第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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ハイデルベルグへと戻り、お世話になった家で賑やかな夜を過ごした私たちは翌日の行動を自由行動とした。
まだ私が病み上がりだからと皆が気遣ってくれたのもあるが、例の壊れてしまった武器の事で一度武器屋に行きたかったのもあり、皆に頼み込んだ。
それにジューダスとのデートもまだしていない。
「ジューダス!こっちこっち!」
「…ノイシュタットの時もこうして呼ばれたな。」
『元気な事はいい事ですよ!坊ちゃん!』
先を歩いている私はジューダスを誘い、武器屋へと向かっていた。
もう相棒が直らないと分かっていても、一応は見てもらいたかった。
先に武器屋へ入り、皆が回収してくれたバラバラの相棒をいつもの武器屋の主に渡すと眉間に皺を寄せ睨まれた。
「お前さん、これがどんな代物か分かってて持ってきたのか?」
「はい。モネ・エルピス…彼の遺品ですから。」
「ふん…。こんなボロボロにしやがって…。まぁいい、もう少ししたら来い。」
「はい、ありがとうございます。」
お礼を伝え、武器屋を出ると漸くやってきたジューダスと鉢合わせた為その手を取り今度は別の店へ行く。
今日は何を君に贈ろうか。
僅かな楽しみを考えながら入った店は食事処だった。
勿論そこは修羅が教えてくれた所ではなく、前世で彼とよく来ていた食事処。
任務が終わればこうしてこの店に来て、暖かいものを食べていたね。
『懐かしいですね!ここ、よく来ましたよね!』
「ふふっ、よく覚えていたね、シャルティエ。」
「僕も覚えている。……任務が終わってからよくここに来て食べていたものだ。」
「ふふっ、そうだね。」
「というよりここに連れてこられたが…、武器は?」
「時間かかるって言っていた。怒られたけどね。」
『まぁ、スノウがモネだと分かってたとしても怒られていたと思いますよ?』
「その武器屋があれを作ったんだろう?なら、直せるんじゃないのか?」
「うーん…どうだろうね?かれこれ大昔になるからね。」
『スノウの大昔なら、僕はどれだけ太古の武器ですか…』
「ふふっ、違いないね。」
そうこうして話している内に注文を聞きに来た店員に、注文をしてしまう。
彼はきっと同じものを頼むと思うから相談もせずに決めてしまったが、何も言わないところを見ると良かったらしい。
店員が去った後、急に真剣な顔になる顔にああ、遂に来たかと苦笑する。
「話すのは何も武器の事だけでは無いだろう?」
『そうですよ!ここまで来たら全部話してもらいますからね!?』
「昨日、シャルからある程度は聞いた。お前の気持ちも…。だが、僕はお前から直接聞きたい。お前は…、どうしたいんだ?」
まただ。またあの瞳…。
懇願するような瞳。でも、揺らいだ瞳ではない、芯のある瞳。
聞き逃さないとばかりにじっと私を見つめるその双眸に、少し視線を逸らした。
「……」
「ここまで来て話さないつもりか?」
「いや、考えているんだ。どう話そうか、とね。」
『じゃあ坊ちゃんが質問して答える形にしたらどうですか?坊ちゃんも聞きたいことがあるでしょうし。』
「それもそうだな。今日こそ答えて貰うぞ、スノウ。」
「ふふっ、お手柔らかに頼むよ、ジューダス?」
静かに頬杖をつき笑うと、彼は少しむくれた顔になり口を開いた。
「以前、僕に昔話を聞かせてくれただろう?それを聞いて疑問に思ったんだが、何故、お前は未来を知っている?未来を知るきっかけはなんだ?」
「ノーコメントで。」
『…スノウ。』
「ふふっ、すまないね?こればっかりは話せない。」
「……次。お前はどうして僕の災難を肩代わりしようと思ったんだ?」
うーん、これはどうしようかな?
推しだからなんて言えないし、かと言って昔から君を知っていたから、ではおかしい。
「そうだね…、未来を知ってから君を助けたいと思った。だから君に起こる災難全てをこの身で受難すると決めたんだ。」
「会ったこともない僕を、か?」
「ふふっ、人を助けるのに理由がいるのかい?なら、未来を知った時に君に一目惚れをしたから…、なんてね。」
「……ふざけるな。」
「おやおや、結構真剣に言ったつもりなんだけどね?」
『スノウ、チャラいですよ…』
「ははっ、お褒めに預かり光栄だ。」
『褒めてませんって……』
シャルティエが呆れた口調でそう言うのを頬杖を付きながら笑って聞く。
ジューダスも余計にむくれてしまったようだ。
……でも、実際に会った君は本当にカッコイイと思ったよ。自分の決心を揺るがないものにしたのは、紛れもない君自身を見たからだ。
「……次。どこまで未来を知っている?これから起こる未来もお前は知っているのか?」
「……ノーコメントで。」
これは答えても良かったんだけど…、これのせいでジューダスが聞いてきてもいけないし、ここは黙秘権で拒否させてもらおうか。
『案外これからの未来は知らなかったりして?』
「さあ?どうだろうね?」
「……お前答える気あるのか?」
「これでも結構答えてるつもりだけどね?」
「……次。お前自身はこれからどうしたいんだ?」
結構踏み込んでくるね…。
それに関してはまだ答えが出た訳じゃない。
でも、皆と一緒に在りたいと思うのは…本当だ。
それに言い訳にしかならないけど、君たちを狙う輩もいるから離れられないとも思っている。
だがこの間の一件でかなり迷いが生まれているのも事実だ。
『スノウ。』
「……分かってるよ、シャルティエ。」
答えない私を見兼ねてシャルティエから咎めるような声が上がる。
きっと私の答えを見透かしているんだろう、彼は。
「……正直に言おう。まだ決めかねている。」
『スノウ!?』
「シャルティエ。君が言ってくれた言葉、勿論私の心に響いてはいる。でも、だからこそここで決断を間違ってはいけないんだ。決して、ね…?」
目を閉じ、暗黙の了解とばかりに首を振ってみせる。
次の質問をどうぞ?
「……何がお前をそこまで迷わせる?僕たちと旅がしたいなら来ればいい。なのにお前はその決断を迷っている。何故だ?」
「君達を命の危険に晒したからだよ。……まさか、あんな事が起きるとは思っていなかった。それは全て私がいたことによって引き起こされた事件。……そう思うと私がここにいる理由は無いに等しい。君達が大事だからこそ、ね。」
「……シャルも言ったはずだ。皆で立ち向かえばいい、と。」
「言われたね。」
『ならなんで?!』
「……ノーコメントだ。」
明らかな拒絶を含ませるとジューダスの顔が歪んでくる。
……君にそんな顔させたい訳じゃない。
でも分かってくれ。君達の為なんだ。
震える吐息で何とか息を吐いた彼は、一度目を伏せ呼吸を整えた。
そして震える声音で質問をした。
「……次だ。あの黒い奴らは一体なんだ……、お前の事を仲間だと言っていた。」
「!!」
それは驚きだ。
仲間だなんて言ったことは無いし、修羅の勧誘にもずっと断ってきている。
修羅がそんな私を仲間だと言いふらす様な事は無いと思うだけに、誰がそんなことを言ったと思考を別の方へと向けていたからか、ジューダスが眉間に皺を寄せこちらを見た。
あぁ、すまない。別のことを考えてしまうのは私の悪い癖だな。
「私は彼らの仲間なんかじゃない。断じて。それだけは誓う。」
「……そうか」
ジューダスがホッとした様子で息を吐き出す。
シャルティエも僅かに緊張していたのか、ほぅと息を吐き出したのが分かった。
そんなに奴らの仲間だと思われていたのか、心外だ。
「黒づくめの彼ら……それについてはノーコメントで。」
「何故だ!奴らと仲間でないなら答えられるはずだ!」
「……結構、複雑なんだ。彼らの仲間ではないが……なんと言えばいいんだろうね。」
同胞とも違う、似た者同士……といえば語弊があるか。
言葉とは難しいものだ。
「奴らはお前を殺そうとする奴らなんだぞ?!何故庇い立てする?!」
「庇い立てしているつもりは無かったが……、彼らは私の味方ではない。それだけは言っておくよ。」
『スノウ!』
「……分かった、少しだけ話そう。……彼らは私と同じ、未来を知っている集団だ。勿論未来を知らない連中も居るようだけど、その内容を共有していると思ってくれていい。」
「未来を知っている集団……?未来を知って、何をしようとしているんだ?」
「ノーコメントで。」
「スノウ!!」
君達の死、それが彼らの目的なんて口が裂けても言える訳がないだろう?
不安にさせてどうする?
それに言ったところで、きっと君達の未来の話もしないといけなくなる。
それだけは勘弁願いたい。
「まぁ、君達の敵だという認識でいい。そして、彼らは壊滅の危機に瀕している。気にする事はない。」
「僕達の敵、って……お前はどうなんだ?お前はそいつらの味方だとでも言うのか?」
「いや、私としても敵という認識だ。私の邪魔をしてくるからね。未来を知っている者同士だからと言って仲間だと一括りにされるのは……正直気分は良くない。」
目を閉じて不快感をやり過ごす。
奴らの仲間ではないのに、仲間だと言われている現実。あまり喜ばしいことではない。
私は彼らの仲間になったつもりは一度たりともないのだから。
それを見てジューダスが考え込むように口元に手を当てる。
シャルティエも見えはしないがぼんやりとコアクリスタルの光をゆっくり点滅させた。
「……僕の敵にならないんだな…?」
「今の所は。でも、私の邪魔をするというのなら、容赦はしない。」
「っ!お前は、また1人で……!!」
『スノウ…!』
「でも、君達を危険に晒す気もない。邪魔をするというのなら君達との旅を辞めるだけさ。そして君達の前に二度と現れないよ。」
「……。」
もうやめてくれと言わんばかりに顔を伏せ、唇を噛み締めるジューダス。
君達の敵は私が全て倒すから、だから君達は安心して旅をすればいい。
それに〈赤眼の蜘蛛〉の奴らは私としても、同郷の好みということもあるし、彼らの事は任せて欲しい。
勿論親しい仲の方の好みではない、何らかの縁の繋がりがあるだけの好みだ。
……仲間意識は無論ない。
「……じゃあ、お前の目的はなんだ?未来を知っていて、生き返ってでも何を成し遂げたい…?」
「沢山あるんだ。いや、否応無しに増えていくと言った方がいいか。」
君達の敵を排除すること、君達の旅を無事に終わらせられるようにそっと遠くから見届けること。
その為には私を殺そうとする輩も何とかしなければならない。
それは〈赤眼の蜘蛛〉の存在も、修羅が言っていたバグのような存在も然り。
そう思うとやる事が多いな、と嘲笑していると鋭い視線が刺さる。
ジューダスが私を睨んでいたのだ。前にその顔をやめろと言われていたがそれの事だろう。
肩を竦め苦笑を零した。
無意識なのだから仕方ない。
「さて、次の質問は?」
「……お前は、死が近すぎると言ったな。それはどういう事だ。」
「そのまんまの意味さ。私を殺そうとする輩はごまんといるって事。人気者は辛いね?」
「……誤魔化すな……」
「誤魔化してないさ。本当の事だ。……ただ、知らない間に恨みを買っているようではあるけどね。」
『その性格じゃないですか……?』
「ふふっ、違いない。」
笑った私を再び睨むジューダスだったが、店員が食事を持ってきた事で顔を伏せた。
テーブルに置かれた食事に手を付けようとしたが、彼がすぐさま質問を被せてきたのでその手を止める。
「どんな敵だ。」
「君達も見ただろう?あの大斧を振り回していた黒づくめの彼。名を【玄】」
「ゲン?」
『というよりひとついいですか?』
「どうぞ?」
『スノウはなんで奴らのことをそんなに詳しく知っているんですか?仲間じゃないんですよね?』
「あぁ、それは……彼らの中で私に情報をリークしてくれる人がいるんだ。それでだね。まぁ、玄の場合は自ら名乗っていたから知っていたんだけどね。」
そこまで言って漸く食事に手をつける。
あぁ、美味しい。
久しぶりに食べるとここの食事はより一層美味しくなる。
しばらく目を閉じそれを堪能していると彼も食事に手をつけ始める。
それを見届けまた一口食べ始める。
『昨日スノウを攫って行った【修羅】という人ですか?』
「なんだ。君達は修羅のことを知っていたのかい?」
「いや、お前が修羅と呼んでいたからそれでだ。ただの推測に過ぎない。」
「なるほど。そうだね、彼がリークしてくれているよ。」
『昨日攫って行ったのに態々逃がしてくれたのはリークする為……?それなら昨日のスノウの発言にも納得が行きます…。“他にも私の命を狙うものがいると知ったんだ。”と言っていた発言に。』
君は名探偵か?
不用意な発言をした私も私だが、それ以上に彼の推理力に驚かせられる。
そんな私の何気ない一言が、まさか私自身の言葉を裏付けするなんて思わなかったよ。
目を見張った私に得意げに笑うシャルティエに、こちらもほくそ笑んだ。
「君は名探偵だね。探偵業に切り替えた方がいいんじゃないかい?」
『探知も出来るし、いいかもしれませんね!』
「お前ら、話の腰を折るな。」
呆れた顔でそう話す彼も何処か上の空で、なにやら考えていることが窺える。
全く、君らは揃いも揃って探偵か。
「“他にも私の命を狙うものがいると知ったんだ”か……。それは誰の事だ?その黒づくめの奴らの仲間か?」
「それが分からないんだ。まだ、確定している情報ではないけど用心しておくに越したことはない…という事らしい。私もまだ見たことがないから実感が湧かないがね。」
『うーん、修羅は僕たちの味方なんですか?』
「いや、彼も敵だよ。敵に塩を送ってくれているんだろうね。こうして見ると、彼もかなりの物好きだ。」
心配してくれているのは分かるが、敵に塩を送るのは〈赤眼の蜘蛛〉としてどうなんだ?と今更ながら心配になってくる。
彼らの関係性や信頼性を問う訳じゃないが彼もなかなかな事をしているなと、ふっと笑ってしまう。
「酷いなぁ?スノウ。俺は心配してやっているのにな。」
『「!?」』
「もう少し物音を立てて来たらどうだい?修羅」
「クスクス…、あんたなら俺の気配くらい察知出来るだろう?」
「ふふっ、違いないね。」
『いや、何で普通に会話してるんですか?!』
「……何しに来た?」
「クスクス、俺の話をしているから聞いているだけだ。そしたらスノウが俺の事を貶しているから思わず出てきたじゃないか。」
「いつ貶した?」
「さっき。」
やれやれと肩を竦めるとクスクスと可笑しそうに笑う修羅は、昨日と同じく黒い布を被らずありのままを曝け出している。
ジューダスが警戒を強める中、私は彼に視線を向けた。
「で?本当は何用なんだい?」
「クスクス、もう少し居させてくれよ?俺とあんたの時間が短くなるだろう?」
「私は今、彼とデート中なんだけどね?」
「……」
少し顔を赤くしてそっぽを向いた彼を見て、修羅と顔を見合せ笑ってしまう。
やはり彼はああいう時は照れ隠しでそっぽを向くと分かっていたから。
「昨日の情報の続きなんだが……、まぁ、いいか。」
チラとジューダスの方を見たが諦めたようにこちらを見た。
それに対して、良いのか?と目配せすると首を縦に頷いた。
「あぁ、構わない。どうせ、こいつらには何も出来やしないからな。ただ指を銜えて見ているだけさ。」
「……何の話だ?」
「クスクス…、気になるのか?」
「当たり前だろう?お前らの事、こいつは全く話さないんだからな。」
ギロと睨まれ、両手を上げ肩を竦めて見せる。
それに修羅が可笑しそうに笑いだし、腹を抱えた。
笑い過ぎだ、修羅…、彼が睨んでいるぞ。
その視線を物ともせず彼は一頻り笑った後平然と私の隣へ座った。
それに嫌な顔をしたジューダスにニヤリと笑う修羅。
早く終わらせてくれ……。
「スノウ。昨日話したことは覚えているな?」
「あぁ、覚えているよ。」
「なら話は早い。奴らの名前を俺たちは〈ロストウイルス〉と名付けた。」
「〈ロストウイルス〉……、皮肉な名前だ。」
「クスクス。皮肉が効きまくっているだろ?」
ロストは消滅、ウイルスはそのままの意味だ。
つまり彼らが言いたいのは、私達を消滅させられる破滅的なウイルスと言う事なんだろう。
奴らが消滅するという意味でないだけに、その名前はとても皮肉な物だ。
「で?彼らに何も出来ないというのはどういう事だい?」
「そのままの意味だな。こいつらは〈ロストウイルス〉に触れられない。俺たち〈星詠み人〉だけが触れられ、そして殺される。それは【海琉】で証明済みだ。」
「!!……〈星詠み人〉?カイル……?何の事だ?」
「クスクス、おお、悩め悩め。」
「意地悪だね、君も。」
「人の事言えないだろ?」
それを聞いてそれもそうか、と視線を僅かに逸らし、直ぐに視線を戻した。
横目で見るジューダスは必死に何かを考えているようだったので話の続きを修羅に促した。
「クスクス。」
「で、海琉がその〈ロストウイルス〉に触れなかったのは分かった。だが、何故海琉の前に現れたんだい?」
「本当は俺の前に現れたんだけどな。丁度海琉が近くに居たから命令してやった。そしたら面白い結果になったんだ。海琉の攻撃を物ともせず、全部それをすり抜け俺の方へ向かってきた。」
「……なるほど、それは厄介だ。」
「だろ?クスクス…まぁ、返り討ちにしてやったがな。」
「……はぁ、お強い事で。」
「クスクス!!お褒め頂き光栄です、お姫様?」
私の手を取って口付ける彼はかなりニヤリと笑っており冗談だと分かる。
それに私は呆れた顔をしたが、ジューダスはそうはいかなかったようで修羅の手を掴んだ。
ジューダスの手の筋が浮きだっている事からかなりの力で修羅の手を掴んでいることが分かる。
その表情もかなり怒っている様子で、修羅を睨みつけていた。
こんなジューダス、初めて見るかもしれない。
「……」
「クスクス。俺とやろうって寸法か?望むところだが?」
「修羅。」
「クスクス、あぁ、分かってる。先に情報を渡してからにするさ。」
ジューダスの手を振り払い、僅かに手を振って自身の手の調子を伺うのを見て少しばかり驚く。
彼はそんなに力を入れて掴んでいたのか。
それに修羅がそんなギラついた視線をジューダスに向けた事にも驚いた。
彼のそういうところは見たことがなかったから。
「で、君はどうやって撃退したんだい?それを見た者は皆死んで行ったはずなのに?」
「実力さえあれば問題は無い。……まぁ、俺が会ったのはミドルクラスの〈ロストウイルス〉だったからな。」
「クラス別に分けられるようになったのか。そこまで君たちは情報を集めたんだね。」
「そりゃ必死にもなるだろ。俺たち〈星詠み人〉だけを殺傷出来る能力があるんだからな。こいつらのような一般人には関係の無い話だ。」
わざとに鼻を鳴らし、ジューダスを指さす修羅は少しばかり煩わしそうにジューダスを見ていた。
お互いの視線が交わり、火花が散ろうとしている中私は取り敢えず目の前の食事に集中した。
冷めてしまう前に食べてしまおう。
このままだと修羅とジューダスの交戦は間違いないものになるだろうし、その時は私も修羅と交戦になるだろうし腹ごしらえは大切だ。
『スノウ……、よくこんな中で平然と食べれますね……』
「冷めてしまう前に食べないと勿体無いからね。」
「スノウ、そのまま食べているんだな。……俺はこいつを始末してくる。」
「ふん…、その言葉そのままそっくりお前に返してやる。」
先程の手の件があるのか、2人はもう臨戦態勢だ。
同じ歩幅で外に出ていった2人を呆れた視線で見送り、私は黙々と食べていく。
全く、男というのはこういう時は一致団結するからね。
少しだけ残っているジューダスの分も食べてしまい、支払いを済ませた後、彼らの軌跡を辿っていくと街外れで激しく交戦している彼らの姿。
その上、恐ろしく二人共真剣な顔をして戦っている。
銃杖を構えた私が横目で見えたのか、二人の視線はこちらに向きくわっと目を見開いた。
「「手を出すな!!」」
「……。」
全く……、男というのはこういう時一致団結するからね……、本当に。
私は溜息を吐き銃杖を仕舞い、観戦することにした。
いざと言う時は助けに出よう、そう誓ってしばらくその二人の姿を頬杖を付きながら見るのだった。