第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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ジューダスの隣を歩く、と決意した翌日。
仲間達が集まって今後のことを話し合っていた。
「(おかしいな…、ここでエルレインの襲撃がないと物語は進まないんだが、その気配が全くない……。)」
「他の英雄に会うって言ってもさ、誰に聞くの?」
「フィリアさんにウッドロウ王……。会ってないのはルーティさんとスタンさん、か…。」
「ソーディアンを持っていた英雄以外でも良いというのなら、マリーにチェルシー、コングマンにジョニー……とまだまだいるが?」
『コングマンはやめた方がいいですって…。あれは英雄というより筋肉バカ……』
話が進む中、私は空の様子を確認していた。
襲撃用の飛行竜が飛んでいたら、すぐさま対応出来るのだが…。
「??……スノウ、空なんて見上げてどうした。」
「!!…いえ、なんでもありません。」
久しぶりにやった“考古学者としてのスノウ”の少し高めの声で反応すれば、皆がこちらを見て空を見始めた。
「しっかしまぁ…、相変わらず雪ばっかだよなぁ…」
「でも、雪も綺麗じゃない!スノウのその髪の色と似ていて私は好きだわ。」
「リアラ、ありがとうございます。」
「ふふっ、本当のことよ?」
あぁ、なんて天使なんだろう。
彼女の微笑みで今日一日頑張れる気がする。
笑う彼女の笑顔に癒されていると、カイルが鼻水を垂らしながらくしゃみをした。
「へっくしょい!!!…うぅ、寒いっ!!皆、なんで平然としてるの!!?」
「流石に慣れたぜ、俺はよ……」
「私もこの防寒具が暖かいから大丈夫よ。」
「大体、なんで僕達は外で立ち話をしているんだ。風邪を引く前に中に入るぞ。」
ジューダスの優しさで皆が中に入っていく。
そんな中、私は相変わらず空を見上げていた。
……飛行竜はかなり低空飛行で飛んでいたから雪雲で見えないなんてことはないはずなんだが…。
「何をしている。風邪でも引きたいのか、馬鹿。」
ジューダスが私の腕を掴み、中に入ろうとするので困った顔になる。
物語がここまで進まないと不安になってくるし…、私がここにいることの弊害でなければいいが。
『……もしかして、何かを待ってたりしますか?』
「そうなのか?」
「……いや、何でもないよ。」
この襲撃は君にとっても傷つくものになるだろう。
ウッドロウが襲撃されるのだから。
確か、原作においてジューダスはかなりウッドロウの身を案じていたはずだ。
この事を彼に言えないことがこれまた辛い。
「……お前、僕達にまた隠し事をしているだろう?」
「隠し事をしているというか、未来を案じているというか…。」
『そうか!未来を知っているスノウなら次の行き先が分かるのでは?』
「僕は聞かないぞ。……お前の知っている未来は碌なもんじゃないって分かったからな。それに、僕の隣に居てくれるんだろう?なら、そんな未来忘れてしまえ。」
『きゃー、坊ちゃんかっこいいですってぎゃああああああ!!!!』
君が茶化すから……。
制裁の現場を目撃し、それに笑ってしまったことでジューダスも少しばかり笑顔になる。
「ふん、お前はそうやって笑っていればいいんだ。」
『ちょ、待ってくださいよ!!?僕を使って笑わせようとしないでくださいよ!?坊ちゃん?!』
コントのようなやりとりに再び、口に出して笑ってしまうとカイルが中からひょこっと顔を出し呼びに来た。
「ちょっと、2人とも!!早く中に入らないと風邪引くよ?!」
「一番風邪を引きそうだったお前に言われたくない。」
「ひっどいよ、ジューダス!!心配してきたのにさ!!」
「お前に心配されるほど、ヤワな身体の作りをしていないものでな?」
「むぅ…!!もう先に入ってるからね!?」
むくれてしまったカイルを見てジューダスがほくそ笑んだ。
甥をあそこまで弄り倒すとは…。
2人で顔を見合わせ笑い、中へ入ろうとすると上空から妙な音が聞こえてくる。
いや、これは前世でもかなり聞いてきた音……、飛行竜だ!!
「っ!!」
「……?スノウ?」
急いで空を見た私にジューダスが訝しげに顔を歪め同じく空を見上げた。
するとけたたましい鐘の音が鳴り響き、巨大な飛行竜がハイデルベルグ城へと突っ込んで行ったのが見える。
それに目を見張り、ジューダスが中の仲間達を呼びに行った。
漸くイベントが進むのか…。
「……。」
中には魔物が沢山彷徨いている。
ちゃんと気を引き締めなければ…!
「スノウ!!行こう!!」
「…はい!」
カイル達が走っていくのを見遣ってから私も走り出す。
これから先の未来……、不安が無いわけじゃない。
でも……!
「スノウ!来い!!」
「!!」
遅くなっていた私の手を引き、ジューダスが駆け出す。その手はしっかりと握られ、離れない。
私もそれに応えるようにしっかりと握り返し、頷いて見せた。
さぁ、行こう。
エルレインが待っている。
「蒼破刃!!」
「空破特攻弾!!」
「お願いっ!!フォトンブレイズ!」
仲間達が既に魔物と交戦中で、ジューダスも私の手を離しその中へと駆けていく。
私も銃杖を構え、目の前の敵に魔法弾を撃ち込んでいく。
「 終焉の宣告 !!」
銃杖を下から上へと持ち上げる動作をした直後、離れた敵の地面から岩石が敵を貫いていく。
「乱れ飛べ翠影…!ウインドニードル!」
直線上の敵に風の刃で敵を切り裂いていく攻撃術が炸裂し、敵がその数を減らしていく。
徐々に減ってきた魔物をカイル達が倒し、先へと進む。
「!!大丈夫ですか!!?」
カイルが倒れている城の兵士に近付き声を掛ける。
しかし、その兵士はもう虫の息だ。
「リアラ、ロニ、スノウ!!」
「ええ!分かってるわ!ヒール!!」
「おうよ!ヒール!!」
二人の回復技が兵士を包み込み、癒しを与えると兵士が声を振り絞り城の中を指さした。
「ウッドロウ様を…!!」
「分かった…!でも、まずは身体を…!」
「ウッドロウ様…」
「…キュア」
息も絶え絶えの兵士に回復技をかけてやると気絶したように体の力が抜けていった。
それを見遣り、苦しそうに顔を歪ませるカイル達を私は少し離れた場所で見ていた。
前世ではこのハイデルベルグ城を何度見上げただろう。その時に城の兵士達からもかなり声を掛けてもらった。
その時のことを思い出し、……少し胸が痛い。
「……大丈夫か?」
「!!……正直、胸が痛いよ。中にいる兵士達は私の顔見知りもいるだろうし、…なんだか、やるせない。」
「スノウ…。……行くぞ、ウッドロウの所に。」
「……はい!」
銃杖を構え中へと急ぐと、案の定あの番犬を従えたサブノックが前に立ちはだかる。
「ここは通す訳にはいかぬ!!」
「もう、邪魔だよ!!ウッドロウさんの所に急がなくちゃいけないのに!!」
「カイル!ここは早くこいつを倒してしまおうぜ!!」
「分かった!」
武器を持ったカイル達を横目に私は必死に頭を動かしていた。
サブノックの弱点は…、確か…。
「ジューダス!地属性晶術をお願いします!その後にカイル、ロニはその後に攻撃を開始してください!」
「「了解!」」
「…っ!シャル…!」
『行きますよ!坊ちゃん!!』
『「グレイブ!!」』
ジューダスとシャルティエがスノウの言葉に頷き、晶術の構えを取るとすぐさま敵に向かって晶術が放たれ、すかさずそこへカイル達の追撃が敵へと襲いかかる。
思わず顔を歪めた敵に対し、スノウはすぐにリアラへと指示を飛ばした。
「リアラ、出来る限り晶術は水属性でお願いします!」
「分かったわ!___スプラッシュ!」
スノウの指示通り水属性で攻めていくリアラに頷き、自身も魔法の構えをとる。
「渦巻くは紺青の誘い(いざない)!メイルシュトローム!」
広範囲水属性魔法、メイルシュトローム。
サブノックとオセを巻き込み、攻撃をしていくと徐々に敵にも隙が生まれてくる。
それをカイルとロニの二人が見逃さず攻撃を繰り出していく。
前衛に回った方が良いと思ったか、ジューダスが前線へと向かっていくのをスノウは横目で確認し、リアラに大きく頷いた。
リアラにそのアイコンタクトが伝わったらしく、向こうもスノウを見て大きく頷いたので安心して任せる。
つまり二人で後衛担当するということだ。
ジューダスが前衛に回った為にその埋め合わせでこちらも後衛を頑張らなくてはならなくなった。
「ふふっ…。全く君には敵わないよ…。」
小声で呟いたはずのなのにジューダスの口元が弧を描いていたのをスノウが見つけ苦笑をこぼした。
杖銃を構え後衛に努める事とし、早いところサブノックとの戦闘を終わらせよう。
目を閉じ、詠唱に努めた私であったがジューダス達の活躍によりそんなに攻撃もせずに終わった。
皆に怪我がなくて何よりだ。
「急ごう!ウッドロウさんが心配だ!!」
「慌てすぎて転ぶなよ?!」
慌ただしい兄弟が走り去っていくのを横目に、近くに倒れていたハイデルベルグ城の兵士を見つけ近付く。
「大丈夫ですか?」
「っ!!?あなた様は…!?」
「っ?!」
その反応に思わず身を固くし後退してしまう。
そこへ滑り込むようにジューダスがスノウと兵士の間に入り込んだ。
「こいつは人見知りなんだ。あまり話しかけないでやってくれ。」
「人見知り…?だって…あなた様はモネ様では…?」
「っ!」
息を呑んだスノウだったが、ジューダスの背後ということもあり兵士がその様子に気づくことはなかった。
横からリアラが心配そうに兵士の怪我を治していく。
「あ、ありがとう…。怪我を治してくれて。」
「いえ、大丈夫ですよ。行きましょう?ジューダス、スノウ。」
「あぁ。」
「…はい。」
高めの声を出せば兵士は目を丸くして目を伏せ影を落とした。
スノウをモネだと信じ込んで、違う人物だと判りショックを受けたのだろう。
「…待ってください!そこの雪のように白い髪の女の子!」
「…??」
リアラが先に行ってしまい、残された二人だったが声を再びかけられ立ち止まる。
少しだけ不安そうな表情をしたスノウは兵士に恐る恐る近付き、彼の次の言葉を待った。
「もし、…もし君がモネ様の血縁者なら…。そしてモネ様がもし生きていらっしゃるなら伝えてほしいんだ…!このファンダリア地方は…、首都ハイデルベルグはいつまでもモネ様のお帰りをお待ちしております、と…!」
「…!」
兵士の思わぬ言葉に言葉を失ったスノウだったが、次の瞬間泣きそうな顔で力なく笑った。
この兵士は見覚えがある。
前世の時より僅かに時が経ったような顔をしているが確か、前世でよく話しかけてくれていた兵士で討伐や任務の際には彼がいてくれた。
顔見知りでもあったが故にスノウを見てすぐにモネだと勘づいたのだろう。
反対に、この兵士は鎧を着ており、痛みで顔を伏せていたためにスノウは気付くのに遅れたのだ。
「…困ったな。」
「え?」
「……。スノウ、行くぞ。」
「はい。」
最後に優しい笑顔で別れを告げたスノウに、兵士も少しだけ笑った。
そして仮面の男性に連れていかれるスノウと呼ばれた女の子を見つめ、目を細める。
まるで、以前見た光景のようだ。
リオン・マグナスと呼ばれた彼と肩を並べ討伐に向かう姿…、それに似ていたから。
その兵士はため息をこぼし目を閉じた。
何故か彼らに任せておけば大丈夫だと心のどこかで思ったからだった。
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『……スノウ。』
「…ははっ、困ったな。まさか顔見知りだとは、ね。」
「…分かっていた事だろう。」
「そう、…そうだね?分かっていたことだ。…分かっていた事のはずなんだ。…でも、いざ直面すると…」
「…。」
『スノウ…。』
足が止まってしまったスノウを見て、苦しそうな顔になるジューダスだったが意を決したように顔を上げ、スノウの腕を掴んだ。
「…過去は変えられない。だからこそ、今生きている人間の想いを刻み込むんだ。もう二度と過ちを犯さない為にも。」
「…君の言葉はいつだって私の心に染み込んでくる。…そうだね。今は悲観するよりも別のことがあるからね。早く行こう!現国王のところに!」
顔を上げたスノウの顔は先ほどと違い、決意のある顔だった。
「(未練がない訳ではない…。もし城に戻れるならば、またあの時と同じように皆と騒ぎたいと思う。でも…それ以上に今は隣に居てくれる友の傍に居たいんだ…!)…ありがとう。ファンダリアの勇敢な兵士たち。」
呟くように祈りを込めた言葉を紡いだスノウはジューダスを見て頷いた。
そしてカイル達の元へと走り出す。
さあ、哀しき運命の彼女…エルレインとの対面だ。
紡がれていく物哀しい未来に一度目を閉じたスノウは、心の中で未来に思いを馳せた。
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複雑な感情が入り混じっている今作品ですが、前世でお世話になった兵士達はモネの帰りをいつまでも待っているのです。
悪人ではなく、英雄として語り継がれるモネを誇りに思って。
モネもそれをどこか感じているからこそ、力なく笑ったんだと思います。
今後の展開に期待ですね。
今回のジューダスのセリフでかっこいいセリフがあったんですが、中々気に入っていて、何ならシャルティエが茶化すところも好きです。
シャルティエが茶化してまでが一連の動作ですよね。もはや。
では、次の話にご期待ください。
管理人・エア