私は驚いた。

毒を盛ろうとした人に助けられたからだ。


今年くノ一になったばかりで初めての仕事だった。

成功させなくちゃ、と思うほど緊張で体が思うように動かなくなった。

懸念通りつまづいてしまって茶はこぼれてしまった。

ああ、どうしよう、あれが最後だったのに…。

茶に混ぜるときにほとんど失敗してもう代えがないのだ。


どんどん事態が悪い方向に向かっていって涙が出そうと思った時、助けられた。


「…っ、くそ！何だてめえ！！！」

男が殴りかかるのをさらりと躱し、その人はみぞおちに蹴りを入れた。

よほどのダメージだったからか、男は失神し連れに抱きかかえられて店から退散した。

騒動でざわざわしていた周りは活躍に歓喜する。

すると、地面に座りこんで放心していた私にその人が話しかけてきた。

「大丈夫？」

「あ、はい！」

急いで立ち上がろうとしたが腰が抜けてしまったらしく倒れる私をその人が腕で支えてくれた。

「す、すみません…」

いや、いいよと言ったその時、耳元である事を言われた。

(私を殺すつもりだったんでしょ？)

ーーー！、気づかれてた！？

でも暗殺ではなく痺れさせるなりして誘拐する事が目的なんだけど…。

(もっと自信を持ってやらないとあきら、筋は悪くないし緊張さえどうにかなればいい線いけると思うよ)

じゃあ、頑張ってね、とは立ち上がって元の席に戻ったのを刺客の女は放心して眺めていた。