短編
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「ここは静かで落ち着くな…」
「そうだね、シンジュクとは大違いだね」
こじんまりとした旅館の部屋に二人。
なんとか連休を取得した独歩と私は、地方に旅行に来ていた。
せっかくなら思い切り田舎に行こう。
都会の喧騒から離れてゆっくりしたい、と二人の意見が重なり、今回の旅行が実現した。
周りを自然に囲まれたこの地方は、目にも鮮やかで日頃の疲れを浄化させるような景色が広がっていた。
夕食も食べ終わり、部屋でのんびりしていたとき。
「なあ、紬」
「なに?」
「寝るにはまだ早いし、海岸でも散歩しに行かないか?」
部屋に時計はない。
鞄に入れておいた腕時計を取り出し、時間を確認した。
時間は20時になろうかというところ。確かに寝るにはまだ早い。
「うん、行きたい」
…
誰もいない海岸沿いの道。
波の音を聞きながら、二人手をつないで歩く。
しばらく歩くとベンチがあって、海のほうを向いて座った。
夜風が髪をなびかせると、独歩が寒くないか?と聞いてくれた。
本当はそんなに寒くないけれど、嘘をついて独歩に甘えてしまおうか、と思ったそのとき。
真っ暗だった空が、急にぱあっと明るくなる。
「わ、花火!」
「ひっ!?は、花火か…」
遅れてドン、という音が辺りに響く。
独歩が肩を揺らしてびっくりしていたのが面白くて、思わず笑みが零れる。
笑うなよ…と恥ずかしそうに俯いた独歩に、上を向くように促す。
「きれいだね。秋祭りかなんかかな?」
「わからないけど、すごい偶然だな」
二人でしばらく空を見上げる。
時間にすればたった5分ほどの、小さな小さな花火大会。
けれどこの旅行の中では、大きな思い出になるに違いない。
「私たちツイてるよ。ね、独歩」
「ああ、そうだな」
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