NEN(現パロ風?)
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prologue.
___数百年前、世界各地に厄災が空から降り注いだ。
その厄災は隕石の様に降ってきては世界中に厄災をもたらし、また世界中を混沌とさせた。
その厄災の見た目はそんじょそこらの岩や隕石などと変わらない見た目をしていたため、探すのも壊すのも難解だった。
しかし無情にも降り注いだ厄災は、どういう原理なのか次々とその岩石から魔物を生み出しては人々を襲わせた。
魔物に対抗する術を持っていなかった人類は、強い魔物を前にして一気にその数を減らしてしまう。
人類が絶滅するかもしれない危機的状況で、生き残った人類が全てを諦めかけたその時……一筋の光明が見えた。
その光明を使い、人類は魔物へ対向する術を手にしたのだ。
───それが〝星の誓約〟である。
星の誓約は神聖なるものである。
選ばれし、対となる男女が星の誓約を交わすと、それぞれの左手の薬指には誓約の指輪が作り出される。
その指輪こそ災厄を討ち滅ぼすものであり、人類が災厄に対抗出来る唯一の方法。
その日を境に、星の誓約をした者達が世界各地に突如として現れ、人類に生きる希望が見出したのだ。
こうして我々は、平和を取り戻すための戦いへと身を投じていく───
「───と、ここまでは誰でも知っていますね。ここまでで質問のある人、手を挙げて。」
いつもの様に教師が怠そうな声で教科書を読み上げる。
そして、質問のある人がいないか教師が顔を上げた瞬間、外からけたたましいサイレンが鳴り響いた。
数コンマ遅れて学校の校内放送でもサイレンが鳴り響き、無機質な女性の声が流れてきた。
《緊急放送、緊急放送…。〈シャドウクリスタル〉が飛来し、周辺に〈シャドウ〉による被害が報告されています。至急〝星の誓約者〟は現地に向かってください。繰り返します。〈シャドウクリスタル〉が飛来し、周辺に───》
放送途中にも関わらず、クラスに歓喜の声が湧き上がる。
授業が中断したこともだが、生徒たちが興奮する一番の理由は───
「…だって?リオン。」
「ふん。さっさと終わらせるぞ、スノウ。」
「「「キャーーーー!」」」
「「「待ってましたー!!」」」
スノウとリオンは椅子から立ち上がるとお互いに近付き、左手を挙げる。
その二人の薬指にはきらりと光る指輪がはめられていて、窓から入り込む太陽の光のせいか、それはとても光り輝いて見えた。
そして二人がすれ違う瞬間、二人はお互いの左手をパチンと小気味よい音を鳴らしハイタッチをした。
その瞬間、二人の体が光り輝き徐々にその姿は変化していく。
すれ違い、目を閉じて一歩を踏み出す二人に合わせて体の前方の方からまるで漫画で行われる変身のように見た目が変わっていく。
スノウと呼ばれた少女はその黒髪ショートだった髪が、澄み渡る空のような蒼い髪色へと変化し、その上髪の毛までロングへと一瞬にして切り替わった。
その長い髪には黒いリボンで一つに結われており、蒼い髪にとても映える色である。
彼女が目を開けた時の瞳はいつもの黒目ではなく、なんと海色の綺麗な瞳へと変化していたのだ。
服装も学生服から中性的な服装へと変化し、見た目では女性か男性か分からない見た目へと変身した少女はそのまま艶やかな笑顔を浮かべる。
それを見て周りの女子が卒倒したのは毎度の事なので言うまでもない。
打って変わってリオンと呼ばれた男子学生もまた、黒目だった瞳を紫水晶の瞳へと変化させ、黒を基調とした服へと変化した。
変身が終わった瞬間、男子学生は手に持っていた剣を大きく振って変身終了していた。
「「「おお!!!!」」」
この通り、大歓声である。
〝星の誓約者〟は一般人からしたら憧れのヒーローなのだから、その変身シーンなんて夢のまた夢な事なのだ。
だからこそ、他の生徒達は大歓声を上げたのだ。
「〝星の誓約〟の名のもとに…」
「〈シャドウクリスタル〉を破壊し、この地に繁栄と栄光を。」
カッコ良い文言を吐いた二人へ賞賛の嵐と、これから戦いに身を投じる二人への激励が教室内に飛び交う。
そんな注目の的である二人はお互いを振り返り、笑みを零す。
「行こうか?レディ。」
「僕はレディじゃないと何度言えば気が済む? お前こそヘマするなよ?」
「重々承知してますよ、レディ。」
「……行くぞ。」
二人はお互いの両手を重ね合わせ、そして絡め合うとお互いの瞳を見つめ合う。
紫と海の色の瞳が交差し合うとその色を堪能し、満足したかのように瞳が閉じられていく。
そして暫し目を閉じていた二人は同じタイミングで目を開けると漸く手を離した。
それも名残惜しそうに───
「さぁ、行こう。」
スノウの掛け声と共に、二人は窓から外へと飛び出した。
しかしスノウ達のいる学年はこの学校の中でも最上階である4階だ。
そんな場所から飛び降りれば普通なら耐えきれないが、二人はあたかも1階から飛び降りたかのように何事も無い顔をして着地をする。
そして同じタイミングで足を踏み出し、駆け出した。
「場所は分かるか?!」
「今探知中!」
『坊ちゃん達!〈シャドウクリスタル〉はここから北に2、3kmです!!』
「……遠いな。他の奴らの方が早いんじゃないか?」
「まぁでも、被害が報告されてるってことはだいぶ前から〈シャドウクリスタル〉が落ちていると思ってもいい!〈シャドウ〉を倒すだけでも良しとしよう!」
駆けながら話す二人は、たまに顔を合わせながら目的地へと急ぐ。
その2人の横を颯爽と抜いていく2人組が居た。
「あんたたちって、ほんっとノロマね!」
「だ、ダメだよ…!二葉…!そんなこと言っちゃ2人に失礼だよ…?!」
「ノロマなのが悪いんじゃない!…ってことで、今回の〈シャドウクリスタル〉はあたし達が頂くわよ!行くわよ、和也!」
天真爛漫そうな少女が嫌味ったらしい顔でスノウ達を見てはさらに速度を上げていくのを見て、和也と呼ばれた男子も慌てて走る速度を上げ、二葉と呼ばれた女子に追いつこうとする。
そんな2人組は、いつもスノウ達を揶揄っては挑戦状みたいに何かしらケチをつけてくるのだ。
スノウもリオンもそれに慣れた様にそれぞれ顔を変えていく。
スノウは苦笑を滲ませ、リオンは呆れた顔で嘆息する────それも、〈シャドウクリスタル〉との戦いになれば日常茶飯事の事だった。
「相変わらず、二葉のレディは元気だね?」
「……ふん。あれは元気とかそういうのじゃない。“騒がしい”だ。」
『毎度の事ながら、生意気に去っていきますねぇ…。坊ちゃん達も負けてられませんよ?』
「構うな。ああ言う手合いは、無視するのが一番だ。」
「怪我したら元も子もないし、私達は私達のペースでやっていこうか。」
そう言ってスノウは笑顔を向けながら右手を彼へと差し伸べる。
そんなスノウへ、リオンもまた応えてあげるように自身の左手で彼女の手を強く握った。
「……だが、毎度毎度五月蝿く去っていく奴らに一矢報いるのもまた一興だろう? たまには張り合ってみるか?」
そう言うとリオンは走る速度を格段に上げ、スノウは手を引かれながらも自身も速度を上げていく。
二人は一般人では出せないようなスピードで走り抜け、例の目標をその目で捉える。
「げ?!」
「ほら…!だから言ったんだよ…?!」
「はっ! ノロマはどっちだろうな?」
「悪いね?二人とも。お先!」
そうして、二人は手を繋いだまま二葉達を簡単に追い抜いていった。
───近付いてくる戦闘音、そして人間の雄叫びや悲鳴……。
その音が聞こえてからは、二人は気を引き締め手を離す。
その手にはそれぞれ武器があった。
スノウにはガンブレードと呼ばれる銃剣が。
そしてリオンには、特殊な剣であるソーディアン〝シャルティエ〟と反対の手には短剣が握られていた。
彼は双剣使いなのでその2つの剣を使い、攻撃をする完全なるアタッカー。
スノウは銃剣と呼ばれる剣で攻撃から支援を行うタブルプレイヤーである。
「___気を付けて行ってくるんだよ?シャープネス!」
攻撃力上昇の魔法を唱えたスノウへ、リオンが軽く礼を言うと、颯爽と敵へと向かっていく。
それを見送ったスノウは更なる支援を彼へと飛ばした。
「___防御上昇、バリアー!」
『さすがスノウです!』
「ふん。後は簡単に仕留めてやるさ。」
両手にした剣を使い、あっという間に周りの敵を次々と蹴散らしていくリオン。
その背後に立ち、彼の命を脅かす者居れば、後方支援しているスノウの魔法が飛ぶ。
「___させないよ? フィアフルストーム!」
荒々しく攻撃的な嵐が吹き荒れ、リオンの後ろにいた敵が吹き飛んでいくと、そのまま倒されていく。
それに彼の愛剣であるシャルティエが反応を示す。
『ありがとうございます!スノウ!!』
「ふふ。こちらこそありがとう?シャルティエ。」
「和んでいる場合か。来るぞ!」
リオンの忠告通り、〈シャドウクリスタル〉から大きな光が迸る。
それは、輝かしい光などでは決してない。
禍々しい光を放出した〈シャドウクリスタル〉は、その光を〈シャドウ〉へと変えていく。
益々気持ち悪くなったその闇色の光は、大きくなると強大な〈シャドウ〉を生み出していく。
まるでゲームで言う、ボス戦とでも言いたげな空気感の中、スノウ達の他にもいた〝星の誓約者〟が緊張感を走らせる。
しかしスノウとリオンは涼し気な顔でその〈シャドウ〉を見据えていた。
「援護は任せたぞ、スノウ!」
「うん、それは任せてくれ。くれぐれも怪我をしないようにね?レディ!」
「だから!僕はレディじゃないと───」
「ほら、お出ましだよ!____キーネスト!」
味方1人の攻撃力を戦闘終了まで上げる支援術、キーネスト。
その上昇率は15%にもなり、かなり攻撃力を上げることが出来る。
元々攻撃力の強いリオンへそれを使えば勿論───
「ふん!他愛ないな。」
あっという間にボス戦をこなしたリオンへ、スノウが近寄りながら賛辞の拍手を贈る。
その間にリオンは、〈シャドウクリスタル〉へと近付くとシャルティエを一閃させ、いとも簡単に〈シャドウクリスタル〉を壊してしまった。
闇色のクリスタルが壊れると、パキンッという高い音がしてその場で光を失い、転がっていく。
それはもうそこら辺の岩や石ころと変わらない見た目になり、リオンはそれを見届けると近寄ってきてくれたスノウの手を握る。
「大した事なかったな。」
「お疲れ様?リオン。怪我はしてないかい?」
「あんなので怪我をするやつの気が知れない。……お前は、どこも怪我はないか?」
「うん、大丈夫だよ。この通り、ね?」
両手を広げて見せたスノウを見て、ホッと安堵の息を吐くリオンだったが、その場に聞こえてきた煩わしい声に突如顔を顰めさせた。
「きぃーーー!!あたしたちが先に壊そうと思ったのに!!!」
「そう言っていつも彼らに先を越されてるじゃないか…、二葉……。」
「う、うるさいわね! 和也の癖に生意気よ!」
「えぇ…?」
呑気な顔をして頭を掻く和也と呼ばれた男子は、二葉という女子の言葉に、気にも止めない様子で見ていた。
それを気に食わない二葉は地団駄を踏みながら和也を怒っていた。
それを完全に無視したリオンはそっと手を引き、スノウの気をこちらに引かせる。
「帰るぞ。学校に。」
「うん。行こうか?」
二葉たちを見ていたスノウもまた、そんな彼に優しい笑みを見せて頷いた。
続々と〝星の誓約者〟達が去っていく中、二葉はまだガミガミとやり合っていたので、スノウ達は静かにその場を後にした。
どうせあの二人も同じ学校だが、今だけは……そっとしておこう。
そんな気持ちになったスノウもまた、リオンに手を引かれ学校へと戻り、そして日常へと戻っていく。
これが、彼らの戦闘ルーティン。
そして、危険であるはずのそれらが、彼らの日常の一環である。
そんな日を送りながら、スノウとリオンの運命の物語が始まる。
────それは、どこに向かっているのだろうか?
破滅?
それとも、救い?
今日も彼らは運命の中で抗って、藻掻いて生きている。
人は脆く、そして美しい。
そんな彼らの───大切な、大切な物語。
___数百年前、世界各地に厄災が空から降り注いだ。
その厄災は隕石の様に降ってきては世界中に厄災をもたらし、また世界中を混沌とさせた。
その厄災の見た目はそんじょそこらの岩や隕石などと変わらない見た目をしていたため、探すのも壊すのも難解だった。
しかし無情にも降り注いだ厄災は、どういう原理なのか次々とその岩石から魔物を生み出しては人々を襲わせた。
魔物に対抗する術を持っていなかった人類は、強い魔物を前にして一気にその数を減らしてしまう。
人類が絶滅するかもしれない危機的状況で、生き残った人類が全てを諦めかけたその時……一筋の光明が見えた。
その光明を使い、人類は魔物へ対向する術を手にしたのだ。
───それが〝星の誓約〟である。
星の誓約は神聖なるものである。
選ばれし、対となる男女が星の誓約を交わすと、それぞれの左手の薬指には誓約の指輪が作り出される。
その指輪こそ災厄を討ち滅ぼすものであり、人類が災厄に対抗出来る唯一の方法。
その日を境に、星の誓約をした者達が世界各地に突如として現れ、人類に生きる希望が見出したのだ。
こうして我々は、平和を取り戻すための戦いへと身を投じていく───
「───と、ここまでは誰でも知っていますね。ここまでで質問のある人、手を挙げて。」
いつもの様に教師が怠そうな声で教科書を読み上げる。
そして、質問のある人がいないか教師が顔を上げた瞬間、外からけたたましいサイレンが鳴り響いた。
数コンマ遅れて学校の校内放送でもサイレンが鳴り響き、無機質な女性の声が流れてきた。
《緊急放送、緊急放送…。〈シャドウクリスタル〉が飛来し、周辺に〈シャドウ〉による被害が報告されています。至急〝星の誓約者〟は現地に向かってください。繰り返します。〈シャドウクリスタル〉が飛来し、周辺に───》
放送途中にも関わらず、クラスに歓喜の声が湧き上がる。
授業が中断したこともだが、生徒たちが興奮する一番の理由は───
「…だって?リオン。」
「ふん。さっさと終わらせるぞ、スノウ。」
「「「キャーーーー!」」」
「「「待ってましたー!!」」」
スノウとリオンは椅子から立ち上がるとお互いに近付き、左手を挙げる。
その二人の薬指にはきらりと光る指輪がはめられていて、窓から入り込む太陽の光のせいか、それはとても光り輝いて見えた。
そして二人がすれ違う瞬間、二人はお互いの左手をパチンと小気味よい音を鳴らしハイタッチをした。
その瞬間、二人の体が光り輝き徐々にその姿は変化していく。
すれ違い、目を閉じて一歩を踏み出す二人に合わせて体の前方の方からまるで漫画で行われる変身のように見た目が変わっていく。
スノウと呼ばれた少女はその黒髪ショートだった髪が、澄み渡る空のような蒼い髪色へと変化し、その上髪の毛までロングへと一瞬にして切り替わった。
その長い髪には黒いリボンで一つに結われており、蒼い髪にとても映える色である。
彼女が目を開けた時の瞳はいつもの黒目ではなく、なんと海色の綺麗な瞳へと変化していたのだ。
服装も学生服から中性的な服装へと変化し、見た目では女性か男性か分からない見た目へと変身した少女はそのまま艶やかな笑顔を浮かべる。
それを見て周りの女子が卒倒したのは毎度の事なので言うまでもない。
打って変わってリオンと呼ばれた男子学生もまた、黒目だった瞳を紫水晶の瞳へと変化させ、黒を基調とした服へと変化した。
変身が終わった瞬間、男子学生は手に持っていた剣を大きく振って変身終了していた。
「「「おお!!!!」」」
この通り、大歓声である。
〝星の誓約者〟は一般人からしたら憧れのヒーローなのだから、その変身シーンなんて夢のまた夢な事なのだ。
だからこそ、他の生徒達は大歓声を上げたのだ。
「〝星の誓約〟の名のもとに…」
「〈シャドウクリスタル〉を破壊し、この地に繁栄と栄光を。」
カッコ良い文言を吐いた二人へ賞賛の嵐と、これから戦いに身を投じる二人への激励が教室内に飛び交う。
そんな注目の的である二人はお互いを振り返り、笑みを零す。
「行こうか?レディ。」
「僕はレディじゃないと何度言えば気が済む? お前こそヘマするなよ?」
「重々承知してますよ、レディ。」
「……行くぞ。」
二人はお互いの両手を重ね合わせ、そして絡め合うとお互いの瞳を見つめ合う。
紫と海の色の瞳が交差し合うとその色を堪能し、満足したかのように瞳が閉じられていく。
そして暫し目を閉じていた二人は同じタイミングで目を開けると漸く手を離した。
それも名残惜しそうに───
「さぁ、行こう。」
スノウの掛け声と共に、二人は窓から外へと飛び出した。
しかしスノウ達のいる学年はこの学校の中でも最上階である4階だ。
そんな場所から飛び降りれば普通なら耐えきれないが、二人はあたかも1階から飛び降りたかのように何事も無い顔をして着地をする。
そして同じタイミングで足を踏み出し、駆け出した。
「場所は分かるか?!」
「今探知中!」
『坊ちゃん達!〈シャドウクリスタル〉はここから北に2、3kmです!!』
「……遠いな。他の奴らの方が早いんじゃないか?」
「まぁでも、被害が報告されてるってことはだいぶ前から〈シャドウクリスタル〉が落ちていると思ってもいい!〈シャドウ〉を倒すだけでも良しとしよう!」
駆けながら話す二人は、たまに顔を合わせながら目的地へと急ぐ。
その2人の横を颯爽と抜いていく2人組が居た。
「あんたたちって、ほんっとノロマね!」
「だ、ダメだよ…!二葉…!そんなこと言っちゃ2人に失礼だよ…?!」
「ノロマなのが悪いんじゃない!…ってことで、今回の〈シャドウクリスタル〉はあたし達が頂くわよ!行くわよ、和也!」
天真爛漫そうな少女が嫌味ったらしい顔でスノウ達を見てはさらに速度を上げていくのを見て、和也と呼ばれた男子も慌てて走る速度を上げ、二葉と呼ばれた女子に追いつこうとする。
そんな2人組は、いつもスノウ達を揶揄っては挑戦状みたいに何かしらケチをつけてくるのだ。
スノウもリオンもそれに慣れた様にそれぞれ顔を変えていく。
スノウは苦笑を滲ませ、リオンは呆れた顔で嘆息する────それも、〈シャドウクリスタル〉との戦いになれば日常茶飯事の事だった。
「相変わらず、二葉のレディは元気だね?」
「……ふん。あれは元気とかそういうのじゃない。“騒がしい”だ。」
『毎度の事ながら、生意気に去っていきますねぇ…。坊ちゃん達も負けてられませんよ?』
「構うな。ああ言う手合いは、無視するのが一番だ。」
「怪我したら元も子もないし、私達は私達のペースでやっていこうか。」
そう言ってスノウは笑顔を向けながら右手を彼へと差し伸べる。
そんなスノウへ、リオンもまた応えてあげるように自身の左手で彼女の手を強く握った。
「……だが、毎度毎度五月蝿く去っていく奴らに一矢報いるのもまた一興だろう? たまには張り合ってみるか?」
そう言うとリオンは走る速度を格段に上げ、スノウは手を引かれながらも自身も速度を上げていく。
二人は一般人では出せないようなスピードで走り抜け、例の目標をその目で捉える。
「げ?!」
「ほら…!だから言ったんだよ…?!」
「はっ! ノロマはどっちだろうな?」
「悪いね?二人とも。お先!」
そうして、二人は手を繋いだまま二葉達を簡単に追い抜いていった。
───近付いてくる戦闘音、そして人間の雄叫びや悲鳴……。
その音が聞こえてからは、二人は気を引き締め手を離す。
その手にはそれぞれ武器があった。
スノウにはガンブレードと呼ばれる銃剣が。
そしてリオンには、特殊な剣であるソーディアン〝シャルティエ〟と反対の手には短剣が握られていた。
彼は双剣使いなのでその2つの剣を使い、攻撃をする完全なるアタッカー。
スノウは銃剣と呼ばれる剣で攻撃から支援を行うタブルプレイヤーである。
「___気を付けて行ってくるんだよ?シャープネス!」
攻撃力上昇の魔法を唱えたスノウへ、リオンが軽く礼を言うと、颯爽と敵へと向かっていく。
それを見送ったスノウは更なる支援を彼へと飛ばした。
「___防御上昇、バリアー!」
『さすがスノウです!』
「ふん。後は簡単に仕留めてやるさ。」
両手にした剣を使い、あっという間に周りの敵を次々と蹴散らしていくリオン。
その背後に立ち、彼の命を脅かす者居れば、後方支援しているスノウの魔法が飛ぶ。
「___させないよ? フィアフルストーム!」
荒々しく攻撃的な嵐が吹き荒れ、リオンの後ろにいた敵が吹き飛んでいくと、そのまま倒されていく。
それに彼の愛剣であるシャルティエが反応を示す。
『ありがとうございます!スノウ!!』
「ふふ。こちらこそありがとう?シャルティエ。」
「和んでいる場合か。来るぞ!」
リオンの忠告通り、〈シャドウクリスタル〉から大きな光が迸る。
それは、輝かしい光などでは決してない。
禍々しい光を放出した〈シャドウクリスタル〉は、その光を〈シャドウ〉へと変えていく。
益々気持ち悪くなったその闇色の光は、大きくなると強大な〈シャドウ〉を生み出していく。
まるでゲームで言う、ボス戦とでも言いたげな空気感の中、スノウ達の他にもいた〝星の誓約者〟が緊張感を走らせる。
しかしスノウとリオンは涼し気な顔でその〈シャドウ〉を見据えていた。
「援護は任せたぞ、スノウ!」
「うん、それは任せてくれ。くれぐれも怪我をしないようにね?レディ!」
「だから!僕はレディじゃないと───」
「ほら、お出ましだよ!____キーネスト!」
味方1人の攻撃力を戦闘終了まで上げる支援術、キーネスト。
その上昇率は15%にもなり、かなり攻撃力を上げることが出来る。
元々攻撃力の強いリオンへそれを使えば勿論───
「ふん!他愛ないな。」
あっという間にボス戦をこなしたリオンへ、スノウが近寄りながら賛辞の拍手を贈る。
その間にリオンは、〈シャドウクリスタル〉へと近付くとシャルティエを一閃させ、いとも簡単に〈シャドウクリスタル〉を壊してしまった。
闇色のクリスタルが壊れると、パキンッという高い音がしてその場で光を失い、転がっていく。
それはもうそこら辺の岩や石ころと変わらない見た目になり、リオンはそれを見届けると近寄ってきてくれたスノウの手を握る。
「大した事なかったな。」
「お疲れ様?リオン。怪我はしてないかい?」
「あんなので怪我をするやつの気が知れない。……お前は、どこも怪我はないか?」
「うん、大丈夫だよ。この通り、ね?」
両手を広げて見せたスノウを見て、ホッと安堵の息を吐くリオンだったが、その場に聞こえてきた煩わしい声に突如顔を顰めさせた。
「きぃーーー!!あたしたちが先に壊そうと思ったのに!!!」
「そう言っていつも彼らに先を越されてるじゃないか…、二葉……。」
「う、うるさいわね! 和也の癖に生意気よ!」
「えぇ…?」
呑気な顔をして頭を掻く和也と呼ばれた男子は、二葉という女子の言葉に、気にも止めない様子で見ていた。
それを気に食わない二葉は地団駄を踏みながら和也を怒っていた。
それを完全に無視したリオンはそっと手を引き、スノウの気をこちらに引かせる。
「帰るぞ。学校に。」
「うん。行こうか?」
二葉たちを見ていたスノウもまた、そんな彼に優しい笑みを見せて頷いた。
続々と〝星の誓約者〟達が去っていく中、二葉はまだガミガミとやり合っていたので、スノウ達は静かにその場を後にした。
どうせあの二人も同じ学校だが、今だけは……そっとしておこう。
そんな気持ちになったスノウもまた、リオンに手を引かれ学校へと戻り、そして日常へと戻っていく。
これが、彼らの戦闘ルーティン。
そして、危険であるはずのそれらが、彼らの日常の一環である。
そんな日を送りながら、スノウとリオンの運命の物語が始まる。
────それは、どこに向かっているのだろうか?
破滅?
それとも、救い?
今日も彼らは運命の中で抗って、藻掻いて生きている。
人は脆く、そして美しい。
そんな彼らの───大切な、大切な物語。