第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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現在、スノーフリアを出た私達は魔物と戦闘に入っていた。
……そう、入っていたのだが……
「っ!!」
何故か、私だけヘイトを貰っている状態だ。
皆が動揺する中、私は自身の得物を持ち戦っていた。
慣れない雪国での戦闘で皆の動きが悪くなっているのも仕方の無い事だが…。
「(流石に誰か助けてー!?)」
何故か私にだけ魔物が襲いかかってくるのだ。
ジューダスだけは雪国での戦闘に慣れているようで助けてくれるのだが、何しろ数が多い。
そしてその多数が私を狙いに来ているのだ。
何故?!
「(っバーンストライク!!)」
一気に魔法で片付けに行くもその数は中々に減らないように見えた。
逆に、この白い雪の中、全身白コーデにされている私は魔物からしたら見えづらい筈なのに何故こうも狙われているのか。
今までファンダリアに居てこんな事一度もなかったのに!!
「な、なんでスノウだけ狙われてんだ…?!」
「早く助けに行かなくちゃ…ってへぶっ?!」
カイルが助けに来てくれようとしているが、何分雪深いこの大陸……。
雪に足を取られ見事に頭から突っ込んだカイルを憐れみの目で見れないこの忙しさ…。
「っ!!」
「まずいわ!!徐々にスノウが押されてる!!」
「くっそ、待ってろよスノウ!!ってへぶ!!」
ロニまでもが頭から雪に突っ込み、リアラが二人を蔑んだ目で見ていた。
リアラさん?そんな顔しないでくれないかな?!
聖女ですよね?!
「チッ…、おいスノウ!晶術で一気に消してしまえ!!」
「(それが出来てるなら苦労はしないってー!!)」
フリップを出す事叶わず、ただただ得物を振り回す。
大きく跳躍し、そして頭の上の物がぴょこんと動くと皆がそれを見て大きな声を出す。
「「「あーーー!!!?」」」
「?!」
急に大声を出さないで欲しい。
しかし、その声で向こうに気付いた何体かの魔物がそちらに向かって行ってしまったので、少しだけ焦燥に駆られる。
慣れない環境での戦闘、果たして彼等はちゃんと出来るだろうか?
「そういうことか…!スノウ!!頭のそれを外せ!!」
「(どういうことー?!)」
頭のそれって何?!
魔物の攻撃を受け止めている私に出来るのは、ただひたすら防御することなんだがね…!
ギリギリと得物と魔物の爪で音が鳴り、その場から動けない状態だ。
するとジューダスがそれを見兼ねてこちらに向かってきて私の頭に手を伸ばした。
何か取られる感覚に、そう言えば兎の耳なるものを着けていたなと思い出す。
それが外れた瞬間、敵のヘイトが一気にジューダスへと注がれる。
「??」
するとあろう事か、ジューダスはそれをロニに着けて魔物への攻撃へ転じる。
まさか、そのうさ耳……呪いのアイテムだったのかい…?
ロニが魔物に一斉に襲われ悲鳴をあげる中、私は魔法を唱える。
「(フィアフルフレア!)」
上空より火球が多数落ちてきて敵を滅する火属性魔法。
ロニの周りを雪を溶かし、見るも無惨な状態にし、魔物を一掃するとロニから非難の声が上がる。
「おい、スノウ!!俺を殺す気か?!!」
「ふん、それを買ったお前が責任を持て。」
「ぐっ…言い返せない…!」
まさか、そんな呪いのアイテムだったとは…。
着ける時には気を付けないとな、と苦笑しながら彼等の方へと近付こうとすると手元から嫌な音が響いた。
ピシ
「?!!」
慌てて自身の得物を確認する。
遠目で見たら何の変化も無いが、近くで見ると銃部分に多少の亀裂が入ってしまっており、これ以上使えば耐えられない事は明白だった。
しかし私はこれしか武器を持っていない。
「(メンテナンスが必要か…)」
いつも磨いたり、研いだり等の簡単なメンテナンスは自身でやっていた。だが、本格的なメンテナンスは私がスノウになってからは一度もしていない。
だからここに来てその無理が祟ったのだろう。
「(マズイ…こんな所で武器を失えば、残る手段は魔法のみで戦略が大幅に縮小される…。ましてや玄、修羅との戦闘もしていない状態で…。)」
ジューダスが一度こちらを見遣ったので得物を戻し何も無かったかのように装う。
彼に心配をかける訳にもいくまい。
彼等に駆け寄り、話に参加する。
結局この呪いのアイテムをどうするかという議題のようだ。
捨てる派とロニが着ける派で別れている様子で、私は面白そうなのでロニに着ける派を選んでおいた。
途端に嫌そうな顔でこちらを見るロニには申し訳ないが、その顔でぴょこぴょこと動いているうさ耳が面白かったので笑ってしまった。
。+゚+。・゚・。+*+。・★・。+*+。・☆・。+*+。・★・。+*+。
時は少し経った頃。
再び魔物に襲われている僕らだったが、段々アイツらもこの雪国での戦闘に慣れてきた様で動きがマシになりつつあった。
しかし、だ。
それに比べて急にスノウの動きが目に見えて悪くなっていた。
例の武器を構えてはいるがそれを使う事はあまりなく、遠距離からの晶術で敵を一掃していた。
先程までの戦闘で疲れたのか、それとも何か別の戦略でもあるのか、前線に出る事はなくなっていた。
もしや、具合でも悪いのか?
『??…スノウどうしたんでしょうか?目に見えて動きが悪いですね?』
「お前もそう思うか?僕も気になっていた所だ。」
『うーん?未来を知っている彼女の事ですから、もしかして何か起こる前触れとか?!』
「物騒なことを言うな。だが…有り得なくはないか……。」
ふと彼女を見遣ると戦闘が終わった事に酷く安堵している様子だった。
いつもなら戦闘が終わり次第、毎回冷静にカイル達を見ているのだが…。
徐々に深まる謎を放っておく性分でも無い為、素直に彼女に近付き聞いてみることにした。
「スノウ。」
「??」
「お前、急に動きが悪くなってるがどうしたんだ。具合でも悪いのか?」
「!」
ほんの僅かに目を見張った彼女にやはり、と自身の仮定に頷いた。
しかし見た感じどこも悪そうな所は無い。
怪我もして無さそうだが…?
「…何処をやられた。」
「《何処も怪我はしてません。大丈夫ですよ。》」
スノウとしての言葉に眉間に皺を寄せた僕は、その腕を遠慮なしに掴み服の袖を上げた。
腕ならばすぐに分かりそうなものだが。
防寒具が邪魔で中々上に上げられなかったが、それを見て可笑しそうに笑って首を横に振る彼女。
「《本当になんでもないんです。ただ、今は少し遠距離での攻撃で一掃したい気分なのでそれでです。》」
「…本当か?他に何かあるんじゃないのか?」
「《ふふっ、疑り深いですね?何にもありませんよ。》」
「……。友なのに、頼ってはくれないのか?」
「!!」
流石にそれを聞いてバツが悪そうな顔になり、頬を搔く彼女を睨み付ける。
やはり何かあるではないか。
何故それを言ってくれない?
「僕では頼りないか…?」
「《そんな事はない!》」
声無きフリップでも分かるくらいその言葉が心の底からの言葉だと、フリップを出した勢いで分かった。
その後またバツが悪そうな顔になり、どうしようかと逡巡しているようだったが、徐々にその顔が諦めた顔になったのを見て心の中で拳を作る。
そして視線を彼女に固定した。
「《…すまない。実は武器が使えなくなったんだ。》」
「??…見せてみろ」
彼女から武器を貰い、事細かに見ていくと確かに柄近くの妙な機構の所に僅かなヒビが入っているのが確認出来た。
なるほど、これは確かにまずい。
軽い相手ならこれでも良かろうが、相手が重い攻撃をしてくるやつなら耐えられないだろうと分かるくらいのヒビだった。
「なるほどな…、確かにこれはまずいだろうな。これをどうするつもりだ?」
「《首都ハイデルベルグの武器屋でメンテナンス出来る鍛冶屋が居る。そこでメンテナンスしてもらおうかと思っているんだ。だからそれまでは遠距離でと思っているんだが……まさか君にバレるとはね。》」
「何年一緒に居ると思っている。僕を見くびるなよ?……それからこういうことは直ぐに報告しろ。戦力の問題は、お前一人の問題じゃないんだからな。」
「《ふふっ、そうだね。私が悪かったよ。》」
武器を仕舞う彼女は少しだけ自身の相棒を心配そうに見つめていたが、首を横に振り笑った。
それは少しだけ苦しそうな笑顔だった。
気持ちは分からなくもない。
自分の命を守る武器……相棒とも呼べるそれが壊れてしまえばまた新たに武器を買い直さなければならない。
その時にまた新たな武器の癖を見抜き、使えるようにしなければならないが、それがどれほど労力かは分かっているつもりだ。
ましてや彼女の場合、他に類を見ない武器だからそうもいかないだろう。
「…早くハイデルベルグへ行くぞ。それを直してもらわなければなるまい。」
「!」
それを聞いて嬉しそうに笑い、僕の隣に立つ彼女。
今は下になってしまった視線が、少しだけ優越感に浸れる。
僕の手を取り歩き出す彼女に僕も少しだけ笑みを零した。
仲間達が買ってきたその防寒具は真っ白で、彼女の髪も今は雪色だし、そしてファンダリア出身ということもあってか昔から肌が白く、透き通るような白という事も総じてこの雪の中では簡単に見失ってしまいそうになる。
だからこの手を繋いでいないと見失って、居なくなってしまいそうで…。
それが彼女の方から手を繋いでくれた。これが嬉しくないはずがない。
強く握り返したその小さな手は、この寒さで冷たくなっていた。
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まさかジューダスに見破られるとは思っていなかった。
だから少し驚いたんだ。
そしたら彼はその表情も見破ってきたので本当に驚きの連続だった。
結局は説教されてしまったけど、今は話して良かったと思っている。
私を庇うように戦う彼がとても頼もしいんだ。
「お前ら!スノウは今晶術しか使えん!一体も魔物を通すなよ!」
「「了解!!」」
「スノウ!それなら私の近くで一緒に攻撃しましょ!」
「《分かった!》」
リアラの隣で魔法を唱え、魔物を一掃する。
というより、今気付いたが…、前線3人居る時点で私は後方に回っても良かったのでは?
「スノウの晶術って、他の奴らと違うよな。威力っていうか、独特っつーか。」
「でもキレイじゃん!オレ、スノウの晶術キレイで好きだ!」
「!!」
そう言われると照れてしまう。
これは他のシリーズの魔法も使っているからそう見えるだけで私自身はそんな凄いことはない。
でも、喜んで貰えるだけ良しとしよう。
「_____さい……」
「??」
何処からか女性の声が聞こえてくる。
しかしあまりにもか細い声すぎて幻聴かと思えてしまう。
「__こちらへ______」
「!!」
やはり聞こえてくる。
でもその声に反応しているのは私だけのようでカイル達は変わらず雪を見てはしゃいでいるし、リアラも気付いた様子はない。
あのジューダスでさえ気付いていないようだから、どうしようもない。
言ったところで信じては貰えなさそうだし…、原作にこんなイベントはなかった。
だから彼らを巻き込むのも違う気がした……というか気が引けた。
それに私だけが気付くものといえば、〈赤眼の蜘蛛〉関係のものでもある。
それだったら彼らを巻き込むのはお門違いだ。
私は皆の目を盗むようにその声の主を探そうとしたが、やはりジューダスが目敏くそれを見つけ私を連れ戻そうとする。
「はぐれるな。お前は子供か!」
「《待って、ジューダス。その…声がしたんだ。》」
「声?……何も聞こえないが?シャル、お前は聞こえたか?」
『いえ、何も聞こえませんでしたが……』
「……」
「お前、また僕たちに隠し事か?」
「《本当なんだって。信じてくれないか?》」
本当に声が聞こえたのだ。
事実、今も聞こえる。こっちに来て、という女性の言葉が。
眉間に皺を寄せ真実を見極めようとする眼差しだったが、どうしてもその答えを待てなくて苦しい顔になる。
「っ、《ごめん。ハイデルベルグには先に行っててくれ。》」
ジューダスの腕を引き剥がし走り出すと慌てて声を上げる彼。
その声に反応した仲間達が走っていくスノウの様子を見て追いかけようと言うものの、雪国出身のスノウに追いつける訳もなく結局見失ってしまった。
「スノウ…!」
『やはりスノウの気配を辿れませんっ!どうしたら……!』
「ジューダス!」
「スノウは一体どうしたの?!」
「分からないんだ。急に声がすると言い出して…!」
「こここここここ、声がする?!!何処だ?!何処にいるんだ?!!」
ロニがパニック状態になり、それを見てカイル達が大溜息をついた。
そういえばこの年長はお化けが苦手なのだった…。
「ジュ、ジューダス?!お前はそ、その…声が聞こえたのか?!」
「…いや、聞こえなかった。でも、あいつ……、スノウの表情は嘘を言っている顔ではなかった…。あいつに聞こえていて僕には聞こえなかった声…、一体何が起きてるんだ…?」
「早く探しましょう!一人なんて危ないわ!それこそ今、スノウは晶術しか使えないんでしょ!?」
「「「!!」」」
リアラの言葉に全員が顔を見合せ頷いた。
必ず探し出す。
皆の心はスノウの事でひとつになった瞬間だった。