第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
127.
____神のたまご・中央部
中央部への架け橋を渡った一行だったが、そこは行き止まりだった。
仲間たちが不思議がる中、この事実を知っていたスノウ以外で行動を起こしたのはやはりハロルドであった。
床の模様を見て、それに触れ、そして暫く黙っていたがすぐに頷いてみせた。
「な~るほどね? 床のはデリスエンブレムね。歪められた時間と時空を正す魔法の紋章。」
行き止まりの壁…所謂、鏡張りのような壁を見てそう断言したハロルドは全員に説明をする。
そして壁にある鏡のような物もロニが近づき、ただの鏡じゃないことを証明してくれる。
するとリアラが恐る恐る言葉にする。
「…この鏡は、人の肉体ではなく精神を映しているんだわ。」
「精神を映す?」
「前にエルレインに夢を見させられたことがあったでしょ?あれと同じよ。……この鏡の中には皆の記憶を象った世界が広がっている…。」
「記憶を象った世界、か…。どこまで歪められていることやら…。大方、そのデリスエンブレムとやらで歪みを戻せという事だろうが…。」
「この先にエルレインがいるというなら…先に進むだけだ!行こう、皆!!」
そうして一人ひとりずつ鏡の中へと消えていく。
最後に残ったスノウもジューダスも、お互いに手を握って鏡の中へと消えていった。
"絶対に離さない"…そういう気持ちを込めて。
○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●
スキット①【デリスエンブレムについて】
ロニ「なぁハロルド。」
ハロ「何よ?」
ロニ「デリスエンブレム…だったか? そりゃ一体全体、なにものなんだ?」
ハロ「何者って言われたって、さっき説明したでしょ。"歪められた時間と時空を正す魔法の紋章"だって。」
ロニ「そりゃあ聞いたが…。そんなすごいもんが世の中にはあるのか?」
ハロ「何言ってんのよ。この世界に"絶対"なんて言葉はないわ。だからそういった物があっても全く不思議じゃない。それが世界の理なのよ。」
ロニ「おま、神みたいなこと言うんだな?」
ハロ「ふふん♪だから言ってるでしょ? 私の頭脳が神をも超えるということを証明して見せるって。」
ロニ「はぁぁぁ…。末恐ろしい奴だよ、お前さんはよ。」
スキット②【デリスエンブレムについて・その2】
「歪められた時間と時空を正す、魔法の紋章…か。」
『どうしたんですか?坊ちゃん。神妙な顔でデリスエンブレムの話ですか?』
「考えてもみろ。歪められた歴史を戻すために、僕達は今まで何度も何度も時間移動をしてきた。…その際に厄介だったのが…スノウの迷子だ。」
『あ…。』
「そのデリスエンブレムとやらが役に立つのなら…あいつに分けてやりたいくらいだ。」
『確かにそうですね…。それさえあれば、もしかしたらスノウの迷子も治るかもしれませんね。』
「…念のために、余分がないか見ておくか。」
『そうですね!折角なら何かアクセサリーにしてプレゼントしたらどうでしょう?きっとスノウも喜びますよ!』
「ふっ…。そうだな。」
スキット③【仕掛けとスノウと回復】
修羅「しかし…よく覚えてたな。あんな仕掛け。」
「流石にラスダンの仕掛けは覚えてるよ。何度もプレイしてきた身だしね。」
修「にしても、鮮やかな手並みだった。…小さくなった弊害とかないのか?」
「今のところ大丈夫そうだね。何かあったら君に言うよ。君の回復は私に一番効くからね。」
修「クスクス…。あぁ、任せとけって。」
「うん、よろしく。」
○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●
___神のたまご・中層部
鏡を抜けてきた一行は目の前に直立する石碑を見遣る。
そこに書かれていたのは、全員の身に覚えのない罪状であった。
〝ハロルド=ベルセリオス────神を欺く異端の知識にそまりし者。故に断罪。〟
〝ナナリー=フレッチ────神の威光を否定する不信心者。故に断罪。〟
〝リオン=マグナス────神の恩を忘れし裏切り者。故に断罪。〟
〝ロニ=デュナミス────神への信仰を忘れた愚か者。故に断罪。〟
〝修羅と海琉────神を崇める者たち(赤眼の蜘蛛)への謀反。故に断罪。〟
〝カイル=デュナミス────神に仇なす危険なる者。故に断罪。〟
全員が全員、それを読んでそれぞれの反応を示す。
険しい顔をさせた者もいれば、鼻で笑って嘲笑する者。他にも複雑な顔をした者もいれば、屁でもないといった顔を見せた人もいる。
その中で不思議な顔をさせたのはスノウだった。
「(あれ?修羅たちはあるのに私だけ無い…。私…もしかして忘れられてる…?)」
少しショックを受けたスノウは諦めきれず、石碑の後ろも見てみる。
するとそこには小さくこう書かれていた。
〝スノウ=ナイトメア────神に近しい尊き御使い。出来るならば、戦いたくはなかった者。故に……〟
最後だけ掠れて読めなくなっている。
文字を追うようにして指でなぞったスノウだったが、そんな様子をどうやら彼に見られていたようだ。
「こんな所で何をしている。早く行くぞ。」
「うん。」
『何か変なものでも見つけました?』
「…ううん。何にもなかったよ。」
少しだけ笑ったスノウに二人は首を傾げる。
歩き出したスノウの後を追ってジューダス達も歩き出す。
そこに書かれている内容など露知らずに。
「あ!宝箱!!」
「あ、カイル!その宝箱は危けn…」
「うわぁああ?!!」
「……遅かったか。」
「悠長に構えている場合か!!行くぞ!!」
ジューダスが武器を手にして走り出すのを見送ったスノウは頭を掻くと相棒を手にする。
「ジューダス!弱点は地属性と闇属性、それから風属性だ!!だから属性晶術の方は頼んだ!!」
『おお!僕達の出番じゃないですか!坊ちゃん!!』
「ふん!調子に乗り過ぎて術を暴発させるなよ?シャル!」
『「___エアプレッシャー!」』
『そして!』
『「シリングフォール!!」』
「ナイス!二人とも!!」
珍しくスノウが前衛に行ったことでそれを間近に見ていたスノウが一番に反応してくれる。
それに二人が笑えば、スノウが慌てて前衛に注意を呼び掛ける。
見た目は宝箱だが、その正体は魔物である"チープトリック"は、自身の周りにFOEを召喚させる厄介な魔物である。
それも"デスジャケット"なる物騒な名前がつくこともあり、そのFOEの効果は"即死"。
その効果をスノウが慌てて注意したのだ。
「他の皆は晶術でお願い!修羅と海琉にはこれをあげるよ!!」
そう言って二人へと投げたのが状態異常防止効果のあるリキュールボトル。
今作ではデメリットも発生する厄介なアイテムだが…。
「___アグリゲットシャープ!」
スノウがすかさず攻撃力上昇の効果を付け足し、リキュールボトルのデメリットを相殺させた。
それを直接体で感じた瞬間、二人は敵へと攻撃を仕掛けるために向かっていった。
スノウも詠唱が終わると同時に前衛へと戻ろうとすると、すかさず後ろから説教が飛んでくる。
『ちょっとちょっと!スノウもリキュールボトルを使わないと意味ないじゃないですか!!』
「お前はもう少し自分を大事にしろ!!阿呆!!」
「うわぉ…。説教が飛んできた…。」
すぐにスノウがリキュールボトルを手にして自分に振りかける。
そしてまた前衛へと戻って行けば、いつもの様にその猛威を振るう。
相棒を振りかざし、時には銃で敵を滅する。
状態異常も何のその。
そんな調子で暫く戦闘を繰り広げていれば、ようやくその戦いにも終わりが来る。
チープトリックはこのダンジョンの中でも厄介な部類だと知っているからこそ、今度はちゃんと間違えない様にスノウが注意を呼びかけようとしたのだが…。
「見て!また宝箱がある!!」
「待て待て待て!!カイル、そいつに触れるな!!」
まだまだ保護者であるロニがカイルを慌てて止めようとしたが、既にカイルが触れてしまって後の祭り。
リキュールボトルの効果がまだ発揮している三人を中心に、晶術メインで繰り広げる他の仲間達は、一斉に溜息を吐いていた。
またこいつか、と肩を落としたのだった。
「ごめーん!スノウと修羅と海琉ー!!」
「まぁ、やってしまったものはしょうがない。それに…こいつの落とすアイテムは貴重だから俄然やる気が出るってものだよ。」
「へえ?何落とすんだ。」
「ゲームでは様々だったね。武器を落としたり貴重なアイテムを落としたり…。あとはマニア向けのコレクターアイテムも落とすこともあって、ここで何時間もやっている廃人も居たくらいだよ。」
「うわ…まじか…。今それをするとか言わないよな?」
修羅が振り返ってスノウを見るも、苦笑いをしているだけで何も言わない。
まさか、と濁した修羅が、言葉の代わりに肩を竦めさせていた。
「若干期待しちゃってる自分が居るんだよね。"トレカ"ってアイテム。」
「…因みに聞くがどういうアイテムなんだ?」
「そりゃあ廃人向けのコレクターアイテムだよ。トレーディングカードって知ってるだろう?あれだよ。」
「よし、あんたの手を掴んでさっさと先に進むことにするか。」
「ひどいなぁ?私がそんなことすると思う?」
「期待してるんだろ?そのアイテムを落とさないかって。」
「言っただけだって。信じてよ?」
「今だけはその言葉は信用できない。だから観念しな。」
戦闘が終わると同時に修羅がスノウの手を握り、ついでにカイルの方も確認する。
これ以上被害を広げない為にも、だ。
カイルの方はロニが頭をしっかりと掴まえていたのもあり、ホッと息を零した修羅はそのまま後ろの海琉も確認する。
すると何かを嗅いでる様子の海琉に嫌な予感を感じた。
「…何か匂う。」
「はぁ?何の匂いだ。」
「分からないけど……なんか…良い香り…。」
「お前はまた…。こんな場所で一人どこかに行くな。迷子になるだろ。」
そう言ってスノウを掴んでいる方とは違う、もう片方の手で海琉を掴むと歩き出す。
その表情は誰がどう見ても呆れていて、掴まれている両者は顔を見合わせるとフッと笑って逆に修羅を追い抜いた。
そして手を引っ張り合った二人に連れられて修羅が戸惑った顔で走り出さなければならなくなり、しかし次第に笑いもこみ上げてくる。
道を知っているスノウを先頭に修羅や海琉が走っていくのを見た仲間達はそれを微笑ましく見ながらその三人の後を追う。
こうしてようやくといった様子で第一の関門に到着した。
「…ここは、カルバレイス地方だね…。それもトラッシュマウンテンっていうことはアタシの出番だね!」
そう、ここでは一人一人ずつ戦わなければならない場所だ。
その証拠に、ナナリー以外にこの場所を通れるものは居ない。
すぐさまロニやカイル、スノウ達の声援が飛び交う。
「やられるんじゃねーぞ!ナナリー!」
「頑張って!ナナリー!」
「及ばずながら、ここで応援させてもらうよ。…大丈夫。ナナリーなら絶対にここを突破できるから。」
「あいよ!頑張ってくるさ!」
そういってナナリーが奥にある黄色に光る欠片を持つ。するとナナリーの全身に悪寒が走る。どうにも不吉な予感がするそれを見れば、ただ黄色に光る欠片だ。
それを持ち帰ろうとしたその瞬間、ナナリーの背後に現れたのは"フェンリル"というオオカミ型の魔物だった。
しかしそんな敵も今のナナリーには子供の様に簡単に倒せてしまう。
全員がそれを感嘆すると同時に、ナナリーはデリスエンブレムの欠片をカイルへと渡していた。
…因みに全員の視線が物語っている。
"絶対に落としたり、失くしたりするなよ"と。
「よし、次へ行こう!」
「「「「(大丈夫かなぁ…?)」」」」
不安そうな顔を見せる仲間を物ともしないカイルはスノウに次の場所を聞いていた。
それを素直に答えたスノウにも仲間達の視線が向かう。
"お前は不安じゃないのか"と。
しかしカイルと同じく、それを物ともしないスノウはカイルの後をついていくようにして歩いて行ってしまった。
仲間達も同じくついていけば、次に見えた風景は雪景色だった。
「雪景色ってことは…?」
「スノウじゃないのか?確かお前さん、雪国出身だって言ってただろ?」
「う~~ん。多分だけど、これは軍事基地だと思うよ?現代の軍事基地にしては新しそうに見えるからここはハロルドじゃないかな?」
「確かに軍事基地だけど…。なんだかボロっちいわね~?あたしの記憶してるのと、あんたの記憶と足して二で割ったような建物なんじゃないの?」
「そうなると、私も入れるってこと?」
「物は試しよ!一緒に入りましょ。」
そう言ってハロルドがスノウの背中を押し、欠片の方へ行こうとするが……。
「あいたっ。」
何か壁のようなものに阻まれるようにしてスノウが額をぶつける。
そして額を押さえると、その横をハロルドが通り過ぎて行ったので若干それを恨めしそうにスノウが見ていた。
そんなスノウの様子を、おかしそうに仲間達が笑っていた。
「ハロルド…?後で覚えてなよ…?」
「え?な~~に~~?聞こえないわよ~~?」
キュルンとした顔で言われると説得力の欠片もない。
スノウが溜息を吐き、静かに首を横に振ると仲間達の方へとトボトボとした格好で戻って行く。
それを「お疲れさま」という目で見たのは修羅だった。
修羅もハロルドの横暴に振り回されたうちの一人でもあるから、スノウの不憫さに憐れんでいた。
しかしそんな二人の静かなる言葉の応酬の間にも、ハロルドは簡単に倒して見せた。
二人が魔物を見ることが無かったために、目を点とさせてハロルドを見る。
するとその後ろには分解された機械の名残のようなものが落ちている。
そして周りの仲間達の目も何処か遠い場所を見ては現実逃避しているような、それとも話すのも怖いのか、誰もスノウと修羅の疑問に解決できるものは居なさそうであった。
「ぐふふ…。あたしに挑もうなんて一億年早いのよ!」
「百年じゃなくて一億ってところが恐ろしいところだね…。」
「…一億光年じゃないだけ良しとしようぜ?」
他の仲間達が先に進む中、スノウがふと横穴を見つける。
そこは原作を覚えているスノウでも見かけたことのない横穴のはずだった。
「(…あれ?あんな所に横穴なんてあったっけ…?)」
「おーい、皆先に行ったぞ?」
『スノウ~?置いていきますよ~~?』
「…先に行っててくれ!」
修羅にそう告げるとスノウはその横穴の中を覗く。
しかし先ほどと似たような構造の廊下が続くばかりで特別変わった所は無い様に見える。
「…おっかしいな…?こんな所に横穴なんて無かったはずなんだけど…?」
「おい、何をしている。お前も迷子になりたいのか。」
『そうですよ!!何が先に行っててくれ、ですか!!全くもう…!!』
「あれ?先に行かなったのかい?」
他の面々は先に進んだようで姿が見えない。
だが、ジューダスとシャルティエだけはスノウの傍に戻ってきたようだ。
「お前を単独行動させると碌なことがない。」
『左に同じくです!』
「で?この先に何かあるのか?」
「いやぁ…?というか、私の記憶ではここ、ただの壁だったはずなんだけど…どうやら記憶違いしてたみたいだ。横道に逸れる穴があるから中を覗いてただけだよ。」
「ほう?」
そう言ってジューダスが横穴を覗くと、その先に踏み込もうとする。
それを驚いた表情でジューダスを見たスノウに、彼はフッと笑みをこぼす。
そして優しくスノウの手を取っていた。
「どうせ、気になるんだろう?」
「まぁね。でもはぐれたら大変だし、ここに横穴があった事だけ覚えておこっかな。君を危険なことに巻き込むわけにもいかないし、もしかしたら次、君の番かもよ?」
「その言葉、そのままそっくりお前に返すとしよう。」
そう言って戻ったジューダスはそのまま手を引いて仲間達のもとへと歩き出す。
一緒に連れだって歩くスノウの手が少しだけ暖かくなった。
◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*
「ここは…ストレイライズ大神殿か。なら、リアラか?」
「ううん、多分だけど違うわ。私にこういった術はかからないからロニだと思う。」
そんな会話が聞こえてきて、ジューダスとスノウは歩いている速度を速める。
するとロニがまさに戦おうとしているところだった。
そのお相手さんは筋肉隆々の大柄な男である。
このメンバーの中でも身長の高いロニと匹敵するような高さを持つ敵だったため、仲間達の間で緊張が走る。
それにロニに対抗するようにこの剣の長さは通常の剣よりも長い刀身を持っていた。
振るだけでも危険だと分かるほど、磨かれた剣とあの筋肉を見て自然と声援にも力が入る。
「朝稽古しておきながら負けたら承知しないよー、ロニー?」
「へっ!!こんな男に負けるかよ!!」
「ロニ頑張れ~!」
「負けるんじゃねえぞ!」
「すけべー、変態ー、ひとでなしー!」
「おい!!今誰が俺の悪口言いやがった!!後で覚えてろよ!?」
言った張本人を仲間達が見れば、その人物は口元に不敵な笑みをこぼしている。
そして綺麗な跳ねっ毛であるピンク色の髪を持ったその人物は、何も言ってないというかのようにいつもの調子に戻ってしまった。
…これでは誰が言ったか分からないだろう。
「おい!終わったぞ!誰が悪口言いやがった!!」
いつの間にか終わらせたロニがプンプンと怒りながら帰ってくると、デリスエンブレムの欠片をカイルへと持たせ、仲間達を見る。
そしてその仲間達の視線はハロルドに向かっていった。
意外な人物が言ったことを知ったロニは目を丸くさせるとやれやれと肩を上げた。
「おいおい…。なんでハロルドにまで言われなくちゃなんねぇんだよ。」
「思った事を口にしただけよー?違ったかしら。」
「…ほんと、恐ろしいやつだな、お前さん…。」
素直な言葉ほど心に刺さるものは無い、とロニは胸を押えて痛みを堪えた顔をする。
それに周りからもどっと笑いが起きて、場があっという間に和んでいく。
それは途中から来たスノウ達もそうだ。
二人も笑っては次の場所へと促した。
「あとやってないのはカイルとジューダスだけかな?」
「修羅と海琉、スノウもやってないよね?」
「私達は一応この世界の人間じゃないし……無いとは思うけど。」
「まぁ、あったらやればいいだけだろ?ともかく、あと二人の欠片を探さないとな。」
「二人の欠片は真反対にあるんだけど……どっちからしたい?」
「僕は後回しでいい。」
「じゃあオレからやるよ!」
「よし。ならあっちだね。」
指さす方向にカイルが勢いよく走っていき、それを慌てて追いかける保護者たち。
リアラも笑いながら先へと進んでいくのを見て、スノウ達も移動を開始する。
急がずにゆっくりと進んで行ったスノウ達だったが、既にカイルの欠片は手に入れたみたいで、その欠片をスノウ達に見せつけるように天高く持ち上げていた。
元気の良いカイルを見たスノウは、最後のジューダスの欠片へと案内を始める。
しかし、スノウは少しだけ顔を俯かせた。
それを目敏く見つけたジューダスがスノウの背中を思い切り叩く。
そして背筋を伸ばしたスノウは驚いた顔で隣にいる彼を見上げた。
『大丈夫ですって!スノウ!僕だっているんですよ!?』
「お前はお前で自分のことを心配してろ。僕はそんなにヤワじゃない。それにあいつらが切り開いた道を僕が閉ざす訳にも行かないしな。」
「……うん!ちゃんと応援するから。」
「当然だ。寧ろ応援が聞こえてこなかったら後で説教だからな?」
「えぇ?そこまで?」
笑いながらも言葉を紡いだスノウの表情は先程よりも大分違う。
さっきまでの憂いが嘘のように表情も和らいでおり、それを見たジューダスも笑顔でそれを見ていた。
「……じゃあ、行ってらっしゃい。」
「あぁ、簡単に終わらせてやる。」
最後の欠片の間へと辿り着いたジューダスたち。
欠片を手に取ったジューダスが振り返ると、そこには信じられない人物が立っていた。
?「……。」
『えっ?!!』
「……そう来たか。」
そこに居たのは、18年前に海底洞窟にリオン達の前に現れたモネ・エルピス…その者だった。
相棒を手に持ち、狂気の笑みを貼り付けてジューダスの見るその瞳に見覚えがあった。
何より、スノウの髪の長さとは全く違うのもあってモネだと分かったのだが…。
「あ、あれって…!」
「モネじゃねえか!!」
「……。(原作とはかけ離れてしまったか…。)」
渋い顔をしたスノウ。
しかしジューダスの方はモネを見て、すぐにシャルティエを構えていた。
そして不敵な笑みを零す。
「偽物のお前に負けるつもりはない。例え、記憶の中のお前だろうが、僕は絶対に負けない!」
『えぇ!やってやりましょう!!坊ちゃん!!』
?「──── 本気でかかってこないと、全員死ぬよ?さぁ、おいで?」
嘲笑の眼差しを向けてくるモネを睨んだジューダスは、一瞬だけスノウの方を見る。
そこにはジューダスが贈った紫水晶のネックレスを握って不安そうにしているスノウがいた。
その光景を見て、ジューダスは無意識にやっていた緊張を解き、自然の姿でモネへと相対した。
「行くぞ、シャル!!」
『はいっ!!坊ちゃん!!!』
▷▶︎▷NEXT
____神のたまご・中央部
中央部への架け橋を渡った一行だったが、そこは行き止まりだった。
仲間たちが不思議がる中、この事実を知っていたスノウ以外で行動を起こしたのはやはりハロルドであった。
床の模様を見て、それに触れ、そして暫く黙っていたがすぐに頷いてみせた。
「な~るほどね? 床のはデリスエンブレムね。歪められた時間と時空を正す魔法の紋章。」
行き止まりの壁…所謂、鏡張りのような壁を見てそう断言したハロルドは全員に説明をする。
そして壁にある鏡のような物もロニが近づき、ただの鏡じゃないことを証明してくれる。
するとリアラが恐る恐る言葉にする。
「…この鏡は、人の肉体ではなく精神を映しているんだわ。」
「精神を映す?」
「前にエルレインに夢を見させられたことがあったでしょ?あれと同じよ。……この鏡の中には皆の記憶を象った世界が広がっている…。」
「記憶を象った世界、か…。どこまで歪められていることやら…。大方、そのデリスエンブレムとやらで歪みを戻せという事だろうが…。」
「この先にエルレインがいるというなら…先に進むだけだ!行こう、皆!!」
そうして一人ひとりずつ鏡の中へと消えていく。
最後に残ったスノウもジューダスも、お互いに手を握って鏡の中へと消えていった。
"絶対に離さない"…そういう気持ちを込めて。
○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●
スキット①【デリスエンブレムについて】
ロニ「なぁハロルド。」
ハロ「何よ?」
ロニ「デリスエンブレム…だったか? そりゃ一体全体、なにものなんだ?」
ハロ「何者って言われたって、さっき説明したでしょ。"歪められた時間と時空を正す魔法の紋章"だって。」
ロニ「そりゃあ聞いたが…。そんなすごいもんが世の中にはあるのか?」
ハロ「何言ってんのよ。この世界に"絶対"なんて言葉はないわ。だからそういった物があっても全く不思議じゃない。それが世界の理なのよ。」
ロニ「おま、神みたいなこと言うんだな?」
ハロ「ふふん♪だから言ってるでしょ? 私の頭脳が神をも超えるということを証明して見せるって。」
ロニ「はぁぁぁ…。末恐ろしい奴だよ、お前さんはよ。」
スキット②【デリスエンブレムについて・その2】
「歪められた時間と時空を正す、魔法の紋章…か。」
『どうしたんですか?坊ちゃん。神妙な顔でデリスエンブレムの話ですか?』
「考えてもみろ。歪められた歴史を戻すために、僕達は今まで何度も何度も時間移動をしてきた。…その際に厄介だったのが…スノウの迷子だ。」
『あ…。』
「そのデリスエンブレムとやらが役に立つのなら…あいつに分けてやりたいくらいだ。」
『確かにそうですね…。それさえあれば、もしかしたらスノウの迷子も治るかもしれませんね。』
「…念のために、余分がないか見ておくか。」
『そうですね!折角なら何かアクセサリーにしてプレゼントしたらどうでしょう?きっとスノウも喜びますよ!』
「ふっ…。そうだな。」
スキット③【仕掛けとスノウと回復】
修羅「しかし…よく覚えてたな。あんな仕掛け。」
「流石にラスダンの仕掛けは覚えてるよ。何度もプレイしてきた身だしね。」
修「にしても、鮮やかな手並みだった。…小さくなった弊害とかないのか?」
「今のところ大丈夫そうだね。何かあったら君に言うよ。君の回復は私に一番効くからね。」
修「クスクス…。あぁ、任せとけって。」
「うん、よろしく。」
○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●+○+●
___神のたまご・中層部
鏡を抜けてきた一行は目の前に直立する石碑を見遣る。
そこに書かれていたのは、全員の身に覚えのない罪状であった。
〝ハロルド=ベルセリオス────神を欺く異端の知識にそまりし者。故に断罪。〟
〝ナナリー=フレッチ────神の威光を否定する不信心者。故に断罪。〟
〝リオン=マグナス────神の恩を忘れし裏切り者。故に断罪。〟
〝ロニ=デュナミス────神への信仰を忘れた愚か者。故に断罪。〟
〝修羅と海琉────神を崇める者たち(赤眼の蜘蛛)への謀反。故に断罪。〟
〝カイル=デュナミス────神に仇なす危険なる者。故に断罪。〟
全員が全員、それを読んでそれぞれの反応を示す。
険しい顔をさせた者もいれば、鼻で笑って嘲笑する者。他にも複雑な顔をした者もいれば、屁でもないといった顔を見せた人もいる。
その中で不思議な顔をさせたのはスノウだった。
「(あれ?修羅たちはあるのに私だけ無い…。私…もしかして忘れられてる…?)」
少しショックを受けたスノウは諦めきれず、石碑の後ろも見てみる。
するとそこには小さくこう書かれていた。
〝スノウ=ナイトメア────神に近しい尊き御使い。出来るならば、戦いたくはなかった者。故に……〟
最後だけ掠れて読めなくなっている。
文字を追うようにして指でなぞったスノウだったが、そんな様子をどうやら彼に見られていたようだ。
「こんな所で何をしている。早く行くぞ。」
「うん。」
『何か変なものでも見つけました?』
「…ううん。何にもなかったよ。」
少しだけ笑ったスノウに二人は首を傾げる。
歩き出したスノウの後を追ってジューダス達も歩き出す。
そこに書かれている内容など露知らずに。
「あ!宝箱!!」
「あ、カイル!その宝箱は危けn…」
「うわぁああ?!!」
「……遅かったか。」
「悠長に構えている場合か!!行くぞ!!」
ジューダスが武器を手にして走り出すのを見送ったスノウは頭を掻くと相棒を手にする。
「ジューダス!弱点は地属性と闇属性、それから風属性だ!!だから属性晶術の方は頼んだ!!」
『おお!僕達の出番じゃないですか!坊ちゃん!!』
「ふん!調子に乗り過ぎて術を暴発させるなよ?シャル!」
『「___エアプレッシャー!」』
『そして!』
『「シリングフォール!!」』
「ナイス!二人とも!!」
珍しくスノウが前衛に行ったことでそれを間近に見ていたスノウが一番に反応してくれる。
それに二人が笑えば、スノウが慌てて前衛に注意を呼び掛ける。
見た目は宝箱だが、その正体は魔物である"チープトリック"は、自身の周りにFOEを召喚させる厄介な魔物である。
それも"デスジャケット"なる物騒な名前がつくこともあり、そのFOEの効果は"即死"。
その効果をスノウが慌てて注意したのだ。
「他の皆は晶術でお願い!修羅と海琉にはこれをあげるよ!!」
そう言って二人へと投げたのが状態異常防止効果のあるリキュールボトル。
今作ではデメリットも発生する厄介なアイテムだが…。
「___アグリゲットシャープ!」
スノウがすかさず攻撃力上昇の効果を付け足し、リキュールボトルのデメリットを相殺させた。
それを直接体で感じた瞬間、二人は敵へと攻撃を仕掛けるために向かっていった。
スノウも詠唱が終わると同時に前衛へと戻ろうとすると、すかさず後ろから説教が飛んでくる。
『ちょっとちょっと!スノウもリキュールボトルを使わないと意味ないじゃないですか!!』
「お前はもう少し自分を大事にしろ!!阿呆!!」
「うわぉ…。説教が飛んできた…。」
すぐにスノウがリキュールボトルを手にして自分に振りかける。
そしてまた前衛へと戻って行けば、いつもの様にその猛威を振るう。
相棒を振りかざし、時には銃で敵を滅する。
状態異常も何のその。
そんな調子で暫く戦闘を繰り広げていれば、ようやくその戦いにも終わりが来る。
チープトリックはこのダンジョンの中でも厄介な部類だと知っているからこそ、今度はちゃんと間違えない様にスノウが注意を呼びかけようとしたのだが…。
「見て!また宝箱がある!!」
「待て待て待て!!カイル、そいつに触れるな!!」
まだまだ保護者であるロニがカイルを慌てて止めようとしたが、既にカイルが触れてしまって後の祭り。
リキュールボトルの効果がまだ発揮している三人を中心に、晶術メインで繰り広げる他の仲間達は、一斉に溜息を吐いていた。
またこいつか、と肩を落としたのだった。
「ごめーん!スノウと修羅と海琉ー!!」
「まぁ、やってしまったものはしょうがない。それに…こいつの落とすアイテムは貴重だから俄然やる気が出るってものだよ。」
「へえ?何落とすんだ。」
「ゲームでは様々だったね。武器を落としたり貴重なアイテムを落としたり…。あとはマニア向けのコレクターアイテムも落とすこともあって、ここで何時間もやっている廃人も居たくらいだよ。」
「うわ…まじか…。今それをするとか言わないよな?」
修羅が振り返ってスノウを見るも、苦笑いをしているだけで何も言わない。
まさか、と濁した修羅が、言葉の代わりに肩を竦めさせていた。
「若干期待しちゃってる自分が居るんだよね。"トレカ"ってアイテム。」
「…因みに聞くがどういうアイテムなんだ?」
「そりゃあ廃人向けのコレクターアイテムだよ。トレーディングカードって知ってるだろう?あれだよ。」
「よし、あんたの手を掴んでさっさと先に進むことにするか。」
「ひどいなぁ?私がそんなことすると思う?」
「期待してるんだろ?そのアイテムを落とさないかって。」
「言っただけだって。信じてよ?」
「今だけはその言葉は信用できない。だから観念しな。」
戦闘が終わると同時に修羅がスノウの手を握り、ついでにカイルの方も確認する。
これ以上被害を広げない為にも、だ。
カイルの方はロニが頭をしっかりと掴まえていたのもあり、ホッと息を零した修羅はそのまま後ろの海琉も確認する。
すると何かを嗅いでる様子の海琉に嫌な予感を感じた。
「…何か匂う。」
「はぁ?何の匂いだ。」
「分からないけど……なんか…良い香り…。」
「お前はまた…。こんな場所で一人どこかに行くな。迷子になるだろ。」
そう言ってスノウを掴んでいる方とは違う、もう片方の手で海琉を掴むと歩き出す。
その表情は誰がどう見ても呆れていて、掴まれている両者は顔を見合わせるとフッと笑って逆に修羅を追い抜いた。
そして手を引っ張り合った二人に連れられて修羅が戸惑った顔で走り出さなければならなくなり、しかし次第に笑いもこみ上げてくる。
道を知っているスノウを先頭に修羅や海琉が走っていくのを見た仲間達はそれを微笑ましく見ながらその三人の後を追う。
こうしてようやくといった様子で第一の関門に到着した。
「…ここは、カルバレイス地方だね…。それもトラッシュマウンテンっていうことはアタシの出番だね!」
そう、ここでは一人一人ずつ戦わなければならない場所だ。
その証拠に、ナナリー以外にこの場所を通れるものは居ない。
すぐさまロニやカイル、スノウ達の声援が飛び交う。
「やられるんじゃねーぞ!ナナリー!」
「頑張って!ナナリー!」
「及ばずながら、ここで応援させてもらうよ。…大丈夫。ナナリーなら絶対にここを突破できるから。」
「あいよ!頑張ってくるさ!」
そういってナナリーが奥にある黄色に光る欠片を持つ。するとナナリーの全身に悪寒が走る。どうにも不吉な予感がするそれを見れば、ただ黄色に光る欠片だ。
それを持ち帰ろうとしたその瞬間、ナナリーの背後に現れたのは"フェンリル"というオオカミ型の魔物だった。
しかしそんな敵も今のナナリーには子供の様に簡単に倒せてしまう。
全員がそれを感嘆すると同時に、ナナリーはデリスエンブレムの欠片をカイルへと渡していた。
…因みに全員の視線が物語っている。
"絶対に落としたり、失くしたりするなよ"と。
「よし、次へ行こう!」
「「「「(大丈夫かなぁ…?)」」」」
不安そうな顔を見せる仲間を物ともしないカイルはスノウに次の場所を聞いていた。
それを素直に答えたスノウにも仲間達の視線が向かう。
"お前は不安じゃないのか"と。
しかしカイルと同じく、それを物ともしないスノウはカイルの後をついていくようにして歩いて行ってしまった。
仲間達も同じくついていけば、次に見えた風景は雪景色だった。
「雪景色ってことは…?」
「スノウじゃないのか?確かお前さん、雪国出身だって言ってただろ?」
「う~~ん。多分だけど、これは軍事基地だと思うよ?現代の軍事基地にしては新しそうに見えるからここはハロルドじゃないかな?」
「確かに軍事基地だけど…。なんだかボロっちいわね~?あたしの記憶してるのと、あんたの記憶と足して二で割ったような建物なんじゃないの?」
「そうなると、私も入れるってこと?」
「物は試しよ!一緒に入りましょ。」
そう言ってハロルドがスノウの背中を押し、欠片の方へ行こうとするが……。
「あいたっ。」
何か壁のようなものに阻まれるようにしてスノウが額をぶつける。
そして額を押さえると、その横をハロルドが通り過ぎて行ったので若干それを恨めしそうにスノウが見ていた。
そんなスノウの様子を、おかしそうに仲間達が笑っていた。
「ハロルド…?後で覚えてなよ…?」
「え?な~~に~~?聞こえないわよ~~?」
キュルンとした顔で言われると説得力の欠片もない。
スノウが溜息を吐き、静かに首を横に振ると仲間達の方へとトボトボとした格好で戻って行く。
それを「お疲れさま」という目で見たのは修羅だった。
修羅もハロルドの横暴に振り回されたうちの一人でもあるから、スノウの不憫さに憐れんでいた。
しかしそんな二人の静かなる言葉の応酬の間にも、ハロルドは簡単に倒して見せた。
二人が魔物を見ることが無かったために、目を点とさせてハロルドを見る。
するとその後ろには分解された機械の名残のようなものが落ちている。
そして周りの仲間達の目も何処か遠い場所を見ては現実逃避しているような、それとも話すのも怖いのか、誰もスノウと修羅の疑問に解決できるものは居なさそうであった。
「ぐふふ…。あたしに挑もうなんて一億年早いのよ!」
「百年じゃなくて一億ってところが恐ろしいところだね…。」
「…一億光年じゃないだけ良しとしようぜ?」
他の仲間達が先に進む中、スノウがふと横穴を見つける。
そこは原作を覚えているスノウでも見かけたことのない横穴のはずだった。
「(…あれ?あんな所に横穴なんてあったっけ…?)」
「おーい、皆先に行ったぞ?」
『スノウ~?置いていきますよ~~?』
「…先に行っててくれ!」
修羅にそう告げるとスノウはその横穴の中を覗く。
しかし先ほどと似たような構造の廊下が続くばかりで特別変わった所は無い様に見える。
「…おっかしいな…?こんな所に横穴なんて無かったはずなんだけど…?」
「おい、何をしている。お前も迷子になりたいのか。」
『そうですよ!!何が先に行っててくれ、ですか!!全くもう…!!』
「あれ?先に行かなったのかい?」
他の面々は先に進んだようで姿が見えない。
だが、ジューダスとシャルティエだけはスノウの傍に戻ってきたようだ。
「お前を単独行動させると碌なことがない。」
『左に同じくです!』
「で?この先に何かあるのか?」
「いやぁ…?というか、私の記憶ではここ、ただの壁だったはずなんだけど…どうやら記憶違いしてたみたいだ。横道に逸れる穴があるから中を覗いてただけだよ。」
「ほう?」
そう言ってジューダスが横穴を覗くと、その先に踏み込もうとする。
それを驚いた表情でジューダスを見たスノウに、彼はフッと笑みをこぼす。
そして優しくスノウの手を取っていた。
「どうせ、気になるんだろう?」
「まぁね。でもはぐれたら大変だし、ここに横穴があった事だけ覚えておこっかな。君を危険なことに巻き込むわけにもいかないし、もしかしたら次、君の番かもよ?」
「その言葉、そのままそっくりお前に返すとしよう。」
そう言って戻ったジューダスはそのまま手を引いて仲間達のもとへと歩き出す。
一緒に連れだって歩くスノウの手が少しだけ暖かくなった。
◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*
「ここは…ストレイライズ大神殿か。なら、リアラか?」
「ううん、多分だけど違うわ。私にこういった術はかからないからロニだと思う。」
そんな会話が聞こえてきて、ジューダスとスノウは歩いている速度を速める。
するとロニがまさに戦おうとしているところだった。
そのお相手さんは筋肉隆々の大柄な男である。
このメンバーの中でも身長の高いロニと匹敵するような高さを持つ敵だったため、仲間達の間で緊張が走る。
それにロニに対抗するようにこの剣の長さは通常の剣よりも長い刀身を持っていた。
振るだけでも危険だと分かるほど、磨かれた剣とあの筋肉を見て自然と声援にも力が入る。
「朝稽古しておきながら負けたら承知しないよー、ロニー?」
「へっ!!こんな男に負けるかよ!!」
「ロニ頑張れ~!」
「負けるんじゃねえぞ!」
「すけべー、変態ー、ひとでなしー!」
「おい!!今誰が俺の悪口言いやがった!!後で覚えてろよ!?」
言った張本人を仲間達が見れば、その人物は口元に不敵な笑みをこぼしている。
そして綺麗な跳ねっ毛であるピンク色の髪を持ったその人物は、何も言ってないというかのようにいつもの調子に戻ってしまった。
…これでは誰が言ったか分からないだろう。
「おい!終わったぞ!誰が悪口言いやがった!!」
いつの間にか終わらせたロニがプンプンと怒りながら帰ってくると、デリスエンブレムの欠片をカイルへと持たせ、仲間達を見る。
そしてその仲間達の視線はハロルドに向かっていった。
意外な人物が言ったことを知ったロニは目を丸くさせるとやれやれと肩を上げた。
「おいおい…。なんでハロルドにまで言われなくちゃなんねぇんだよ。」
「思った事を口にしただけよー?違ったかしら。」
「…ほんと、恐ろしいやつだな、お前さん…。」
素直な言葉ほど心に刺さるものは無い、とロニは胸を押えて痛みを堪えた顔をする。
それに周りからもどっと笑いが起きて、場があっという間に和んでいく。
それは途中から来たスノウ達もそうだ。
二人も笑っては次の場所へと促した。
「あとやってないのはカイルとジューダスだけかな?」
「修羅と海琉、スノウもやってないよね?」
「私達は一応この世界の人間じゃないし……無いとは思うけど。」
「まぁ、あったらやればいいだけだろ?ともかく、あと二人の欠片を探さないとな。」
「二人の欠片は真反対にあるんだけど……どっちからしたい?」
「僕は後回しでいい。」
「じゃあオレからやるよ!」
「よし。ならあっちだね。」
指さす方向にカイルが勢いよく走っていき、それを慌てて追いかける保護者たち。
リアラも笑いながら先へと進んでいくのを見て、スノウ達も移動を開始する。
急がずにゆっくりと進んで行ったスノウ達だったが、既にカイルの欠片は手に入れたみたいで、その欠片をスノウ達に見せつけるように天高く持ち上げていた。
元気の良いカイルを見たスノウは、最後のジューダスの欠片へと案内を始める。
しかし、スノウは少しだけ顔を俯かせた。
それを目敏く見つけたジューダスがスノウの背中を思い切り叩く。
そして背筋を伸ばしたスノウは驚いた顔で隣にいる彼を見上げた。
『大丈夫ですって!スノウ!僕だっているんですよ!?』
「お前はお前で自分のことを心配してろ。僕はそんなにヤワじゃない。それにあいつらが切り開いた道を僕が閉ざす訳にも行かないしな。」
「……うん!ちゃんと応援するから。」
「当然だ。寧ろ応援が聞こえてこなかったら後で説教だからな?」
「えぇ?そこまで?」
笑いながらも言葉を紡いだスノウの表情は先程よりも大分違う。
さっきまでの憂いが嘘のように表情も和らいでおり、それを見たジューダスも笑顔でそれを見ていた。
「……じゃあ、行ってらっしゃい。」
「あぁ、簡単に終わらせてやる。」
最後の欠片の間へと辿り着いたジューダスたち。
欠片を手に取ったジューダスが振り返ると、そこには信じられない人物が立っていた。
?「……。」
『えっ?!!』
「……そう来たか。」
そこに居たのは、18年前に海底洞窟にリオン達の前に現れたモネ・エルピス…その者だった。
相棒を手に持ち、狂気の笑みを貼り付けてジューダスの見るその瞳に見覚えがあった。
何より、スノウの髪の長さとは全く違うのもあってモネだと分かったのだが…。
「あ、あれって…!」
「モネじゃねえか!!」
「……。(原作とはかけ離れてしまったか…。)」
渋い顔をしたスノウ。
しかしジューダスの方はモネを見て、すぐにシャルティエを構えていた。
そして不敵な笑みを零す。
「偽物のお前に負けるつもりはない。例え、記憶の中のお前だろうが、僕は絶対に負けない!」
『えぇ!やってやりましょう!!坊ちゃん!!』
?「──── 本気でかかってこないと、全員死ぬよ?さぁ、おいで?」
嘲笑の眼差しを向けてくるモネを睨んだジューダスは、一瞬だけスノウの方を見る。
そこにはジューダスが贈った紫水晶のネックレスを握って不安そうにしているスノウがいた。
その光景を見て、ジューダスは無意識にやっていた緊張を解き、自然の姿でモネへと相対した。
「行くぞ、シャル!!」
『はいっ!!坊ちゃん!!!』
▷▶︎▷NEXT