「……さま、天女さま朝ですよ」


あきらが目を覚ますと、すぐ近くにシナ先生が座って待っていた。


「お、おはようございます」

「おはようございます、今から食堂で手伝いをしてもらいますので直ぐに着替えてください」

「は、はい。分かりました」


あきらは手短に着替えを済ませ、部屋を出た。

部屋の外で待っていたシナ先生はあきらを見ると、少し驚いた。


「おや、今回の天女さまは着物が着れるのですね。天女さまが住む世界では着物は滅多に着ないと聞いたのですが……」

「えーと、私の家はときどき着る習慣があるんですよー」

あきらはすぐさま弁解した。

(本当はそうじゃないけど……
つい、前世と同じようにしちゃった……)


「では、食堂に案内しますから着いてきて下さい」

あきらはシナ先生の後を歩いた。

忍たま長屋を出て食堂へと移動する際見覚えのある風景に懐かしさを感じつつ刺すような視線を感じた。
遠巻きに先生方や忍たまたちがこちらをじっと見ていた。
その瞳はまるで化け物を見ているのごとく恐怖や嫉みで支配されていた。

(やっぱり、記憶通りだ……どれも懐かしいな、それにしてもいくら記憶がないと言っても、シナ先生冷たいな……ほかの先生もだけど、若干殺気を感じる……こんなに寂しい所になってるなんて知らなかった。
やはり、私の前に来た天女が関係しているのだろうか？)

と考えていると、あきらは食堂に着くと
早速仕事に取りかかるようにとシナ先生に指示された。

「食堂のおばちゃん、こちらが新しい天女さまです」

あきらはシナ先生に紹介してもらった。


「そう……あなたが新しい天女さまね、私は食堂のおばちゃんよ、
よろしくね」


あきらは食堂のおばちゃんが一瞬嫌な顔をしたのを見逃さなかった。

「五十嵐あきらと申します、こちらこそよろしくお願いします」

「じゃあ早速手伝ってもらいましょうか、生徒から注文を聞いて渡してもらえるかしら？」

「分かりました、おばちゃん」



それからあきらは注文を聞くのちに忍たまのある共通点を見つけた。

まず、1年生は明らかに自分の事を怖がっている。

そして2、3年生は警戒しているのかこちらを見ると露骨にイヤな顔をする。

下級生の中には昔の後輩もいるから少し堪えるな……

今なら留三郎の気持ちが分かるような気がする……

よく留三郎が下級生に興奮してると、下級生があんな顔してたっけ……

4、5、6年生は皆そろってなんか優しく話しかけてくる。

貴方の笑顔に惚れました！なんだの言ってるけど、嘘言ってるのバレバレだしなー……

でも、留三郎の時はつい赤面しちゃった……とっさに今日は暑いなーと
ごまかしたから多分バレてないと思いたい。
歓迎はされていないのは明らかだが何とかがんばりたいものだ。


「さっきの反応見たか？」
仙蔵はあきらの方向を見て言った。

「うん、どうみても留三郎の事好きだよね」

「え、誰が？」
しかし肝心の留三郎は全く気づいていなかったのに仙蔵と伊作は
鈍感にも程があると呆れたのだった。