「組頭」
「ん？何だ尊奈門」
諸泉尊奈門。
タソガレドキの忍者で雑渡の部下である。
諸泉は噂の天女が囲まられた部屋から出てきた雑渡を引き留めた。
諸泉は周りに聞かれないよう耳打ちする。
「いいんですか、あんなえたいの知らない人物城に入れちゃって」
「大丈夫、城の内部の詳細は見えないよう目隠しはしてるし脱走しないよう見張りもつけてる
まぁ本人もその気はなさそうだけど念のためにね」
「それはそうなんですが……
明日のソザナイタケ城の潜入にも連れてくらしいじゃないですか
何が起こるかも分からないのに」
「何が起こるか分からないから連れてくんだよ」
諸泉は理解出来ないと呆気にとられた。
「あの天女は戦も知らない未来ならやってきたやつなんでしょう？
忍者学園で多少護衛術を習ってたとはいえ戦場に放り込むのは危険かと……」
「心配かい？それなら大丈夫」
「どうせ俺を側につける気でしょう？」
雑渡は当たり、と言う。
例のソザナイタケには恐らく上級生を中心に構成された者が来ると思うがそこに土井も含まれると予想した諸泉だったが。
天女の護衛もとなると土井と戦うのはいささか無理だろう。
「はあ、分かりましたよ……
ちゃんと護衛します」
「なら、よし
でも相手によっては護衛なんて要らないかもね」
「は？」
「うちの部下と比べれば大したことはないけど多分他の城のへぼ忍者よか彼女は強いよ
あれは戦闘を経験したことのある目だ」
雑渡は初めて邂逅した時の事を思い浮かべて目を細めた。
「ほんとにあの天女は未来から来たんですか？」
「さあね、どこから来たなんて我々には関係ない
彼女をどう使えてタソガレドキに有能な働きをするかどうかだけが重要だ」
まるで有能な働きをしなかったら切り捨てるといわんばかりに雑渡の目は冷たかった。