【ぬけがら】
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「いつ見てもビジュ強っ強だねぇ……」
「人間で言えばもういい歳だけどね」
「メスだっけ?美魔女だなぁ……」
「猫、老いても可愛いの羨ましい」
繭の部屋のテーブルの下には、横座りのリティがいる。
前足をゆったり舐める姿に、小春はとろけているみたいだ。
土下座同然の格好でそれを見ている小春を真似て、繭もカーペットに胸元を近づけてみた。
「今日機嫌イイ。小春いるからかな」
「そうなの?可愛いヤツめー♡嬉しい」
「でも次はわからない。気分屋だから」
「リティねぇさん、あざといね」
静かに伸びをするリティの尻尾が、繭の手の甲を撫でた。
長いもふもふはそのまま繭を通り抜けて、ゆるいカーブを作り落ち着いた。
「糸師クンにも懐いてる?」
「懐いてはないかな。あんまり近寄らない」
「えぇ~メスなのに?イケメン嫌いなの?」
「猫だからね……まあ、……人を選ぶよね」
リティがふいに頭を上げた。
体がほころぶようにほどけ、背中の毛が一筋ずつ立ち上がる。
前足が静かにカーペットを押し、姿勢が自然に戻ってきた。
ゆっくり起き上がると、繭のベッドの下までのそりと歩いて行った。
目線は上部に斜め45度、リティは小さく短い一鳴きをした。
「今、鳴いた!?初めて見たかも、てか声までが可愛すぎん?」
「そうなの!鳴き声可愛いのも普段は殆ど鳴かないのもずるい」
「計算づくですなぁ。見習いたいレベル」
「……リティここ乗りたいの?」
自分でジャンプが出来ないから、猫撫で声で人間を簡単に操作するのだ。
後ろから抱き上げベッドに乗せてあげると、2,3歩で居場所を探して海老みたいに下手くそな丸になった。
「……甘えてる」
「え、そうなの?」
「前足ちょっと動いてる」
「ほんとだ。クネクネしてる」
「これふみふみ。ゴロゴロもちっちゃいけど、してる」
「……してる……!可愛いっ……!」
程よく圧を乗せて頭をしっとり撫でると、目を細めた睨み顔で返事をくれる。
「……写真撮ろ、今、可愛い」
「確かに。これは可愛いわ」
昔はカメラを近付ける事を嫌がったけれど、今は気を回さなくなったみたいだ。
それでも少しスマホは離して、一枚だけ写真を撮っておく。
リティが幸せ顔でぷすんと落ちた所で、小春からいよいよ大きなため息が聞こえてきた。
「……じゃあ繭ちゃん……そろそろ本題いく?」
「えっ?もう?あえて言わないでおいたのに?」
「だって今日課題やるって話で来たんじゃん」
「……そうだけど……」
正直、気持ちの上でのやる気が完全にどこかに行ってしまった。
繭の視線が、右上に泳いだ。
「……その前にオヤツにしない?アイスとプリンどっちがいい?」
「やった!じゃあプリン、ありがと」
「オッケー」
階段を降りる足も、スプーンを選ぶ手も、やたらゆっくりだ。
もちろん、リティのオヤツも一緒に持って行った。
fin
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