第一章・第1幕【18年後の世界~未来から戻ってきた後の現代まで】
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今頃ジューダスは彼らと接触しただろうか。
図書館を出た私は、ストレイライズ大神殿へと足を向けていた。
参拝の日ではないからか参拝者は少なく、神殿内ももぬけの殻だ。
多少の警備があってもよかろうに全くその気配もない。
「___。」
声が出ない事を確認後、庭のような所へ向かうとジューダスが彼らと接触し仲間になる場面であった。
あぁ、そうだ。これが本当のシナリオ。
私など不要の産物なのだ。
それに少しばかり自嘲すると、物語はどんどん進んでいく。
「……もう1人、連れていきたい奴がいる。」
「え、だれだれ?」
カイルが興味深そうに目を輝かせジューダスを見る。それにふっと笑ったジューダスは一度口を噤む。
……おかしい。
ジューダスがこの場面で他の人を連れていきたいなどと言うはずがないのに。
一体、誰を連れていきたいんだ?
〈赤眼の蜘蛛〉といい、この世界に居ないはずのジューダスといい……(原作ではジューダスはいるが……この世界では彼は本当は幸せに暮らしていたはずなのに。)シナリオなんてクソ喰らえな状態に愚痴を零したくなるのも無理はないと思う。
「スノウ。……彼女を連れていきたい。」
「!!」
声が出ない事が幸いした。
思わず疑問を口に出しそうになってしまった。
危ない危ない…!
「え、スノウ!?ジューダス、スノウを知ってるの?!」
「なんでこんな奴がスノウを知ってるんだよ?……まさか、お前……スノウのストーカーか?!」
「馬鹿な。」
「ねぇ、カイル。スノウってだれ?」
「えっとね、学者さんなんだ!眼鏡をかけてすっごい頭良さそうでさ!リアラも見たらきっとそう思うよ!!」
「えっと、そうなの?」
困った顔のリアラ……可愛いな。
自前のオタクが発動しそうになり、慌てて胸を押さえる。
いや、でも!一番の推しは勿論リオン、君だからね!!
そんな誰も聞いていない事を心の中で誓えば、移動を開始する彼ら。
「スノウは恐らく図書館にいるはずだ。」
「学者さんだもんね!行ってみよう!皆!」
まずい……ここにいることがバレたら何を言われるか……。
瞬時にテレポートを使い、図書館へと身を滑らせる。
そしてあの大量の本棚を見上げ、本を探している振りをしておく。
これで完璧だろう。
本のひとつでも胸に抱えていればそれらしく見えるかもしれない。
フッと自嘲を零し本棚を見上げると、気になる本が見える。
『モネ・エルピスの真実』と書かれた本だ。
私の名前が書かれている本など今まで一冊も存在しなかったのに、目に付いてしまえば気になると言うもの。
適当にページを捲っているとやはりくだらない事ばかり書かれており、推論もいい所だ。
ただ、私は私の悲願を叶えたに過ぎない。
こんな……殊勝なことを思ったつもりは__
「スノウ」
「_!」
本当に声が出なくて良かったと思ったよ。
思わず飛び上がり本を閉じた私は慌てて声を掛けられた方を見る。
ジューダスが私の肩に手を置き、呼んでいたようだ。
到着が早くないかな?!
なんてツッコミ入れず、“考古学者のスノウ”へと顔を変える。
「何を読んでいたんだ?」
見せても気になっただけと言えば大丈夫かと頭を働かせ、素直に本を見せる。
すると題名を見て目を見張った彼はすぐに本のページを捲り中を見るが、見たかった内容ではなかったのか明らかに肩を落とした。
「……何故この本を?」
「___」
喉に触れアピールをすると、すまないと謝られたので首を横に振っておく。
カバンからノートを出しペンを走らせ文字を書く。
《ジューダスさんがあまりにも私をモネさんと仰るので気になって。》
『だって君はモネ……、ってあれ?モネの気配が…?』
掛かったか。
修羅に戻してもらったオーラだから、シャルティエが私の気配を辿れないのも無理はない。
困惑する彼に僅かにほくそ笑む。
「??……シャル?」
『おかしい…、あんなに探知してきたモネの気配が分かりません……!!こんなこと1度だって無かったのに!!?』
混乱している彼には悪いが、ジューダスへこちらから話し掛けると、その表情を変えずこちらを向く。
《先日は倒れてしまい申し訳ありませんでした。ご迷惑かけてしまいまして。》
「……いや、大丈夫だ。お前は、体の方は大丈夫なのか?」
《この通り、元気になりました。徹夜がどうも響いたみたいです。》
「無理はするな。」
心底心配そうにしてくれる彼に胸が暖かくなる。
誰かに心配してもらえるって本当に嬉しいものだな、と考えていると他から声が聞こえる。
「あ!スノウ!久しぶり!なんでうちに来てくれなかったの?!」
「か、カイル…!図書館では静かにしろって…!」
カイルとロニだ。後ろからはリアラも付いてきており、ひょこっとカイルの肩越しから顔を出していた。
一気に賑やかになったことで私が笑っているとジューダスも微笑んでいるのが見えた。
何故彼はあんなに優しい顔つきをしているんだろう?
「ねぇ、スノウ!一緒に旅をしよう?」
「いきなりすぎて悪いな、スノウ。ジューダスのやつがどうしてもって……」
「僕だけじゃないだろう?」
「ねぇねぇ!学者さんなら色んな所に行くんでしょ?なら一緒に行こうよ!」
次々と矢継ぎ早に話が進んでいくが彼らに一つだけ重要な事を伝えていないことに気付く。
喉を押さえ困った顔をするとロニとリアラだけが分かったようで息を呑んだ。
カイルは首を傾げ「のど…?」と必死に頭を働かせている。
「風邪か?それとも、なんかの病気か?!」
「回復じゃ、治らないわよね…?」
それに首を振り苦笑いをする。
するとカイルが焦れったいとばかりに答えを急かす。
「ねぇ皆、知ってるんなら教えてよ!」
「お前……空気読めよ……」
「どういうことだ?」
「あ?ジューダスはスノウを知ってるなら分かるだろ?急に声が出なくなるなんて、なんかの病気じゃ……」
「え?!!スノウ、声が出なくなっちゃったの?!!」
「遅すぎだろ?!」
その言葉にジューダスが眉間に皺を寄せた。
どういうことだ、とこちらを見る彼の双眸は何処か鋭い。
ノートに文字を書いてカイルに見せると心配そうに見てくるので大丈夫だと笑っておいた。
《急に声が出なくなったので、困っていたのです。申し訳ありません。》
「スノウのせいじゃないよ!!……でも大変だね。あんなにいい声だったのに……勿体ないよ!お医者さんに見せよう?」
《医者からは匙を投げられてしまいまして。ですからこれで良いのです。》
「それじゃあ……ずっとこのままって事か?そりゃあ不便すぎるだろ?!」
「旅先で医者を頼りつつ喉を治すっていうのもいいかもしれないわね。」
「そうだよ、リアラ!その考えすっごい良いよ!!そうしよう!スノウ!」
私の手を取り、決まり!とばかりに握った手を上下に振る彼に笑いを滲ませる。
やはり子供は元気が一番だ、なんて年寄りめいたことを思っているとロニもリアラも嬉しそうに笑った。
「私、リアラって言うの。スノウ、よね?よろしく。」
《よろしくお願いします、リアラさん》
「さん付けなんていらないわ。そのままリアラでいいわよ?」
《それじゃあ、リアラ。》
「うん、スノウ。」
「俺も呼び捨てでいいぜ?」
「あ、皆ずるいよ!!俺も俺も!」
「……僕も。」
小声でそういう彼に笑いを零し、皆の前で頷いた。
皆の近くにいて、そして彼らを守る。
それがこの時代での私の成し遂げるべき目的だから。
〈赤眼の蜘蛛〉……。
彼らの思い通りにはさせない…!!