第一章・第3幕【天地戦争時代後の現代~原作最期まで】
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___研究所を囲う工業と温泉の街〈レスターシティ〉の研究所
スノウによって苦しめられたアーサーは、仲間達により回収され治療を施されていた。
例の夢を見せられる場所……ではなく、ちゃんと現代のレスターシティへと戻った〈赤眼の蜘蛛〉の幹部たち───そこで、アーサーの治療をしていた。
「うっ、くはっ…!!!」
「…苦しそうねー…?アーサー。」
「まぁ、聞くところによると銃弾をこやつの心臓に撃ったと聞く。普通なら死んでると我は思うがな?」
玄を相手に、花恋が不安そうにアーサーを見る。
そのアーサーは未だに心臓を押さえ苦しそうにしており、息も絶え絶えに、時折痛みに耐えるかのように体を蹲らせていたり、反対を向いたりを繰り返していた。
そんなアーサーを見たことが無かった花恋はアーサーの背中を優しく撫でていた。
「アーサー?大丈夫ー?」
「うがっ、かはっ…!」
「救護班に任せておけば大丈夫だろう。後はこやつが回復するのを待つだけよ。」
しかし結局アーサーが完全回復したのは1週間経ってからだった。
救護班でも手を焼いた今回の痛みの原因は"マナ"だったからだ。
最終的にセルリアンが大好きな碧のマナをアーサーから思う存分吸い取り、大事には至らなかったということだ。
…まぁ、〈星詠み人〉にとって大事なマナを吸い取られたアーサーが回復するのに時間が掛かった訳だが…。
「───はぁぁぁぁぁ…。」
「珍しいわねー?アーサーが人前でそんな大きなためいき吐くなんて。」
「流石にあれには苦しめられましたね…。まさか、多量のマナを含んだ銃だったとは……完全に油断しましたよ。」
「マナって受けたらそんなに苦しいものなの?」
「いえ、通常であれば苦しいものでは無く、効能は人によりますが…概ね心地よいもののはずです。…ですがそれは自分の持つマナと同じものであれば、の話です。」
「???」
「ボクたちの持つマナは所謂〈赤のマナ〉と呼ばれているものだそうです。」
「へえ?それで?」
「彼女…スノウの持つマナは特殊でして。あれは〈碧のマナ〉と呼ばれる特異性のあるマナなんだそうです。私の神が言っていたので間違いはないでしょう。」
「その〈碧のマナ〉ってやつが苦しい原因なの?」
「まぁ、私達からするとそうですね。ただ…彼女のマナが混在しているとそうでもなくなるみたいですよ?」
「????????」
「……分かってないですね?」
「そりゃあ、そんな難しいこと、私にはわっかんないわよ。」
ひっそりと溜息を吐いたアーサーだったが、解説する気はないようで仕事に戻ろうとしていた。
そんなアーサーを心配そうに見つめる花恋に、アーサーが声を掛ける。
「何かありましたか?そんな心配そうな顔をしてボクを見るという事は何かあるのでしょう?」
「だって、あんなに苦しんでたのにもう仕事しちゃうわけ~?」
「それはそれ、これはこれですよ。ボクが休んでいる間に仕事が山ほど溜まっているんですから。」
机に向かうアーサーの前で花恋が机に顎を乗せ、それを見守った。
それを気にする様子もなく、アーサーはひたすら仕事に打ち込んでいった。
しかしそんな穏やかな時間もすぐに激しい音と共に現れた人物によってかき消されてしまった。
「「おまちどうさま~~~。」」
「ん…?来ましたね。」
「この人たち、誰?」
花恋が不満そうに顔を歪め、入ってきた騒がしい二人組を見遣る。
その二人組は、顔も見た目も服装も、見るからに全く一緒の双子だった。
身長の低い子供たちを見下ろしながら、腰に手を当てた花恋は威圧的に双子を見据えていた。
しかしそんな双子も花恋のその様子を見て怖がる様子など全く見せず、寧ろ好戦的に独特な笑いを繰り返し、その赤い瞳を細めて花恋を見上げていた。
「キシシシ…!」
「クススス…!」
「で、誰よ、この子たち。」
アーサーを振り返り、花恋が不満たらたらにそう口にするとアーサーは笑いながら花恋を見る。
…どうやら、彼女的にはあの双子が扉を激しく開けたのがお気に召さないようだ。自分のことを棚に上げてはいるが……言わないでおこう。
「彼らは〈赤眼の蜘蛛〉の新たな幹部ですよ。」
「……お初にお目にかかりマス。ぼくは飛龍と言いマス。」
「……お初にお目にかかりマス。あたしは麗花と呼びマス。」
「「ドーゾ、お見知りおきを。」」
片言の言葉で挨拶された花恋は二人を見比べる。
あまりにも瓜ふたつで見分けがつかないのだ。
……名前的に男女の筈なのに、だ。
格好からして地球で言う中国系の人なのだろうことが分かるくらい、双子の格好はチャイナ系の服をゆったりと着こなしていた。
それと同時に花恋に対し、敵意を感じる2つの赤い目。
花恋が双子を見ては顔を顰めさせるのには充分な理由であった。
「…………ねぇ、アーサー?」
「なんです?」
「私、この子達嫌いだわ。腹が立つ。」
「キシシシッ…!」
「クスススッ…!」
口元に手をやり、独特な笑いをしたあと、双子はお互いに頬を引っ付けては手を握り合い、ニヤリと挑戦的な笑みを浮かべて花恋を見つめた。
「この人、弱いネ。」
「見た感じでも、弱いと分かるじゃないカ。麗花。」
「クスススッ…!!! だって、言わないと分からないデショ?飛龍?」
「……ぶち殺してあげようかしら。」
早速喧嘩に発展しそうな雰囲気に、アーサーが溜息を吐くと困った顔で三人を見る。
ファーストインプレッションという奴は、どうやらお互いに悪い気を抱いたらしいことが窺える。
どうしたものか、とそのまま三人を静かに見遣ればどうやら双子は自分に何か用があるらしい。
花恋の事を見向きもせず、こちらに近付いてきた。
「アーサー様。ぼくたちの、〈赤眼の蜘蛛〉幹部への襲名、実に有り難き幸セ……。」
「あたし達はこれより、貴方様の配下として身を粉にして働かせて頂きマス。」
「えぇ。期待していますよ、二人とも。」
「「ハイ!」」
嬉しそうに顔を綻ばせる小さな双子にアーサーが笑顔を向ければ、その双子の後ろで面白くない、とばかりに花恋が出ていくのが見える。
……後で、何か甘いものでも持っていくとしますか。
「貴方たち、自分の敵は分かっていますね?そして何を成し遂げなければならないのか…も。」
「勿論でございマス。」
「あたし達の敵は〈赤眼の蜘蛛〉を裏切った者達への制裁。そして、抹殺対象者の抹殺任務遂行。」
「「後は、“お姫様”をアーサー様に献上するコト。」」
「クックック…。えぇ、良いでしょう。貴方達を選んだボクの目に狂いはなかった…ということを証明してみせなさい。」
「「ハイ!!」」
元気よく返事をした双子は自分の前では礼儀正しくお辞儀をして扉の向こうへと消えていく。
……兎角、〈赤眼の蜘蛛〉の組織内でも問題児であったあの双子ならきっとやり遂げてくれるでしょう。
そう思うことにして仕事に向き直ったアーサーだったが、ふとその手を止めると立ち上がり何処かへと消えてしまった。
その足取りはちゃんと目的のあるような足取りで、目的地へと向かっていた。
───恐らく、彼女のご機嫌取りをしに行ったことだろう。彼女は大分、機嫌を損ねていたのだから。
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スノウ達が原作通り、千年前に時間移動したと聞いたアーサーは次の作戦を練るべく、ウィリアム博士の元へと訪ねていた。
暫くはスノウへ宣言した通り、〈星詠み人〉の為の楽園作りに専念したかったが……、なんと言っても、自分の神でもある“狂気の神”がスノウといつの間にか出会っては気に入っており、更に狂気の神は「碧のマナの御使いが欲しい」、「碧のマナの御使いが欲しい」───と、そう毎日言ってきて煩いのだ。
……こんな事を思っていては、〈御使い〉失格でしょうが。
そんな事もあり、楽園作りの傍ら、スノウ捕獲作戦を練らなければならなくなってしまったのだ。
しかも幸先悪い事に、先日の一件で完全に花恋がご機嫌を損ねてしまっていた。
甘い物を持って行ったものの、どうやらあの双子に色々言われたりしている様で、最近ではアーサーの執務室にも来なくなっていた。
いつも居る者がいつもの場所に居ないと調子が狂ってしまい、アーサーもこれには手を焼いていた。
「乙女心というのは難しいものですねぇ…?」
「なんじゃ、遂にお主の口から恋愛相談か?」
ウィリアム博士が怪訝な顔でアーサーの顔を見る。
しかも、その顔はありありと「正気か?」といった顔をしているのも目に見て取れる。
「違いますよ。部下の話です。」
「小娘のことか?あの小娘なら、最近はレスターシティではなく別の拠点であの性格を振り撒いては方方に迷惑かけておるようじゃぞ。」
「……どうりで。」
どうりで来ないと思いました…。
肩を竦めさせたアーサーを見て、ウィリアム博士はニヤリと笑うと椅子をくるりと回転させアーサーの方へと体を向けた。
「んで?お主の話は、そんな女の尻を追い掛ける話で終わりじゃないのだろう?」
「えぇ、勿論です。暫くセルリアンを借りたいと思っていましてね。それで貴方に伺いを立てに来たんですよ。」
「あ?セルリアンをか?」
不思議そうな顔で聞いていた博士の元へ、調度話の中心人物が現れ、博士へと抱き着く。
それに構うことなく博士はアーサーを見て、直ぐに承諾した。
「何に使うつもりか分からんが、別にええぞい。この間、お主から別のマナを貰ってご機嫌みたいじゃからな。」
「甘くて美味しいの…!」
「そういえばそうでしたね。あの時は助かりましたよ。……まさか、あんな純度の高い〈碧のマナ〉を受けるとは思っても見ませんでしたが。」
「お主がいう〈赤のマナ〉の精製はこの間試作段階で出来上がっておる。後で見てみるがよい。じゃが、精製出来る量が少ないのが難点じゃな。これからの課題はどう〈赤のマナ〉を増やせるか、よ。……まぁ、〈赤のマナ〉は〈赤眼の蜘蛛〉の組織員ならそこら中持っていて希少性など皆無じゃが…あの男か女か分からんやつのマナは貴重だからのぉ。」
「フッフッフ。そうですね。彼女のマナは大変珍しく、この世界に無くてはならないマナらしいですから。」
「〈碧のマナ〉は世界を癒やし、潤すのだったかの?お主らは揃いも揃って面倒なことを引き受けておるの。」
呆れた博士は抱き着いていたセルリアンをずいとアーサー側にやり、机の上にあった紙を顔の前に持っていった。
「儂の研究結果によれば、〈碧のマナ〉と〈赤のマナ〉の相性は悪い。あんなもの摂取すれば毒と同等物じゃ。しかも儂らからすると、かなりの猛毒じゃよ。」
どうやらその紙には、マナについての研究成果が書かれているようで、博士は顔をこちらに向けずに紙だけを見て話す。
アーサーもそれを見ながら研究の成果を聞き逃すことなく聞き入れる。
「つまり、その〈碧のマナ〉の持ち主の術を食らえば儂らでは一溜まりもないということじゃ。そのまた逆も然りじゃがな?」
「えぇ、神から聞いていた通りですねぇ?流石ですよ、ウィリアム博士。」
「全く……マナの事でこんなに研究を費やすとは思わなんぞ。セルリアンの研究も今はひと段落してるからいいものを…。」
「では、そんなウィリアム博士に面白い話をしましょうか。」
「ほう?」
紙を机の上に投げ捨て、椅子の背もたれにもたれかかった博士はアーサーの持ち出した話を興味津々に聞いている。
セルリアンはどうしていいのか分からず、そのままでいたが、博士の所に近寄ろうとして手で制されたので立ち止まってしまった。
「彼女……スノウ・エルピスのマナは単純な〈碧のマナ〉の持ち主ではありません。その中にはまた特殊なマナを持ち合わせ、我々でも危害のないマナへと変換させている。───貴方なら、これを聞いて俄然やる気を出すでしょう?」
「……もっと詳しく聞こう。」
目を見開き、完全に前のめりになった博士はニヤニヤと怪しい笑みを浮かべている。
所謂“愉しい”、“面白い”といった顔をしていた。
それにアーサーもほくそ笑み、ウィリアム博士へと説明をする。
そして最終的にスノウを捕まえる話へと持っていったのだ。
この博士、やる気が出ないとこちらの作戦に参加などしてくれないのだから。
「ゲヘヘヘ…!! 最高の逸材じゃ…!そのマナ…研究したくなって来たではないか!!」
「貴方ならそう言ってくれると思ってましたよ。ではスノウ・エルピスの捕縛を手伝ってくださいますね?」
「あぁ!惜しみなく儂の研究を使いがよい!して、どうやって捕えるつもりじゃ?アテでもあるのか?」
「えぇ、以前ハイデルベルグで使った結界を使おうと思っています。」
「あれか?」
結界を使い、その街や風景に似た仮想世界を作り出す機械があったのをウィリアム博士は頭の片隅で思い出した。
急ピッチで仕上げたものだったから、博士の頭には朧げにしか覚えていない。
「アレは…どこにやったのじゃったか。」
「そこらに投げて置くからですよ。」
「まぁよい。他の研究者どもに探させるわい。」
「…くれぐれも殺さないで下さいよ?人材不足なんですから。」
「分かっとるわい。今は近くの研究対象より、そのマナの持ち主の方が解剖したいわ!!」
「フッフッフ。流石ですね、ウィリアム博士。欲に忠実なことで。」
「それはお主もじゃろうが。それに〈赤眼の蜘蛛〉なら誰もじゃろうがい。」
じとりとした目を向けられ、アーサーが喉奥で笑うとようやく博士が重い腰を上げて研究物を探しに行こうとする。
それを見送り、そしてアーサーは目の前のセルリアンの腕を掴んだ。
「貴方にはこちらを手伝ってもらいますよ。」
「????」
「スノウ・エルピスの捕縛を…ねぇ?」
「!!」
無言で頷いたセルリアンはアーサーに付き従う。
そして、アーサー達は大掛かりな仕掛けを作り出し、カイル達が現代に戻ってくるのを待ち続けた。
途中、スノウが消えるというアクシデントはあったものの、それを問題なくアーサーが別の采配を下したお陰で〈赤眼の蜘蛛〉の組織員達は来たる日まで訓練を重ねた。
そうして、念願は叶ったのだ。
───果たして、スノウは誰の手に渡るのだろう。
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幕間のお話でした。
結局、〈赤眼の蜘蛛〉は新たな仲間である麗花と飛龍を幹部とした訳ですが……果たして彼らが〈赤眼の蜘蛛〉に勝利をもたらすかは……今後の物語で分かってきます。
彼らは子供の双子で、チャイナ系の服をゆったりと着ている感じなんですね。
まだ幼いが故に、顔立ちはまったく一緒なんです。
いつか、スノウを気にして自分たちで髪型とか気にすると可愛らしいですよね。
一応裏設定で一卵性双子にしてるので、行動は一緒になると思います。
抹殺対象者が二人抜けた事で補充も二人……の予定でしたが、今の所、他に新たな仲間を入れるか決めあぐねていますね。
修羅はジューダス、海琉はカイルだった訳なので、双子の他にまた入れるかどうか……。
乞うご期待ということで。
管理人・エア