翌日起きたあきらは食堂へ向かい朝食の準備をしようとしたが、食堂のおばちゃんに止められてしまった。

「その左手じゃ手伝いは難しいじゃないかい？あきらちゃんは毎日手伝ってくれてるからね、怪我が完治するまで大丈夫だよ」
「ありがとうございます…食堂のおばちゃん」

あきらが礼を言うと、留三郎が食堂にやってきた。

「おはよう、あきら」
「おはよう…留三郎」

留三郎はあきらの隣にたつと食堂のおばちゃんに注文した。

「おばちゃん、A定食でお願いします
あきらは？」
「わ、私？じゃあ留三郎と同じA定食で」
「ふたりとも同じのね？ちょっと待っててね」

おばちゃんはお盆に載せて、A定食を二つ出した。
ありがとうございますと留三郎は礼を言うと、
「あきら、ちょっと待ってろお前の分も机に
運ぶから」と自分のを机に運んだ。
「別にそれくらい良いのに、片手でも運べるし………」

意地を張ったあきらだったが、留三郎はあきらの分も机に運んだ。(何気に隣の席である)

「片手じゃ持ちにくいだろ？ほら、座って食べようぜ」

留三郎が促したので、あきらは座り食べ始めようとしたが、何故か自分の茶碗を留三郎が持っている。

「何してんの………」
「いや、ほら食べにくいかなって思って」
「別にそんなことしてもらわなくても茶碗くらい持てるし、そんな過保護みたいな……」

といいかけたが、留三郎は厚意でやっていると気付き、訂正した。

「気持ちはうれしいけど、それだと留三郎が食べれないでしょ、大丈夫、
傷口が開かないようにするから」
「お、おう、それだったらいいんだが……」

二人とも気まずくなったのか、朝食を食べ始めた。


朝食を食べ終わったので、留三郎は食堂を出ると、誰かに引っ張れた。
振り替えると服を引っ張ったのはあきらだった。

「あきら？」
「…………あの、さっきはありがとう…
それじゃ、仕事あるから…」

そう言い終わると、あきらは走って居なくなってしまった。
すると、伊作が食堂から出てきたが留三郎の顔が赤く染まっているのに気付いた。

「留三郎？顔が赤いけどどうしたの？」

問いかけると留三郎がビクッと驚いた。

「い、伊作か、い、いや～～か、風邪かなあ～～～」

ハハハと笑いながら留三郎は話を誤魔化し
居なくなってしまった。

(十中八九あきらちゃん関連だな……)
色々分かってきた伊作は察したのだった。