NEN(現パロ風?)
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13.過去(2)
────懐かしい、夢を見た。
そこは辺り一面に広がる、広大な花畑だ。
僕は子供の頃、彼女をよくここに連れてきていた。
だが、子供だけで行けるような近場ではなかったことは、確かに覚えている。
まだ子供の頃、優しかった父が僕の願いを聞いて彼女と共にここへ連れてきてくれたのだ。
……セインガルドからは、遠かったはずなのに。
「エミリオ!」
彼女がまだ、僕をそう呼んでいた頃。
男みたいな格好をしている癖に、笑顔だけは一丁前に女性らしさがあったのを鮮明に覚えている。
寧ろ、今でもそれは変わらない。
学生服ではない彼女の私服姿といえば決してスカートとかではなく男装のようなものだったし、変身後の彼女も男装のような見た目である。
博愛主義を名乗っているだけあって、女性に声を掛けられようものならすぐに甘い言葉を吐いて、女を信じ込ませてしまうのだ。
そんな彼女を末恐ろしく感じたのは、彼女がようやく学校に通い始める事が出来てからだったな。
話は逸れたが、まだ彼女が僕のことを〝エミリオ〟と呼んでくれていた頃のことだ。
その日も彼女は男の子の装いでこの花畑に来ていた。
その時の僕は彼女が女だとネタバラシを食らっていたから、当然彼女の性別など知っている。
だからその頃から無意識に彼女に対して“恋心”なんて厄介なものを持っていて、彼女を喜ばせるために苦労した覚えがあった。
────そんな時の夢だ。
「ねえ、エミリオ?」
「ん?なんだ、スノウ。」
「どうしてエミリオは、わたしをここへ連れてきてくれるんだい?」
「え、えっと……。」
まだまだ青臭い餓鬼だった僕は、その問いに言葉を詰まらせた。
単純に連れてきた理由を教えるのは子供ながらに気恥ずかしくて、僕はしばらく目を泳がせていたんだが、そんな僕の様子に気づいた父が苦笑しながらも彼女へ説明してくれた。
「僕がここへ二人を連れてきたかったんだよ?」
「エミリオのお父さんが…?」
「そう。僕が君たちを連れてきたかったんだ。エミリオもここが好きみたいだしね?」
「べ、べつに……ぼくは…!」
「おはな、すきなんだ?」
「え?! いや、その……」
「ふふふふ……。」
父が笑っているのに気付かないくらいその時の僕は慌てていて。
どう言い訳をしようか、なんてくだらないことで悩んでいたっけな。
そんなしどろもどろな僕を見て、スノウは「ふーん?」と言葉を零すと、突如花畑の中を走っていく。
小さい頃の僕はそんな彼女の後を慌てて追いかけたものだ。
しかし彼女が走り出した理由は、ただ花畑の中を走りたかった訳じゃない。
「……はい!エミリオ!」
そう言って僕の頭の上に、彼女は自分で作った花冠を置いてくれた。
勿論、プレゼントなんて貰えると思ってなかった僕は酷くそのプレゼントを喜んだものだ。
花冠に手をやっては感動したように目を潤ませ、スノウを見つめる僕がいた。
「おはな、好きなんでしょ?」
そう言って笑った彼女の笑顔を、僕は今でも胸に仕舞っている。
まるでここに咲く花のように、可憐な笑顔を見せてくれた彼女を小さな頃の僕は唖然として見ていた。
その笑顔は今、僕だけにしか向けられてないものだと……そう分かった僕は途端に顔を赤くして顔をうつむかせた。
胸の鼓動が早い。
胸の辺りが妙に熱くて、苦しくて────でも……、とても幸せで…。
筆舌に尽くしがたいとはこの事か、と今はそう思うが、子供の頃にそんな高尚な感想なんて持つはずがない。
僕はその苦しい胸を手で押さえ、赤い顔のままスノウを見つめていた。
彼女は既に二個目の花冠を作ろうと花を採取していたので、そんな僕の気持ちなど知らなかっただろう。
そして、この時の僕は、咄嗟に彼女へ告白をしようとしていたんだ。
でもその前に彼女が立ち上がって、笑顔で僕を見つめた。
「ねえ、エミリオ。」
「な、なに?」
「ここは、わたしたちだけの、ひみつの場所だよ?」
「え……。」
子供ながらに稚拙なやり取りだ。
だが、その時の僕はそんな言葉でさえ、嬉しくて仕方がなかった。
……今彼女からそう言われても僕なら嬉しいと、そう感じてしまうだろうからあまり人のことは言えないがな。
「また、ここにつれてきてね?エミリオ。約束だよ?」
「う、うん!おとなになっても、絶対につれていくから…!!」
あぁ、そう言えばそんなことを口走った気がする。
だが、ここは何処だったか……。
それが思い出せない。
彼女との約束を守らないなど、僕の中の何かが許せない。
例えそれが、昔子供の頃に約束した事柄であってもだ。
折角こんな夢を見ているのだから、彼女を再びここへ連れて行ってあげたい。
だから、思い出したい。
ここは、何処だったのか────と。
「わたし、ここが好き…。はながたくさんある、ここが好き!」
「ぼ、ぼくも…!」
今の彼女は覚えているだろうか?
ここにまた、来たがっていたことを。
「わたしの……たいせつな、場所……。エミリオとすごした、だいじな場所。わすれないよ。ぜったいに。」
「ぼくだって!忘れない!ぜったいに、大人になっても、ぼくがスノウをここへつれてくるから!だから、あんしんして!」
「うん…!やくそく!」
「やくそく!」
指を絡ませて、笑顔で指切りげんまんなんてしている小さい僕を見て、大きなため息をつきたくなった。
何故、僕はこんな大事なことを忘れていたんだろうと。
こんな幸せな夢を見て、忘れがたい記憶を思い出して……。
後は僕自身がこの夢の場所を思い出せたら一番終わりが良いのだが……。
「アイグレッテのはなぞの!」
「ここは、ぼくたちのひみつのばしょ!」
……あぁ、そうか。
ようやく思い出せた。
この間、彼女が学校の修学旅行先にアイグレッテを選んだ理由がようやく分かった。
何故あんな観光地でもない場所を選んだのか、不思議だった。
だが、これでようやくその謎も解けた。
彼女はきっと、この場所に来たかったんだ。
彼女はずっと、ずっと……ここを覚えていたんだ。
僕は思わず苦笑いをした。
あぁ、なんてことをしてしまったのだろうと……そう思ったからだ。
僕が彼女との約束を破るなんて、考えもしなかった。
でもこれでようやく彼女の前で胸を張って言える。
……いや、胸を張って連れていける。
僕達はもう、大人の階段を一歩登っている最中なのだから。
あぁ、彼女の笑顔が待ち遠しい。
だから早く、この夢から目覚めなければ。
……目覚めなければならないのに。
何故、僕はずっと夢を見ているんだ?
何故、ずっと夢の中に囚われているんだ?
こうなる前の記憶が、ひどく曖昧で思い出せない。
いや、普通に彼女の部屋で寝たのだったか?
いや、違う……。
彼女の部屋で寝たあとに、彼女と一緒に勉強して……。
それでサイレンが鳴り響いて……。
外に出た僕らは……〈シャドウクリスタル〉を破壊しようとして……。
────その瞬間、僕は彼女の“絶望の悲鳴”を思い出して、冷や汗を掻いた。
……僕は、今……現実でどうなっている?
何が起こっているんだ?
もしかして、ここは夢の中なんかじゃなくて……“あの世”なのではないか、と。
死ぬ前に見る、走馬灯の一種なのではないかとさえ思えてしまった。
だとしたら、……嫌だ。
彼女と一緒に行きたかった所もあるし、やりたかったこともある。
それこそ、彼女に僕のこの想いを告げるまでは死ねないと、そう思っていたのに。
僕はその場で膝をついた。
絶望だとか、諦めとか……そんな感情が浮かんでは消える。
ただ、今ここで僕が死ぬことで、僕の左手の指輪はどうなる?
あれが消えてしまえば、彼女が〝フロラシオン〟に侵されて死んでしまうのに。
これでは共倒れではないか。
「っ、」
生きたい。
彼女の元へ行きたいのに。
僕の無事を知らせてやりたいのに。
どうしたらここから出れるんだ。
このままだと彼女の命も危ういのに。
僕のためなら、と指輪も外してしまえる彼女が、僕が死んだことで何かしないはずがないのに。
「誰か、ここから出してくれっ…!!」
なんだってする。
だから、僕をここから出して彼女に会わせてくれ。
そんな僕の願いを聞き届けるかのような、眩い虹色の光が辺りに溢れた。
あぁ、これで彼女のもとへ帰れる。
────この時の僕は、そう願って仕方がなかったんだ。
────懐かしい、夢を見た。
そこは辺り一面に広がる、広大な花畑だ。
僕は子供の頃、彼女をよくここに連れてきていた。
だが、子供だけで行けるような近場ではなかったことは、確かに覚えている。
まだ子供の頃、優しかった父が僕の願いを聞いて彼女と共にここへ連れてきてくれたのだ。
……セインガルドからは、遠かったはずなのに。
「エミリオ!」
彼女がまだ、僕をそう呼んでいた頃。
男みたいな格好をしている癖に、笑顔だけは一丁前に女性らしさがあったのを鮮明に覚えている。
寧ろ、今でもそれは変わらない。
学生服ではない彼女の私服姿といえば決してスカートとかではなく男装のようなものだったし、変身後の彼女も男装のような見た目である。
博愛主義を名乗っているだけあって、女性に声を掛けられようものならすぐに甘い言葉を吐いて、女を信じ込ませてしまうのだ。
そんな彼女を末恐ろしく感じたのは、彼女がようやく学校に通い始める事が出来てからだったな。
話は逸れたが、まだ彼女が僕のことを〝エミリオ〟と呼んでくれていた頃のことだ。
その日も彼女は男の子の装いでこの花畑に来ていた。
その時の僕は彼女が女だとネタバラシを食らっていたから、当然彼女の性別など知っている。
だからその頃から無意識に彼女に対して“恋心”なんて厄介なものを持っていて、彼女を喜ばせるために苦労した覚えがあった。
────そんな時の夢だ。
「ねえ、エミリオ?」
「ん?なんだ、スノウ。」
「どうしてエミリオは、わたしをここへ連れてきてくれるんだい?」
「え、えっと……。」
まだまだ青臭い餓鬼だった僕は、その問いに言葉を詰まらせた。
単純に連れてきた理由を教えるのは子供ながらに気恥ずかしくて、僕はしばらく目を泳がせていたんだが、そんな僕の様子に気づいた父が苦笑しながらも彼女へ説明してくれた。
「僕がここへ二人を連れてきたかったんだよ?」
「エミリオのお父さんが…?」
「そう。僕が君たちを連れてきたかったんだ。エミリオもここが好きみたいだしね?」
「べ、べつに……ぼくは…!」
「おはな、すきなんだ?」
「え?! いや、その……」
「ふふふふ……。」
父が笑っているのに気付かないくらいその時の僕は慌てていて。
どう言い訳をしようか、なんてくだらないことで悩んでいたっけな。
そんなしどろもどろな僕を見て、スノウは「ふーん?」と言葉を零すと、突如花畑の中を走っていく。
小さい頃の僕はそんな彼女の後を慌てて追いかけたものだ。
しかし彼女が走り出した理由は、ただ花畑の中を走りたかった訳じゃない。
「……はい!エミリオ!」
そう言って僕の頭の上に、彼女は自分で作った花冠を置いてくれた。
勿論、プレゼントなんて貰えると思ってなかった僕は酷くそのプレゼントを喜んだものだ。
花冠に手をやっては感動したように目を潤ませ、スノウを見つめる僕がいた。
「おはな、好きなんでしょ?」
そう言って笑った彼女の笑顔を、僕は今でも胸に仕舞っている。
まるでここに咲く花のように、可憐な笑顔を見せてくれた彼女を小さな頃の僕は唖然として見ていた。
その笑顔は今、僕だけにしか向けられてないものだと……そう分かった僕は途端に顔を赤くして顔をうつむかせた。
胸の鼓動が早い。
胸の辺りが妙に熱くて、苦しくて────でも……、とても幸せで…。
筆舌に尽くしがたいとはこの事か、と今はそう思うが、子供の頃にそんな高尚な感想なんて持つはずがない。
僕はその苦しい胸を手で押さえ、赤い顔のままスノウを見つめていた。
彼女は既に二個目の花冠を作ろうと花を採取していたので、そんな僕の気持ちなど知らなかっただろう。
そして、この時の僕は、咄嗟に彼女へ告白をしようとしていたんだ。
でもその前に彼女が立ち上がって、笑顔で僕を見つめた。
「ねえ、エミリオ。」
「な、なに?」
「ここは、わたしたちだけの、ひみつの場所だよ?」
「え……。」
子供ながらに稚拙なやり取りだ。
だが、その時の僕はそんな言葉でさえ、嬉しくて仕方がなかった。
……今彼女からそう言われても僕なら嬉しいと、そう感じてしまうだろうからあまり人のことは言えないがな。
「また、ここにつれてきてね?エミリオ。約束だよ?」
「う、うん!おとなになっても、絶対につれていくから…!!」
あぁ、そう言えばそんなことを口走った気がする。
だが、ここは何処だったか……。
それが思い出せない。
彼女との約束を守らないなど、僕の中の何かが許せない。
例えそれが、昔子供の頃に約束した事柄であってもだ。
折角こんな夢を見ているのだから、彼女を再びここへ連れて行ってあげたい。
だから、思い出したい。
ここは、何処だったのか────と。
「わたし、ここが好き…。はながたくさんある、ここが好き!」
「ぼ、ぼくも…!」
今の彼女は覚えているだろうか?
ここにまた、来たがっていたことを。
「わたしの……たいせつな、場所……。エミリオとすごした、だいじな場所。わすれないよ。ぜったいに。」
「ぼくだって!忘れない!ぜったいに、大人になっても、ぼくがスノウをここへつれてくるから!だから、あんしんして!」
「うん…!やくそく!」
「やくそく!」
指を絡ませて、笑顔で指切りげんまんなんてしている小さい僕を見て、大きなため息をつきたくなった。
何故、僕はこんな大事なことを忘れていたんだろうと。
こんな幸せな夢を見て、忘れがたい記憶を思い出して……。
後は僕自身がこの夢の場所を思い出せたら一番終わりが良いのだが……。
「アイグレッテのはなぞの!」
「ここは、ぼくたちのひみつのばしょ!」
……あぁ、そうか。
ようやく思い出せた。
この間、彼女が学校の修学旅行先にアイグレッテを選んだ理由がようやく分かった。
何故あんな観光地でもない場所を選んだのか、不思議だった。
だが、これでようやくその謎も解けた。
彼女はきっと、この場所に来たかったんだ。
彼女はずっと、ずっと……ここを覚えていたんだ。
僕は思わず苦笑いをした。
あぁ、なんてことをしてしまったのだろうと……そう思ったからだ。
僕が彼女との約束を破るなんて、考えもしなかった。
でもこれでようやく彼女の前で胸を張って言える。
……いや、胸を張って連れていける。
僕達はもう、大人の階段を一歩登っている最中なのだから。
あぁ、彼女の笑顔が待ち遠しい。
だから早く、この夢から目覚めなければ。
……目覚めなければならないのに。
何故、僕はずっと夢を見ているんだ?
何故、ずっと夢の中に囚われているんだ?
こうなる前の記憶が、ひどく曖昧で思い出せない。
いや、普通に彼女の部屋で寝たのだったか?
いや、違う……。
彼女の部屋で寝たあとに、彼女と一緒に勉強して……。
それでサイレンが鳴り響いて……。
外に出た僕らは……〈シャドウクリスタル〉を破壊しようとして……。
────その瞬間、僕は彼女の“絶望の悲鳴”を思い出して、冷や汗を掻いた。
……僕は、今……現実でどうなっている?
何が起こっているんだ?
もしかして、ここは夢の中なんかじゃなくて……“あの世”なのではないか、と。
死ぬ前に見る、走馬灯の一種なのではないかとさえ思えてしまった。
だとしたら、……嫌だ。
彼女と一緒に行きたかった所もあるし、やりたかったこともある。
それこそ、彼女に僕のこの想いを告げるまでは死ねないと、そう思っていたのに。
僕はその場で膝をついた。
絶望だとか、諦めとか……そんな感情が浮かんでは消える。
ただ、今ここで僕が死ぬことで、僕の左手の指輪はどうなる?
あれが消えてしまえば、彼女が〝フロラシオン〟に侵されて死んでしまうのに。
これでは共倒れではないか。
「っ、」
生きたい。
彼女の元へ行きたいのに。
僕の無事を知らせてやりたいのに。
どうしたらここから出れるんだ。
このままだと彼女の命も危ういのに。
僕のためなら、と指輪も外してしまえる彼女が、僕が死んだことで何かしないはずがないのに。
「誰か、ここから出してくれっ…!!」
なんだってする。
だから、僕をここから出して彼女に会わせてくれ。
そんな僕の願いを聞き届けるかのような、眩い虹色の光が辺りに溢れた。
あぁ、これで彼女のもとへ帰れる。
────この時の僕は、そう願って仕方がなかったんだ。