第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
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____現代・ハイデルベルグ
現代へと無事戻り、感動の再会もそこそこに仲間たちは長い休暇を取る事にしていた。
その理由は言わずもがな、〝ハロルドの研究時間の申し出〟と〝スノウと修羅のマナ回復の時間〟の為、である。
この現代に来てからというもの、研究が捗るらしく、旅の途中で度々こうして「時間をちょーだい!!」と言って何処かに出掛けてしまうのだから困ったものだ。
20代と言えど、まるで大きな子供である。
スノウや修羅は神の眼を壊す為に自身の中のマナ消費が著しかった為に、休暇で回復を図ろうとしていた。
その時に丁度、ハロルドの研究時間の申し出があった為にそれに乗ったのだ。
各々がデートや観光、といったイベントをこなす中、今日も今日とて、ジューダスはスノウの傍に居て、スノウと共にあったのだった。
「…………レディ。」
「はぁ…、レディじゃない…。で、何だ。」
「……折角の休暇なんだから…、君も少し羽目を外してきたらどうかな…?私のことは心配要らないよ…?」
顔の前に腕をやり、視界を塞ぎながら宿屋のベッドで横になっているスノウがそう呟く。
ジューダスはそれを見て、こっそりと嘆息する。
そしてゆっくりと首を横に振った。
「…僕の事なら構うな。自分のやりたい事や行きたい所は自由に選ぶ。そして今、僕はここに居たいと思っているし、やりたかった蔵書を読む事も出来ている。故に、お前に心配されずともちゃんと休暇を楽しんでいる。」
『素直じゃないですねぇ…?坊ちゃんは、スノウの身を案じてここに居ぃぃぃぃぃいいいい?!!!』
すぐさま、シャルティエのコアクリスタルに爪が立つ。
ついでに言えば、ジューダスの睨みも健在である。
余計な事を言うな、というマスターからの声無き声が聞こえてくるようで、シャルティエはすぐさま口を噤んだ。
「(だからなんだけどなぁ…?そんなに信用ならないかな…?)……そう、か。」
「…だから、僕のことは気にするな。」
厳格な父親から解放され、例の厳しい剣術指南や厳しい家庭教師からも解放された訳だが、こうしてカイル達と旅に出る度に思い知る。
知識というのはあって困らない物なのだ、と。
それを補う為に最近本を読む事がしばしばあるジューダスを、スノウが内心不思議がっていた。
彼の趣味は前前世から把握しているつもりだった為、彼の趣味がまさか“読書”になっているなど誰が知ろうか。
そうしてジューダスはまた蔵書に目を向け、文字を目で追っていく。
それをこっそり腕を退かして見ていたスノウもまた、少しだけ口元を緩ませ、また腕を戻した。
しかしその口元も、また元へと戻っていく。
それは前回の事があってだ。
こうしてスノウがベッドで横たわり、彼が倒れた事件を思い出したからだ。
「……ねぇ、レディ。」
「寝ろ。」
「……少し待ってくれないかな? こうしていると、この間の事を思い出すようで私は怖いんだ。だから、君も寝てくれないかな?そしたら私も安心して寝れる。君も休める。一石二鳥だ。」
「今度は寝ろ、か。羽目を外してこいだの、寝ろだの…。」
『折角だからスノウの真横で寝たらどうです…かぁあああああ?!!』
すぐさま制裁するジューダスの顔は真っ赤に染まっていた。
先程開いていた本は何処かにいったらしく、今は手にシャルティエを持ち、説得力の欠片もない赤い顔でシャルティエを睨みつけていた。
「ふふ。私は大歓迎だよ? ほら、おいで?レディ。」
「な、」
スノウが少しずれ、自身の真横をポンポンと叩けばジューダスの顔が更に赤くなっていく。
そしてスノウとその空けられた空間を交互に見つめ、テコでも動かなさそうなスノウを最後に見たジューダスは諦めたように肩を下ろす。
こうなればきっとスノウが寝ない事は一目瞭然。
なれば、自分が横に行って寝てしまった方が何倍も早い気がした。
サッとスノウの横へと身を滑らせれば、スノウは嬉しそうに顔を綻ばせ、ようやく寝る体勢とやらになった。
向かい合わせは恥ずかしくて、ジューダスが背中を向けばその背中へとスノウが身を擦り寄らせる。
瞬間、引いていた赤みが再びジューダスを襲う。
バクバクと鳴る心臓を押さえながら、ジューダスがその苦行を耐えているとどれほどの時間が経ったかは分からないが、背後からすやすやと安らかなる寝息が聞こえてくるではないか。
「(何故この状況で寝れる…?阿呆なのか、こいつは。こっちの気も知らずに易々と…。)」
悔しそうに顔を歪ませ、そっと背後を振り返ったジューダスは途端に目を丸くさせる。
そしてその瞳は優しく細められた。
反対へ向き、スノウを見つめたジューダスはそのままお互いに掛かるように布団を掛け直した。
「……幸せそうな、馬鹿な面だな…?」
思わず悪態をついたものの、その声音は酷く優しい。
ジューダスの呟いた通り、スノウの表情は安心した、穏やかで幸せそうな顔だった。
そんな顔を見てしまえば流石のジューダスも怒るに怒れない。
結局、二人はそのまま暫しの休暇を寝て休むことにしたのだった。
*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。・.: * .。○・*.
____数時間後。
「……ん。」
目を開けて目の前の存在を確認したジューダスは、そのまま夢見心地でスノウの頬に触れていた。
いつだったか、〈赤眼の蜘蛛〉の研究所から逃げ出す際に大洪水を起こした事をふと思い出した。
あわや死にかけた二人がお互いの生存確認のためにお互いの頬に触れたが……、今は違う。
今のこの行為は、相手への愛情を確かめるためにやるものだ。
決して、あのような悲惨な確認の為では無い。
「(…柔らかい、な…。こうしていると本当に女だと思い知らされる。いつもこのような男のような格好をしているから余計に、な。)」
そっと立方体のピアスに触れれば、それはころりとスノウの首を転がっていく。
そこに満たされる淡い光を放った碧色の液体は、ようやく半分に満ちようとしているところだった。
これでは当分、彼女は起きないだろう。
「……半分、か…。」
「ん……。」
スノウが身じろいだ事で、澄み渡る空のような蒼色の髪がさらりと前へ垂れる。
それをジューダスが掬い、そして口に寄せる。
仄かに香る彼女の香り。
それは甘いようで甘くない、しかしどこか大人びた匂いだった。
香水の類いはつけない、と聞いていたからこれこそが、彼女の本当の香りなのだろう。
その香りはジューダスにとっては甘く、甘美な響きをもって鼻をくすぐった。
それこそ、自身の欲を掻き立てられるほど甘い香りがした。
「(あぁ、こいつに触れると抑えていた欲が溢れてくる…。もっと、もっと触れていたい…。この小さな体を何処へも行かせないように腕に閉じ込めたい、と……。)」
あまりにも持て余すその欲を振り切るようにして、ジューダスはサッと身を引いて体を起こす。
そしてベッドの端に腰掛けると彼の愛剣が話し掛けてきた。
『あ、おはようございます、坊ちゃん。眠れましたか?』
「…………あぁ。」
『間が長いんですが…?』
「寝たことは寝た。……はぁ。」
体の中のどうしようもない、この甘く疼く熱をどうしてやろうか、と顔に手を当て項垂れているジューダスに、シャルティエが不思議そうにコアクリスタルへ光を転写させていた。
『(なんだかお疲れみたいですねぇ…?)坊ちゃん。もう一度寝られたらどうですか?お疲れのようですし…。』
「……いや、大丈夫だ。寧ろ少し外の風に当たってくる。」
『あ、はい。僕もですか?』
「どうせ、ここに居てもこいつは目を覚まさないぞ。まだ半分も回復していないからな。」
そう言って容赦なくシャルティエを持ち上げ、そのまま外へ向かったジューダスは、最後にスノウの方へと振り返り、そしてすぐに姿を消した。
残ったのはスノウだけ。
その空間には安らかなる寝息が再び落ちていたのだった。
『────で。眠れなかったんですか?』
「しつこいぞ。僕はちゃんと寝た。」
『だって、それにしてはお疲れでしたから。』
「……あの時、色々と考え事をしていただけだ。」
『えぇー?本当ですかぁー?』
疑わしいとばかりの声音を出すシャルティエのコアクリスタルへと、ジューダスの爪が忍び寄る。
咄嗟に気付いたシャルティエがカチャリとまるで瞼を閉じるかのようにコアクリスタルを遮断すれば、ジューダスが鼻を鳴らした。
「……あいつにも、色々聞かないといけないことがある。」
『……それって、何ですか?』
恐る恐る閉じていた蓋からコアクリスタルを覗かせて、喋るシャルティエ。
「……髪色を変える予定があるのか、と。」
『へ?』
突拍子もない話を聞いて、間抜けな声を出すシャルティエは、コアクリスタルを一瞬だけ激しく明滅させた。
そしてぼんやりとした光を灯して、疑わしいとばかりに声を零す。
『……あの髪の色に飽きたとかですか?』
「そんな訳あるか。……未来で、あいつが髪色を変えた時……。その時はあいつが〈赤眼の蜘蛛〉の仲間入りを果たした時だ。」
『は…? う、嘘ですよね…?スノウがそんな…奴らの仲間になるなんて…。と、と言うより!なんで坊ちゃん、そんな未来の事を知ってるんですか?!まるで…〈星詠み人〉みたいに……?』
〈赤眼の蜘蛛〉の仲間になる────それ即ち、ジューダス達の敵になる事を意味する。
その言葉にシャルティエは信じられない気持ちで目の前の存在を見た。
しかし、彼が……自身のマスターが嘘を吐いているような顔には見えない。
その顔は少しの絶望を孕んでいた気がしたから。
「……予知夢という、夢を見た。未来の現実で起こる出来事を夢として見る現象なんだそうだ。」
『それじゃあ……それは、変わらない未来なんですか……?』
震える声で精一杯、声を絞り出すシャルティエもまた、絶望した光を灯していた。
それを見てジューダスも目を閉じ、ゆっくりと首を横に振った。
「……それは、分からない。だからこそ、あいつと今一度腰を据えて話し合う必要がある。」
『そうですね…!!坊ちゃん!話し合いましょう!しっかりと!!今後のことを!!』
「それもこれもあいつが目覚めないことには、な。」
『それまでは坊ちゃんもゆっくり休暇を楽しみましょう!ね?』
雪降る街を歩きながら二人はそんな会話をしていた。
その中にはスノウをデートに誘おうなどと言う話もしていたのだとか。
寒空の下、二人の会話は何処までも暖かく広がっていく。
今だけは、最悪の未来を心の底に押し込めて。
*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。・.: * .。○・*.
____数日後。
目を覚ましたスノウは、腰に手を当ててほとほと呆れ返っているジューダスの前に座らせられていた。
どうやら、大分寝坊をしてしまったようだ。
「(まさか数日が経ってたなんて、誰が思うだろうか…?うーん…、レディの説教も良いけどやっぱり笑顔の方が嬉しいんだけどなぁ…?)」
「考え事とはいい度胸だな?スノウ。」
説教の途中でじとりとした目を向けられたスノウだったが、何処かジューダスの様子が違うことに気付いた。
何処が……とは言えないが、何処かいつもと様子が違う。
無論、上手くは言えないが。
「……ジューダス?何かあったのかい?」
「……なんの事だ。」
「いや、気のせいなら良いんだけど…。何処かいつもと様子が違うような気がしてね?」
『(うわ…。流石スノウ…。坊ちゃんの事、よく見てますねぇ…!)』
「……お前、体は今どうなんだ?」
「身体? ……何処も…おかしな所はないと思うけど?何かおかしい?…あ、もしかしてマナ?」
自身の耳に触れた後、立方体のピアスに触れたスノウは、そのピアスの中身を見ようと僅かに引っ張る。
すると、その手を止めるようにジューダスの手がスノウの手と重なった。
「いや、何も無いならいい。……少し外に出ないか?」
「外? うん、いいよ?行こうか。」
笑顔を零したスノウは立ち上がるとジューダスの手を反対に取り、エスコートするように優しく手を引いた。
それにつられて、ジューダスもまた歩き出し、外へと向かう。
そして外へ出れば、今度はジューダスがスノウをエスコートするようにその手を引いた。
その行動に驚いて、僅かに目を見開いたスノウだが、すぐに笑って彼の後に続く。
どうやら、今回は彼が案内をしてくれるらしい。
「……。」
「……。」
何も言わない彼に困ることなく、いつものように笑顔でいるスノウ。
それを見て少しだけ……ほんの少しだけ手の力を強めたジューダスは目的の場所へと向かう。
そこは、ハイデルベルグでも人気の少ない場所であり、以前スノウがジューダスを連れてきた場所でもある。
その街の周りの雪原を見晴らせるほどの高さを持つ高台に来たジューダスは、手を離すとスノウと向き合い、そして真剣な瞳を覗かせた。
「少し話がある。」
「話…?」
「あぁ。大事な話だ。」
改まってそう言われると、心持ちも違う。
スノウも姿勢を正して、ジューダスへと真剣に向き直ると彼が呟くようにして話し出す。
「まずは…あの時はすまなかった。倒れて、僕を看病してくれていたと聞いた。」
「あぁ…。でも、それは仕方ないよ。君はエニグマに呼ばれていたんだから。」
「知っていたのか。」
「私の神から聞いた話だけどね? それまでは全然原因も分からないし、医者も寝ているだけなんて診断するから…………本当に心配した。死んだんじゃないか、って……そう考えてしまって。」
「あぁ、すまなかった。……人遣いの荒い神を持つと、苦労するな?お互い。」
「ふふ…。私はそうでもないけどね?」
ようやく少しだけ笑みを見せたスノウ。
始めの話題にしては、無難な所を選んだなとジューダスが思っていると、スノウが僅かに首をかしげさせる。
「……でも。それだけじゃないんだろう?君の話は。」
「では、単刀直入に聞く。……お前、近々髪色を変える予定があるか?」
「……………………え?」
斜め上の質問に、思わず目を点にさせたスノウを見て、ジューダスもシャルティエも確信した。
〝あれ〟は、近い未来の現実では無いことを。
「……もしかして……この髪色、飽きたのかな?」
「そんな訳あるか。…と言うより、どこかの誰かと同じ事を言うな。」
『スノウ…、僕と同じこと言ってるじゃないですか…。』
「?????」
髪に触れながら目を瞬かせる彼女に、ジューダスは眉間に皺を寄せて、それを見た。
そんな険しい顔をされてスノウもまた、疑問が増えていく。
何故そんなことを聞かれたのか、と。
「では、次。〈赤眼の蜘蛛〉のことだが…」
「……あぁ、彼らねぇ…?本当、嫌になってくるよ…。まだこの間の事、こう見えて根に持ってるんだからね?」
『(やっぱり…〈赤眼の蜘蛛〉の仲間に入る素振りなんて、全然見られない…。なら、いつスノウは〈赤眼の蜘蛛〉に入るんだろう…?)』
左腕を押さえるような動作をして、険しい顔をしたスノウに、ジューダスもシャルティエも困った顔をする。
どちらも同じ事を思ったのだ。
スノウが仲間を裏切ることなど無いのだ、と。
「え?聞きたいことって〈赤眼の蜘蛛〉のこと?……えぇ?私、そこまで彼らに詳しくないよ?」
「いや、そうじゃないんだ。…お前が、〈赤眼の蜘蛛〉の仲間になる夢を見て…、心配になっただけだ。」
「夢? それはまた、なんとも最悪な夢だね?個人的には無いと思ってるよ。〈赤眼の蜘蛛〉に入るなんて、吐き気がする。」
「…そうか。」
「もしかして、その時の髪色が違ったとか?」
「あぁ。黒色の髪をしていた。珍しい髪色をしていたから印象に残っている。」
「黒、か…。」
そう言って、スノウはジューダスの髪を見る。
そして笑顔で彼の髪に触れた。
「〈赤眼の蜘蛛〉の仲間になるなんて、不吉な夢を見て不安だったんだよね。でも、黒は君の髪と同じだからお揃いも良いかも、と思った私は…少し意地悪かな?」
「……。」
ジューダスの複雑な顔を見て、苦笑いをしたスノウ。
そして一つ笑って、指をパチンと軽く弾いた。
小気味よい音と共にスノウの髪色が一瞬にして黒色へと変われば、ジューダスの顔は余計に複雑になってしまった。
「ふふっ。“気に食わない”って、顔に書いてあるよ?そんなに似合わないかな?」
「……直せ。」
「はいはい。」
パチンと再び指を弾けば、スノウの髪は澄み渡る空のような蒼色へと変わっていく。
しかしその顔は少しだけ寂しそうであった。
「……これでも、前前世は……黒髪だったんだよ?」
ポツリと呟かれた声は、少し寂しそうで。
しかしそれも彼女が再び笑顔へ表情を戻したことで錯覚かと思えてしまう。
「……ん?待てよ…?君って確か〈夢の神〉であるエニグマの〈御使い〉だもんね?……という事は、そんな神に仕えている君の夢ということで、その悪夢は現実に起こる可能性として無くはないのか…………?」
ブツブツと呟いては、口元に手を当てて考える素振りをするスノウ。
それを見て「また始まった」とジューダスもシャルティエもため息を吐いた。
こうなったら暫くこちらの声が聞こえないからだ。
『……あ。坊ちゃん、スノウ。上を見てください!』
「……雪、か。今日も寒くなるだろうな。……なのに、こいつと来たら…立ち止まって物事に耽けて…。阿呆か。」
『スノウ!スノウ!!』
「……いや、…まだそうとは……」
「はぁぁぁ……。…おい!!いい加減にしろ!!」
大きな声で呼んだジューダスを見て、目を点とさせるスノウだったが、すぐに思考にはまっていた事に気付かされ、頭をかいて謝っていた。
それに鼻で笑い、腕を組んだジューダスは少しだけ口を尖らせていた。
「ともかくだ。〈赤眼の蜘蛛〉の仲間なんかに入る前に、僕に相談くらいしろ。絶対に、だ。分かったな?」
「いや、無いと思うよ?流石に。 彼らの仲間入りする時は、ほんっっっっっとーーに!!余程の事があった時だとしか思えないよ。心に誓ってね。」
『いや……その“余程の事”が起こったりなんかしたら、坊ちゃんや僕にまず相談して下さいよ…。』
「いいか?僕との約束だぞ。絶対に守れよ?」
「うん、大丈夫だって。」
『「(それが不安なんだが…。)」』
明らかに疑われている視線を二つ貰い、スノウが心外だとばかりに笑えば余計に妙な視線が刺さった。
「……さぁ!気を取り直していこう!!」
手を叩き、場の空気を変えようとしたスノウだが、その背中にはまだ同じ視線が刺さってくる。
それに苦笑いをして、スノウはジューダスの手を取った。
「君の用事が他に無いのなら。今度は私の用事に付き合ってくれないかな?」
そう言って優しく笑って、スノウはジューダスの手を引いた。
雪がチラつく街中で、その笑顔はとても暖かいものだった。
一瞬にしてその笑顔に目を奪われたジューダスは、彼女のその笑顔で自身の心が暖かくなるのを感じ取った。
キュッと握られた手の力を強めれば、スノウもまたその手を強く握り返す。
そして歩きながら振り返り、またあの笑顔を零していた。