キバナさんがお見舞いに来てから早3日。あれ以来キバナさんが来る事はなく、その次の日からは両親が毎日見舞いに来るようになった。お母さんもお父さんもシュートシティでホテルを取るのに少し苦労していたらしく、お母さんに至っては会うや否や「昨日は行けなくてごめんねえええ！！！」とこの間のシグレ張りにすてみタックルからのまきつくのコンボを食らってしまった。お父さんがすぐに引きはがしてくれなかったら別の怪我で入院が延期になってしまっていたかもしれない。
そしてなんやかんやあってその今日が退院日。本当なら両親やイエッサン姉弟に囲まれながらほくほくとゆったり、お医者様たちに見守られながら退院するはずだった。するはずだったのです。

「う～ん…すごいわねえ。病院の入り口、カメラマンや記者たちでいっぱいよぉ。あらあら！一般人も詰め寄ってるじゃない！」

「流石にファイナルトーナメント出場、それも決勝戦まで進んだジムチャレンジャーが入院しているともなればなあ……。さて、どうしようか」

お母さんはカーテンの隙間から盗み見をしてはため息をつき、お父さんは腕を組んでは私を見つめ、回答を伺っている。
これは流石に予想外だった。どこからか漏れでた私の退院日の情報がたちまちにマスコミに広がり、SNSで広がり、今や病院の入り口は何かのイベント待ちのように人という人でごった返していた。これにはいつもは優しそうな担当医も苦笑いだった。

『あ、あの、すみません…。病院前があんなに騒がしくなってしまって』

「いえいえ、バニラさんは入院されていただけですし、仕方ありませんよ。実際ジムリーダーの方たちもご利用なられるような大病院ではありますし、このような事も初めてではございません。ですが、ジムチャレンジャーの退院でここまでの人だかりは今まででも見なかったですねえ」

え、そうなんですかとも答えられず私は顔を真っ青にしてしまった。や、やっぱり車椅子でジムチャレンジに参加していたから目立っていたのだろうか。そんな考えが頭をよぎっては自然と視線が落ち込んでゆく。
このまま真正面から出てしまえば人波にもまれ、写真を撮られ、カメラも回され、質問責めに遭い…滅茶苦茶に絡みまざった主張の激しい「色」が襲い掛かってくるに違いない。そう考えるだけでももう既に吐き気が起きそうになった。