カイル達との旅、そして海底洞窟で救ったリオンの友達として彼の前に現れた貴女のお名前は…?
Never Ending Nightmare.ーshort storyー(第一章編)
Name change.
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決戦当日。
戦場には昨日と同じ兵士達の顔ぶれがある中、別の顔ぶれも見られる。
「……。」
緊迫した戦場の先頭には、澄み渡る空のような髪色をした女性…か男性か分からない人物が胸に手を置き、じっと目を閉じて戦場の先へと身体を向けている。
その綺麗な空色の髪を風で揺らしながら、何かを待つようにひたすら目を閉じて待っている。
そんな人物を、ここにいる全員が緊迫した様子で見つめていた。
「……うぅ、緊張してきた…!」
「カイル、その気持ちすごく分かるわ……。戦場って、こんなにも静かなのね……?」
「俺も流石にこんな大きな戦闘は初めてだぜ…。アタモニ神団でも、ここまで大きな作戦とか無かったしな……。」
「なんだい、柄にもなく緊張してんのかい?」
「うっせ…!」
ヒソヒソとそんな話が聞こえて来る中、心配そうに先頭の人物を見つめる二つの瞳。
全ては彼女の掛け声一つで始まる。
この大規模な作戦が────
「────来たか。」
「「「「「…!」」」」」
探知をしていた彼女がポツリと呟く。
その瞬間、彼女は自身の相棒を抜き取り天へと高く掲げた。
「今こそ、ファンダリアの民の為に!勝利の栄光を掴み取ろう!!……ただし!」
「「「「……???」」」」
返事をしかけた兵士たちが、最後の言葉で慌てて口を閉ざす。
彼女がくるりと軽やかに兵士たちを振り返れば、そこには昨日の真面目な軍人の顔ではなく、いつも見慣れたあの余裕そうな顔つきのモネがそこにはいた。
口元に人差し指を置いてニヤリと笑うと、戦場には不向きな言葉を連ねた。
「死人は認めないよ?私がいる限り、死人は出さない!!だがもし死人が出るようならハロウィンのこの時期に化けて出て来てくれ!!特大のお菓子と特大の説教を私直々に食らわせてあげるよ!」
「「「……!」」」
次第に戦場には笑いが起こる。
そして「これは死ねないな。」なんて言葉があちこちから聞こえてきて、カイル達は緊張した身体を僅かに緩めさせた。
「はは。モネ様の演説は初めてですか?」
「え?あ、はい…。」
カイル達の横にいた兵士が笑って話し掛ける。
不思議そうな顔をしたカイル達に兵士もジューダスも笑っていた。
「モネ様はいつもああやって戦場の空気を変えてくださるんです。私共の緊張をああやって言葉で解してくれるんですよ?」
「へぇ!そうなんだ…!やっぱりすごいな、スノウって。」
知らないスノウの一面を見て、仲間達が尊敬の眼差しを向ける。
そんな中、茶化すような口調で兵士の一人が質問をする。
「モネ様が死んだら誰が説教するんですかー?」
「そりゃあ、皆で説教してくれるんだろう?だから、私も死ねないのさ!皆の長ったらしい説教が怖いからね!」
「「「あっはははっ!!」」」
ドッと笑いが戦場に巻き起こる。
カイル達も次第にスノウの演説に惹き込まれるように笑っていた。
「それにここには一番説教されたら怖い人物がいるからね!嫌でも死ねないさ!」
「……ふん。」
自分の事だろうと分かっていたジューダスが鼻を鳴らすも、その顔は穏やかである。
ふと目を閉じたスノウがポツリと言葉を零す。
「絶対に死なせない。絶対に、だ。」
「「「…!」」」
「生きて帰ろう。そして今年こそ!ハロウィンの時期を楽しもう!!」
「モネ様、絶対それが目的じゃないですか!」
「当たり前だろう?!ハロウィンをやった事がないなんて、仲間達に言った私の心境を考えても見てくれ!悲しかったんだからね!!?」
心底そう思ってるかのように声高々に、そして拳を握り、話すスノウに笑いが止まらない戦場。
「毎年毎年…!この時期に来るこの厄災が憎くて仕方が無かった…!!しかし!それも今年で終わりだ!ファンダリアの兵士諸君!!今年こそは!ハロウィンを!絶対に!楽しむぞー!!!」
「「「おぉー!!!」」」
笑いながらだが、返事をしてくれた兵士達にスノウも笑って応える。
昔のモネを知る者も、知らない者も、徐々に心がひとつになるのが分かる。
それくらい、兵士達の顔が良くなってきていた。
「……全く、この厄災が無くならないと死んでも死にきれないよ!」
「モネ様が死んだら化けてでも出てきてもらいますからねー!?」
「死んでも扱き使われるのは勘弁願いたいものだけどね!?死人手当てがお菓子なら、私は食べきれないほどのお菓子を所望する!!」
「「少食なのにですかぁー!?」」
遂にはリアラとナナリーまで茶化す始末。
それにスノウがここ一番で大笑いして相棒を構えた。
「皆で楽しく食べるために決まってる!!……さぁ!行こう!!!」
「「「おおおぉぉぉお!!!!」」」
兵士達が迫り来る魔物へと向かっていく間、ジューダス達とスノウ、そしてAチームが待機をする。
スノウはカイル達を振り返ると、大きく頷いて作戦の確認を取った。
「カイル!閃光弾の色の意味、ちゃんと覚えてるね!?」
「え、えっと!青がオレ達への作戦開始の合図で!」
「赤色が確か、危険信号よね!」
「白が戦闘終了の合図で……」
「黄色が注意喚起の色!!」
「よく出来ました!よし、なら大丈夫だね!私たち陽動隊が行ったあと、青色の閃光弾が放たれるまで待機してるんだ!いいね!」
そう言ってスノウはAチームと共に笑顔で走り去っていく。
雪道でも颯爽と走れる兵士やスノウに感嘆しながら、カイル達は作戦の内容を一人ひとり言葉にしながら反復していた。
しかし数分も経たず、青の閃光弾が遠くの方から打ち上がるのが見える。
ジューダスは仲間達を振り返り、大きく首肯いた。
「……行くぞ!」
「「「おぉ!!」」」
ジューダス達も慣れない道ではあるが、軍事会議で話した道を辿っていく。
途中で派手な技の音が聞こえ、明らかにそれはスノウだろうと仲間達は遠い目をしていた。
「魔物が全然出てこないね!」
「スノウが率いる陽動隊が魔物の侵攻を食い止めている!これで魔物が来られたら陽動隊の実力を疑うぞ!」
「スノウが頑張ってるのよね!ハロウィンを楽しむ為にも、私たちも頑張りましょ!」
「「おぉ!」」
時折、カイルやロニが転びながらも辿り着いた最奥。
そこにはゲロゲロと気持ち悪い声を出し、仲間を呼び寄せるネオ・ポイズントートがいた。
その体の色は毒々しく、触るのも危険そうだと感じるほどの不気味な色味である。
目は大きく、ギョロっとしているのも不気味さが増す要因なのかもしれない。
全員が気持ち悪いとばかりに顔を顰めさせ、嫌な顔をした後にその魔物の前へ飛び出そうとすれば、先に到着したスノウとAチームがネオ・ポイズントートの前に出てしまう。
「よっと!……って、あれ?皆まだ到着していないようだね。……雪道って事、計算に入れて無かったからなぁ…?」
「どうしますか?モネ様。」
「君たちはFチームと合流してくれ。ここは取り敢えずお手並み拝見させてもらうよ。」
「ひ、一人でですか?!」
「え?そうだよ?何かおかしいかな?」
「この強敵を一人でなんて無理ですよ!!」
そんな会話をしている間にも、ネオ・ポイズントートが攻撃を仕掛けてきて、全員で顔を顰める。
スノウが慌てて兵士に逃げるよう伝え、毒による被害は食い止められたが……。
「……わぉ。」
「こ、これは…!!」
毒を吐いたは良いが、その毒は酸性なのかシュワーと雪が解け、下にあった草木は枯れていく。
その光景にスノウがやれやれと肩を竦めさせると兵士達がスノウの肩を掴み、後方へと引っ張る。
「ちょっ?!」
「精鋭チームが来るまで待ちましょう!!絶対無理ですって!」
「……いやぁ?でも皆、ここへ辿り着いたようだよ?」
そう言って頭だけ後ろに向けたスノウは嬉しそうにそう話す。
ジューダス達がスノウ達の前に踊り出れば、すぐさま仲間達からの回復がスノウへ飛んでくる。
暖かなその癒しの光に暫し目を閉じて堪能していたスノウだったが、回復が終わればすぐさま武器を銃杖へと切り替え、その場で構えた。
「さーて、やってしまいますかね。」
「スノウ、体力持ちそう?!」
「皆のお陰で万全だよ?傷一つないしね?」
「無理はするなよ。」
「あぁ。分かってるよ、レディ。」
カイル達前衛組が魔物に攻撃しに行く中、スノウはアイコンタクトで促し作戦通りAチームを逃がす。
そして銃杖を構えたスノウはそのまま戦う前衛組を見ながら後方支援を主軸に行っていった。
「___ヴァイト・ルインフォース!」
仲間全員の攻撃力を一時的に上げる術技〈ヴァイト・ルインフォース〉を使用したスノウは続いて防御力上昇の術技を連続して使用する。
仲間達からのお礼が飛び交う中、ネオ・ポイズントートが身体を震わせる。
軍事会議どおりに避難完了していた仲間達はその毒を食らうこともなく、次の攻撃へと見事に転じていた事にスノウが感嘆する。
「___ディスペルキュア!」
「「「ありがとう!スノウ!!」」」
状態異常になった者は居ないものの、回復支援をしたスノウへ仲間達の笑顔が溢れる。
それに笑いを零したスノウは、支援から攻撃へと転じさせた。
「___出でよ、ロックマウンテン!」
弱点が地属性ならば、地属性で攻撃すべし。
スノウが強力な地属性の魔法を使用すれば、ネオ・ポイズントートが嫌そうにその不気味な巨体を揺らす。
畳み掛けるようにして全員が地属性の術技を使用すれば、敵が逃げ出そうとする。
「ふふ、何処にも行かせられないなぁ?___アイヴィーラッシュ!!」
魔法陣からは大量の茨が現れ、敵を強く拘束していく。
すると敵が悲鳴を上げるかと思いきや、妙な鳴き声を放ちスノウ達を驚かせる。
瞬時にスノウとジューダス、そして修羅が警戒をして辺りを見渡すと────
「「うわっ!!!!」」
カイル達が驚愕の眼差しを向けたその先、そこには大量のカボチャがこちらに向かってやってきていた。
それもただのカボチャではない。
ハロウィンでよく見る、中身がくり抜かれたものだ。
「げ…!?ジャック・オ・ランタン!?」
「ハロウィンらしいっちゃあ、らしいが…。」
修羅もそれを見て呆れた眼差しを見せる。
それが何処からともなくスノウ達の方へと移動してきて、遂には囲まれてしまった。
「流石にこれは予想できなかったけどね…?」
「ふん。何にしろ倒すだけだ。」
「ふふ、頼もしいよ。…因みに、弱点はどうやら水のようだよ?ジャック・オ・ランタンは中に火を灯してるからじゃないかな?」
スノウがステータス表示をさせて敵の弱点を見ている。
その言葉にリアラがすぐに反応を示し、水属性の術の詠唱を始めていた。
「スプラッシュ!!」
「広範囲な水属性の術、ね…?ここは一掃して、早くあのカエルをどうにかしよう!____流るる水の奔流…敵を押し流し活路を見い出せ!シアンディーム!!」
水の精霊シアンディームを召喚したスノウに、シアンディームが不敵な笑みを浮かべる。
『水の力、思い知りなさい。』
一言そう言えば、シアンディームは激流を使いジャック・オ・ランタンをいとも簡単に倒していってしまう。
その合間を潜り抜け、カイル達前衛組がネオ・ポイズントートへと駆けて行く。
そしてスノウ達、ファンダリア全ての民の悲願は叶ったのだ。
最後にとどめを刺したカイルがパァと顔を明るくさせる中、少しの間呆然としていたスノウだが、すぐに我に返ると空に向かって天高く閃光弾を放った。
その色は、戦闘終了を報せる白色だった。
「「「「うおぉぉぉぉ!!!!」」」」
遠くの方から聞こえる雄叫びが、カイル達にも聞こえて全員で笑顔を溢れさせた。
するとすぐに踵を返したスノウを見てカイルが引き止めようとしたが、それをジューダスが止める。
「兵士たちの様子を見に行ったんだろう。今回の指揮権はあいつにあったからな。それと残党狩りだな。」
「残党狩りって…。」
「向こうにはまだ敵が残ってるってこと?」
「大元を倒しただけで魔物が消えるという現象は今までに確認できていない。残りの魔物を倒さなければ街に被害が出るだろうな。」
「オレ達も行こう!スノウばっかりに大変な思いさせられないよ!」
「…いや、その必要もないみたいだぞ?」
修羅が空を見上げているのに習って、全員が空を見上げる。
街の近くからは昼間でも分かるほどの大量の白色の閃光弾が打ち上げられていたのだった。
同時に歓喜の声や、涙しながら感動する声など、たくさんの感情を含んだ声が混じっていた。
これでようやくスノウ達の憂いが晴れることだろう。
仲間たちは一気にその顔を綻ばせたのだった。
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____ハイデルベルグ城内
大規模な戦闘が終わり、城内や街中ではハロウィンで盛り上がりを見せていた。
各兵士や騎士、そしてカイル達も城内で軍事作戦の労いを兼ねたパーティで楽しんでいた。
「…。」
ただ一人、そんな賑やかな城内を離れて街の高台でハロウィン仕様のオレンジに包まれた町並みを見下ろしている人物が居た。
転落防止用の柵に手を置いて黄昏れているスノウは、しんしんと積もる雪を見ながら街の賑わいに目を細めさせていた。
スノウにとっても、ようやく前世の悲願が叶ったのだ。
心の底から喜ばしいと思うと同時に、少しだけ激しい戦闘の余韻に浸っていた。
疲労感はもちろんあるものの、それでも達成感というのは何にも代えがたいものがある。
それをスノウは知っているのだ。
だからこそ、こんな静かな場所で一人黄昏れているのだ。
今回の功労者の一人であるにも関わらず、だ。
「…風邪を引くぞ。」
「……。まさか、ここにいるのがバレるなんてね…?」
「ふん。」
黄昏れているスノウの横に並ぶようにジューダスが静かに立ち、街並みを見下ろしていた。
ちらりと見たスノウの横顔は何処か憂いているようで、そして何処か浮かない顔をしていた。
ジューダスは一度目を伏せると、横にいるスノウへと体を向けた。
「…無理をするな、と言ったのが聞こえなかった訳じゃないだろうが…。」
そっと腕に触れられ、スノウもまたそこへ視線を向ければ、スノウの腕には数か所傷ができていた。
血は止まっているものの、擦り切れた服の下からは生々しい傷跡が見え隠れしている。
ジューダスはシャルティエを手にすると静かに詠唱を唱えた。
『「____ヒール。」』
「ありがとう、レディ。」
「だから…僕はレディじゃない。」
何処か弱々しさを孕んだその声音にスノウが彼の顔色を窺う。
少しだけ悲しそうなその顔色に、スノウは一度静かに息を吐くと彼を真正面から抱きしめた。
そっと彼からも抱きしめ返されたのを感じたスノウは、フッと笑いを零した。
「…本当は、分かってたんだ。君が私のことを心配してくれているんだって。」
「……だが、お前は僕の意見に真っ向から否定したじゃないか。」
「うん。あの時も言ったけど私情を挟んじゃいけないって気持ちが強かったから、それで意固地になったのかもね。仮にも軍人なんだから、仲間の皆のことを危険だと分かっていても戦場へ連れて行かなくちゃいけない。それは陛下が彼らに何かを見出したからだ。」
「……。」
「だから下手に君たちを庇ったりしたら軍人として失格なんだ、って思ってたんだ。この采配が本当、難しかったね。逆に同じ元軍人だった君が反抗してくるとは思わなかったけどね。」
そっと体を離した彼の顔を窺うスノウは、彼の顔を見てくすりと笑って頬に触れた。
スノウが思っていたよりもずっと難しい顔を彼がしていたからだ。
彼も元々は軍人だった。
そんな彼がまさか自分の心配をして、その為に自分が怪我をしにくい道へと誘い込もうとしていた事にあの時、少し驚いたんだ。
上司は率先して危険な道を選ぶ。
あの時、指揮権は自分にあったにも関わらずそれに意見をして、絶対に仲間たちに近しい場所を選んでくれた彼。
それが嬉しくないはずがない。
でもそれを認めるわけにはいかない、って前世での自分が言っていたんだ。
けれども今は、仲間たちに絆されて、なんて甘い道を選ぼうとするんだろうって思ったこともあった。
でもシアンディームからも仲間を頼るのは悪いことじゃないって教わったし、カイルやリアラの皆を信じる気持ちに感化されてそれがただただ甘えじゃないってことも教わった。
だからこそ、あの時の決断は非常に難しかったんだ。
「いつもありがとう。レディ。私に生きる道筋を照らしてくれて、いつも…感謝してる。」
「……ふん。当然だ。………だが、あの時素直に僕の作戦を聞いていればあんなに拗れることもなかった。」
「ふふ、ごめんって。そんなに拗ねないでよ?」
「拗ねてなどない。子供じゃないんだからな。」
そう言って拗ねた顔をする彼に、再び笑ってしまえばデコピンをされてしまう。
それでもおかしそうに笑っていれば、彼はそっぽを向いてしまった。
あぁ、怒らせてしまったかな。
「もし…」
「うん?」
「…いや、何でも無い。」
彼の心中など分かるはずもなく、かといってその心内を察してあげられるほど情報を得られていない気がした。
スノウは彼の言い淀んだ言葉を諦めて、再び柵の方へと体を向けて街並みを見下ろす。
「そういえば、何故私がここにいると分かったんだい?」
「…以前、ここでお前の過去を知った…いや、過去をお前自身から聞いたことがあっただろう。城内に居なかった事を鑑みても、もしかするとここに居るんじゃないかと思ってな。」
「そっか…。まぁ、ここはハイデルベルグの中でもお気に入りの場所だからね。何かあったらここに来ていたものさ。…昔はね。」
「まぁ、外に居たのは完全に英断だったな。」
「ははっ。だろう?あのまま中に居たら、大変なことになっていただろうしね。」
きっと将軍席を授与するとか、他の兵士たちからも上官に推薦されたりとか…。
何かとスノウを、ファンダリアの何かしらの役職につけようと躍起になる人たちが騒いでいるのが目に見えている。
スノウもそれを分かって逃げたのもあるのだ。
遠い目をしたスノウを見て、ジューダスが鼻を鳴らし、彼女の腕を取った。
「このままだと、どちらにせよ風邪を引く。中に戻るぞ。」
「えぇ…?さっきの話、聞いてたかい?」
「あぁ。お前が他の兵士に絡まれて困る姿も見ものだと思ってな。」
「酷い!絶対に中に入らないからね?!」
「まぁ冗談だが…。…それよりも、お前はそんな事を言っている場合じゃないだろうが。体、冷えているぞ。」
そう言って、ジューダスがスノウの頬に手を当てる。
その頬はこの寒空の中で大分冷えており、心做しか、寒そうに青白く見えた。
両手で包み直したジューダスは、スノウが温かそうに目を細めさせるのを見てため息をつく。
そして強制的に腕を掴み、中へと連行したのだった。
……無論、スノウは嫌がっていたが。
【皆の知らない"私"】
___「あ、カボチャプリンだって?レディ。美味しいと思うよ?」
___「…お前、よくあの魔物を見た後で食う気になれるな…。」
___「それはそれ。これはこれ。はい、あ~ん?」
___「っ///」