カイル達との旅、そして海底洞窟で救ったリオンの友達として彼の前に現れた貴女のお名前は…?
Never Ending Nightmare.ーshort storyー(第一章編)
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最近は珍しくクエストに追われる日々だった。
もちろん、その根底にはカイルの困った人を見過ごせないという性格が災いしているのだが、それは彼の良い性格だと私は思っているし、注意するにしても些か遅すぎる気もした。
とまぁ、そんな事で……割と最近はその依頼だったりクエストだったりで忙しくしていた訳だ。
今目の前にいる胡散臭いおじ様も、そんなカイルのお人好しさにつけいった一人、である。
「いやぁ、ありがとう!! 君たち! おかげで助かったよ!」
「へへっ! どういたしまして! おじさん!」
「お、おじさん…。」
見た目はかなり老けているようだが男性がカイルの言葉でショックを受けているのを見ると、どうやら若かったらしいおじ様が、カイルを見て引き攣り笑いをしていた。
それを見ていた隣のジューダスが男性に対して鼻で笑う辺り、きっと私と同じで老けていると思ったに違いない。
「お礼は弾ませて貰うよ!」
「えぇ! ホント?! おじさん!」
「ホントだとも! これはね? 古くから伝わる由緒正しき物でねぇ! なんと! これさえあれば宝物がすぐに見つかるという代物なのだよ!」
ジャジャン!と効果音がつきそうなほど、勢いよく出てきたそれは、地球では漫画とかでよく出てくる“ダウジングマシン”だった。
金属の棒のような物が直角に折れ曲がっていて、そこを持って歩いていれば金属の棒が宝の近くで反応する…と言った奴だ。
始めは不思議そうな顔をしていたカイルだったが、男性の説明を受けている内にその顔を爛々と輝かせる。
周りの人達からすると〝胡散臭い〟の一択だが…。
「ええ!ホントに宝物の埋まってる場所がわかるの?!」
「ホントだとも!」
カイルのその反応に胸を反らせ、腰に手を当て……如何にもふんぞり返っている男性は鼻を高々とさせていた。
ダウジングマシンを受け取り、興奮冷めやらぬ顔でそれを見つめるカイルは私達を振り返ると手に持ったダウジングマシンを高々と掲げた。
そして目をキラキラとさせ、こう言った──
「皆っ!宝探ししよう!!」
……誰もがカイルの言うことが先んじて分かっていたので、誰もが頭に手をやり、やれやれと呆れながらも笑顔で頷いていた。
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やって来たのは、とある渓谷。
崖伝いに歩いているとロニが顔を青ざめさせ壁にへばりついている。
……そういえば、この年長者はお化けと高所が怖いのだったか…。
「お、お前ら…!下を見るなよ…!!下を!」
「うわぁ!すごい深そうだね!」
「おい!カイル!!言った傍からそんな事言うんじゃねぇ!!」
先頭2人が賑やかに歩いていくのに対して、中盤組は恐る恐る歩いていく。
「お、落ちないかしら…」
「落ちたら一溜りもないから気をつけなよ?リアラ。」
「う、うん…!」
「怖いなら私が手を繋ごう。これならリアラが落ちても助けられるしね?」
ギュッとリアラの手を握れば嬉しそうに握り返され、それにスノウも嬉しそうに笑顔で応える。
そのまま2人は仲良く握った手を振りながら渓谷を歩いていく。
「仲がいいねぇ。」
「ああやって繋いでおいて2人とも落ちたら洒落にならんがな。」
「そう言って、みんなの事一番に心配してるんだろ?」
『流石ナナリー。坊ちゃんの事よく分かってますねぇ!』
「……。」
最後尾を歩く2人は目の前で手を繋いで歩くスノウとリアラを見て感想を零す。
何だかそれは、とても仲の良い姉妹のようにも見えていた。
「ま、本当はスノウと手を繋ぎたかったんじゃないのかい?」
「はっ。誰がそんなことを。」
『坊ちゃんったら、素直じゃないんですから!』
その瞬間、ジューダスの手はシャルティエのコアクリスタルへと伸び、爪をこれでもかというくらい強く立てる。
途端に悲鳴が上がり、僅かに後ろを振り返ったスノウの顔は笑いに満ちていた。
「(またシャルティエが彼の気に食わないことを何か言ったんだろうね?)」
「どうしたの?スノウ。」
「いや。何でもないよ、リアラ。それより、前のカイル達から大分離されてしまったけど…無理はしないでいい。私達は私たちのペースで行こう。無理して落ちたら大変だ。」
渓谷というだけあって、下は真っ暗で見えないくらい深いのが分かる。
だが別に、歩くスペースが人一人分しかない訳ではなく、現に今スノウとリアラは横に並んで歩けているくらい道の横幅は広くある。
ただ、下が奈落の底だから気をつけなければいけないというだけなのだ。
「うん。気をつけましょ?ここで落ちちゃったら私たち一溜りもないものね?」
「何とかしてリアラは助けるにしても、上がってくるのには苦労するかもしれないね?」
「やだ、スノウ。私だけ助けるなんて怖い事言わないで?2人で助かりましょう?」
「ふふ。そうだね? 私としたことが、変な事を言ってしまったようだ。許してくれないかな?レディ?」
「ふふっ!スノウったら!」
リアラの手背へと口付けを落とすスノウにリアラが恥ずかしそうに顔を赤くさせ、はにかみながら、それでも嬉しそうに笑みを零す。
そんな時、先頭組が驚いた様な声を上げた事で全員の視線は前の方へと移る。
だが彼らは大分進んでいるのでここからだと小さく見えて何に驚いているのかは分かりそうもない。
スノウはリアラの手を引き、前へと進む。
その後をジューダス達も急いでついて行き、カイル達へと追いつくと、カイルの持っているダウジングマシンが反応していることに気付いた。
「見てよ! これ!!すごくない?!」
「すっげえ反応はしてるんだが…いまいち何処に宝があるのか分からないんだよなぁ…」
ロニもそれを見てスノウ達へと困ったように頭を掻きながらそう零す。
仲間達はその反応の元を探ろうと辺りを見渡した。
念入りに念入りに見ていくが、ロニの言う通り何がある訳でもないので仲間達の顔は自然と傾いていた。
「……ん?」
ふと、スノウが何かに気付いたように目を閉じ頭に手を置く。
それはいつも探知してくれるスノウの癖だった。
スノウの反応にカイルがキラキラと目を輝かせ、何かあったのかとスノウの言葉を待った。
しかしカイルの予想とは真逆な反応をスノウは示したのだ。
「っ! 全員、早く走って!!」
「?!」
「え、なに?」
「急ぐんだ!早く!」
スノウに手を引かれリアラも走り出す。
その状況に慌てたカイル達も慌てて走り出すと、上の方から妙な音が聞こえてくる。
それはまるで魔物の声のような…。
「「「「なにーーーーっ?!」」」」
そう渓谷のまだ上の方から魔物が押し寄せていたのだ。
それにカイルの持っているダウジングマシンが激しく反応していた。
「おいおい!! あの数はやべえだろ?!」
「口を動かすんじゃなく、足を動かせ!! こんな所で戦うなんて僕は御免だからな!?」
「流石にジューダスもああ言ってるってことは、ここでの戦闘は私達には不利だ! 急いで進もう!!」
スノウとジューダスの助言通り、カイル達は渓谷の道を急いで走っていく。
落ちないように、踏み外さないように慎重に…!
「きゃっ!?」
「っ!」
リアラが魔物を振り返った瞬間、足を踏み外した事でスノウは瞬時に腕に力を入れ、リアラを崖下ではなく道の方へと引っ張り上げ、急いで手を離す。
しかし、その反動でスノウが落ちてしまったのだ。
「っ?! スノウ!!」
『だ、大丈夫ですか?!!』
「私の事は気にしなくていいっ!!下に道がある!! そこから追いつくから皆は先に進むんだ!!」
どうやら剣を崖に突き刺し、事なきを得たらしいスノウに全員が胸を撫で下ろす。
しかしリアラが泣きそうな顔で崖下を見ていたので、今度はカイルが手を繋ぐ。
「リアラ!スノウの言う通りにしよう!」
「で、でも…!」
「大丈夫だよ!スノウなら!」
そう言ったカイルの顔は真剣だが、微笑んでもいる。
信頼する仲間……スノウの事を思ってカイルは微笑んだのだ。
いつもこういった状況になっても何とかしてきたスノウ。
だから安心して任せられるのだ。
「あいつは以前何度もこういった経験をしている。今は案じるより足を動かせ。」
「一番心配してるハズのジューダスがここまで言うんだ。アタシたちは先に進もう、リアラ。」
「……分かったわ!」
下にいるだろうスノウにリアラが声を張り上げ、応援する。
「絶対!! 絶対に追いついてね!スノウ!」
「勿論だよ!レディ!」
下から反響してくるスノウの声は元気そうで、それだけで仲間達に先へと進む勇気をくれる。
カイル達は急いで渓谷の道を走り、魔物に追いつかれないようにと渓谷を抜けるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はぁっはぁっ…」
「あー!しんど…!」
仲間達は息が荒いまま、その場で呼吸を整えようと立ち止まる。
もうここは渓谷を越えた先だ。
「はあ、はあ、…スノウ、大丈夫かしら…?」
「魔物も、いつの間にかっ、追ってこなくなったね…。」
『魔物がスノウの方に行ってないといいですけどね…。』
「……。」
呼吸を整えつつ、ジューダスが渓谷を振り返った。
しかし、友の姿は未だ見当たらない。それを彼が心配しない筈が無かった。
「(スノウ……。)」
だが、心のどこかでは信じている。
彼女はこんな所でくたばる様な人では無い、と。
「よっ、と。」
崖下からふわりと浮かび上がるように現れたのは心配していた人そのもの。
皆喜びから顔を笑顔に染め、スノウを迎えた。
「スノウっ!」
「あぁ、ただいま。リアラ。無事で何よりだ。」
頭を優しく撫でる彼女の頬には怪我をしたのか、血痕がある。
それを見てしまったリアラが回復を唱え、心配そうにスノウの顔を見た。
「怪我してるわ…!」
「ん? …あぁ、ちょーっとだけ、派手にやったからね。それだと思う。ありがとう、リアラ。」
「ごめんなさい、私…」
「ストップ。 ごめんなさい、じゃなくてリアラからの“ありがとう”が聞きたいな? だって悪いことは何もしてないんだから。」
「スノウ…。 うん、ありがとう。」
「うんうん。その笑顔だ。」
頭を撫でるのを再開させたスノウは、カイルの持っているダウジングマシンに目を向ける。
「しかし、そのダウジングマシンは魔物が来た事を教えてくれたようだね。」
「お宝じゃないのか…。なんだ…。」
ガッカリと肩を落としたカイルだったが、ジューダスは違う意見があるようで言葉を紡ぐ。
「……それが呪いの道具じゃなければいいがな。」
「「え?!」」
「いつだったか、スノウにうさ耳のついた呪いの道具を付けたことがあったが……、まさか、あれと同じか?!」
ロニが「うげ、」と顔を顰めさせ、カイルの手に持っているダウジングマシンを見やる。
確かに、それだったらあの大量の魔物の襲来にも納得が行く。
つまり、あの人に騙されたという訳だ。
体のいいように使われてしまったのだ。きっと。
「ま、まだ分かんないよ?!」
「まぁ、まだ一回目だからね?」
「カイル。そんなもの捨ててしまえ。」
「えぇ?!だ、ダメだよ! せっかく貰ったのに。」
「ジューダスの意見に俺は賛成だな……。あんなん何回もあったら命がいくつあっても足りねぇよ…。」
「どうするんだい?カイル。」
うーん、と唸らせるカイルだったが、皆の意見に従うようで大きく頷き肯定を示した。
酷く名残惜しそうではあるが、ダウジングマシンをその場に捨てると──
「あ、あれ? おかしいな…?」
カイルの手に吸い付くように離れないではないか。
それに皆が目を丸くして、その不思議な光景を見遣る。
腕をブンブンと振りながら、仲間達の周りを走り、何とかしてダウジングマシンを離そうとするカイルだったが、先に体力の限界を感じてしまったようで、膝に手を付き、ゼェゼェと息を切らしていた。
「……流石、呪いのアイテム…」
「言ってる場合か。」
『でも、どうするんです? このままじゃあ絶対に離れませんよ?』
うーん、と2人が頭を悩ませる中、カイルだけは脳天気なものだった。
「きっと、オレ達から離れたくないんだよ。」
「アイテムに意思がある時点でおかしいと思えよ、お前よぉ…?」
「これじゃあ、先に進めないわね…?」
「何か良い方法無いのかい?」
ナナリーの視線は経験豊富なジューダスとスノウに向けられる。
2人は前世で色々していると皆が認識しているからこそ、2人の言葉を待っていた。
「……無くは、ないんだが……」
「え?!本当?!」
「本当か?」
『流石スノウです!』
「うーん…。行きたくないと言うか、なんと言うか…ね?」
「(こいつがこんなに煮え切らないとはな。どんな方法なんだ…?)」
口元に手を当て、僅かにスノウが嫌そうな顔をしているのをジューダスが珍しそうに見る。
仲間の為なら、と飛んでいきそうなこいつがここまで煮え切らないその方法とは──
「丁度、この先にある町に“解呪師”と呼ばれる人がいるんだ。その人ならどんなアイテムだろうと、なんだろうと呪いのアイテムを解呪してくれるはずだ。」
「え?そんな人がいるの?!すごいや!」
「でも、スノウがそんなに渋ってるってことは何かあるってことよね…?」
「……まぁ、ね。 ちょっと特殊な人だから。」
『博愛主義と名乗っているスノウが、ここまでタジタジになるなんて…。どんな人なんでしょうか。』
「ともかく、そこに行くぞ。そいつしか、このアイテムを切り離せないなら早くやってしまった方がいい。」
「そうだな。行っちまうか。」
渋っているスノウを横目に仲間達はその解呪師を頼る為に目の前に拡がっている砂漠を越える決心をした。
やはり一人、かなり渋っている人がいたが……。
「(あぁ…、行くのか…。この砂漠も越えないといけないし…。まぁ、文句は言ってられないか…。)」
暑いのが苦手なスノウにとって砂漠は天敵である。
その上、超絶会いたくない人に今から会いに行くのだから、余計にその足取りは重い。
横にいたジューダスだけが、スノウのその足取りの重さに気付いた様だった。
「……?(何故こんなにも嫌そうなんだ…? あの町にゆかりのある人物がいたか…?)」
次に訪れる予定の町はジューダスも一度と言わず、何回も行ったことのある場所だ。
それもスノウ──モネの時だった彼女とも何回か来た事があったはず。
なのに、僕にはその人物の記憶が無いに等しい。
……何故だ?
『坊ちゃん…。』
「…なんだ。」
『スノウがあそこまで嫌がる人物の見当…ついていますか?僕はサッパリなんですよ。』
小声で聞いてくるシャルにジューダスは静かに首を横に振った。
シャルも記憶が無いとなると、僕達との任務以外でスノウはその人物と会っていることになる。
それならば、僕達が分かるはずも無い。
『スノウ!』
「……? どうしたんだい…?シャルティエ……」
既に砂漠の暑さでぐったりしているスノウに、思わず僕は鼻で笑ってしまう。
……相変わらず苦手なんだな。
『その解呪師の人物ってどんな人なんですか?』
「……乙女の心を持つ……デリケートなお方だ…。だからこそ…会いたくない……。」
思わずといった具合に本音が彼女の口から零れる。
……なんだ、女関係か。
前世でこいつはあれほど男として間違えられていたのだ。
今回会ったらきっと何か言われるんだろう。
女やら男でも、誰彼構わず誑かすからこうなるんだ、と侮蔑の意味を込めた視線を送ると、スノウは困った顔で、それもぐったりした状態で僅かに苦笑いをしていた。
『なんだ、女性関係でしたか…』
「……。」
『あれ?スノウ?』
「…………あつい」
「普段、あれほど寒いって言ってるんだ。これくらいが丁度いいだろう?」
「はは、は…。手厳しい…な……。」
確かにジューダスも全身黒を纏い、かなり暑く感じる位だ。
隣にいるこいつが暑さが苦手とはいえ、ここまでぐったりしていれば少しは憐憫の情も浮かぼう。
だがそれまでの話が話だ。
自分の尻は自分で拭いてもらおう。
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