【ぬけがら】
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そろそろ“奴ら”が猛威を振るう季節だ。
「……ねえ」
「……」
「O型が好まれるってホントかな?」
「…………」
「……どうでもいい?」
「どうでもいい」
繭は膝の後ろを掻いた。
奇しくも、Aは仕事をやり遂げたみたいだ。
自然界の数の暴力に対し、時としてこちらは無力だと思う。
耳元ではあの高い羽音がする。
人類の名誉のために、一旦は身体を揺すってBを追い払った。
凝りもせずに、逆から視界に入るCが出現する。
ゆるんだ動線で、堂々と前を過ぎようとは実に勇猛果敢ではないか。
「……」
つい、目の前に手の甲を出した。
Cは数回の安全確認をしながら繭の狙いに乗ってきた。
「……あ、来た」
別に、近くで味わうつもりは全然なかったのに。
よく見るとこの小型吸血鬼(C)は感慨深い。
肌の上で、縞になる足が重さなく位置を決める。
透明な翅が休むと、口吻が皮膚表面を押し分けていくのが見えた。
「……うわ」
腹が膨らみ、体内に流れ込む血が透けていた。
生き物としての機構が繭の理解をゆうに超えている。
人間の胃で換算するならこの量は異常だ。
傷つけられて、奪われていても、全く痛みがない。
そういうものだと知っているのに目の前で見せつけられると、さすがに変な感じがした。
やってきたのはパシ、と斜めに叩かれる音と痛覚だった。
「……え?」
遅れて、平面化したCが入ってくる。
「…………潰した」
この気持ちは、どうにも言葉にならない。
動くのは口だけだ。
「……今、見てたのに」
「蚊だろ」
「蚊を見てたの」
「殺れ」
「ギリギリで仕留めようと思って見てたの!」
唇が尖り、繭の顔が上がった。
更に顔が上がり、感情が頬のラインを丸くする。
凛の目は数秒で、そこからそれた。
その先は手のひらだ。
「汚ぇ」
肩あたりに、汚れを勝手に移してくる。
さすがに身体が後ろに引けた。
「っ、人の服で拭く!?」
「お前のだろ」
「だって、……他人の血も入ってるかもしれないし、そう思うとすごくヤダ!」
「一生吸われてろ」
あっという間に、凛はその場から離れて行った。
何となく、繭は肩を払っておいた。
Dの発生はまだだ。
目の前には、小さな血の池とCの跡が残っていた。
Fin
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