「くそっ」
男は文を読むなりくしゃくしゃにして放り投げた。
そのまま立って辺りをうろつき悪態を吐いた。
かなり苛立っている様子に周りはまたかと内心呆れている。
この数ヶ月間ずっとこの調子でここ最近は機嫌の様子がすこぶる悪い。
男はかなりの権力者のようで周りの者は居心地が悪いと思いながらも異を唱える者は一人として居なかった。
男の機嫌が悪い理由は１つである。
5人目の天女が降りたって以来忍術学園の状況が少しずつ改善されている事だ。
実は天女が降ってくるようになったのも男のせいだ。
厳密に言えばその者の力ではないが。
男は忍術学園に対して恨みを持っていた。
が、どうこう出来るほど力はなく嘆いていた時奇妙な格好をした者が訪ねてきた。
『その願い私が叶えてみせましょう』
全身のほぼ全てを布で多い口元しか見えない格好をしていたがその甘美なる言葉に男はまんまとのせられた。
しかし、協力者はただでは動かないと申した。
こちらとしても商売なので報償金をくれないと何もしない、と。
男はしぶしぶ金を払った。
その者が言うには天女という女を降りさせ仲間割れするように仕向けるという事だった。
何とその者は思考や行動を操れるらしく天女を中心として忍術学園内はみるみる内に荒れていった。
こちら側の戦力を使わずに勝手に倒れてくれるのだから好都合だと男はほくそ笑んだ。


…………が、調子がいいのも途中までだった。
混乱の隙に子どもを潜入させたところまでは良かったが、それ以降状況は良くも悪くもなく平行線のまま。
と言うのも天女は一人までしか降ろせないらしく天女が居なくなればまた新たに金がいるようになる。
しかも人数を増やせば増やすほど協力者からの請求金額が増えていった。
5人目に至っては、術を掛けるほどの金は残っておらずただ呼び寄せただけだ。
潜入させた子供によれば5人目の天女は悪化した忍術学園を改善させようとしているとか。
金が足りず術をかけずにいたらこんな事になるなど予想にもしていなかった。
「このままでは金を失うばかりだ……！！」
どうにかしなければ……と男は頭を抱えた。