「なあ、思ったんだけどさあ
何で天女って一人しか降りてこないのかな」

小平太がポツリと呟いた。

「は？」

小平太を除く5人はそれがどうしたと言わんばかりにぽかんと口をあけ、仙蔵はつい声を出してしまった。

「は？、って何だ、疑問に思っちゃ悪いのか？」

「いや、別に悪いわけじゃあないけど……」

空気が悪くなるのを感じ伊作はフォローに回った。

「天女は今のところ一人ずつしか来ていないだろう
それとも2人来てほしいとも思っているのか？」

「なんだと！！！」

挑発されがたりと立ち上がった小平太を長次が制した。

「小平太はそんな事思っていない
仙蔵、それはお前も分かっているはずだ」


「…………すまん、言い過ぎた」

「うん」

とりあえず、喧嘩にはならなさそうだ。

ほっと伊作は胸を撫で下ろした。

「ま、まぁでも二人以上じゃなくて良かったよね！！」

実際二人以上だったらとんでもない事になっていただろう。

「しかし、何で一人ずつなんだろうな」

潮江文次郎はこれまでの経緯を思い返す。

春になり六年生に上がったのと同じくらいに最初の天女が降ってきた。

天女を天に還すとほどなくして新しい天女が降ってくる。

それの繰り返した後に5度目の天女としてあきらが降ってきたのだ。

「あ～～～わけわかんねえ」

頭がこんがらがってきたと、留三郎がぼやいた。

「実際、考えても分からんだろう
ゆういつ、考えられる点としては……
現時点でいる天女を消すと新しい天女が降ってくるという事だ」

天女を消せば新しい天女がやってきて
それを消せばまた新しい天女がーー。

それではずっと悪循環のままだ。

「ねぇ、学園内も安定してきたし……
このままあきらちゃんに学園に居てもらう事にするのはどうかな？」

伊作は5人に提案した。

まず、最初に口を開いたのは留三郎だった。

「……いいんじゃねーか？
用具委員会でもあきらは頑張ってるし後輩達も抵抗感は無くなってきてるように俺は思う」

「訓練を真面目にやってるのは評価してるが……」

「本の返却期限をきっちり守っている……
問題は……とりあえずはないだろう」

「まぁ、いんじゃね？？」

勉学に必死に励んでいる様子から問題はないと文次郎、長次は判断したようだ。

小平太は……。

事細かに気にしないのは忍者としてあれな気がするが、特に異論はないようだ。

(後は仙蔵だけど……)

伊作がこの質問をしたのはこれを通して
留三郎はさておき残りの4人があきらに対して敵意等を持っているか
確かめたかったからだった。

「それをここで話してどうする」

(やっぱり仙蔵は駄目か……)

特に天女に対し当たりがキツかった仙蔵は無理かと思った矢先。

「我々六年だけで決めれる問題ではない
他学年、更には先生方や学園長、
小松田さんやそれから食堂のおばちゃん
忍術学園全体で決めねばならないだろう？」

全員に受け入れられなければな、と仙蔵はやれやれと苦笑いをした。

「仙蔵……そうだね、」

伊作は少しずつ、前に進めているんだと感じ柔らかく微笑んだ。