仙蔵は用があると言ってその場を離れた。

おそらく夕刻までに戻ってくるだろう。

それまでに達成出来るようにしないと、
とあきらは思った。

「それで、どうすんだ？策はあんのか？」

「ないけど、練習あるのみじゃない？」

何と、あきらはぶっ続けで練習してやるつもりらしい。

「流石に休憩なしはダメだよ
ちゃんと水分とってね？」

伊作に念を押され仕方なくあきらは頷いた。


そして、水分をとりつつあきらは手裏剣を
投げ続けた。

気づいたら昼になっていたがなるべく練習したかった為、
留三郎が食堂のおばちゃんに頼んでお握りを作って貰った。

お握りを頬張っていると、留三郎が聞いてきた。
「どうだ？いけそうか？」

「うーん、どうかな、
10回通してはまだ無理かも」

あきらは少しずつ感覚を取り戻してきたものの全て当てるのは
まだ難しいようだ。

あきらは最後のお握りを食べ終え、練習に戻ったのを見ていた伊作は留三郎に耳打ちした。

「ねえ、留三郎あきらちゃんの手の平って
見た？」

「いや……？特に気にしてないが……………
どうかしたか？」

「なら、いいんだけど………………」
伊作は練習を再開したあきらを心配そうに見
ていた。


そして、夕方までになり、約束の時間になった。

「さて、用意はいいな？」

先ほどやって来た仙蔵はあきらに聞く。

「……いいよ」

答えたあきらの表情は強張っている。

「では、今から10回中全て手裏剣を的に当ててみろ」

あきらは的の方に向いて、じっと狙いを定めて、手裏剣を打った。


まず、一投目。
あきらが打った手裏剣は見事に的に当たった。

「ほお、とりあえずは当たるようになったようだな」

仙蔵は感嘆の意を込めて褒めた。

「それはどーも」

(1回当たっただけじゃ意味がない、気を緩めるな)

あきらは連続で的に当てたが、5回目から段々しんどそうにしている。

留三郎と伊作は慌てて駆け寄ろうとしたが、あきらに止められた。

(今近寄られたら隠してる事がバレちゃう………………
バレずに何とか全部終えないと……！)

そして、何とかミスをせずに次で最後となった。

「留三郎！」

「ああ！次当てたら10回目だ！
頑張れよ！あきら！次で最後だ！」

応援する伊作と留三郎をよそに仙蔵は驚いていた。

(まさか、ここまで上達するとは…………)


(あと一回……あと一回当てればいいんだ
堪えろ、私……！)
あきらは最後の一投をした。

「あっ………………」

しかし、最後の最後であきらは的を外してしまった。