NEN(現パロ風?)
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03.十人十色な変身
突如辺りに鳴り響くサイレン。
緊急時を知らせるそのサイレンは、下校中の二人の耳にけたたましく届いていた。
「おっと、出動だね…。」
「……急いでやって帰るぞ。」
「それもそうだね。君にはどうしても早く帰らないといけない理由もあるしね?」
「………………行くぞ。」
『(坊ちゃん、さっきのはショックだったんだろうなぁ…?)』
左手で小気味よい音を出しながら二人はハイタッチをする。
そして次の瞬間には二人は変身を終え、振り返るとお互いの指を絡め合い、そして目を開ける。
相手の瞳の奥の覚悟を垣間見た二人はようやく手を離す。
「さて、行きますかね。___サーチ。」
探知系の術を使い、〈シャドウクリスタル〉の位置を探るスノウと、彼の愛剣であるシャルティエもまた探知を開始していた。
その間リオンは、周辺を警戒しながらスノウ達の探知が終わるの待っていた。
「…今回も苦戦しているようだよ?」
「なら、早く応戦に行ってやるか。」
『二人とも気を付けてくださいよ?幾ら強いからって油断は禁物ですからね?』
「了解。シャルティエ。」
スノウがリオンの手を取り、建物の上へと飛び上がる。
それに合わせてリオンもまた跳躍をしてスノウとの息を合わせていた。
「どっちだ、スノウ。」
「ここから東に5㎞地点……そこに、割と大きい〈シャドウクリスタル〉があるよ。」
「分かった。」
建物の上を跳びながら二人は絶対に手を離さない。
それはお互いに信頼し合い、そして来たる戦闘に向けて覚悟を決めるためでもあった。
「…目標、あと2㎞。」
「覚悟を決めろ、スノウ。」
「ふふ。もう出来てるよ?」
そうして二人は戦地に降り立つ。
そこからは、もう二人の独壇場であった。
様々な支援をこなすスノウと、流れる剣技で〈シャドウ〉を翻弄し、一撃で倒していくリオン。
そのリオンの打ち零しをスノウが攻撃術や銃術でぬかりなく倒していく。
最早慣れたその二人の戦闘体系に、周りの〝星の誓約者〟達が呆然と見ている。
割と大きな〈シャドウクリスタル〉ともあって〈シャドウ〉を出現させる頻度も、数も、強さも、今までと比にならないくらい違う。
それでも二人は果敢に挑んでいく。
お互いを見てなくても対となる相手の行動が分かる二人にとって、今の〈シャドウ〉は敵ではない。
あっという間に〈シャドウ〉の波を押し切ったリオンは、この戦闘の元凶でもある〈シャドウクリスタル〉を一突きで破壊してしまう。
音を立てて割れたその〈シャドウクリスタル〉はあっけなくその場に転がっていく。
そして怪しい光を出していた〈シャドウクリスタル〉もその光を失えばただの石ころに過ぎない。
リオンはその石ころを足で踏みつぶし、対となる存在に目を向ける。
お互いの無事を確認した二人は、安心してその場から去っていく。
もう二人には、あそこに用が無いのだから。
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆
「なぁ、聞いてもいいか?」
「?」
翌日、学校で行間時間になった二人の元へ他の生徒が押しかけてきて純粋な質問をぶつける。
「変身とかって、どうやって決めてんだ?」
「あれ、かっこいいよな…! 二人が手を叩きあった瞬間さ、本当に変身シーンみたいな感じでぶわぁぁっと変わるんだよな!!」
「あれ、気になってたんだよな! 他の奴らの変身も見たことあるけど、ヒーローによって違うよな?」
「…あぁ。あれは、別段決めたわけじゃないんです。」
少し声を高くし、質問に答えたスノウはいつもの口調とは打って変わって違う口調で返答する。
「〝星の誓約者〟の変身には何個か条件があるんです。」
「それって…?!」
「必ず、相手の体のどこかに触れる必要があるんです。それは別に〝誓約〟の証でもあるこの指輪じゃなくてもいいんです。」
スノウはそう言って左手の薬指に着けられた指輪を見せる。
それを興味津々に生徒たちが見つめ目を輝かせたが、丁度その時、クラスの外から二葉と和也が話しかけてきていた。
「スノウさん。」
「あぁ、二葉嬢。」
近付き不思議そうな顔をした二葉たちへと先程の生徒たちが今の状況について話すと、納得したように二人が頷いた。
そして話に参加していないリオンへと目を向けた。
しかし視線を合わせようとしない感じから、彼はこの手の話題が苦手なようである。
「変身、ですか?」
「そうだよ!俺たち、一般人にとってヒーローの変身シーンって興奮するんだよ!」
「どうやって決めてるのかと思ってさ。」
「というか、条件って他に何があったんだ?」
「もう一つは、どちらかが必ず相手の指輪に触れる事。」
「あれ、さっきと言ってることが違くないか?」
「単純に、相手の体のどこかに触れなければならない事は最低条件だと思ってください。その上で、自分か相手のどちらかが相手の指輪にも触れなければならないんです。」
「なるほどなぁ…?」
「どっちも相手に触れなければならないってのは分かったけど…何で指輪?」
「この指輪は〝星の誓約者〟にとって大事な指輪ですの。だからその指輪…特に相手の指輪に触れる事は神聖な事なんですのよ?」
「「「へぇ!!!」」」
スノウと二葉の指輪を見て、興味深そうに触れようとする生徒だったが、その前にリオンと和也が止めに入る。
「触れるな。」
「も、申し訳ありませんが…触れて欲しくないです…。」
「おー…。やっぱり誓った相手の指輪には触れて欲しくないもんかー…!」
「すげえ。」
「俺も将来〝星の誓約者〟になったら、対になる女の子の指輪を守ろうっと!」
「はは!対になる女の子じゃなくって、対になる"はずの"女の子だろ?」
そう言って男子生徒たちはさっきの質問で満足したのかどこかに行ってしまった。
それを見送ったリオンが、ギュッとスノウの指輪のある手を握った。
「……簡単にそれに触れさせるな。」
「ふふ…。分かってるよ、レディ。」
「ダメだよ…!二葉も気を付けないと…!!」
「あら。でもあなたが守ってくれたじゃない。」
「そ、それは…当然だよ…。」
普段から気が弱そうと言っても、流石〝星の誓約者〟であり、あの〈シャドウ〉に立ち向かう戦士だ。
対となる存在の危険にいち早く行動できるのは、当然であった。
照れたように和也が二葉を見る中、反対にリオンは苦しそうにスノウへ顔を向けていた。
それは恐怖を押し殺したような顔だった。
そんな彼の表情を見たスノウは一度目を閉じて笑った後、彼の頬へと手を添え笑って見せる。
「…大丈夫。私はここに居るよ?」
「…分かってる。……分かっている…。」
「「??」」
不思議な二人の会話に、二葉達は首を傾げる。
そんな二人を見て、暗い表情を落としたシャルティエもまた昔へと思いを馳せていたのだった。
「あ、」
和也が外を見て、声を漏らす。
二葉も外を見て驚愕に目を見開いた。
「ちょ、ちょっと!どういうことなの?! 何でここに〈シャドウクリスタル〉があるのよ?!」
「「!!」」
それを聞いて二人も窓の外を見れば、学校のグラウンドには人の大きさ程の〈シャドウクリスタル〉が刺さっていた。
そしてそこから現れる〈シャドウ〉。
その瞬間、校内放送が流れ、生徒たちに避難を呼びかける。
同時にスノウとリオンはハイタッチをして変身を終えていた。
「行くぞ!スノウ!」
「支援は任せてよ、リオン!」
窓から降り立った二人に、二葉と和也が目を剥いて二人を窓から見下ろした。
二人はもうすでに地面に降り立ち〈シャドウクリスタル〉に向かっている最中であった。
慌てて二人も変身するために、相手の左手を握りしめる。
その反対の手でパチンと目の前でハイタッチをすれば無事、二人も変身が始まる。
茶髪だった髪は変わらず、瞳が黒からセピア色へと変化する。
和也の方も瞳だけがセピア色に変わり、二人はお揃いの瞳へと変化した。
そしてその瞳の色を確認し終わった二人は、覚悟を決めて〈シャドウクリスタル〉の元へと向かった。
……二人を真似て、今回はかっこよく窓から降りてみたりしたのは秘密だ。
「行くわよ!和也!」
「う、うん…!気を付けてよ…?二葉…!」
大剣を振り回す二葉は楽しそうな顔を浮かべ、敵へと突っ込んでいく。
和也も剣を持ち、戦線へと駆け出す。
スノウとリオンほどではないが、何とか連携している二人。
これはこれで相性は良さそうである。
「スノウ!支援頂戴!!」
「…! 了解だよ、二葉嬢!___速度上昇、クイックネス!」
ここで後方支援が出来るのはスノウしかいない。
人が変わったような状態の二葉が、強大な敵を前にしてスノウへと支援を頼む。
それを聞いてスノウも口元に笑みを浮かべ、惜しみなく支援を飛ばしていく。
「ひっ…! 〈シャドウクリスタル〉が今までと違い、大きいです…!!」
「というか、何で警報が鳴らないのよ?! これじゃあ、他の〝星の誓約者〟たちの応援が呼び込めそうにないじゃない!!」
「もしかしたら、〈シャドウクリスタル〉自体が大きくて政府の持っている探知機に反応していないのかもしれない!!」
「チッ、厄介な。」
一人〈シャドウクリスタル〉の近くの〈シャドウ〉へと戦っているリオンへ、スノウが支援を飛ばす。
周りの雑魚は二葉たちに託されたのだ。
それに気付いたスノウがいち早く、攻撃術をリオンの周りの敵へとぶっ放す。
そしてリオンの背後に居た〈シャドウ〉へ、相棒を突き刺したスノウは不敵な笑みを浮かべた。
「久しぶりの強敵だから、前線に戻ろうかな?」
「ふん!無理はするなよ!」
「そっちこそね!」
銃剣を持ち、リオンと連携して〈シャドウ〉を倒していくスノウ。
無詠唱の魔法も遠慮なく放ち、二人で華麗に敵を蹴散らしていく。
「流石に人の大きさ程の〈シャドウクリスタル〉は、手応えがあるね!」
「むしろ、本当に他の奴らが来ないのが厄介だ。周りの雑魚をアイツらだけに頼むのも頼りない。」
「そう?あの二人なら健闘すると思うけどな?」
二人で振り返り見た二葉達は、拙い戦い方ではあるが二人で連携しあって敵と渡りあってる姿だった。
それを見たリオンも鼻を鳴らし、口元には笑みを浮かべていた。
隣では敵を倒しながらスノウがくすくすと笑っていた。
「よし、これで終わり!」
〈シャドウクリスタル〉へ一番近かったスノウが〈シャドウクリスタル〉を壊す。
パキンッといつもよりも響いた音を立て、闇色のクリスタルは粉々になった。
その欠片がゆっくりと降り注ぐのをじっと見つめていたスノウだったが、急に視界は黒一色になって驚き、その黒い正体を掴もうとしたが、そのまま誰かに抱き締められた。
「外套、かけてくれなくてもいいのに。」
「この結晶の欠片が、人間の体に害を成すかもしれないだろう?」
「それなら余計に君が被ってなよ?」
「じっとしてろ。」
外套を外そうとしたが彼から抱きしめられていた為、それは叶わなさそうだ。
諦めたようにスノウがそっと彼の体へと体重をかければ、彼はそれを物ともしない様子で体がブレることは無かった。
《―――――― おかえり………》
「…?」
何か聞こえた気がして、スノウは閉じていた瞳を開く。
しかし視界は相変わらず真っ黒だ。
「……リオン、さっき何か聞こえなかった?」
「は? 何も聞こえていないぞ。」
『僕も聞こえませんでしたよ?何が聞こえてきたんですか?』
「なんか…"おかえり"って聞こえた気がしたんだけど…。」
「そこら辺の餓鬼が遠くの方で言ってたのを、偶然お前が耳にしたんじゃないか?」
「そうか、な…?」
確かに聞こえた気がしたけど、それでも外套を取ってくれない彼に苦笑をする。
これじゃあ、私が外套を取ってほしくて嘘をついた様じゃないか。
仕返しとばかりに私は一気に下に座り込み、外套を掴んだ。
そしてそのまま彼に被せれば慌てたような彼の声が聞こえて、思わず笑ってしまった。
――――もう、闇色の結晶の欠片は見えなくなっていた。
突如辺りに鳴り響くサイレン。
緊急時を知らせるそのサイレンは、下校中の二人の耳にけたたましく届いていた。
「おっと、出動だね…。」
「……急いでやって帰るぞ。」
「それもそうだね。君にはどうしても早く帰らないといけない理由もあるしね?」
「………………行くぞ。」
『(坊ちゃん、さっきのはショックだったんだろうなぁ…?)』
左手で小気味よい音を出しながら二人はハイタッチをする。
そして次の瞬間には二人は変身を終え、振り返るとお互いの指を絡め合い、そして目を開ける。
相手の瞳の奥の覚悟を垣間見た二人はようやく手を離す。
「さて、行きますかね。___サーチ。」
探知系の術を使い、〈シャドウクリスタル〉の位置を探るスノウと、彼の愛剣であるシャルティエもまた探知を開始していた。
その間リオンは、周辺を警戒しながらスノウ達の探知が終わるの待っていた。
「…今回も苦戦しているようだよ?」
「なら、早く応戦に行ってやるか。」
『二人とも気を付けてくださいよ?幾ら強いからって油断は禁物ですからね?』
「了解。シャルティエ。」
スノウがリオンの手を取り、建物の上へと飛び上がる。
それに合わせてリオンもまた跳躍をしてスノウとの息を合わせていた。
「どっちだ、スノウ。」
「ここから東に5㎞地点……そこに、割と大きい〈シャドウクリスタル〉があるよ。」
「分かった。」
建物の上を跳びながら二人は絶対に手を離さない。
それはお互いに信頼し合い、そして来たる戦闘に向けて覚悟を決めるためでもあった。
「…目標、あと2㎞。」
「覚悟を決めろ、スノウ。」
「ふふ。もう出来てるよ?」
そうして二人は戦地に降り立つ。
そこからは、もう二人の独壇場であった。
様々な支援をこなすスノウと、流れる剣技で〈シャドウ〉を翻弄し、一撃で倒していくリオン。
そのリオンの打ち零しをスノウが攻撃術や銃術でぬかりなく倒していく。
最早慣れたその二人の戦闘体系に、周りの〝星の誓約者〟達が呆然と見ている。
割と大きな〈シャドウクリスタル〉ともあって〈シャドウ〉を出現させる頻度も、数も、強さも、今までと比にならないくらい違う。
それでも二人は果敢に挑んでいく。
お互いを見てなくても対となる相手の行動が分かる二人にとって、今の〈シャドウ〉は敵ではない。
あっという間に〈シャドウ〉の波を押し切ったリオンは、この戦闘の元凶でもある〈シャドウクリスタル〉を一突きで破壊してしまう。
音を立てて割れたその〈シャドウクリスタル〉はあっけなくその場に転がっていく。
そして怪しい光を出していた〈シャドウクリスタル〉もその光を失えばただの石ころに過ぎない。
リオンはその石ころを足で踏みつぶし、対となる存在に目を向ける。
お互いの無事を確認した二人は、安心してその場から去っていく。
もう二人には、あそこに用が無いのだから。
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆
「なぁ、聞いてもいいか?」
「?」
翌日、学校で行間時間になった二人の元へ他の生徒が押しかけてきて純粋な質問をぶつける。
「変身とかって、どうやって決めてんだ?」
「あれ、かっこいいよな…! 二人が手を叩きあった瞬間さ、本当に変身シーンみたいな感じでぶわぁぁっと変わるんだよな!!」
「あれ、気になってたんだよな! 他の奴らの変身も見たことあるけど、ヒーローによって違うよな?」
「…あぁ。あれは、別段決めたわけじゃないんです。」
少し声を高くし、質問に答えたスノウはいつもの口調とは打って変わって違う口調で返答する。
「〝星の誓約者〟の変身には何個か条件があるんです。」
「それって…?!」
「必ず、相手の体のどこかに触れる必要があるんです。それは別に〝誓約〟の証でもあるこの指輪じゃなくてもいいんです。」
スノウはそう言って左手の薬指に着けられた指輪を見せる。
それを興味津々に生徒たちが見つめ目を輝かせたが、丁度その時、クラスの外から二葉と和也が話しかけてきていた。
「スノウさん。」
「あぁ、二葉嬢。」
近付き不思議そうな顔をした二葉たちへと先程の生徒たちが今の状況について話すと、納得したように二人が頷いた。
そして話に参加していないリオンへと目を向けた。
しかし視線を合わせようとしない感じから、彼はこの手の話題が苦手なようである。
「変身、ですか?」
「そうだよ!俺たち、一般人にとってヒーローの変身シーンって興奮するんだよ!」
「どうやって決めてるのかと思ってさ。」
「というか、条件って他に何があったんだ?」
「もう一つは、どちらかが必ず相手の指輪に触れる事。」
「あれ、さっきと言ってることが違くないか?」
「単純に、相手の体のどこかに触れなければならない事は最低条件だと思ってください。その上で、自分か相手のどちらかが相手の指輪にも触れなければならないんです。」
「なるほどなぁ…?」
「どっちも相手に触れなければならないってのは分かったけど…何で指輪?」
「この指輪は〝星の誓約者〟にとって大事な指輪ですの。だからその指輪…特に相手の指輪に触れる事は神聖な事なんですのよ?」
「「「へぇ!!!」」」
スノウと二葉の指輪を見て、興味深そうに触れようとする生徒だったが、その前にリオンと和也が止めに入る。
「触れるな。」
「も、申し訳ありませんが…触れて欲しくないです…。」
「おー…。やっぱり誓った相手の指輪には触れて欲しくないもんかー…!」
「すげえ。」
「俺も将来〝星の誓約者〟になったら、対になる女の子の指輪を守ろうっと!」
「はは!対になる女の子じゃなくって、対になる"はずの"女の子だろ?」
そう言って男子生徒たちはさっきの質問で満足したのかどこかに行ってしまった。
それを見送ったリオンが、ギュッとスノウの指輪のある手を握った。
「……簡単にそれに触れさせるな。」
「ふふ…。分かってるよ、レディ。」
「ダメだよ…!二葉も気を付けないと…!!」
「あら。でもあなたが守ってくれたじゃない。」
「そ、それは…当然だよ…。」
普段から気が弱そうと言っても、流石〝星の誓約者〟であり、あの〈シャドウ〉に立ち向かう戦士だ。
対となる存在の危険にいち早く行動できるのは、当然であった。
照れたように和也が二葉を見る中、反対にリオンは苦しそうにスノウへ顔を向けていた。
それは恐怖を押し殺したような顔だった。
そんな彼の表情を見たスノウは一度目を閉じて笑った後、彼の頬へと手を添え笑って見せる。
「…大丈夫。私はここに居るよ?」
「…分かってる。……分かっている…。」
「「??」」
不思議な二人の会話に、二葉達は首を傾げる。
そんな二人を見て、暗い表情を落としたシャルティエもまた昔へと思いを馳せていたのだった。
「あ、」
和也が外を見て、声を漏らす。
二葉も外を見て驚愕に目を見開いた。
「ちょ、ちょっと!どういうことなの?! 何でここに〈シャドウクリスタル〉があるのよ?!」
「「!!」」
それを聞いて二人も窓の外を見れば、学校のグラウンドには人の大きさ程の〈シャドウクリスタル〉が刺さっていた。
そしてそこから現れる〈シャドウ〉。
その瞬間、校内放送が流れ、生徒たちに避難を呼びかける。
同時にスノウとリオンはハイタッチをして変身を終えていた。
「行くぞ!スノウ!」
「支援は任せてよ、リオン!」
窓から降り立った二人に、二葉と和也が目を剥いて二人を窓から見下ろした。
二人はもうすでに地面に降り立ち〈シャドウクリスタル〉に向かっている最中であった。
慌てて二人も変身するために、相手の左手を握りしめる。
その反対の手でパチンと目の前でハイタッチをすれば無事、二人も変身が始まる。
茶髪だった髪は変わらず、瞳が黒からセピア色へと変化する。
和也の方も瞳だけがセピア色に変わり、二人はお揃いの瞳へと変化した。
そしてその瞳の色を確認し終わった二人は、覚悟を決めて〈シャドウクリスタル〉の元へと向かった。
……二人を真似て、今回はかっこよく窓から降りてみたりしたのは秘密だ。
「行くわよ!和也!」
「う、うん…!気を付けてよ…?二葉…!」
大剣を振り回す二葉は楽しそうな顔を浮かべ、敵へと突っ込んでいく。
和也も剣を持ち、戦線へと駆け出す。
スノウとリオンほどではないが、何とか連携している二人。
これはこれで相性は良さそうである。
「スノウ!支援頂戴!!」
「…! 了解だよ、二葉嬢!___速度上昇、クイックネス!」
ここで後方支援が出来るのはスノウしかいない。
人が変わったような状態の二葉が、強大な敵を前にしてスノウへと支援を頼む。
それを聞いてスノウも口元に笑みを浮かべ、惜しみなく支援を飛ばしていく。
「ひっ…! 〈シャドウクリスタル〉が今までと違い、大きいです…!!」
「というか、何で警報が鳴らないのよ?! これじゃあ、他の〝星の誓約者〟たちの応援が呼び込めそうにないじゃない!!」
「もしかしたら、〈シャドウクリスタル〉自体が大きくて政府の持っている探知機に反応していないのかもしれない!!」
「チッ、厄介な。」
一人〈シャドウクリスタル〉の近くの〈シャドウ〉へと戦っているリオンへ、スノウが支援を飛ばす。
周りの雑魚は二葉たちに託されたのだ。
それに気付いたスノウがいち早く、攻撃術をリオンの周りの敵へとぶっ放す。
そしてリオンの背後に居た〈シャドウ〉へ、相棒を突き刺したスノウは不敵な笑みを浮かべた。
「久しぶりの強敵だから、前線に戻ろうかな?」
「ふん!無理はするなよ!」
「そっちこそね!」
銃剣を持ち、リオンと連携して〈シャドウ〉を倒していくスノウ。
無詠唱の魔法も遠慮なく放ち、二人で華麗に敵を蹴散らしていく。
「流石に人の大きさ程の〈シャドウクリスタル〉は、手応えがあるね!」
「むしろ、本当に他の奴らが来ないのが厄介だ。周りの雑魚をアイツらだけに頼むのも頼りない。」
「そう?あの二人なら健闘すると思うけどな?」
二人で振り返り見た二葉達は、拙い戦い方ではあるが二人で連携しあって敵と渡りあってる姿だった。
それを見たリオンも鼻を鳴らし、口元には笑みを浮かべていた。
隣では敵を倒しながらスノウがくすくすと笑っていた。
「よし、これで終わり!」
〈シャドウクリスタル〉へ一番近かったスノウが〈シャドウクリスタル〉を壊す。
パキンッといつもよりも響いた音を立て、闇色のクリスタルは粉々になった。
その欠片がゆっくりと降り注ぐのをじっと見つめていたスノウだったが、急に視界は黒一色になって驚き、その黒い正体を掴もうとしたが、そのまま誰かに抱き締められた。
「外套、かけてくれなくてもいいのに。」
「この結晶の欠片が、人間の体に害を成すかもしれないだろう?」
「それなら余計に君が被ってなよ?」
「じっとしてろ。」
外套を外そうとしたが彼から抱きしめられていた為、それは叶わなさそうだ。
諦めたようにスノウがそっと彼の体へと体重をかければ、彼はそれを物ともしない様子で体がブレることは無かった。
《―――――― おかえり………》
「…?」
何か聞こえた気がして、スノウは閉じていた瞳を開く。
しかし視界は相変わらず真っ黒だ。
「……リオン、さっき何か聞こえなかった?」
「は? 何も聞こえていないぞ。」
『僕も聞こえませんでしたよ?何が聞こえてきたんですか?』
「なんか…"おかえり"って聞こえた気がしたんだけど…。」
「そこら辺の餓鬼が遠くの方で言ってたのを、偶然お前が耳にしたんじゃないか?」
「そうか、な…?」
確かに聞こえた気がしたけど、それでも外套を取ってくれない彼に苦笑をする。
これじゃあ、私が外套を取ってほしくて嘘をついた様じゃないか。
仕返しとばかりに私は一気に下に座り込み、外套を掴んだ。
そしてそのまま彼に被せれば慌てたような彼の声が聞こえて、思わず笑ってしまった。
――――もう、闇色の結晶の欠片は見えなくなっていた。