第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
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『────〈御使い〉よ、私の声に耳を傾けよ。』
「……嫌な予感がする。」
そう言っていたのは嘘じゃなかった。
スノウが寝たのを確認し、シャルティエと会話をしていた最中の話だった。
急に眠気が襲ってきたのだ。
「……。(くそ…急に……眠気が…。)」
意識を手放す感覚と共に、身体の力がフッと抜けた感覚がして僕は倒れたはずだった。
しかし、一向に痛みや衝撃が来ず、僕は瞬時に顔を険しくさせた。
「……ここは…。」
見覚えのない村のような場所。
そしてそこに、スノウが居た。
……何となくの感覚で、これは〝夢〟であると悟った僕は、またしても眉間に皺を寄せてその光景を見ていた。
すると、スノウと村人が何かを話そうとしている。
しかし、彼女は声が出なかった。
「────!」
「(いつだったかみたいに、またやってるのか…。)」
僕はそう思ったが、どうやら様子が違う。
喉を押さえたり、必死そうに何かを伝えようとしているスノウに、僕はいつの間にか目を丸くさせていた。
「声が出らんのか?可哀想にのぉ…?」
村の人間らしき人物がスノウに向けて哀れなものを見る目で見遣れば、その瞬間、スノウが顔を強ばらせて口を動かすのを止めた。
顔を青ざめさせるあいつを見て、何かがおかしいと感じるには充分、証拠が揃いすぎていた様に思う。
そして彼女は何を思ったのか、今度は地面に文字を書き始めた。
しかし村人はそれを見て首を傾げさせる。
「…はて?見た事のない字じゃのぉ…?異国のものかな?」
「っ、」
またしても身体を強ばらせる彼女に、遂に村人が心配してか肩に触れようとする。
それを彼女は咄嗟に躱していた。
…どういうことだ?何が起こっている…?
「────。 ────っ!」
声無き声を届けるには、あまりにも相手が悪い。
必死そうに何かを話す彼女。
しかしそれを困惑した顔で見遣る村のじいさん。
文字と彼女の顔を交互に見て、やれやれと首を横に振った。
「ともかく、何か馳走を───」
村人が親切でそう言ったのにも関わらず、彼女には石が飛んできた。
……村の悪ガキどもだ。
「文字もかけねぇ!話もできねーやつは村から出ていけっ!」
「「「でていけっ!」」」
子供の純粋さは、時に残酷だ。
村のじいさんが叱ったが、時は既に遅し。
何人もの悪ガキどもが投げた石が彼女に当たってしまった。
額から血が出たのを見て、村のじいさんが顔を青ざめさせ、ワナワナと餓鬼共を叱っていた。
「コラっっっっ!!?悪ガキどもめがっ!!村の客人に怪我をさせるとは何たることか!!!」
「げ、じいさんが怒った…!」
「にげろー!!」
蜘蛛の子を散らす様に、悪ガキどもが逃げていく。
同時に恐怖の色を濃く顔に出したスノウが、村から逃げるように走り出した。
じいさんが慌てて止めたのに、スノウは一向に止まらない。
僕は慌ててスノウを追いかけた。
これが〝夢〟だと分かっていても、追いかけられずにはいられなかった。
彼女が怪我をしている。早く治して、その顔を安心させたい。
……笑顔になって欲しい。
「…はぁ、はぁ、何処だ…、何処にいる…?」
流石に足の早いことだ。
脱兎のごとく逃げた彼女を見つけられずにいたが、今いる森の何処かから別の声が聞こえてきた。
僕は慌ててその方向へと駆け出す。
すると、地面に座り込み絶望の顔をしている彼女へと卑しく手を伸ばす……アーサーの奴がそこにはいた。
「お可哀想に…。怪我をして、声も出ないとは…。」
「───」
「事情は分かりました。ですから、スノウ・エルピス。私と共に来なさい。そして〈赤眼の蜘蛛〉に入るのです。」
「……。」
「このままでは、貴女も本望ではないでしょう?私が、貴女を救います。〈赤眼の蜘蛛〉ならば、それが出来る。この世界の人間を信用して、その額の傷の様に……いえ、更に酷いことになりたくなければ、この手を取りなさい。」
「──、────。」
「大丈夫。〈赤眼の蜘蛛〉はいつでも貴女を歓迎致しますよ? そして、共に共闘致しましょう。この世界の人間を赦してはいけません。……決して。」
その瞬間、スノウの瞳に力が宿る。
そして彼女は迷いなくあいつの手を取り、反対にあいつの顔は愉悦に塗れた顔をして嗤っていた。
そんな信じられないような光景を、僕は息を呑んで見ていた。
「スノウ…?」
何故、敵の手を取る?
何故、こんな事になった?
「っ。スノウ…!駄目だ!!そいつらの所に行くなっ!?また〈赤のマナ〉にやられるかもしれないんだぞ?!」
急いで僕は追いかけようとした。
しかし急に場面が変わる。
風が吹き荒れて、目の前を腕で塞げば、いつの間にやら僕達はノイシュタットの近くにいた。
そして、カイル達が魔物と戦っているのが見える。
そこには僕の姿もあった。
しかし…そこには彼女の姿はない。
「ジューダス!こいつ、強いよ?!」
「阿呆!旅で培った経験を何処へやってきた!そいつには火属性が効くと教えただろうが!」
そんな事を毒づきながら、僕達は魔物を倒していた。
しかし、数が数だ。
晶術で一掃したいところだが、肝心の彼女が居ないため、魔法の類は期待できないだろう。
晶術が得意なリアラも、どうにも苦戦しているように見える。
「「「…!」」」
するとそこへ、黒づくめのローブを被った人物が魔物を倒していく。
見た事のある武器を手に、その人物は次々と魔物を屠っていく。
その手腕といえば、僕には馴染み深い攻撃であった。
何故ならば、それはスノウ特有の武器で、スノウ独特の間合いの取り方だったからだ。
「だ、だれ?!」
「……。」
魔物を倒した後、カイルがその人物を警戒したが、すぐに彼女の武器を見て察したのだろう。
途端に笑顔を咲かせ、近寄ろうとしたカイルに、あろう事か彼女はその武器を突き出し、カイルへと刃を向けたのだ。
それに全員の表情が固まる。
「……。」
何も話さない彼女は、じっと武器をカイルに向けたまま動きさえしない。
カイルは意を決して更に近付こうとすれば、彼女はカイルへと攻撃をしかけた。
「っ!? スノウ!君はっ、スノウじゃないの?!」
「……。」
顔さえフードで見えない状況で、カイルが困惑しながらそう叫んでいた。
向こうの僕も険しい顔…、いや、少しの絶望を含んだ顔をしてスノウとカイルを見ていた。
しかし彼女もその攻撃を止めるつもりはないらしい。
次々とカイルへと牽制するように武器を操っている。
どうやらカイルを攻撃したい訳ではなく、ただ単に押しやって距離を取りたいと見える。
「スノウ!オレだよ!カイル・デュナミスだよ!!」
「……。」
近付こうとする馬鹿に再び彼女の剣戟が飛んでいく。
風で彼女の顔のフードが取れ、顔が露わになると……
「……黒?」
彼女の髪の色が真っ黒になっていた。
瞳の色は海色のそれなのに、髪色だけは黒だった。
「え、スノウ…?その髪…」
カイルが髪を指さした瞬間、彼女は顔を険しくさせて何かを地面に放り投げた。
すると煙が瞬く間に周辺を包み込み、中にいた僕らの咳き込む音が聞こえてくる。
僕は慌てて彼女の行方を探すも、結局、彼女の行方は分からずじまいだった。
「どう…いうことだ…?何故、髪が黒に…?」
彼女はたまに髪の色を変えている。
何時だったかは、バレたくないからと雪色へと。
そしていつもは、澄み渡る空のような蒼色の綺麗な髪色をしていて、それを僕が好きだと言ったらそれと同じ色のピアスを僕にくれた。
自分の色を着けて欲しい、と……そう言っていたのに。
「……いや、これは悪い夢だ…。彼女が……あいつが、僕達の敵になるなど…。こんなの…悪い……夢だ…っ。」
どれだけそれを願っただろう。
現実にならない様にと願った所で、本当になるかならないかなんて、分かるはずもない。
ただ、一つ分かることがある。
「……居るんだろう?!エニグマ!!」
そう、彼女の存在が近くに色濃くあった。
僕がそう叫べば、彼女はようやく姿を現し、いつものように顔を隠す布をしていたのに、その下の顔は笑っているように見えた。
「これはまた…珍しいものを見たな。」
「どういう事だ?!あいつが、敵になるなど…!こんなの、悪い夢以外何がある?!」
「そうだな。〝悪い夢〟だな。それ以外の何物でもない。」
「…じゃあ、これは現実じゃないんだな?」
「坊やなら分かるだろう?夢と現実の違いくらい。」
「分かるが…、だが聞いているんだ!」
「それを聞く、ということは……坊や自身がこの映像から何かを感じ取ったからじゃないのか?」
「っ。」
確かにそうだ。
夢なのに、何故か夢じゃない感覚もする。
何故、こんなにも僕は必死になって聞いているのかと聞かれれば、間違いなくこう言うだろう。
〝夢なのに、これが夢だとは思えなかったから〟だと。
「正解であって、正解じゃない。その答えでは不十分だ。」
「…分かるように話せ。」
「では端的に言おう。これは〝夢であり、現実だ〟。」
「っ!?」
「起こりうる現実…と言えば、浅学な坊やにも分かりやすいか?」
「じゃあ、さっきのあれが今後起こるかもしれないという事か?!何故、あいつが敵である〈赤眼の蜘蛛〉に入ったりする必要がある?!あいつには、別の使命があるだろう…っ?!」
「だから、珍しいと言っている。坊やが見たそれは〝予知夢〟だ。」
「予知…夢…?」
「未来の現実で起こる出来事を夢として見る現象だ。これは、とある力を持った人間ではないと見ることが出来ぬ、非常に珍しい現象だ。」
未来の現実で起こる…。
なら、あれは本当に起こる出来事なのか…?
「未来の断片だけを見て、全てを悟ろうとするな。所詮、夢は夢だ。だが、侮ることもなかれ。〈夢の神〉の御使いとしてゆめゆめ、忘れぬようにな。」
「……願う力は、夢の力…。」
「そうだ。坊やが何を望み、何を願うかだ。もしかすれば、予知夢も坊やの願いを聞き届けて変わるかも知れぬぞ?」
ケラケラと笑う目の前の“神”に、僕が睨めばそれも可笑しいように見えるらしい。
変わらず笑われた僕は、視線を逸らせたのだが、すぐに顔を元に戻す羽目になる。
こいつに呼ばれたが為に、眠気が来たことを忘れかける所だった。
「……で、さっきのような夢を見せるために、僕をここへ連れてきたのではないのだろう?」
真っ暗な空間。
見慣れてしまった、夢と現実の狭間。
そんな場所に僕達はいた。
それはこいつに連れて来られたからに過ぎない。
「呼んだには呼んだが…まさか、あの様な夢が見られるとは思わなかったぞ。」
「人の夢を勝手に覗き込むなんて、悪趣味だな。」
「坊やも人のことは言えまい。私の〈御使い〉として、悪夢に魘された人間どもの夢の中に入り込んでるのだからな。」
「……チッ。胸糞悪い…。」
ああ言えばこう言う。
僕が睨めば、奴はさも面白いとばかりにニヤニヤと笑い出す。
あぁ、僕は今、それが見たい訳じゃない。
「クックック…。坊やが倒れた事で、あの娘が身を削って看病しているようだな?」
「……は?」
「坊やを呼ぶにあたり、多少雑に連れてきたからか…。娘が泣きそうな顔で坊やの手を握っておる。」
「っ。早くここから出せ!」
「今来たばかりだろう?…まぁ、向こうでは三日は経っているかもしれんがな。」
「三日だと?!」
それはまずい。
それが本当ならば、彼女が泣いているというのも頷けてしまう。
本当は寂しがり屋で、泣き虫な彼女だから……。
それに、身を削って看病など…聞き捨てならない話だが、彼女なら有り得てしまうのが嫌だ。
あれ以上、彼女の命を削らせる訳には…いかないのに…。
「早くしろっ!!何かあるから呼んだんだろうが!!」
「まぁ、待て。一つ良いものを見せてくれた坊やへ、私から直々に褒美をやろう。」
「褒美などいらん!早く呼び出した理由を話して、僕を現実へ帰してくれ!」
「全く……娘の事となると、頑固になるというか…なんというか。まぁ良い。坊やが褒美を要らぬというなら、この情報はやめておこう。…折角人の好意を…」
「……。」
僕がさっさとしろ、と睨めば奴は肩を竦めさせて嘆息していた。
そして僕の方を見ると、急に顔の前に手を翳してきて、それを見ていれば視界が反転するのが分かる。
……あぁ、またか。
「とある人間の夢へ行って貰うぞ。」
「……チッ。」
また知らない誰かの悪夢から醒させないといけないのか。
これだからこいつの〈御使い〉は嫌なんだ。
勝手に誰かの夢へ行かせられ、勝手に「救ってこい」とほざいてくる。
僕は早くあいつの所に戻らないと行けないのに────
「……行ったか。」
あの空間にはエニグマが一人だけ。
先程まで自身の〈御使い〉の居た場所を見て、鼻を鳴らしたエニグマだったが、ふと動きが止まる。
その瞳は金色に輝いていた。
「彼奴め…、今度は娘に何を…。」
じっと何処かを見つめていたエニグマだったが、その空間へ〈御使い〉が戻ってくる。
いやに早い帰還だ。
「おい!戻ったぞ!これで良いだろう?!早く僕を───」
「……。」
「おい!!聞いてるのか!!」
「……まぁ待て。」
「待てるか!こんな事をしてる間にもあいつが…!」
何処かを見るエニグマにジューダスは既視感を覚え、立ち止まる。
しかし帰りたいという焦燥感からか、エニグマの胸ぐらを掴み、底に響く様な低い声で脅していた。
「──いい加減にしろ…!!」
「……ふん。“神”相手にそんな事をするとはな。私の〈御使い〉ながらいい度胸だ。」
「お前がこの場所に連れてこなかったら、あいつは寂しい思いをせずに済んだんだぞ?!!心配をさせる事も無かった!!」
「“離せ”。」
エニグマは冷たくそう言い放つと、ジューダスの体が独りでに動き、エニグマから離れる。
堪らず舌打ちしたジューダスだったが、その体はどんどんと透けて行った。
ようやく…。ようやく現実へ戻れる時が来たのだ。
僅かに安堵したジューダスだったが、エニグマの言葉で再び身体を僅かに硬直させた。
「幾ら私の〈御使い〉だろうが、先程私にした無礼の罰を受けてもらうぞ。」
「何を。それもこれも、誰のせいだと思っている?」
「坊やにあげようと思っていた“褒美”。それは、坊やが見た先程の“悪夢”についての情報だった。」
「は?」
「そして、今坊やが帰った所で娘は居ない。あの世界にな。」
「なんだと…?!」
「じゃあな?坊や。精々足掻くんだな。あの坊やを苦しめた“悪夢”を幾度と見ながら、な。」
「っ! 待てっ!!?」
透けた体はどんどん透けて行き、遂には光の粒子となって消えた。
それをほくそ笑みながら見届けたエニグマは、さっさと踵を返す。
その瞳はまたしても金色に輝いていた。
*.○。・.: * .。○・。.。:*。○。:.・。*.○。・.: * .。○・*.
「────はっ!!?」
僕はいつの間にか何処かのベットで横になっており、先程の空間ではなく、現実に戻ってきた事がすぐに分かった。
飛び起きた僕の頭元から、懐かしい泣き声が聞こえてくる。
『う、ううぅっ!!!』
「…シャル?」
振り返れば枕の向こう側に置かれた愛剣がいる。
コアクリスタルを激しく点滅させ、泣いている声がするが、それ以上何も言わない。
「はっ!? シャル!スノウはっ!?あいつは何処だ!?」
『え、え?い、いいいきなり?!』
「早く答えてくれ!」
『えっと、スノウなら……〈世界の神〉に呼ばれたから行かなくちゃいけないと言って…自分のカバンの中から像に触れて……そしたら、消えてしまって…!』
「神の所か…。そう…言うことか……。」
あの時エニグマが言っていたのは、そういう事だったのか。
この世界に居ない、というのも頷けてしまい、思わず奴に対して舌打ちが出てしまうというもの。
「…チッ。あの“神”め…!!!」
『坊ちゃん、身体……大丈夫なんですか?』
「何がだ?」
『だって…一週間目覚めなかったんですよ?』
「は…?一週間…だと…?」
まさか…そんなに経っていようとは。
そう思うと、彼女に申し訳なさが浮かんでくる。
一週間も待たせてしまったという、罪悪感も共に。
『坊ちゃんが起きない間、ずっとスノウが手を握っていたんです。…大切な人の手を温める、って……そう言ってました。』
「…あいつが……。」
彼女がそんな事を…。
ふと、手を見れば何処か温かい気がした。
…ふっ、おかしいな。
彼女の手はいつも、冷たいというのに。
『寝ずにずっと坊ちゃんの看病を引き受けてくれていて…。目の下のくまなんて…どんどん酷くなって……。』
「…すまない。奴に呼ばれていた。」
『やつ?誰のことですか?』
「エニグマだ。」
『二人して神に呼ばれるって……。何かあったんですか?』
何かあったと言えば、何かあった。
だが、基本的にあいつに呼ばれる時なんてのは〈御使い〉として他の人間の悪夢を醒ます事くらいだ。
今回、自分自身が“悪夢”を見るなんて思ってもみなかった。
「その前にひとつ聞きたい。……スノウの周りで何か変なことは起こらなかったか?」
『坊ちゃんが倒れました。』
「……それ以外でだ。」
『それ以外ですか?それ以外は特に何も…。強いて言えば、スノウの体調が心配なくらいです。』
「そうか…。」
それだけしか起こってない…?
じゃあ、あの悪夢は一体、いつ頃の未来の話なんだ…?
あいつが…〈赤眼の蜘蛛〉に入る未来なんて…起きて欲しくない。
後手に回る前に、早い所あいつと話をしておかなければ…。
「僕がエニグマに呼ばれたのは、ただ単に〈御使い〉としての役目を果たしていたに過ぎない。……スノウはいつ帰ってくると言っていた?」
『いえ、それが……何も言わずに言ってしまいまして…。ただ、呼ばれたから行かなくちゃとだけ…。』
シャルの言葉を遮る様に外から悲鳴が聞こえてくる。
急いでシャルを持ち、外に出ようとして振り返る。
あいつがいつ戻ってくるか分からないのに、カバンを投げ出しておいていい物か…。
「…持っていくか。」
彼女のカバンを手にして、僕は外に飛び出す。
そして、僕はこの時外に出たことを後悔した。
何故ならば、スノウの居ない状態で先に進む事になってしまったのだから────