第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジューダスが修羅に攻撃を仕掛ける。
それに私が援護する形で横から攻撃を仕掛ける。
得物を銃へと変形させ、銃口を向けた。
狙うは頭…!
「痺れなよ!!」
「!!」
乾いた発砲音の後、ジューダスを無理矢理押しやり回避した修羅はとても身軽で、直ぐにこちらに攻撃に転じる姿は天晴だ。
得物に戻した私はそれを受け流していく。
「まさか、あんたと戦うことになるなんてな。」
「分かっていた事じゃないのかい?それに、君は私の顔を見れば大体言いたいことは分かるんだろう?」
「クスクス、違いない。」
言葉のやり取りをしているものの、修羅は変わらぬ速度でこちらへ攻撃している。
それをジューダスが背後から攻撃を仕掛けようとして咄嗟に修羅が宙を翻し足蹴をジューダスにお見舞いする。
「くっ?!」
「クスクス、残念だったな。そんな事じゃ俺は殺れないよ。」
「ほざけ!」
「油断してるのはどっちかな?」
「?!」
高威力の火属性魔法を放つ。
一瞬逃げ遅れた修羅の着ている黒い布が燃えるので、彼がすぐにそれを脱ぎ捨てた。
露わになった彼の姿は、ロニの様な銀髪に赤い瞳を持っていて、特徴的なピアスをしていた。
あれは髑髏のピアスか。
……お前はビジュアル系か!!
そんなツッコミはやめておこう…。
割と幼い容姿をしているが…年齢不詳だな。
「子供か。」
……私が言わなかったことをいとも簡単に言う君は素敵だよ、うん。
それに修羅が可笑しそうに笑い出す。
「一応、18なんだけどな?」
『坊ちゃんより上じゃないですか?!』
「……見えないな。」
「クスクス、君のその正直な所は見習いたいよ。因みにスノウの感想は?」
「…もう少し大人かと」
「嘘は良くないな?」
「顔で分かるなら聞かないでくれないかな?」
「直接聞きたいじゃないか。クスクス、思った通りだったけどさ。」
「はぁ。君は意地が悪い。」
「褒めてくれるな。照れるじゃないか」
「ふっ、君の頭は花畑かい?」
「酷いなあ?スノウ。」
変わらずクスクスと笑う彼は悪びれもなくそう話す。
まぁ、でも年相応の受け答えだと思う。
髑髏のピアスは頂けないがね。
「あー、なんでスノウはそっち側なんだ。」
「こいつ、さっきから何を言っている?!」
『モネは渡しませんよ!!』
「私は、私の信じる道を進むのみ。君が何と言おうと私がそちら側に寝返る事は有り得はしないんだよ?」
「はぁーあ、そりゃ残念だ。」
抑揚をつけて本当に残念そうにする彼は攻撃の手を止めると元来た道を戻ろうとする。
それにジューダスがさせまいと攻撃しようとするが、笑った彼によって遮られる。
「クスクス、もう少し強くなったら相手してやるよ。それまで精々強くなってくれよな?」
「逃すかっ!」
「だから今は殺らないって言ってるだろ?あ、スノウ。今度デートしようか。」
「ふっ、君がエスコートしてくれるならね?」
「クスクス、決まりだな。」
手を挙げて消えていった彼を見送り得物を下げる。
あぁ、色々あって疲れた。
それにリリスさんの所へ早く戻らないと怒られそうだ。
「……モネ。」
「ん?どうかしたのかい?」
「……色々聞きたいことはあるが、今は……聞かないでおく。だが、一つだけ聞かせて欲しい。お前は僕の…僕達の敵なのか…?」
懇願するような眼差し。
それはどちらの“懇願”なのだろうね?
結局は私は、最終的に君達の元には居られない。
だからここは、正直な話をすることにしよう。
「一つ、とある昔話をしよう……。昔、未来を知っている女の子がいたんだ。その女の子はとある男の子を助けたかった。そして、その女の子はその男の子と友達になった……」
「!!」
これで君の悩みを少しでも解消できる良いけど、ね?
この昔話は勿論君と私の話……、君と私の物語だ。
「男の子がとある危機に見舞われそうになっていた事を知っていた女の子は、その危機を請け負うことを決意した。そして、その悲願は叶った。しかし、ある意味では叶わなかったんだ。女の子は結果、男の子を殺してしまったのだからね…。」
「……っ」
『……坊ちゃん……』
「罪な女の子だよ…。大切だと思って必死になって…命を懸けて護っていたのに、護れていなかったんだから。そして女の子は新たな決意をする。しかし、それは誰にも話せないんだ。誰にも話せないし、話しても意味は無いからね。そして、その女の子は今……道に迷っているんだ。深い深い森の中をずっと歩いているかのように。分岐点が沢山ありすぎて、どれが正解か分からないんだ。でも、続く先は全てその女の子を死に追いやるものばかり。困った女の子は立ち止まったんだ。だけど後ろを振り返れば切り立った崖にいる。戻れもしないなら先に進むしかない。それが……死へ進む悪路だったとしても…止まれないんだ。」
瞬間、私はジューダスに抱き締められていた。
そして気付いたんだ。
彼の背が私より高くなっていることに……、そして、彼が泣いている事に。
……私は本当にどうしようもないな。
君を泣かせてばかりだ。
「これで、少しは君の悩みも解消出来たかい?」
「馬鹿っ…、余計に苦しくなるだけだろうっ…?」
『モネ…!一人で抱えないで下さいよっ!?どうして、どうして話してくれないんですか?』
「誰も、私のことを信じてはくれないからだよ。」
『「そんな事はない!!」』
「!!」
驚いたな…。
まさかこんなに必死になってくれるなんてね。
やはり、友達効果って奴かな…?
それなら……どれだけ……嬉しい事か。
泣き止まない彼の背中に手を回し優しく叩いてやる。
何も話せない私の…せめてもの罪滅ぼしだ。
「すまない。こればかりは本当に話せないんだ。ただ、そうだね……、先程の君の質問に答えるとしよう。私は、君達の敵となる事はまずない。……今はね。」
「今はって、いつ、僕の敵になるつもりなんだ…!?また……、僕にその武器を、突き付けるつもりなのか?!!」
「……そうかもね。本当に、すまない。こんな友で……、ごめん。」
この物語はきっと私を破滅へ導くものだから。
エルレインによってジューダスの正体を暴かれた時、その時は絶対的に私も正体をバラされる。
その時は素直にお別れを言おうと思うんだ。
こんな奴をパーティに入れてはいけないし、なんなら私も他のすべきことがある。
〈赤眼の蜘蛛〉との全面戦争が、ね?
どこでそれになるかは分からないけど、きっと、君たちの事だ。
私の事を止めてくれるのだろう。
だから、その時は君たちに武器を向けるかもしれない。
だから……ごめん。
「僕はお前の敵になるつもりはないっ!僕もお前に着いていく!謝るくらいならっ、僕の敵にっ、ならないでくれっ!!!」
切実な、そして悲痛な叫び。
あと何回、何十回、君に謝ればいいのだろう。
「……ごめん。」
「嫌だっ、嫌なんだ。もう、大切な友を失いたくないんだ…!」
「……。」
『モネ、今度こそ僕は許しませんよ!?坊ちゃんをこんなに泣かせて!!』
「……“ごめんね。この先、君と私。一緒になれる未来なんて無いんだ。”」
『「っ!!!?」』
「あの時私が言った言葉、覚えているかい?君は気絶しかけていたけどね。こうして一緒にいられる未来は……あの時、思い描いてはいなかったけど、少しでもこうして一緒にいられた“奇跡”……。私は、それを信じたい。だから、もう少しは一緒にいられる。それで許してはくれないか?」
強くなっていく抱擁に苦笑いしつつ、背中を優しく叩く速度は変えない。
彼の嗚咽は止まることを知らず、こんなに泣かせてしまうとは思っていなかった。
沈黙してしまった彼に他に何か言いたいことがないか考えてみる。
話せる時に話した方が良いだろうし、何より君を泣き止ませる手段を私は持っていないように見えた。
君を余計に泣かせると分かっていても、止められないんだ。
でも、……でもね?
「さっきはありがとう。一緒に戦ってくれて。とても頼もしかったよ。」
「あた、りまえだ…!僕はお前と、なら、どこまでも、」
「ふふっ、嬉しい言葉だ。ありがとう、リオン。さぁ、泣き止んで?レディ?君に涙は似合わないよ?」
レディ、という言葉に反応し顔をムッとしながらもクシャクシャの顔で離れる君はとても可愛い。
それに私もホッとしながら笑った。
前世では君との身長は変わらなかったのに、いつの間に引き離されていたのだろう?
君を見る時、少しだけ視線が上になってしまって少しだけ悔しい気持ちになる。
彼もやっとそれに気付いたかのように視線を下に向けた。
すると、少し嬉しそうに笑ったんだ。
それがとてつもなく可愛く見えて、今度は私が泣きそうになった。
この笑顔を守るためなら、何だってしようと思える。
喩え、死のうとも。
死にたい訳じゃない。だけど、出来ないものを無理矢理実行するには代償が必要だ。
それが私の命なら、軽いものだ。
「さぁ、リリスさんが待っている。行こう、ジューダス。」
「あぁ。」
どちらともなく手を繋ぎ歩き出した。
納得してないような彼の顔、困った顔をしている私。
皆が見たら驚くだろうな。
その未来に少しばかり笑ってしまった自分がいた。
○ ☆゜+.*.+゜☆゜+.*.+゜☆゜+.*.+゜☆ ○゜
村に戻る前、私はジューダスに先に行ってて欲しいと伝えた。
すると彼は眉間に皺を寄せ、手を握る力を強めた。
「あぁ、ごめんごめん。違うんだ。少しばかり小細工をしないといけないからその準備なんだ。逃げはしないよ?レディ?」
「レディじゃないと何回いえば分かる?!」
「ふふっ、本当君は面白いね?」
『坊ちゃん、からかわれてるだけですって……』
「くっ…!」
悔しそうに拳を握る彼は未だ私の手を離すことはなさそうだ。
それに苦笑いをしつつ、反対の手で得物を持った私を彼が警戒した。
銃口を自分のこめかみに当てた私を見るや否や、顔を青くし止めようとする彼に笑った。
「ふふっ、あははっ!!」
「っ揶揄うな!!」
「ふふっ、からかってるつもりはないんだ…!すまないね!」
そして、そのまま引き金を引いて頭に魔法弾を撃ち込んだ私を信じられないものを見る目で見るジューダス。
シャルティエも同様の様で、息を呑む音がした。
僅かに反動で傾いた首を元に戻し、喉に手を当てる。
「___」
「!?」
目を見開き私を見る彼に苦笑いをする。
「《ごめんなさい。バレてはいけないので、こうさせて下さい。》」
「別に、もう僕にバレているのだから声を喪わずとも…!」
「《それでも、以前のモネを知っている誰かがいた時に困るので。》」
「……その時は、僕がフォローする。だから、その声を喪うのは……」
『モネ。坊ちゃんはモネの声を少しでも聞いておきたいってぎゃあああああ?!!!』
余計な一言をかますシャルティエに制裁を加えるジューダス。
前から変わらないな、と声が出ないものの笑っていると寂しげな表情をされた。
やはり声がないのは寂しいものなのだろうか?
「《ふふっ。二人の時は声を出しますから、それで許してくださいな?》」
「……それなら…」
『しかし、器用ですねぇ。モネもスノウも、性格が違うのにそんなに瞬時に変えられるなんて。』
「《後悔してはいますけどね。……敬語キャラなんて、やるもんじゃないと……》」
「ふっ、ははっ」
フリップを見て笑う彼に今度は私が笑う番だった。
彼も分かっているのだ、敬語キャラで大人しめなど私には難しいと。
シャルティエも笑って、何処と無く昔に戻ったようだった。
私が声が出ていれば、だけどね。
「あ!!ジューダス!!スノウ!!どこ行ってたの?!!リリスおばさんが探してたよ?!」
向こうからカイルが走ってやってくる。
ロニも心配そうに見る辺り、相当探してくれていたのかもしれない。
「《ごめんなさい。ジューダス探すのに時間がかかってしまって。》」
「……」
恨めしげに見遣る彼に笑いを堪えつつ、カイル達がジューダスへと視線を向ける。
「まぁ、もう晩飯だし、丁度いいじゃねぇか!」
「そうだね!ね、早く行こう!リリスおばさん待ってるよ!!」
そういえばお昼時に呼びに行ったのにもう夕方だ。
月日が流れるのは早いなと、おばあちゃんのような事を思って夕日を見ていると急に腕が引かれる。
ジューダスが眉間に皺を寄せ、自身に向けて引っ張ったようだった。
「……そんな笑い方をするな。」
「??」
どんな笑い方だった?
顔を触るがよく分からず、彼を見る。
すると嘆息され、腕を引かれた。
向かった先はリリスおばさんの家の方向だ。
言う気がないのだろうそれに、首を傾げつつまた私は夕日を見るのだった。