(はあ、やれやれ
後少しで小平太の猥談に巻き込まれる所だった……)

あきらはふう、と額の汗を腕で拭った。

本当にあの小平太は場所を選んでくれないので非常に困る。

(密偵か……)

話の途中にも出てきた通り自分の情報を外に流しているやつがいるのには違いないが、まだ検討もつかない。

いや、疑いたくないのか。

後輩たちや忍術学園の生徒や先生方関連者を疑いたくない自分がいるのだ。

だから今は動かなくていいとつい言ってしまった。

これではくの一失格だ、と自嘲する。

すると考え事をして歩いていたせいか下級生とぶつかってしまった。

体格の違いから相手の子が尻餅をついてぶつけた部分を擦った。

「ごめんね、痛いとこはない？」

「あっ、いいえ、大丈夫です！！」

それではとお辞儀をしてその下級生の子は走り去っていった。

服の色からして二年生だったが、あきらはうーんと思い返した。

(あんな子……いたっけ？)

前世を思い出してみてもまるで見覚えがない。

(まぁ、全員覚えているわけじゃなし……
気にしなくていいか)

上級生になれば勉学が難しくなり自ずと離脱者が増えて人数も減るのだが……。


下級生は離脱者が少なく人数がともかく多い、小さな子がわちゃわちゃして覚えていない子がいるのも当然かと納得した。