【ぬけがら】
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午後は、日本史の授業だった。
繭はぼんやり窓の外を見ていた。
秋もずいぶん乾き、空が淡色に広がる透明っぽさが増えてきた。
太陽のあったかい雰囲気に乗って、イイ感じに眠くなっていた。
黒板の方から、先生の声がする。
「じゃあ、好きな武将をタブレットで入力、理由も添えて。……3分で」
繭は机の右上あたりで斜めになっている端末に目を向けた。
自分の学生番号がふられたそれに、のそりと片手を伸ばした。
クラスはほとんど静かだが、時々だけひそひそ相談する声や茶化すみたいに答えを言ってしまっているコもいた。
繭は教科書を手に取った。
理由なく、パラパラとだけ最初から最後までページを送ってみる。
「あと2分。……ちなみに先生は、武将については……」
先生の雑学も、音の中に混ざってきた。
好きな武将と言われても、繭には特にいないのが正直な所だ。
そもそも、そんなに詳しくもなかった。
「…………」
とりあえず、何となくの入力をしてみた。
【徳川家康】
理由は何だろうか。
思いつくものも、やっぱり何となくだった。
【鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスで天下取ったから】
我ながら適当だけれど、別に嘘でもないとは思った。
提出しようと完了をタップする時に、ふと「徳川」の名前で目が止まってしまった。
「……」
徳川綱吉、と言えば、生類憐みの令 は有名だ。
犬のイメージだが、これは猫も対象だったのだろうか。
そんなことを考えてみた。
もしもそうならば、猫様の時代になるワケだ。
愚策寄りだった記憶だけれど、対お猫様ならむしろアリなのではないか。
大体、将軍になるような人間ならば多少趣向が行き過ぎているくらいはあり得る範疇かもしれない。
猫の方向ならチョットいいし、徳川綱吉とは意外と話が合っちゃったりする可能性もある。
そういえば、江戸時代にも猫カフェってあったのだろうか。
「カフェ」は横文字、ならば「喫茶」か、昔ならば「茶屋」とかなのか。
猫茶屋、猫っ茶屋、お猫様茶屋、響きも何だかかわいいと思う。
「あと1分。理由もちゃんと入れろよー」
先生の声で現代に戻された。
そこまで考えて、どうでもよくて失笑だ。
繭はもう一度、自分の回答を見た。
【徳川家康】
【鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギスで天下取ったから】
何となく、回答は最初のままにしておいた。
タブレットの画面を閉じてまた窓の外を見た。
「……」
江戸時代にも、猫カフェはあったのだろうか。
Fin
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