「シナ先生」

「立花くん、ちょうどくのたま用の制服が一つ余ってたわ」

仙蔵は受け取ると同時にサイズを確認した。

「はい、どうもありがとうございます
これなら大丈夫そうです」

じゃあ私はこれで失礼するわ、と立ち去ろう
としたシナ先生を仙蔵が呼び止めた。

「すみませんが、あきらの着付けを手伝って
貰えないでしょうか？
我々がするわけにもいかないので……」

「そうね、分かったわ」

「はい、お願いします」



「天女様、失礼します」

シナ先生は襖を開け、あきらの部屋に入った。

「すみません、シナ先生
着付けを手伝ってもらって……」

「お気になさらず、これも仕事ですから」

あきらは内心どこか距離を置かれていると感じた。

シナ先生とはあまり話す機会がなく、まだ
あきらの事を天女と呼ぶ。

(シナ先生とはいつも会話に困る……
まぁ、他とも会話が出来てるわけでも無かったけど……
……前世ではいっぱい迷惑をかけてしまった
なあ、来世で嫌いになるのも仕方ないか)

色々ぐだぐだ考えている内にあっとゆうまに着付けが終わった。

「よく、似合ってるわ」

シナ先生が誉めたので、あきらはありがとうございますと礼を言って足早に部屋を出ようとすると。

シナ先生があきらの腕を掴んだ。

「シナ先生…………？」

シナ先生はハッとして、慌てて離した。

「ごめんなさい、手が勝手に……
何故だか分からないけど、あなたを行かせてはならないと思って……」

この時無意識に掴んだのは、前世であきらを任務に行かせた結果命を落とす事になってしまったのは自分のせいであると後悔していた念が現れたからなのであるが、本人は記憶がないので知るよしも無かった。

「シナ先生」

あきらはシナ先生の手を両手で包んだ。

「私なら大丈夫です
何があっても死ぬ気はさらさらありませんから」

あきらはふっと微笑んだ。