第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
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僕達はアイグレッテの更に北に位置するストレイライズの森へと向かった。
昔も今も、そんなに用事のある場所ではないここ───ストレイライズの森は鬱蒼と茂る木々に囲まれた、到底人が立ち入るような場所ではない森だった。
そんな場所の案内など、誰が出来るはずもない。
…しかし、
「うっわ…。大きいね…!」
カイルが森の入り口から見上げたそれは、遥か空に何処までも伸びる高い塔だった。
それが目印となり、誰の案内も必要がないほどその塔は高すぎた。
流石に全員が呆然とその塔を見上げ続ける。
「おいおい…。俺たち、今からあれを登るのかよ…?」
「たっかい塔ね~?挑み甲斐があるじゃない。」
「ハロルド、お前…気楽でいいな…。」
「何よ。何も考えてないサルじゃないわよ?じゃあ、ここで一つ考えてみて?この塔の先に森がある、と言った精霊の話。」
「そうよね…?あの塔の先に森があるって事は…空のどこかに森があるという事なのかしら…?」
「そんなことあるかい?聞いたことないよ!」
ワクワクとしているカイルにはそんな話など通用しなかったようで、塔へ向かって走り出していた。
それを慌ててロニが追いかけ、その後をナナリーとリアラも急いで駆け出す。
「…全く。単細胞なんだから…。」
「あいつにその手の話が通用するとは思えねえけどな。」
「ま、そうよねー?」
「おい、置いてくぞ!」
「…ジューダスも、案外あの子に対して心配性よねー?」
「いつもの事だろ。俺たちも行くぞ。」
「へいへい。」
先に進んでいったジューダスを追いかける様にハロルドと修羅、海琉が走り出す。
やはり森のどこに居てもあの塔は目印となり、誰もが迷わず先へと進んでいく。
道中で魔物に出くわすこともなかったカイル達一行は、塔の前へと辿り着いていた。
ポカンと全員がその塔を見上げる中、スノウの指輪からルナの声が聞こえてくる。
『召喚士を前へ。』
「…。」
召喚士であるスノウを負ぶっているのは紛れもなくジューダスだ。
全員がジューダスに道を明け渡す様に横へと体をずらし、その中央をジューダスが堂々と通り過ぎれば、例の天高い塔の扉前まで辿り着く。
そのままジューダスが指示を待っていると、指輪から緊張が走るのがスノウには分かった。
どうやら、マクスウェルが苦手な皆の事だから自然と緊張したのだろう。
ルナ以外の精霊が緊張したのを感じ取ったスノウは右手の中指のムーンストーンを見つめる。
『召喚士よ、扉に手をあてなさい。』
「…ジューダス…、下ろして、くれるかい…?」
「…。」
しかしジューダスはそのままスノウを下ろすことなく一歩前へと進む。
そのままスノウが扉まで手が届く距離になり、スノウはすぐにお礼を言った。
そしてスノウがそっと扉に手を当てると、扉は大きな音を立てゆっくりと見せつける様に時間をかけて開いていった。
最後まで扉が開き切ると、仲間達もジューダスの横に並び、笑顔を零す。
スノウを見つめる皆の視線が優しく、スノウはそれに嬉しくなりながら今出来る精一杯の笑顔を皆に見せた。
「…行くぞ。」
仲間達は一歩を踏み出し、そして中の様子を見た。
広い空間が広がる中、目立つものと言えば中央から二階へ向けてかけられている階段くらいだ。
あとは部屋も何もない、ただのエントランスのようなものだった。
「あの階段上るしかなさそうだね。」
「気を付けろよ、カイル。こういうのって大体何かいるもんだからな。」
「何か、って…何さ?」
呆れた様子でナナリーがロニを見て言い放つ。
シャルティエが探知を開始し、ジューダスはその報告待ちだった。
そんな中、ロニは口元に手を当て、想像を徐々に膨らませていく。
「何か、だよ!こう…なんつかーな…?魔物が上から降ってきたりだなぁー?」
「……どうやらそいつの言ってることが正しいようだぞ。」
「チッ、お出ましか。」
修羅が舌打ちをして武器を構え、その横では海琉も戦闘態勢に入っていた。
その瞬間、エントランスホールに固そうな甲羅を持った大きなカニ…のようなザリガニのような魔物が落ちてきた。
「っ!こいつは…!」
「カルバレイスにいた、あの魔物じゃない?!ナナリー!」
「どうやらそのようだね…! ヒートリバーにいた"ヴェパール"だ!!」
カイルとリアラ、そしてナナリーは戦った事があったのだ。
10年後の未来へ行った際にその三人だけは別の場所からホープタウンへ目指している。
だからその魔物を見てすぐに気付いたのだ。
「こいつの弱点はなんだ?!」
「…っ、ジューダス…、こいつは…水属性、が…弱点…」
「前の奴と同じなら、水属性だけど…!出てくる泡が厄介なんだ!皆、毒になっちまわないようにね!!」
「うへぇ…!」
「どーせ、ただのカニでしょ?簡単にふっとばしちゃうわよ!___インブレイスエンド!」
「___スプラッシュ!」
ハロルドとナナリーの水属性晶術が炸裂すると、いきなりヴェパールは光り輝き、スピリッツブラスターの状態へと変化した。
それに全員が驚き、防御の姿勢を取る。
「____っ、フォースフィールド!」
絶対防壁の魔法を使ったスノウへ、お礼の言葉が飛び交う。
その瞬間、敵からの攻撃でヴォルカニックレイが発動する。
フォースフィールド内の仲間に目掛けて放たれた晶術は、以前カイル達が戦ったものとは比べ物にならない程強くなっていた。
しかし流石にその攻撃を貫通させることなく、絶対障壁は崩れ落ちずそこに在り続けた。
敵がようやくスピリッツブラスター状態を解除すると近接攻撃担当の仲間たちが一斉に障壁を潜り抜けて攻撃しに行く。
「こい、つは…ヴォルカニックレイだけ…詠唱が、早い…。気を付けない、と…」
「お前ら!こいつの詠唱は早い!無理して突っ込んでいくな!可能なら晶術だけで行け!!」
「「「了解!!!」」」
「あと、…あのハサミにも、気を付けて…!」
「…カイル、ロニ!腕のハサミを破壊できるか?!」
「「分かった!」」
「俺も忘れて貰っちゃ、困るなっ!?」
修羅が勢いを増して攻撃をしていく。
流石に最初のスピリッツブラスターで侮れない相手だと分かったのか、修羅はいつもよりも本気を出していた。
海琉もそれに合わせて、双剣を操り、攻撃を仕掛けていく。
「___アクアスパイク!そのまま…!フリーズハンター!!」
リアラが追加晶術を決め、相手に大ダメージを与えていく。
そこへハロルドの晶術も炸裂する。
「___スプラッシュ!…からのー?クラッシュガスト!!!」
「扇氷閃!」
「空破絶風撃!」
ジューダスはスノウを抱えている分、晶術で対抗する。
そしてスノウも惜しまず、皆へと支援を贈る。
「___エイドオール…!」
「___ネガティブゲイト!……イービルスフィア!」
闇属性で攻めたジューダスに、シャルティエもここぞとばかりに張り切っている。
全員が弱点を突きながら戦っていたが、再びヴェパールのスピリッツブラスターが発動し、スノウが慌てて絶対障壁を詠唱する。
「フォースフィールド!」
「「「「ありがとう!/サンキューな!」」」」
「……強い…!」
「ふん。こんな魔物、〈赤眼の蜘蛛〉の奴らに比べたら弱いものだろう?」
「…!…ふふ、そうだね…!!___乾坤貫け、水霊の弾丸…!ディフュージョナルドライヴ!!」
スピリッツブラスター状態のヴェパールへスノウが水属性の魔法を炸裂させた。
すぐにカウンター技として敵のフレイムドライヴがやってくるが、すぐにジューダスが機転を利かせてくれて回避してくれる。
それにスノウが笑顔で応え、更に魔法を使用する。
「___蒼溟たる波涛よ、旋渦となりて、厄を飲み込め…!タイダルウェイブ!!」
「詠唱が長いぞ!スノウ!」
「ふふ、ふ…。これくらいは、我慢して、よね…!」
二人して笑いながらそう言葉を交わす。
水属性の魔法が連続で襲い、スピリッツブラスター状態が消えた後、再び近接組が攻撃を仕掛けに行く。
そのうち、敵が泡となって消えていくのを皆で声にあげながら不思議な顔で見遣る。
…取り敢えず、倒せたってことでいいのか。
「うっ、」
「大丈夫か?」
「吐きそう…。」
「…今すぐ床におろしてやろうか?」
「ごめん、って…」
すぐにジューダスがスノウの足に差し入れていた手を離す。
すると急にされたものだからずり落ちそうになり、しかし、ジューダスがすぐに助けてくれる。
背負い直してくれる彼へとスノウが感謝を伝えれば、鼻で返事をされた。
仕返しとばかりにスノウが僅かに足をジューダスにしがみつかせると、目を丸くさせた後ジューダスの顔が少し赤くなる。
そして俯いて仲間に赤くなった顔を見せない様にすれば、仲間達は戦闘の余韻でそれどころではないのか、向こうでハイタッチをしていた。
あの修羅にまでハイタッチを強要していたので、こちらに気付く様子もない。
「はぁ…はぁ…」
「…!」
呼吸が荒くなったスノウにジューダスが気付き、スノウの顔を見ようとしたが、その前にスノウがジューダスの肩に埋もれる様に顔を隠した。
首筋に当たる呼吸が熱く、具合が悪そうなことは一目瞭然だった。
それにジューダスが声を張り上げ、仲間達に先に進むよう伝える。
ジューダスのその声に全員がスノウへと振り返ると、呼吸を荒げて、ジューダスの肩に顔を埋めていた。
そんなものを見てしまえば、仲間達の心配性は最高潮に達し、先に進んでいく。
2階へと上がっていくと、急に何かが外れるような大きな音がした。
それに仲間達は首を傾げさせる。
「さっきの音って…?」
「何かの罠が作動した音じゃない?」
「「「え?」」」
ハロルドが事無げに言うさまに、全員がハロルドを愕然と見る。
そして、
…ヒュンッ!!!
カイルとロニの横を鋭い何かが過ぎ去っていき、壁に突き刺さる。
何だったのか、と振り返るより早く、他の鋭い何かがカイル達に飛んできてすごい恰好をしながら二人はそれを避けていく。
「矢じゃないか!」
「急いで先に進みましょう!?」
ナナリーとリアラが慌てて先へと進んでいき、それに追随するようにハロルドとジューダスがカイル達を横切る。
修羅は飛んでくる矢を武器で壊しながら先へと進んでいく。
海琉も修羅を見習い、同じく武器を使って上手く罠を回避していった。
「「待ってよ~!!/待ってくれよ~!」」
二人も懸命に罠を回避しながら先へと進む。
二階へ上がりきってもまだ罠は作動し続けている。
流石に全員の息が上がる中、スノウが周りを見渡し、罠の場所を特定する。
ジューダスに背負われたまま、スノウは相棒を銃に変換させて、罠が作動する機械を次々と壊していく。
途端に止んだ矢の雨に仲間達が足を止めたが、スノウは足を止めない様に伝える。
「皆、ごめんけど…もう少し頑張って、走って、くれ…!」
「「「「え?」」」」
「止まったら、別の罠が…!」
すると仲間達の後ろから何か引き摺る音が響いてくる。
それに全員が顔を青くさせ、振り返る。
すると古典的ではあるが、大きな岩が仲間達へ向かって転がってきていた。
慌てて走り出した仲間達は三階への階段を見つけ、急いで駆け上がっていく。
流石にそこまで岩がついてくるはずもなく、三階への踊り場で全員が呼吸を整える。
「はぁ!はぁ!なん、なんだよ…!あの階は!!」
「罠ばっかりだったわねー。」
「はぁ、気楽で、いいな…!」
汗を掻いて、拭う皆を見てスノウが申し訳なさそうにする。
しかしジューダスはすぐにそんなスノウへとお礼を伝えて、気に止まない様にしてあげていた。
「良く分かったな、あの罠の場所。」
「等間隔で、置いてあったからね…。」
「さっすが、スノウさまさまだぜ…。」
「このまま三階に行ったら、今度は一体なにがあるのやら…。」
ナナリーが階段の先を見ようとすると、その顔は徐々に引き攣っていく。
それに修羅とハロルドが一緒になって三階へと目を向ける。
「あら。獣じゃない。」
「ありゃあ…なんだっけ…?なんか、強かったことは知ってんだよな…?」
修羅が頭を悩ませるその相手が見たかったのか、ジューダスも移動し、三階の先へと視線を向ける。
当然、負ぶられているスノウもその先を見る。
そこには原作のデスティニー2でも中々の強敵であった"グラシャラボラス"が居た。
それに二人して顔を顰めさせる。
「…げ、」
「…? お前、あの時居なかっただろう?」
「いや、まぁ、うん。そうなんだけど…ね…?」
「スノウがそんな反応するって事は…かなりヤバい奴なんだろうな。」
修羅が興味深そうに三階にいる敵に視線を送る。
それを隣では、涼しい顔でハロルドが敵を見つめる。
しかしながら、ここまで休憩なしでやってきた仲間達は一応、ここで休憩を取る事にした。
「はぁ…はぁ…」
「辛そうね…?スノウ。」
「まぁ、気持ち悪いとか嘔気って、耐え難い苦しみがあるからねぇ…。」
ジューダスの背中ではなく、下ろしてもらい横たわるスノウを女性陣が不安そうに見つめる。
男性陣は上階に居る魔物についての作戦会議をしていた。
「あいつは防御だけは低い。近接系で攻めれる奴は攻めていけ。」
「「うん。/おう。」」
「後半戦が特に厄介だ。……正直、スノウを抱えての戦闘は無謀だと思っている。敵は後半になると後衛組を見境なく攻撃してくるからな。攻撃への予備動作も短い。」
「確かに…それを聞いたら、スノウを抱えてだと普通にダメージ喰らいそうだな。スノウが万全じゃない事を考えて、攻撃の当たらない場所で休ませておいた方が賢明かもな。」
「じゃあ、スノウのやつは壁側に置いておくとして…。後の後衛組がやられたら回復できる奴なんて限られてくるぜ?俺と…」
「俺も多少使える。」
ロニの言葉に修羅が手を上げて、主張する。
ジューダスもヒールが使えるため、手を挙げれば以外にも回復使いは居る事に気がつく。
しかし最初からやられる話をするのも縁起が悪い。
「後は何かあるか?」
「スノウにもちょっくら聞いてくる。」
修羅が重い腰をあげ、横たわっているスノウへと近づきグラシャラボラス戦での注意点を聞き出す。
それに頷いていた修羅は立ち上がり、男性陣の元へと戻っていく。
「スナイパーストームっつー、後衛だけを攻撃してくる攻撃があるらしいんだが…覚えがあるのか?」
「「「???」」」
「…ちょっと待ってな。もう一回聞いてくる。」
「つーか、こっちに呼び寄せたらどうだ…?体調次第だがよ?」
修羅はロニの言葉に頷き、スノウの元へと行く。
指を指しながら説明すれば、頑張って起き上がったスノウ。
それに男性陣から「おお」という声が上がる。
しかし歩こうとすれば膝をつくので、修羅がそのまま抱えてこちらにやってきた。
それと同時に女性陣もこちらにやってきて作戦会議に参加することに。
「…体力が50%を切ると……"スナイパーストーム"ってやつを打ってくるんだ…。」
「それってどんなのだ?」
「翼をバサッ…とやって、後衛組に強力な風を巻き上げる攻撃…だね…?」
「「あぁ…?」」
「そういえば、そんなものもやっていたな。」
「あの風、逃げられないから攻撃受けちゃうのよね…?」
「そんなに強い攻撃なの?」
「早いから、逃げられないんだよ。すぐに風が地面から巻き上がって攻撃してくるんだよね…。」
「回避はほぼ無理、だと思う…。現実的じゃない…。あれを避けるのは仙人とかでも…苦労、すると思う…。」
後衛組だからこそ分かる攻撃なのだろう。
現に、今、リアラとナナリーだけは不安そうな顔をしているし、スノウも嫌そうな顔をしている。
「後は…麻痺に、気を付けて…」
「あぁ!それ、オレ喰らったことある!」
「あるんじゃねえかよ!」
「なんか分かんないけどさ!あいつの攻撃、麻痺するやつがあるんだよ!!」
「俺は無いな…?」
「僕もないぞ。」
視界の隅で修羅が海琉にパラライズチェックを渡しているのが見える。
それをカイルが羨ましそうに見つめ、修羅が目を瞬かせる。
「あんたら、パラライズチェック持ってないのか?」
「「「「だって、スノウがいつも治してくれてたから。」」」」
「…ふっ。」
思わぬ伏兵が居たものだ。と修羅が顔を顰めさせながらスノウを見る。
それに対してスノウも困った顔で修羅を見つめる。
「とにかくスノウ、お前は戦闘に参加するな。すぐに殺られるぞ。」
「ぅぐ…。否定はできない…。」
「でもよ?状態異常回復技はスノウしか持ってないぜ?」
「その時は、遠くからでも、打てるから…。」
「じゃあ、安心だな。」
「お前ら…極力、スノウの手を煩わせるな。何のためにここに来たと思っている。」
「スノウを治すためだろ?」
「でもそうだよね!スノウも辛そうだし、休憩してた方がいいって!」
「ありがとう、カイル…。」
作戦会議もそこそこに、各自休憩することにした。
ナナリーが簡易的な料理を作ってくれたので、全員でそれを堪能し、そして各々休憩に入る。
スノウは気絶するように眠り、カイルとロニは踊り場にある絵画を見て何かを話していたり、修羅と海琉は次の戦闘のための準備運動だと体を動かしていた。
そんな中、ジューダスはスノウの傍に居て外套を掛けてあげていた。
『やっぱり、スノウは物知りですね。グラシャラボラスなんて敵、一々覚えてませんよ。』
「そうだな。こいつも見た瞬間嫌がっていたし、覚えるくらい相当嫌な敵なんだろうな。」
『でも、こんな調子じゃあ…戦闘には参加できそうにないですね…。』
「さっきも言ったが、こいつに戦闘させるな。何のために僕達はここに来た。」
『やっぱ、スノウが居ると期待しちゃうじゃないですか。スノウ自体、強いですからね。』
「否定はせん。…だが最近、こいつは調子が悪すぎるんだから少しでも休ませてやれ。」
寝息を立てるスノウの頭を撫でるジューダスの瞳は優しく、それをシャルティエも見て嬉しそうにコアクリスタルを光らせた。
そんな時、
「ちょっと、ジューダス。」
「どうした。」
ハロルドがジューダスに話しかけてきて、それに普通に受け答えするジューダスだったが、シャルティエに至ってはすぐにコアクリスタルを閉じてしまった。
それを見たジューダスがそのままハロルドを見上げれば、ハロルドは何かを要求するように手をジューダスの方へと出していた。
流石に何も言われずにそれをされ、ジューダスも戸惑い気味に声を上げる。
「………なんだ、この手は。」
「分っかんない?シャルティエを貸してって言ってんの。」
『へっ?!い、嫌ですよ!! 坊ちゃん、絶対に渡さ───』
「ほら、これでいいだろう?」
『坊ちゃんっ?!!』
間髪入れずにジューダスはシャルティエを渡す。
するとニヤリとハロルドが笑みを浮かべ、シャルティエを見下ろす。
それに冷や汗を掻いたシャルティエは、コアクリスタルを強制的にシャットダウンさせていた。
「あら、失礼ねー?あんたの様子を見るだけじゃない。」
『──────』
「折角、あの子が彗星エネルギーをシャルティエに吹き込んでくれたんだもの。解剖しなくちゃ気が収まんないわよ。」
「……しかし、何故今なんだ。もっと早く言っておけば渡したものを…。」
「やろうとしたらアンタがどっかに行くからでしょ?」
「…。」
聞かなかったことにしたジューダスは、ハロルドに背を向け、スノウの様子を見る。
それに満足したハロルドは、早速手元にある小型の機械を使い、実験を開始させていた。
「……。(あちゃー…。こりゃあ、まずったかなぁ…?)」
実験をしていたハロルドが密かに困惑していたのは、ここに居た誰も知る由もなかった。