正解のようだ。
「ナナリー、ここら辺はどの辺りになるの?」
「ここは砂漠の中でもまだ村に近い方だからね。まだまだ奥の方があるんだけど…これ以上先に行くとなるとかなり厄介でね…。」
「「「???」」」
「アタシ達村の人間でさえ、この奥の砂漠は迷いやすいんだ。なんてったって、ここから先は目印になる物がない場所…、〈無景の砂漠〉だからね。そこで迷っていたら間違いなく…」
そこまで言って慌てて口を噤んだナナリーに、ロニとジューダスが目を伏せた。
ジューダスに至っては感情をかなり押し殺している様で、拳が白くなるほど握りしめている。
「ごめんよ…。そういうつもりじゃなかったんだけど…どうしても、ね…。村の人間も〈無景の砂漠〉に行って帰ってきた者は居なかったから…。」
「でもスノウならさ、大丈夫だよ!!」
一際明るい声でそう言い放つカイルに仲間達が顔を上げた。
「だって、今までどんな事が起きてもスノウは生きてたじゃん!!だからオレは大丈夫だと思うな!」
へへん、と鼻を指で擦るカイルを見て仲間達が徐々にその顔を明るくしていく。
ナナリーもそのうちの一人だ。
何故か彼らといるとそうだと思えてしまう。その“不思議”に出逢ってしまったから。
「そうだね。アタシ達が信じてやらないと、その子も寂しがってるだろうしね!さ、一旦村へ戻ろう!夜にもう1回探しに行くよ!」
「「うん!!」」
「げ…。お前も来んのかよ…」
「何か言ったかい?ロニ?」
ボキボキと指を鳴らすと直ぐに姿勢を正すロニ。
「いえ!滅相もございませんっ!!!」
「なら、よし。」
「……ふん。」
『ロニも一言多いですよね…』
ロニのその行動に皆が笑いながら村へと帰っていく。
ナナリーもその後を追うように走ったのだった。
*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。
夜になり、気力も体力も回復した一行はもう何度目かの砂漠へと身を投じていた。
そこにはナナリーの姿もあり、心強い仲間にカイル達も顔を綻ばせた。
「さて、探すなら〈無景の砂漠〉だけど…、どうするんだい?」
「そこにいる可能性があるなら行こう、皆!」
「「ああ!/ええ!」」
誰もカイルの言葉に否定をしなかった為、早くにその問題の場所へと向かう事になる。
途中魔物に何度も遭遇したにも関わらず、その数は奥に行くにつれ徐々にその数を減らしていく。
「魔物がいないわ…」
「なーんか、不気味だよな…」
「これも〈無景の砂漠〉と言われる所以だよ。何の目印もないから“無景”なんだ。」
「そこにスノウがいるなら絶対に迷ってるわね…」
「あいつは探知に長けている。……だがこの広さならそのお得意の探知も効果は無さそうだな…。」
『幾らあのスノウでもここまで辿り着けないとなるとそう考えるのが筋ですね。』
「唯一サボテンだけが目印なんだけど…一々サボテンの位置なんて覚えてられないからね。それにサボテンの数も少ないし、お手上げなんだ。」
そう言われてカイル達が後ろを振り向くと目を瞬かせた。
本当に何も無く、遠くの火山が唯一の目印だがそれも消えてしまえば本当に迷いそうだ。
大人組がそれを見て顔を険しくする中、カイルとリアラは勇んで進んでいく。
「これ…俺たちまで戻れなくなるとか……ないよな?」
「ふん…。有り得そうなのが恐ろしいところだな。この〈無景の砂漠〉の、な。」
「でも、あの子達にはそれも関係ないようだね?」
お互いの手を握り、前を見据える二つの目は揺るがなかった。
絶対に仲間を連れて帰る。そんな意志を感じるくらい、その瞳には確かな決意が宿っていた。
それを見て大人組も微笑みを浮かべ、前を見た。
すると何処からかパチパチという音が砂漠に響いてくるではないか。
「!! 皆、見て!!あそこ…!!」
「なんだ、あれ…?!お、おい、ナナリー…。ここって何も無い場所じゃないのかよ!!?」
「そのはずなんだけど…。あんな火花みたいなもの飛ばないはずなんだ…!」
「と、いうことは…!!」
「お、お、お前ら…?まさか“お”がつく奴とか言わないよな…?!」
「“お化け”かもしれないな?」
「お前…!!」
恨めしそうにジューダスを見遣るロニに、ジューダスは鼻で笑いほくそ笑んだ。
ナナリーも呆れたようにロニを見る。
「なんだい。アンタまさか、お化けが怖いとか言わないよね?」
「こ、こ、こここ怖くなんかある訳ねぇだろ?!!!」
「怖がってんじゃないか…」
肩を竦めたナナリーだったが、前を歩いていたカイル達がその辛うじて見える火花みたいな物の方へと向かうのを見て目を瞬かせた。
「あれ、絶対にスノウだよ!!!オレ達に位置を知らせてくれてるのかも!!?」
「私もそう思うわ!!スノウのあの不思議な杖は先から虹色の光線を出していたこともあるんだもの!!あの火花だって、もしかしたらスノウの晶術かもしれないわ!!」
「シャル…」
『…ここからだと離れ過ぎていて僕の探知は及びませんが…、僕もカイル達の言葉に同意です!恐らく、スノウの晶術の類いかと!』
「なら、こっちも位置を教えてやんないと遠くに行ったら大変じゃないか!!それにあんな遠くにいるなんて…!」
ナナリーのその言葉にカイルとリアラが真剣な顔で頭を悩ませる。
ここからスノウに自分達の位置を報せる方法…。
「カイル。」
「ん?どうしたの?ジューダス」
「お前、火属性の晶術が得意だったな?あれと似通ったものを作り出せ。」
「え?!あれと?!え、えっと…分かった!やってみるよ!!」
剣に力を込め、なんとなしに上空へ向けてそれを振りかざすと何とも粗末な物が出来上がる。
しかしそれでは自分達の居場所を報せるには不十分すぎる。
カイルはもう一度上空へ向けてやってみたが全て失敗に終わる。
「はぁ、はぁ…、スノウってば凄くない…?!あれ、すごい難しいんだけど…?!!」
「私もやってみるわ!」
「じゃあ、アタシもやってみるとしますかね?」
「お前…、俺達を燃やすなよ…?」
「ロニ。アンタこっちに来な。先に燃やしてあげるからさ。」
「大変っ、失礼しましたーーっ!!!」
その場に土下座したロニを見て口をへの字にしていたナナリーがフンと鼻を鳴らした。
先に詠唱を行っていたリアラが上空に向けて放った物は猛々しく天へと立ち上る炎だった。
それに仲間達がギョッとして慌ててリアラから離れる。
「うーん…。やっぱり難しいわね。」
「火力が…おかしくないですかね…?リアラさん?」
「え、そうかしら?」
「でも、それなら十分に向こうにも分かるんじゃないのかい?辛くなったらアタシが代わってあげるから言いなよ?」
「うん!ありがとう!ナナリー!」
杖を空に向け、猛々しい炎を立ち上らせているリアラに誰も近付くことなくそのまま見ていたが、カイルが歩き出したのでそれに仲間達が目を瞬かせる。
「歩きながらだとスノウに早くに会えるよね!」
「そうね!そうしましょ!」
炎はそのままに歩くリアラの姿にから笑いをする大人組。
リアラとナナリーが代わる代わる晶術を使い、報せていく中、カイル達は歩きながら遠くに見えるあの火花について話していた。
「でもさ、スノウのやつはあんなに色があってさ、綺麗だけど…、やっぱり炎ってこの色って感じだね!」
「つーか、炎の色なんて変えれるのかよ?」
「炎の温度や燃やす物質で色が変わるそうだ。だからこの炎に何か燃やせる物を入れると色が変わるかもしれないな。」
「え、それって本当?!ジューダス!!」
「ってお前、カイル…。まさかやる気じゃないだろうな?」
「え?なんで?派手な方がスノウも気付きやすいじゃん!」
「はあー…。お前のせいだぞ、ジューダス。」
「僕は真実を述べたまでだが?」
眉間に皺を寄せたジューダスだが、少しだけ後悔をしているのを背中の相棒だけが分かった。
「えーっと、何入れようかな…」
「ほら、やる気だぞあいつ…。」
「フン、やらせておけ。」
そうは言いつつも少しだけ心配そうに見遣るジューダス。
リアラは既にやる気満々でカイルが持ってきたものを次々と燃やし尽くしていく。
少しでも色が変わったり、パチパチと音がする度に興奮する子供組に大人組が呆れながらも優しくそれを見ていた。
「ねぇ、ジューダスって地属性が得意だったよね?!」
「…。」
嫌な予感がするとばかりに眉間に皺を寄せたジューダスを見てロニがここぞとばかりに笑う。
「言い出しっぺだもんなぁ?」
「アンタ、楽しんでないかい?」
「へん!さっきまでのお返しだ!」
カイルに連れていかれるジューダスを見ながらほくそ笑んだロニにナナリーが呆れながら肩を竦めさせた。
石を出しそれを燃やすと色とりどりに変わる炎を見て更に興奮する子供組。
何だかんだやってあげるジューダスは優しいな、と大人組が見ていた時だった。
「!! あれってスノウじゃない?!!」
「っ!」
皆がカイルの指差す方を見れば、だいぶ遠くだが人影が見えた。
顔を見合せ喜びを表すと、我先にと皆が駆け出す。
その人影が近くになると漸くその姿がスノウだと分かり、余計に皆の喜びがうなぎ登りに上がっていく。
抱き着いて喜びを噛み締める者、背中を叩いて泣きながら喜ぶ者、様々な反応を見せる中スノウが力が抜けたとばかりにその場で尻もちをつく。
「…ははっ、少し疲れたみたいです…」
それにロニが無遠慮に背中へとおぶると、驚いた顔をしたもののスノウはそれを受け入れていた。
本当に疲れているのか目を閉じ甘えているようなそれに仲間達は顔を見合せ、帰りを急いだ。
それでも会えた喜びは未だ萎えて行くのを知らず、村に着くまでずっと嬉しさを口にする仲間達だった。