カイル達との旅、そして海底洞窟で救ったリオンの友達として彼の前に現れた貴女のお名前は…?
Never Ending Nightmare.ーshort storyー(第一章編)
Name change.
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『ほんとに大丈夫でしょうか?スノウ。坊ちゃんも行った方がいいんじゃないですか?』
「行けるなら行きたいが、な…。」
『ここの神父は人使い荒すぎますよ!持ち場を離れられないって結構辛いですからね?!』
「言ったところで仕方ないだろう?」
そんな話をしているとまた懺悔をしにきた町人が居て溜息を吐く。
このまま何事もなく彼女が帰ってきてくれればそれで良いのだが。
そう思いつつ懺悔室へと入りかけた時だった。
「っ! 神父様っ!!!助けて下さいっ!!!」
「っ?!」
『今の声…!?スノウですっ!!!助けを求めてますよ?!!』
「チッ!やはりあいつだったか…!!」
懺悔しに来た町人を放っておき、急いで教会の扉をくぐり抜けると何やら唸っている彼女の声が庭の方から聞こえてきた。
咄嗟に庭に駆け込み、彼女の名前を叫ぶと引きずられるようにして馬車へ乗せられそうになっている彼女の姿があり目を見張る。
その近くにはそれはそれは身に覚えのある顔があり、すぐさまその男を睨んだ。
僕の声が聞こえたからか、僅かに表情が緩んだ彼女へ男が容赦なく腹部に拳を入れていた。
そして雪崩込むように男へ体重を預けた彼女に悪寒と冷や汗が滲み出る。
まずい、そのままでは馬車に乗せられてしまう!!
案の定気絶した彼女を肩に担ぎ、馬車に乗った男は運転士へと声を掛けていた。
手綱を持ち発進する馬車に僕は咄嗟にシャルを手にしていた。
『「__グレイブ!!」』
詠唱後地面から岩が突き出し、先頭に立つ馬へ牽制すると馬が暴れだし、運転士を操作不能にさせた。
そして馬車がそのまま立ち往生しているのを良い事に、僕は馬車の中へ乗り込み彼女の姿を探した。
「スノウっ!?」
「くそっ…!か、彼女は僕のものだ…!それに!神がいるから彼女が縛られるんだ…!僕と彼女の愛を邪魔する神なんていらない!!」
「チッ!狂人か。」
『言ってること滅茶苦茶ですよ?!』
「シスターという肩書きで恋が出来ないなら、シスターを辞めさせればいい…!!そうだ…そうに違いないんだよ…!!」
「彼女の意見も聞かずにああだこうだ言ってる貴様には、恋愛なんて以ての外だろうな。」
気絶している彼女の上に覆い被さるようにして守っているつもりでいるらしい男にシャルを真っ向から突き付ける。
「ひっ…!し、神父が剣なんて持ってて良いのか…!?」
「生憎、僕も彼女もこの姿は偽りの姿なんでな。彼女にどういう夢を持ったかは知らないが、貴様の想像しているよりも遥かに彼女は厄介だぞ。」
『そうだそうだ!!お前の出る幕なんてないんだぞ!!』
「ふっ…。それでも彼女を連れていくと言うなら、僕はお前をここで切り捨てるだけだ。」
「ひっ!!」
少し脅しただけだが、気の弱い男にはかなりの脅迫になったようで泡を吹いて倒れてしまった。
彼女の上へ倒れるものだからそれを押し退け、気絶している彼女へと手を伸ばす。
「スノウ!起きろ!」
「……ぅ、」
『意識はありそうですね…!良かった…!!』
「シャル。ここから飛び降りるぞ。」
いつの間にか走り出していた馬車と外の景色を見て僕は咄嗟にそう提案する。
しかしシャルにはその僕の言葉は意外な発想だったのか、素っ頓狂な声を出していた。
『へ?!ぼ、坊ちゃん、正気ですか?!!こんな速度の馬車から飛び降りようものなら怪我じゃ済まされませんよ?!!やめた方がいいですって!!』
「運転士が気絶している。運転するのは諦めた方が良さそうだが?」
『えぇ?!なんで気絶してるんですか?!』
「どっか頭でも打ったんだろう。」
彼女の膝裏へと手を差し入れ、横抱きにして持ち上げた僕は馬車の扉を蹴破り、外へと体を乗り出す。
目まぐるしく変わる景色にシャルが悲鳴をあげる。
『う、嘘ですよね?!坊ちゃん?!やめましょうよ!!このままじゃ坊ちゃんだけじゃありません!!スノウも怪我じゃ済まないですよ?!!!』
「……。」
何処かクッション材になるものはないか。
それだけを注視して視線を巡らせていると、下から呻き声が聞こえる。
「……ぅ、じゅ、だす…?」
「起きたか。スノウ。」
『スノウも坊ちゃんを止めて下さい!!今スノウを持った状態で飛び降りようとしてるんですよ?!』
「……っ。……??」
僅かに目を開けた彼女は漸く事態を把握したのか、目を見開くと僕の顔と外の景色を交互に見た。
そしてその顔にはありありと「冗談だろう?」と書いてあったので、思わずその顔が面白くてふっと笑ってしまった。
「ふっ。怖いならしっかり捕まっていろ。」
「ま、待て待て…!君、今自分が何しようとしてるのか分かってるのか?!」
「あぁ。気絶していたお前より遥かにな。」
「ちょっと待て!今までの君だったら絶対こんな事しなかった!!まだ今ならやり直せる!考え直そ──」
「もう遅い。」
彼女の言葉を遮り、僕は彼女を抱えたまま飛び降りた。
シャルの悲鳴と彼女の声なき悲鳴が重なり、そして彼女は僕の首に手を回し目を閉じた。
目的にしていたクッション材目掛けて落ちた僕達は何事も無く飛び降りることが出来ていた。
『「………………。」』
「ふっ、あっははは…!!」
2人の顔があまりにも可笑しくて声に出して笑ってしまうほどだった。
その声で正気を取り戻した2人は僕に対して詰りの言葉ばかりを吐いていて、それにも可笑しくて暫く笑っていた。
「君がこんなにも無茶な事をするタイプだったなんて…!3回の人生の中で今初めて知ったよ!!もう!危ないじゃないか!!」
僕の頬を抓り(それでも優しいものだが)、恨めしそうに僕を睨む彼女の顔は初めて見るもので笑いながらそれを見ていると、彼女は余計にムッとしていた。
だが、僕を下敷きにしている事は分かっていたようで体を退けると両手をこちらに翳していた。
「__ディスペルキュア。」
途端に体が軽くなり、僕は体を起こした。
彼女の得意な状態異常回復と体力回復技が炸裂したようだ。
僕の体を念入りに調べる彼女にほくそ笑んでしまう。
「……今度また無茶な事をするようなら、君を縛って動けなくしてから君を抱えて旅するからね?レディ?」
「ふん。そうそうこんな事があって堪るか。」
「良・い・ね?レディ?」
「あ、あぁ…。」
『あーあ。坊ちゃんがスノウを怒らせたー。』
全く…、と腕を組んだ彼女だったが辺りを見渡して怪訝な顔をする。
そして頭に手をやり詠唱した。
「……サーチ。」
『そういえばここってどこなんでしょうか?』
「さあな。ひとつ言えるのが、今頃教会では僕達が居なくなって騒々しいだろうな、ということくらいだ。」
『早く帰って皆に元気な姿を見せたいですね!』
「……。」
未だに頭に手をやり、難しい顔をしているスノウに僕達は顔を見合わせる。
彼女の探知を以てしてもあの教会から離れすぎて探知出来なかったのだろうか。
まぁ、馬車は高速で動いていたのだし仕方ないと言えば仕方ないのだが…、帰れないのでは困ったものだ。
「……遠い。」
「だろうな。」
「ここからだと大分かかるよ?」
『……坊ちゃん!スノウ!頑張ってくださいね!』
「気楽でいいな。お前は。」
『僕のオリジナルが居たら絶対に文句たれてますけどね!』
「簡単に想像つくからすごいなぁ…。」
少し笑った彼女に笑顔を向ければ彼女も笑顔で返してくれ、手を差し伸べてくれる。
指し伸ばされた手を掴み立ち上がると、彼女の案内の元、二人で教会まで歩き出す。
結局教会に着いたのは夜だったが皆にやはり心配かけていたようで、事件の全てをあいつらに話しておいた。
驚いた様子で全員が聞いていたが、あいつららしく無事を祝ってくれたので良しとしよう。
【神父とシスターは波乱万丈な日々を過ごす】
__「ねえ、ジューダス?」
__「どうした?」
__「助けてくれて…、私の声に反応してくれてありがとう。おかげで助かったよ。」
__「ふん、当然だ。お前を守ると誓ったんだからな。」
__「ふふ、そんな君がかっこよく見えて仕方ないよ。…今度はフラワーフェスティバルを楽しみたいね?」
__「…暇ならな。」
__「暇になるさ。きっとね?」