第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
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未来へ続くお話し。(リオンver.)
僕達がカイル達の前から消えた後、僕は奴の……エニグマの店の中にいた。
……まぁ、ここは奴の領域だと言っていたし、あまり驚きもないが、死んだという感覚も薄れてしまう。
無論、腰には愛剣も刺さっているし、ただ隣にいた彼女が居ないだけだ。
「還ってきたか。」
「…あぁ。」
「ほう?やけに素直なんだな?」
「煩い。早く僕をあの世界に生き返らせろ。どうせお前の命令でもある役目も果たさなくてはならないんだろう?」
「ふん。やけに素直かと思ったが、勘違いだったということか。相変わらず私の〈御使い〉は性格が悪いな。」
「…。」
一々腹の立つ奴だ。
こいつの何処がいいのか、スノウは奴に対して友好的だ。
対する奴もスノウには甘い。
何故こうも違うのか。
『早速喧嘩なんてしないでくださいよ…。スノウが困りますよ?坊ちゃんが向こうにいなくて、泣いて探してるかもしれません。』
「…チッ。早くしろ。」
「分かっておる。……まぁ、精々足掻け。夢と現実の狭間をな。」
「どういう事だ。」
「直に分かる。そして……坊やに言っておこう。坊やの能力はあまりにも中途半端だ。それでは娘は救えないと思え。」
「はぁ?!いつもいつも思わせぶりな発言ばかりして…!あいつを助けるのが僕の役目でもあるというのに、まだ何かあるのか!?」
彼女は、“夢魔”に狙われやすい。
特殊なマナの持ち主だけあって、いろんな奴らに目を付けられている。
それを守るのが僕の大事な使命でもあるというのに。
「当たり前だろう?そんなちっぽけな能力で私の〈御使い〉を堂々と名乗ってもらっては困る。……そうだな。少しヒントをやろう。お主の持ちうるマナは何だ?」
「それは……〈薄紫色のマナ〉じゃないのか?」
「そうだ。それが正解だ。そして坊やのその力の元になる“神”は誰だ?」
「お前だろうが。」
「あぁ、そうだな。」
その瞬間、ただの沈黙が降りてくる。
誰が何を言うわけでもなく、僕は怪訝な顔をして奴を睨みつけた。
『……えっと、相変わらず分かりにくいヒントと言いますか…。』
「ではもうひとつ。……娘のマナは何だ?」
「はぁ…一体何なんだ。あいつのマナは〈碧のマナ〉で────」
「不正解だ。」
『え、』
「はぁ?」
それはおかしい。
彼女のマナは、〈世界の神〉から貰った〈碧色のマナ〉のはずだ。
他にマナなど持っているはずがない。
「正解であって、不正解だな。坊やのその答えでは不十分だ。」
「なら教えろ。何が違うと言うんだ?お前から渡されたあの分厚い辞書のような本にはそう書いてあったぞ。」
「そうだな。だが、それでは不十分だと何回言わせる?」
顔を隠している布のせいで見えないが、明らかに奴はこっち向けて殺気を飛ばしている。
布越しからでも、それは分かった。
「はぁ…。〈碧色のマナ〉じゃないとすれば一体何なんだ…。」
『もしかして、何個もマナを共有出来る力を持っていますから……ほかの何かに変わった、とか?ほら、〈機械の神〉は鉄色のマナって言ってましたし、何かに汚染されたんじゃないですか?』
「それなら分かるはずがない。だってあいつのピアスの色は最後の最期まで“碧色”をしていたからな。」
そう。彼女の最期の時に見た、彼女のマナはちゃんと同じ碧だったはず。
なのに、なぜ違うというんだ?
僕のあずかり知らぬ所でまた何か起こっているというのか?
「……まさか、本当に分からないのか?」
「端からそう言っているが?」
「なら、あの世界で見つけてこい。坊やの能力はまだまだ伸び代がある。」
「……教えてはくれないんだな。」
「こればかりは坊やの感覚でしかない。私がどうこう出来ているのなら、坊やを殺してでもやっている。」
『暴力反対!!』
「フッ…。取り敢えず行かなくていいのか?娘が甲斐甲斐しく待っているかもしれんぞ?」
「なら早くしろ。」
ふと、ポケットの中身が目につき、それを取り出してエニグマに投げて渡してやった。
それは最後のエルレイン戦で、奴がスノウに向けて放とうとした〈薄紫色のマナ〉を持つ物体だった。
「そういえば、あの世界にはそんな物が流通しているようだぞ。」
「ほう。これが例の物か。やれば出来るではないか。この調子で回収を頼むぞ?」
「一つ聞きたい。何故そんな物が流通している?何が目的だ?」
「まぁ、ここまでしたからには褒美として教えてやろう。これは────“夢魔”たちの仕業だ。」
「は?」
待てよ…?
夢魔は夢の中でしか生きられない魔物だったはずだ。
それが何故、現実世界でこんな物を作ってばらまいている?
何のメリットがあって?
そしてどうやって作っていると言うんだ?
「人間を強制的に“夢の世界”へ連れて行ける代物……と言った方が分かりやすいか?」
「っ、」
『そんなっ…!?だったら、奴らの目的って…!』
「無論、魔物だからな。己が欲望には忠実なんだろう。目的は勿論、“人間どもの夢を吸い付くし、生命やマナを搾取するため”だ。それか“悪夢”を見せて人間どもの絶望する姿を見るのも奴らの好物だからな。人間どもを眠らせる目的など無限にある。」
「だが、どうやって作っている?奴らは夢の中から出てこれはしない。現実に夢を作ったとでも言うのか?」
「……本気で言っているのか?……なるほどな、それでは先程の話も理解出来ないはずだ…。」
「一々何なんだ…!言いたいことがあるならはっきりと言え!」
「なら言わせてもらおうか。坊やに宿題だ。何故、夢魔がこの物質を現実で作ることが出来たのか。ちゃんと調べてこい。それが坊やの今回の宿題だ。それが分からなければ、娘を救うのは夢のまた夢だと思え。」
「何だと…!?あいつが苦しんでからでは遅いんだ!!早く答えを教えろ!!人の命がかかっているんだぞ?!」
「喧しい。だから宿題と言っているだろう?有難い神からの宿題なんだ。しっかりと使命と宿題をこなしてこい。」
「待て────」
僕は光に包まれて、その場から消えていた。
それを鼻で笑っていたエニグマがいた事には気付かなかった。
…
…………
……………………………
「……また夢か。」
僕が辺りを見渡すと、何処か夢の中だという感覚が周りから伝わってくる。
それに全くもって見知らぬ場所でもあるから、ここは夢の中で間違いは無いのだろう。
『あ、あれ?ここはどこですか?』
「さぁな。夢の中に間違いは無いが……」
ただの小部屋。
簡易的なベッドと机があるだけの殺風景な部屋だ。
そこへ扉を潜ってきたのは…
『え?!ぼ、坊ちゃん?!』
「……。」
夢の中の僕、か…。
果たしてどんな夢を見させられるのやら…。
「────レディ?」
『「へ?/は?」』
床にいたのは、金髪碧眼で紅いドレスが特徴的なお人形だった。
そこから彼女の声が聞こえてきた。
小さなそのお人形は、明らかに夢の中の僕を見て“レディ”と聞いてきたのだ。
見た目に惑わされてはいるが、これは彼女で間違いなさそうだ。
……何故、こんな美少女なお人形の姿になっているかは分からないが。
「……。」
夢の中の僕は無言で、人形の彼女へ近付くと明らかなる殺意を持って彼女を床に踏みつけた。
それを見た僕もシャルも言葉を失った。
『「っ!?」』
「れ、でぃ…?どう…して……」
そう言って、彼女は人形の姿のまま砕けてしまった。
どうやら夢の中の僕が体重をかけて、それを壊してしまったようだ。
その衝撃的な出来事に僕は立ち尽くすしか出来なかった。
僕が……彼女を自ら殺した…だと?
これは悪い夢だ。現実じゃない。
なのに……
何故かこれが“未来の現実”だと分かってしまう。
これが……予知夢の兆候だと分かっているのに…!!
僕は……ぼくはっ…!!
「違うっ…!僕が、あいつを殺すはず…っ、ないのに…!!」
『……。一体…何が、起こってるんですか…?これは…夢…?』
こんな悪夢、見たくなどない!!
僕は壊れた人形から目を背けて、目をギュッと固く閉じた。
そんな僕を、夢の中の僕がじっと見ていたことに気付かずに。
「これが現実だ。僕が起こす、最悪の未来。」
「やめろっ!!何も言うな!!!」
『何故…何故こんなことを…!?』
「これは夢。けれども現実でもある。起こりうる未来を変えたくば、“あいつと離れるな”。」
『「!!!」』
夢の中の僕が、僕へアドバイスをしてくる。
こんな事、初めてだ。
僕はゆっくりと、夢の中の僕へと体を向けた。
その真意を探るために。
「あいつは将来、身体を亡くし、その身を人形の姿へと変える。その時に他に気をかけるな。他の女にうつつを抜かすな。それが、この最悪な未来を回避出来る唯一のシナリオだ。その事を決して忘れるな。」
「他の女だと…?どういうことだ。僕があいつ以外に気にかける女なんて────」
「本当にそうか?」
『え…?(坊ちゃんがスノウ以外に気をかける相手なんて…。今の今までそんな素振りも感じもなかったのに…?)』
「急げ。あいつが〈赤眼の蜘蛛〉に近付いている。あれ以上近付けば、あいつが〈赤眼の蜘蛛〉の組織に入ってしまう。」
『「っ!?」』
「ここから戻る手段など、分かっているだろう?…“僕”。早く“現実”に戻れ。」
夢の中の僕は泣きそうな顔で壊れた人形を見つめた。
そして顔を俯かせ、静かに涙を流していた。
その涙は砕かれた人形の上に、雨のように降り注いでいた。
僕はそれを見て、急いで現実へ戻るために目を瞬いた。
そうして、僕はまたあの世界へ生き返った────
【未来へ続くお話し。】
全ては、彼女を守るために。
彼女との約束を果たすために……!
僕が彼女を殺すだなんて、以ての外だ!!
僕達がカイル達の前から消えた後、僕は奴の……エニグマの店の中にいた。
……まぁ、ここは奴の領域だと言っていたし、あまり驚きもないが、死んだという感覚も薄れてしまう。
無論、腰には愛剣も刺さっているし、ただ隣にいた彼女が居ないだけだ。
「還ってきたか。」
「…あぁ。」
「ほう?やけに素直なんだな?」
「煩い。早く僕をあの世界に生き返らせろ。どうせお前の命令でもある役目も果たさなくてはならないんだろう?」
「ふん。やけに素直かと思ったが、勘違いだったということか。相変わらず私の〈御使い〉は性格が悪いな。」
「…。」
一々腹の立つ奴だ。
こいつの何処がいいのか、スノウは奴に対して友好的だ。
対する奴もスノウには甘い。
何故こうも違うのか。
『早速喧嘩なんてしないでくださいよ…。スノウが困りますよ?坊ちゃんが向こうにいなくて、泣いて探してるかもしれません。』
「…チッ。早くしろ。」
「分かっておる。……まぁ、精々足掻け。夢と現実の狭間をな。」
「どういう事だ。」
「直に分かる。そして……坊やに言っておこう。坊やの能力はあまりにも中途半端だ。それでは娘は救えないと思え。」
「はぁ?!いつもいつも思わせぶりな発言ばかりして…!あいつを助けるのが僕の役目でもあるというのに、まだ何かあるのか!?」
彼女は、“夢魔”に狙われやすい。
特殊なマナの持ち主だけあって、いろんな奴らに目を付けられている。
それを守るのが僕の大事な使命でもあるというのに。
「当たり前だろう?そんなちっぽけな能力で私の〈御使い〉を堂々と名乗ってもらっては困る。……そうだな。少しヒントをやろう。お主の持ちうるマナは何だ?」
「それは……〈薄紫色のマナ〉じゃないのか?」
「そうだ。それが正解だ。そして坊やのその力の元になる“神”は誰だ?」
「お前だろうが。」
「あぁ、そうだな。」
その瞬間、ただの沈黙が降りてくる。
誰が何を言うわけでもなく、僕は怪訝な顔をして奴を睨みつけた。
『……えっと、相変わらず分かりにくいヒントと言いますか…。』
「ではもうひとつ。……娘のマナは何だ?」
「はぁ…一体何なんだ。あいつのマナは〈碧のマナ〉で────」
「不正解だ。」
『え、』
「はぁ?」
それはおかしい。
彼女のマナは、〈世界の神〉から貰った〈碧色のマナ〉のはずだ。
他にマナなど持っているはずがない。
「正解であって、不正解だな。坊やのその答えでは不十分だ。」
「なら教えろ。何が違うと言うんだ?お前から渡されたあの分厚い辞書のような本にはそう書いてあったぞ。」
「そうだな。だが、それでは不十分だと何回言わせる?」
顔を隠している布のせいで見えないが、明らかに奴はこっち向けて殺気を飛ばしている。
布越しからでも、それは分かった。
「はぁ…。〈碧色のマナ〉じゃないとすれば一体何なんだ…。」
『もしかして、何個もマナを共有出来る力を持っていますから……ほかの何かに変わった、とか?ほら、〈機械の神〉は鉄色のマナって言ってましたし、何かに汚染されたんじゃないですか?』
「それなら分かるはずがない。だってあいつのピアスの色は最後の最期まで“碧色”をしていたからな。」
そう。彼女の最期の時に見た、彼女のマナはちゃんと同じ碧だったはず。
なのに、なぜ違うというんだ?
僕のあずかり知らぬ所でまた何か起こっているというのか?
「……まさか、本当に分からないのか?」
「端からそう言っているが?」
「なら、あの世界で見つけてこい。坊やの能力はまだまだ伸び代がある。」
「……教えてはくれないんだな。」
「こればかりは坊やの感覚でしかない。私がどうこう出来ているのなら、坊やを殺してでもやっている。」
『暴力反対!!』
「フッ…。取り敢えず行かなくていいのか?娘が甲斐甲斐しく待っているかもしれんぞ?」
「なら早くしろ。」
ふと、ポケットの中身が目につき、それを取り出してエニグマに投げて渡してやった。
それは最後のエルレイン戦で、奴がスノウに向けて放とうとした〈薄紫色のマナ〉を持つ物体だった。
「そういえば、あの世界にはそんな物が流通しているようだぞ。」
「ほう。これが例の物か。やれば出来るではないか。この調子で回収を頼むぞ?」
「一つ聞きたい。何故そんな物が流通している?何が目的だ?」
「まぁ、ここまでしたからには褒美として教えてやろう。これは────“夢魔”たちの仕業だ。」
「は?」
待てよ…?
夢魔は夢の中でしか生きられない魔物だったはずだ。
それが何故、現実世界でこんな物を作ってばらまいている?
何のメリットがあって?
そしてどうやって作っていると言うんだ?
「人間を強制的に“夢の世界”へ連れて行ける代物……と言った方が分かりやすいか?」
「っ、」
『そんなっ…!?だったら、奴らの目的って…!』
「無論、魔物だからな。己が欲望には忠実なんだろう。目的は勿論、“人間どもの夢を吸い付くし、生命やマナを搾取するため”だ。それか“悪夢”を見せて人間どもの絶望する姿を見るのも奴らの好物だからな。人間どもを眠らせる目的など無限にある。」
「だが、どうやって作っている?奴らは夢の中から出てこれはしない。現実に夢を作ったとでも言うのか?」
「……本気で言っているのか?……なるほどな、それでは先程の話も理解出来ないはずだ…。」
「一々何なんだ…!言いたいことがあるならはっきりと言え!」
「なら言わせてもらおうか。坊やに宿題だ。何故、夢魔がこの物質を現実で作ることが出来たのか。ちゃんと調べてこい。それが坊やの今回の宿題だ。それが分からなければ、娘を救うのは夢のまた夢だと思え。」
「何だと…!?あいつが苦しんでからでは遅いんだ!!早く答えを教えろ!!人の命がかかっているんだぞ?!」
「喧しい。だから宿題と言っているだろう?有難い神からの宿題なんだ。しっかりと使命と宿題をこなしてこい。」
「待て────」
僕は光に包まれて、その場から消えていた。
それを鼻で笑っていたエニグマがいた事には気付かなかった。
…
…………
……………………………
「……また夢か。」
僕が辺りを見渡すと、何処か夢の中だという感覚が周りから伝わってくる。
それに全くもって見知らぬ場所でもあるから、ここは夢の中で間違いは無いのだろう。
『あ、あれ?ここはどこですか?』
「さぁな。夢の中に間違いは無いが……」
ただの小部屋。
簡易的なベッドと机があるだけの殺風景な部屋だ。
そこへ扉を潜ってきたのは…
『え?!ぼ、坊ちゃん?!』
「……。」
夢の中の僕、か…。
果たしてどんな夢を見させられるのやら…。
「────レディ?」
『「へ?/は?」』
床にいたのは、金髪碧眼で紅いドレスが特徴的なお人形だった。
そこから彼女の声が聞こえてきた。
小さなそのお人形は、明らかに夢の中の僕を見て“レディ”と聞いてきたのだ。
見た目に惑わされてはいるが、これは彼女で間違いなさそうだ。
……何故、こんな美少女なお人形の姿になっているかは分からないが。
「……。」
夢の中の僕は無言で、人形の彼女へ近付くと明らかなる殺意を持って彼女を床に踏みつけた。
それを見た僕もシャルも言葉を失った。
『「っ!?」』
「れ、でぃ…?どう…して……」
そう言って、彼女は人形の姿のまま砕けてしまった。
どうやら夢の中の僕が体重をかけて、それを壊してしまったようだ。
その衝撃的な出来事に僕は立ち尽くすしか出来なかった。
僕が……彼女を自ら殺した…だと?
これは悪い夢だ。現実じゃない。
なのに……
何故かこれが“未来の現実”だと分かってしまう。
これが……予知夢の兆候だと分かっているのに…!!
僕は……ぼくはっ…!!
「違うっ…!僕が、あいつを殺すはず…っ、ないのに…!!」
『……。一体…何が、起こってるんですか…?これは…夢…?』
こんな悪夢、見たくなどない!!
僕は壊れた人形から目を背けて、目をギュッと固く閉じた。
そんな僕を、夢の中の僕がじっと見ていたことに気付かずに。
「これが現実だ。僕が起こす、最悪の未来。」
「やめろっ!!何も言うな!!!」
『何故…何故こんなことを…!?』
「これは夢。けれども現実でもある。起こりうる未来を変えたくば、“あいつと離れるな”。」
『「!!!」』
夢の中の僕が、僕へアドバイスをしてくる。
こんな事、初めてだ。
僕はゆっくりと、夢の中の僕へと体を向けた。
その真意を探るために。
「あいつは将来、身体を亡くし、その身を人形の姿へと変える。その時に他に気をかけるな。他の女にうつつを抜かすな。それが、この最悪な未来を回避出来る唯一のシナリオだ。その事を決して忘れるな。」
「他の女だと…?どういうことだ。僕があいつ以外に気にかける女なんて────」
「本当にそうか?」
『え…?(坊ちゃんがスノウ以外に気をかける相手なんて…。今の今までそんな素振りも感じもなかったのに…?)』
「急げ。あいつが〈赤眼の蜘蛛〉に近付いている。あれ以上近付けば、あいつが〈赤眼の蜘蛛〉の組織に入ってしまう。」
『「っ!?」』
「ここから戻る手段など、分かっているだろう?…“僕”。早く“現実”に戻れ。」
夢の中の僕は泣きそうな顔で壊れた人形を見つめた。
そして顔を俯かせ、静かに涙を流していた。
その涙は砕かれた人形の上に、雨のように降り注いでいた。
僕はそれを見て、急いで現実へ戻るために目を瞬いた。
そうして、僕はまたあの世界へ生き返った────
【未来へ続くお話し。】
全ては、彼女を守るために。
彼女との約束を果たすために……!
僕が彼女を殺すだなんて、以ての外だ!!